召喚術士は魔物と踊る

小狐丸

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フランが特殊個体に

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 朝起きて、朝食の時に宿泊の延長をマーサに告げ、取り敢えず6日分の銀貨3枚を払う。

 朝一で冒険者ギルドに出かけ、昨日と同じ薬草採取依頼を受けて村を出る。


「やっぱり群生地があると採取がはかどるな」

 南の森の手前から、少し森に入った辺りまでを探索して薬草の採取に励む。
 フランは、ムサシが薬草の採取をする間、警戒しながら時折、薬草を食べている。

「薬草って美味しいの?」

 ムサシも薬草を千切って食べてみる。

「……あ~っ、苦げぇ~。よく平気で食べれるな」

 薬草はそのままでは、とても苦かった。

 昨日よりも早く、薬草を確保出来たので、スライムでも狩に行く事にした。
 この世界に降り立った日、スライムがたくさん居た湿地帯へ向かう。



 フランがスライムに襲い掛かる。
 既にこの付近のスライムではフランの相手ではない。ムサシが手伝う事なくフランだけでスライムを狩って行く。
 倒したスライムのスライムコアを纏めてムサシの元に運んで来る。
 ムサシも投石でスライムを狩ながら、薬草が見つかれば採取して行く。

 スライムを狩っていると、フランの様子が少し変だと気付く。
 ムサシは、慌ててフランを鑑定する。



 NAME フラン(スライムG)
 AGE  0
 Lv   8→10
 HP   55/55→55
 MP   24/24→24
 STR  19→23
 AGR  19→23
 DEX  19→23
 INT  19→23
 MEN  19→23

 SKILL  溶解 吸収

 召喚者 ムサシ


 フランのレベルが、10に上がっているのを確認したムサシがフランをジッと見ていると、フランが光に包まれる。
 やがて光が収まった後に、少し白っぽくなったフランがその場に居た。
 ムサシはもう一度フランを鑑定する。


 NAME フラン(ヒールスライムF)
 AGE  0
 Lv   1
 HP   55/55
 MP   24/24
 STR  23
 AGR  23
 DEX  23
 INT  23
 MEN  23

 SKILL  溶解 吸収 回復魔法Lv.1

 召喚者 ムサシ


「ヒールスライム?」

 これが存在進化だと、召喚術士の感覚で理解するムサシだが、ヒールスライムがどういうスライムかは分からない。
 一般的によく見るスライムなのか、それとも特殊な個体なのか、ムサシはステータスの中のヒールスライムを鑑定してみる。

 ・ヒールスライム
  回復魔法を使うスライム。自然界にはほとんど存在しないレア個体。

 やっぱりムサシの感じた通りに、レアな個体だった。これはバレると不味いと感じるムサシだった。

 何故なら、この世界で回復魔法は大変貴重なスキルだ。教会関係者の中にも回復魔法を使える人材は少ない。

「うん、内緒にしておこう」

 そう結論づけた。



 その後もスライムを狩りながら、スライムコアを集めて行く。

 そろそろ村に帰ろうとした時、湿地帯を抜けた辺りで一角ウサギを見つける。

「フラン、あの一角ウサギは、俺に任せてくれないか?」

『……イ、イ、ヨ……』

 フランがムサシに譲ってあげると伝わって来たのだが、ボンヤリとした意思じゃなく、言葉を使いムサシとコミュニケーションをとり始めた。
 驚いたムサシだが、今は一角ウサギを狩る方が先だと自分に言い聞かせる。

 ゆっくりと慎重に一角ウサギとの距離を詰める。

 ムサシの右手にはナイフが握られている。

 ムサシは振りかぶり、ナイフを一角ウサギに向け投擲する。投擲スキルを取得してから、投石やナイフの投擲のコントロールと威力が上がったのを感じていたムサシは、一撃で仕留める自信があった。

 ナイフはムサシが思い描いた軌道で、一角ウサギの首に突き刺さり、声を上げる事を許さず絶命する。

 一角ウサギの首筋を切り、フランに血抜きを頼み、ムサシは自分のステータスを確認する。



 NAME ムサシ
 JOB  召喚術士
 AGE  15
 Lv   3→6
 HP   30/30→45(+11)
 MP   30/30→45(+5)
 STR  16→25(+5)
 AGR  16→25(+5)
 DEX  16→25(+5)
 INT  16→25(+5)
 MEN  16→25(+5)

 SKILL  投擲Lv.1→2 回復魔法Lv.1
      魔物との絆 鑑定Lv.1→2


 初日にスライムを倒して、その時ステータスを確認してから、一度も確認していなかったが、ムサシのレベルも3上がっていた。
 フランに比べてレベルアップのスピードが遅いのは、ムサシの職業が召喚術士というレア職業だからだ。

「回復魔法も覚えてる。これもフランのお陰か」

 ムサシは自分の指をナイフで傷つける。

「痛っ!」するとフランが何かをしたのを感じた。

「あっ!フランが治してくれたのか」

 ナイフで傷つけた痕が消え、完全に治っていた。

「フラン、ありがとうな。次は俺も魔法を練習したいから、俺に任せて」

 フランにそう言って、もう一度指をナイフで傷つける。
 回復魔法を使おうと意識すると、回復魔法レベル1のヒールが使える事を理解する。

「ヒール!」

 魔法が発動すると、ナイフで傷つけた傷口がキレイになくなる。

「うほぉ、魔法スゲェ」

 召喚も魔法なのだが、ムサシにとって魔法とはこちらのイメージなのだろう。

「俺もフランも回復魔法はたくさん使ってスキルレベルを上げないとな」

『……ウ、ン、……』

 魔法の実験も出来たし、一角ウサギも狩れたので、今日はもう村へ帰る事にしたムサシとフラン。
 薬草採取、スライムコア、一角ウサギと予想以上の稼ぎに、ムサシとフランは上機嫌で村への帰路についた。

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