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第1章
第17話 ネズミの教え
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リアは低い唸り声に慌てて視線をオオカミに戻す。
「ネンコさん、どこ……」
リアは泣きそうな声で呟く。
その間にもオオカミはジリジリとリアに近づいている。
「こ、来ないで」
リアが情けない声を上げると同時にオオカミが跳びかかった。
リアの喉笛を的確に狙っての攻撃。
あまりの恐怖にとっさにリアは身を固くして目を閉じる。
「ちゃんと見ないとダメだぞ?」
少し困ったような、それでいて安心できる声がリアの耳元で響いた。
次いでオオカミの悲痛な声と何かが地面に落ちる音がした。
リアが目を開けると跳びかかったはずのオオカミは離れた場所に倒れていた。
だが、すぐに立ち上がり戦闘態勢を取る。
「怖がってたら攻撃は躱せないぞ」
ネンコは更に言葉を続ける。
「いつもの練習じゃオレの攻撃には当然、殺意はないからな。でも本当は違うだろ? 相手はお前を殺すつもりで攻撃してくるんだぞ。お前はその攻撃から生き延びないといけないんだぞ」
ネンコはこの場でリアを鍛えるつもりになのだろう。
そんなことを言うとまたリアの前からさっさといなくなってしまった。
(だったら、そう言ってからいなくなってよ!)
頭ではネンコの言葉を理解しながらも、リアは心のなかで毒づく。
そして、オオカミを見る。
オオカミは突然の反撃に警戒しているようで、リアとの距離を詰めることができないでいるようだった。
その隙に、リアは深く深呼吸して心を落ち着ける。
ネンコの言うようにどんな状況からも、どんな相手からも生き延びる術が今のリアには必要なのだ。
鍛錬を思い出し、短剣を構え直す。
ネンコと鍛錬を始めてまだ三日しか経っていないが、できることはあるはずだった。
オオカミも先ほどまでと違う雰囲気を感じたのか、更に体勢を低くして四肢に力を込める。
先に動いたのはオオカミだった。
というのもリアは自分から攻撃する術を知らないので動けなかっただけなのだが。
オオカミはリアの左へ回りこむように駆ける。
かなりの速さだが、ネンコほどではない。
リアの目はその攻撃を正確に捉えていた。
(避けれる!)
リアはそう判断すると、攻撃の軌道から外れるように右に軽くステップを踏んだ。
……はずだった。
恐怖で身体が思うように動いてはくれなかったのだ。
リアの足はもつれ、そのまま横倒しに転倒してしまった。
とっさに右手を地面につく。
急に倒れたことで結果的に攻撃をかわすことができたが、リアは尻もちを付いた格好になってしまった。
オオカミは瞬時に体勢を立て直し、倒れたままのリアに襲いかかった。
おそらくこのまま何もしなければ、さっきのようにネンコが割って入って助けてくれるだろう。
だが、それでは意味が無い。
リアはオオカミが倒れている自分に向かって飛びかかるという目を背けたくなる現実を勇気を振り絞って観察する。
すると、今の攻撃は自分の喉に、噛みつくことで行われようとしていることに気づいた。
リアにある考えが生まれ、短剣を両手に持ち変える。
そして、自分の喉とオオカミの直線上に突き出した。
その間もオオカミからは目を離すことはしない。
最後まで動きを読み、切っ先の位置を調整していく。
結果、オオカミは突き出された短剣に勢い良くぶつかる形となった。
その衝撃であやうく短剣を落としそうになったが両手に力を入れて必死に堪えた。
短剣はオオカミの左目に深々と突き刺さっていた。
リアは身体を仰けに倒して衝突を逃れ、体勢を戻す勢いを利用して短剣を引き抜いた。
オオカミは目から鮮血を吹き上げながら、リアの後方にもんどり打って倒れる。
(やった!)
リアは自分の攻撃に確かな手応えを感じていた。
倒れたオオカミの姿を確認すると、嬉しくなってネンコの姿を探す。
「ネンコさん、やったよ!」
しかし、ネンコの姿は見つからず、代わりにオオカミの大きく開いた口が目の前にあった。
リアが少し目を離した隙に最期の力を振り絞り噛み付いてきたのだ。
「あ……」
リアの美しい顔に生暖かい吐息がかかる。
リアは口を半開きのまま、まるで他人事のようにその様子を見つめていた。
「だから―――油断するなって言ったろ?」
その声と同時にリアの前から獣の姿は消え失せた。
先ほどと同様にネンコが殴りつけたのだ。
吹き飛ばされた身体は二、三度水しぶきをあげながら水面で跳ねたが、やがて沈んでいった。
「勝ったと思っても油断するんじゃないぞ? 追い詰められた奴は何してくるか分からないんだぞ」
いつの間にかリアの前にネンコが立っていた。
数頭いた残りのオオカミはネンコが仕留めたようだ。
口からだらしなく舌を出したオオカミの死骸が辺りに転がっている。
「まあ、でもよくやったな。素直に喜んでも……」
ネンコはリアを褒めようとしたのだが、最後まで言葉にすることはできなかった。
リアがネンコの姿を見て安心したのか、目からぽろぽろと涙を流し、大きな声を上げて泣き出してしまったからだ。
「な、泣くなよー」
ネンコはどうしていいか分からず、リアの前を右往左往する。
リアはすがるように両手でネンコを掴むと、そのままネンコの額に自分の頬を当てて泣き続けた。
ネンコは相変わらずの無表情だが、少し困った様子で泣きじゃくるリアの成すがままになっている。
リアは余程怖かったのだろう、しばらくの間そうしていたが、やがて相談なしに特訓を始めたネンコに腹を立てたのか、掴んでいたネンコをそのまま川に放り投げたのだった。
「ネンコさん、どこ……」
リアは泣きそうな声で呟く。
その間にもオオカミはジリジリとリアに近づいている。
「こ、来ないで」
リアが情けない声を上げると同時にオオカミが跳びかかった。
リアの喉笛を的確に狙っての攻撃。
あまりの恐怖にとっさにリアは身を固くして目を閉じる。
「ちゃんと見ないとダメだぞ?」
少し困ったような、それでいて安心できる声がリアの耳元で響いた。
次いでオオカミの悲痛な声と何かが地面に落ちる音がした。
リアが目を開けると跳びかかったはずのオオカミは離れた場所に倒れていた。
だが、すぐに立ち上がり戦闘態勢を取る。
「怖がってたら攻撃は躱せないぞ」
ネンコは更に言葉を続ける。
「いつもの練習じゃオレの攻撃には当然、殺意はないからな。でも本当は違うだろ? 相手はお前を殺すつもりで攻撃してくるんだぞ。お前はその攻撃から生き延びないといけないんだぞ」
ネンコはこの場でリアを鍛えるつもりになのだろう。
そんなことを言うとまたリアの前からさっさといなくなってしまった。
(だったら、そう言ってからいなくなってよ!)
頭ではネンコの言葉を理解しながらも、リアは心のなかで毒づく。
そして、オオカミを見る。
オオカミは突然の反撃に警戒しているようで、リアとの距離を詰めることができないでいるようだった。
その隙に、リアは深く深呼吸して心を落ち着ける。
ネンコの言うようにどんな状況からも、どんな相手からも生き延びる術が今のリアには必要なのだ。
鍛錬を思い出し、短剣を構え直す。
ネンコと鍛錬を始めてまだ三日しか経っていないが、できることはあるはずだった。
オオカミも先ほどまでと違う雰囲気を感じたのか、更に体勢を低くして四肢に力を込める。
先に動いたのはオオカミだった。
というのもリアは自分から攻撃する術を知らないので動けなかっただけなのだが。
オオカミはリアの左へ回りこむように駆ける。
かなりの速さだが、ネンコほどではない。
リアの目はその攻撃を正確に捉えていた。
(避けれる!)
リアはそう判断すると、攻撃の軌道から外れるように右に軽くステップを踏んだ。
……はずだった。
恐怖で身体が思うように動いてはくれなかったのだ。
リアの足はもつれ、そのまま横倒しに転倒してしまった。
とっさに右手を地面につく。
急に倒れたことで結果的に攻撃をかわすことができたが、リアは尻もちを付いた格好になってしまった。
オオカミは瞬時に体勢を立て直し、倒れたままのリアに襲いかかった。
おそらくこのまま何もしなければ、さっきのようにネンコが割って入って助けてくれるだろう。
だが、それでは意味が無い。
リアはオオカミが倒れている自分に向かって飛びかかるという目を背けたくなる現実を勇気を振り絞って観察する。
すると、今の攻撃は自分の喉に、噛みつくことで行われようとしていることに気づいた。
リアにある考えが生まれ、短剣を両手に持ち変える。
そして、自分の喉とオオカミの直線上に突き出した。
その間もオオカミからは目を離すことはしない。
最後まで動きを読み、切っ先の位置を調整していく。
結果、オオカミは突き出された短剣に勢い良くぶつかる形となった。
その衝撃であやうく短剣を落としそうになったが両手に力を入れて必死に堪えた。
短剣はオオカミの左目に深々と突き刺さっていた。
リアは身体を仰けに倒して衝突を逃れ、体勢を戻す勢いを利用して短剣を引き抜いた。
オオカミは目から鮮血を吹き上げながら、リアの後方にもんどり打って倒れる。
(やった!)
リアは自分の攻撃に確かな手応えを感じていた。
倒れたオオカミの姿を確認すると、嬉しくなってネンコの姿を探す。
「ネンコさん、やったよ!」
しかし、ネンコの姿は見つからず、代わりにオオカミの大きく開いた口が目の前にあった。
リアが少し目を離した隙に最期の力を振り絞り噛み付いてきたのだ。
「あ……」
リアの美しい顔に生暖かい吐息がかかる。
リアは口を半開きのまま、まるで他人事のようにその様子を見つめていた。
「だから―――油断するなって言ったろ?」
その声と同時にリアの前から獣の姿は消え失せた。
先ほどと同様にネンコが殴りつけたのだ。
吹き飛ばされた身体は二、三度水しぶきをあげながら水面で跳ねたが、やがて沈んでいった。
「勝ったと思っても油断するんじゃないぞ? 追い詰められた奴は何してくるか分からないんだぞ」
いつの間にかリアの前にネンコが立っていた。
数頭いた残りのオオカミはネンコが仕留めたようだ。
口からだらしなく舌を出したオオカミの死骸が辺りに転がっている。
「まあ、でもよくやったな。素直に喜んでも……」
ネンコはリアを褒めようとしたのだが、最後まで言葉にすることはできなかった。
リアがネンコの姿を見て安心したのか、目からぽろぽろと涙を流し、大きな声を上げて泣き出してしまったからだ。
「な、泣くなよー」
ネンコはどうしていいか分からず、リアの前を右往左往する。
リアはすがるように両手でネンコを掴むと、そのままネンコの額に自分の頬を当てて泣き続けた。
ネンコは相変わらずの無表情だが、少し困った様子で泣きじゃくるリアの成すがままになっている。
リアは余程怖かったのだろう、しばらくの間そうしていたが、やがて相談なしに特訓を始めたネンコに腹を立てたのか、掴んでいたネンコをそのまま川に放り投げたのだった。
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