104 / 180
覚醒編
37話 幼少期
しおりを挟む【北狐亜種 (シルバーフォックス)】の背に乗り
シオンは頭を掻きながら、バツの悪そうな顔で、地上に降りていく
そこには、4mを超える、猫型の使い魔の傍で
意識がない鈴を抱き抱える、蘭の姿があった
どれだけの涙を流したのだろう、その瞳は赤く充血し
目の周りは腫れ上り、化粧は落ちていた
蘭や、西神虎亜達が見守る中、シオンは道路に降り立った
人間と言う生き物は、知性があり、そのため常識と言うものが根付いている
だが、その常識を逸脱した出来事、想像すら出来ない、出来事とであうと
人間と言うものは、思考が停止し体は固まる
そう、今、蘭と、西神虎亜以外の人間は、その動き、その思考を止めていた
【北狐亜種 (シルバーフォックス)】の背から降りたシオンは
固まった男達を見回し、その驚いた表情を見て、シオンの口元が緩む
そして、調子にのって、他の人間の驚いた顔を見ようと、視線を泳がす
それは、油断であった、元よりお調子者のシオン
楽しいこと、面白い事となると、1秒前の事ですら忘れてしまう
そう、鳩が豆鉄砲食らった様な顔が、面白可笑しくて
今現在一番視線を合わせたく無い人物と、視線が合ってしまったのだ
そう、蘭と視線が合ってしまったのだ
それも、大きな火花を散らすように、バチバチっと
(いやん、これはもう、運命の出逢い
ビビッときてしまったわ、結婚してください・・・・・
なんて、言おうものなら、確実に潰される・・・・・な・・・)
今の今まで、他人の顔を見て、心の内で、大笑いしていたシオンだったが
その、引きつった唇は、えもいわれぬ恐怖で凍りつく
シオンと視線の合った蘭は、無言のまま、その真剣な視線を動かさず
ゆっくりと右手を上げ、シオンを手招きをした
その行動を目にした、紫音の体は、シオンの意思とは別に
全身に緊張が走り、身震いしたのだ
それが【しおん】だったなら、理解出来ただろう
だが、シオンは、自分の体感している事が、半ば理解できていなかった
シオン、その魂は約千年の時間を生きてきた
そして、ここ500年以上、その体が恐怖で凍りつく事も
何かに対して、緊張で身震いしたことはない
それが、神と対峙した時であろうと
魔王と言われる相手と、命を懸ける争いをした時であろうと
勇者と呼ばれる者に、負けた時であろうとだ
それが今、数百年ぶりに、えもいわれぬ感覚を体感する
そして、シオンの頭に在る言葉が浮かんでくる
【パブロフの犬】
そして、シオンは理解する
(すり込み・・・条件反射・・・か・・・・)
この世界で【しおん】として生まれて10年、色々な出来事があった
小さい頃から、すでに、その人間としての個を確立していた
それは3歳の時には、妹の面倒すら見ていた事から分かるだろう
だが、そうしなければ、ならない現状だったのだ
紫音と鈴が生まれてすぐ、その両親は育児放棄に近い状態であった
子供が出来ちゃったからと結婚した2人
それも初めての子供が、双子という
普通より手がかかり、時間を圧迫され、自分の時間が取れない2人
育児ノイローゼか、苛立ちか、徐々に、オカシクなる若き両親達
お腹がすいて、泣き叫ぼうが、放置する両親
いや、数日に一回しか家に帰らない2人の親
そんな両親を持つ子供が
何度も栄養失調となり死にそうになったのは
両親の【セイ】でなは無いだろう
機嫌が悪ければ叩いて黙らす両親
その矛先は、男の子である紫音に向けられる
いつしか、両親の顔色を伺い、兄妹で部屋の片隅で震えていたのは
両親の【セイ】では無い
その環境は、普通の家庭環境と比べれば
ほんのちょっと、悪かったのかもしれない
そして、いつしか、子供より自分、育児より、趣味・仕事をとるようになった2人
その中で、生きていく為に、双子の妹を守る為に
紫音は自身の確立をしなければいけなかったのだ
全ては両親の【セイ】でも、両親が悪いのではない
自分の事くらい自分で出来ない自分が悪いのだと
それこそが、紫音が紫音となった、始めの一歩だったのかもしれない
そして拙い知識を手に入れ、それを行える練習をした
そして、3歳になる頃、両親に向かって、ある提案を持ちかける
自分達の事は自分で出来ると
鈴の事は自分が付いていますと
自分も鈴も、2人の事が笑顔が好きだから
蘭さんも、お父さんも、したい事をしてくださいと
それは、両親に育児を放棄してくださいと
自分達の事は、ほっといてくださいと
遠まわしに言葉を操る、紫音の最大の抵抗
それは、どんな状況に置いても両親を大好きと言い続ける
鈴の心を、その両親を愛する想いを守るために
紫音が考え抜いた言葉だった
それからと言うもの
家族と言う鎖から解かれた両親は好き勝手に生きていく
だからこそ、良かったのかもしれない
育児という苦痛から開放された2人は、徐々に優しさを取り戻す
そして1年、2年と過ぎる頃には
昔の出来事は、嘘か幻かの如く、両親は子供を溺愛するようになる
鈴と両親が、まともに会話し、楽しい時間を過ごすのは週に数時間だが
それは、たまに遊びに来る、お爺さん、お婆さんみたいなものだ
無責任に可愛がり、遊び、甘やかす
そんな、歪 (いびつ)ではあるが、これが三千風 (みちかぜ)家の形となった
だが、紫音の記憶の片隅にある
幼年期に刻まれた
痛みと恐怖
それらは
確実に紫音の身体に刻まれていた
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる