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四十三話 砂漠の民への提案
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僕はマニちゃんに案内され、一軒一軒家を周って熱病で動けない程衰弱している人を治癒していった。
「あ、あの、ルカちゃんに熱病がうつるといけないから、私の家で待ってた方がいいのでは?」
「ルカ、病気怖くないもん! 病気になってもシグお兄ちゃんが治してくれるもん!」
マニちゃんの案内で病人を治癒して周る僕の背中には、ルカがくっついていた。僕達だけならセレネやファニールと一緒に居る事もあるけど、知らない場所で知らない人が居ると、僕と離れたくないみたいだ。
それとルカが一度風邪をひいた時、熱をだしたルカを見たファニールが慌てて、僕が魔法で治癒した後、自分の血を数滴ルカに飲ませていた。アグニやヴァルナは呆れていたけど、その所為でルカはほとんどの病気を寄せ付けない身体になっている。
イグニート程の効果はあるのか分からないが、ファニールもバカな事したと思う。風邪くらい僕が治癒できるのに。ファニールにそう言ったら、病気にならない丈夫な身体になったんだからおれは間違ってないって言い張ってた。
そんな訳で、ルカはどんな病気だとしても、それにかかる事はないんだよな。
集落で熱病にかかっていた人を全員治癒し終えると、僕の事を警戒していたバッジという大男が、僕の手を取りオイオイと涙を流してお礼を言ってきた。その最初の態度からの変わりようと、男に縋り付かれる状況に、どうしていいのか分からない。
人数の少ない集落だったけど、全員の治療を終えると日も傾いていたので、その日は、空いている家を借りて一泊する事にした。
翌朝早く朝食の準備をしていると、マニちゃんと大男のバッジ、その後ろに回復した女性とマニちゃんのお父さんらしき男の人が近付いて来た。
そして集落の他の家からも人が出て来る。
さりげなく僕とルカを護衛する為に、ヴァルナが僕の斜め後ろに控える。
それにしても人数が少ないな。
ここがバルディア王国やローゼン王国なら、この規模の村は幾つもあるだろう。だけどここは砂漠の中のオアシスに存在する集落だ。外との交流がなければ、その先には衰退しかない。
「シグさーん!」
マニちゃんが僕を見つけて駆け寄って来た。
「おはようマニちゃん」
「おはようございます。お父さんとお姉ちゃんが、シグさんにお礼が言いたいって言うから連れて来たの」
走って来たマニちゃんに遅れて、壮年の男と僕より少し年上の女性が近付いて来た。
「親子共々、助けて頂いたにもかかわらず、ご挨拶が遅れて申し訳ない。この集落の長を務めているガースだ」
「シグフリートです。マニちゃんに出会ったのは偶然ですし、お礼を言われる程の事でもありませんよ」
「お父さん、私がサンドワームに襲われて逃げているところを、シグさんに助けて貰ったの」
「なっ! サンドワームだと!」
「……マニ! あなた無茶をして!」
マニちゃんがサンドワームの名を出した瞬間、周りに居た集落の人達が絶句する。
僕がその反応を不思議に思っていると、マニちゃんのお姉さん(フロルさんと言うらしい)が悲鳴に近い声でマニちゃんを叱り始めた。
「大丈夫だったよ。シグさんがあっという間に斃しちゃたから」
「なっ! サンドワームを斃しただと!」
シグが一人でサンドワームを斃したと聞いて、集まっていたマニちゃん以外の全員が絶句する。それもそうだろう。サンドワームを斃すには集落の戦士が総出でかかり、大きな犠牲を払って成し得る事だ。それを少年が一人で斃したと聞けば驚きもするだろう。
「シグ殿、重ね重ね娘を助けていただきありがとうございます。そればかりか、我等の病まで治していただき感謝の言葉もありません」
「いや、これもマニちゃんに運があったという事ですよ。僕達が出会ったのは偶然で、偶々治療する術があっただけですから。何度も言いますけど、それ以上のお礼はいりません」
「いや、それでも部族の長として、代表してお礼を申し上げる」
あまりに何度も感謝され過ぎるのも居心地が悪い。何とか辞めてもらい、昨日から考えていた事を集落の長であるガースさんに提案してみる。
「空白地帯にある集落ですか?」
「ええ、そこに移住してみませんか?」
「主人よ、情報は正確に伝えないと判断材料にはならんぞ」
「そうだぞ坊、あれはもう城塞都市だからな」
僕がローグさん達の住む集落をガースさん達に勧めると、アグニとインドラから突っ込まれた。
「空白地帯に城塞都市?」
「は、ははっ、そうとも言いますね」
仕方ないので丁寧に説明した。
ガースさん達も好き好んで、この過酷な環境で暮らしているわけじゃないと僕は感じたんだ。だからローグさん達の集落を勧める事を考えていた。
その後、ガースさんの話も聞くと、彼等も出来れば狩りや農耕に適した空白地帯で暮らせるものなら暮らしたいらしい。ただ、それを出来ない理由があった。そう、蛮族の存在だ。
「なら、尚更のこと今だと思います」
僕は、空白地帯最大勢力にして最大の縄張りをもつ蛮族がほぼ壊滅した事を話した。
僕は、空白地帯には珍しいひと所に定住して狩りの他に、農耕や牧畜をして暮らす部族の事。そこを襲った蛮族を全滅に近いくらいに撃退した事。今の空白地帯は、未だ嘗てないくらい治安は安定していると伝え、ガースさん達部族の皆さんで相談して決めて欲しいと伝えた。
ローグさん達も人数が多い方が良いからね。
「部族の皆で話し合ってみます」
ガースさんはそう言って去って行った。
何故かマニちゃんは僕達と一緒に朝食を食べているけど、ルカが嬉しそうだから良いか。
「あ、あの、ルカちゃんに熱病がうつるといけないから、私の家で待ってた方がいいのでは?」
「ルカ、病気怖くないもん! 病気になってもシグお兄ちゃんが治してくれるもん!」
マニちゃんの案内で病人を治癒して周る僕の背中には、ルカがくっついていた。僕達だけならセレネやファニールと一緒に居る事もあるけど、知らない場所で知らない人が居ると、僕と離れたくないみたいだ。
それとルカが一度風邪をひいた時、熱をだしたルカを見たファニールが慌てて、僕が魔法で治癒した後、自分の血を数滴ルカに飲ませていた。アグニやヴァルナは呆れていたけど、その所為でルカはほとんどの病気を寄せ付けない身体になっている。
イグニート程の効果はあるのか分からないが、ファニールもバカな事したと思う。風邪くらい僕が治癒できるのに。ファニールにそう言ったら、病気にならない丈夫な身体になったんだからおれは間違ってないって言い張ってた。
そんな訳で、ルカはどんな病気だとしても、それにかかる事はないんだよな。
集落で熱病にかかっていた人を全員治癒し終えると、僕の事を警戒していたバッジという大男が、僕の手を取りオイオイと涙を流してお礼を言ってきた。その最初の態度からの変わりようと、男に縋り付かれる状況に、どうしていいのか分からない。
人数の少ない集落だったけど、全員の治療を終えると日も傾いていたので、その日は、空いている家を借りて一泊する事にした。
翌朝早く朝食の準備をしていると、マニちゃんと大男のバッジ、その後ろに回復した女性とマニちゃんのお父さんらしき男の人が近付いて来た。
そして集落の他の家からも人が出て来る。
さりげなく僕とルカを護衛する為に、ヴァルナが僕の斜め後ろに控える。
それにしても人数が少ないな。
ここがバルディア王国やローゼン王国なら、この規模の村は幾つもあるだろう。だけどここは砂漠の中のオアシスに存在する集落だ。外との交流がなければ、その先には衰退しかない。
「シグさーん!」
マニちゃんが僕を見つけて駆け寄って来た。
「おはようマニちゃん」
「おはようございます。お父さんとお姉ちゃんが、シグさんにお礼が言いたいって言うから連れて来たの」
走って来たマニちゃんに遅れて、壮年の男と僕より少し年上の女性が近付いて来た。
「親子共々、助けて頂いたにもかかわらず、ご挨拶が遅れて申し訳ない。この集落の長を務めているガースだ」
「シグフリートです。マニちゃんに出会ったのは偶然ですし、お礼を言われる程の事でもありませんよ」
「お父さん、私がサンドワームに襲われて逃げているところを、シグさんに助けて貰ったの」
「なっ! サンドワームだと!」
「……マニ! あなた無茶をして!」
マニちゃんがサンドワームの名を出した瞬間、周りに居た集落の人達が絶句する。
僕がその反応を不思議に思っていると、マニちゃんのお姉さん(フロルさんと言うらしい)が悲鳴に近い声でマニちゃんを叱り始めた。
「大丈夫だったよ。シグさんがあっという間に斃しちゃたから」
「なっ! サンドワームを斃しただと!」
シグが一人でサンドワームを斃したと聞いて、集まっていたマニちゃん以外の全員が絶句する。それもそうだろう。サンドワームを斃すには集落の戦士が総出でかかり、大きな犠牲を払って成し得る事だ。それを少年が一人で斃したと聞けば驚きもするだろう。
「シグ殿、重ね重ね娘を助けていただきありがとうございます。そればかりか、我等の病まで治していただき感謝の言葉もありません」
「いや、これもマニちゃんに運があったという事ですよ。僕達が出会ったのは偶然で、偶々治療する術があっただけですから。何度も言いますけど、それ以上のお礼はいりません」
「いや、それでも部族の長として、代表してお礼を申し上げる」
あまりに何度も感謝され過ぎるのも居心地が悪い。何とか辞めてもらい、昨日から考えていた事を集落の長であるガースさんに提案してみる。
「空白地帯にある集落ですか?」
「ええ、そこに移住してみませんか?」
「主人よ、情報は正確に伝えないと判断材料にはならんぞ」
「そうだぞ坊、あれはもう城塞都市だからな」
僕がローグさん達の住む集落をガースさん達に勧めると、アグニとインドラから突っ込まれた。
「空白地帯に城塞都市?」
「は、ははっ、そうとも言いますね」
仕方ないので丁寧に説明した。
ガースさん達も好き好んで、この過酷な環境で暮らしているわけじゃないと僕は感じたんだ。だからローグさん達の集落を勧める事を考えていた。
その後、ガースさんの話も聞くと、彼等も出来れば狩りや農耕に適した空白地帯で暮らせるものなら暮らしたいらしい。ただ、それを出来ない理由があった。そう、蛮族の存在だ。
「なら、尚更のこと今だと思います」
僕は、空白地帯最大勢力にして最大の縄張りをもつ蛮族がほぼ壊滅した事を話した。
僕は、空白地帯には珍しいひと所に定住して狩りの他に、農耕や牧畜をして暮らす部族の事。そこを襲った蛮族を全滅に近いくらいに撃退した事。今の空白地帯は、未だ嘗てないくらい治安は安定していると伝え、ガースさん達部族の皆さんで相談して決めて欲しいと伝えた。
ローグさん達も人数が多い方が良いからね。
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