イケメンヤンキーな鬼塚君は幽霊なんて怖くない!

みずき

文字の大きさ
22 / 28

22

しおりを挟む


「いえ、君を責めてる訳ではありません。ですが、君1人でやってもらわなきゃいけなくなりました」



(怖いとかそんなん言ってる場合じゃねぇな……)



「……俺は何をすれば良い?」


「あの幽霊を弱体化させたいです。それには封印の式を踏ませる必要があるので、君にはその式まで誘い込んでほしいです」


「誘き寄せるって事か?」


「ええ。手筈としては、まず校内で君の名前を大声で叫びます。名を知った彼女は恐らく物凄い勢いで君を追いかけてくるでしょう。ですので、捕まらないよう頑張って校庭まで走って来てください。その隙に俺が封印の式を書いておきます」


「……わ、わかった。走るのは得意だから任せろ」



 物凄い勢いで追いかけてくる女の子の幽霊を想像してしまった龍之介。

 顔面蒼白になりながらもグッと拳を握る。

 チグハグな行動が強がりだと誰が見てもわかっていたが、流風は何も言わない。



「……頼もしいですね、流石俺の相棒です」


「相棒ではない……」


「ですが気をつけてください。一般人で霊力の強い君が捕まったらどうなるか……」


「ど、どうなるんだよ」



 誤魔化すように笑顔のまま何も言わない流風だった。












(やべえ……嫌なこと思い出しちまった…)



 トイレの入り口の前でもう一度気持ちを落ち着かせる。


 ココを出たら、もう戻れない。
 でもいつまでもいる訳にもいかない。



 (何より、コイツを助けなければ)



 横にいる流風を見る。
 これから命を賭けた勝負が始まろうとしてるのに至って涼しい顔をしている。


 息を大きく吸って吐く。



「準備は良いですか? 反対側に走って、俺が式を描く時間を稼いでくださいね」


「ああ、わかってるよ」


「……開けます!」


 流風と一緒にトイレから飛び出す。
 そして叫ぶ。



「俺が!! 鬼塚龍之介だー!!!!」



 自分の中の恐怖をかき消すように大声で叫んだ。



(……来てる! 近くにいる!)



 タタタタッ


 軽い足音が段々と近づいてくる。


 逃げたいけど、いきなり逃げては誘導出来ない。姿を見せてから、一拍置いて、全速力で逃げなけれ……



「オニヅカクンンンンンンンンンん!!!!、ミツケタ! ミツケター! ミツケター!!!!!」


「ぅおわあぁあああぁあ!!!!!!!」



 一拍置くことなく弾かれるように龍之介が走り出す。女の子の幽霊は他に目もくれずに龍之介を追いかけて行った。


 その姿を影から見送ると、流風も反対側に駆けていく。



「グッドラックです、鬼塚君」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...