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覚醒編
38話 その姿は・・・。
しおりを挟む紫音の目の前には
手招きをする
蘭の真剣な瞳
その身に突き刺さる様な視線
それは、紫音の身体に刻まれた
記憶さえ薄い過去の恐怖と痛みを思い出させるには十分であった
シオンは、背筋を汗で濡らし
今起こった事をどう説明しようかと頭をフル回転させる
そして、一歩、その足を進める
銃で撃たれた傷の回復
鈴を包んだ黒い渦
この世界に居ないであろう存在、羽の生えた小さなリル
使い魔として作り出した、2匹の獣
そして、10秒前には、ボロボロの消し炭となって
その生命活動を終わらしていた、紫音の自身
そして、傷一つない体で、生き返った事・・
本当の事を言っても、多分理解できないだろう
そして又、一歩、その足を進める
何をどう説明すれば良いのかと、考えを巡らし
又、一歩と・・・
何を聞かれても良いように、考えを巡らすが
最適な言葉が、説明が、何一つ浮かばないまま
気が付けば、額に汗を流し裸のまま
鈴を抱き抱える蘭の元まで、足を進め
その歩みを止める
シオンと目線が合ってから、一度も瞬 (まばた)きをせず
一切視線を外さなかった蘭
その蘭の右手が、シオンに向けて伸ばされる
その行動に、シオンは身を震わせ、目を閉じた
その瞬間、シオンは蘭に抱き寄せられた
それは、とでも暖かく、とても優しく
その力強さに母の愛を、その肌で感じる
蘭は両手に、鈴と紫音を抱き、静かに涙する
抱きしめられ、目を丸くし驚くシオンだったが
静かに目を閉じ、その身を蘭に委ねるのだった
シオン、その一番古い記憶
それは、10歳位の時に、草原で目を覚ました事から始まり
転生を繰り返し今に至る
それは、自身の母親の記憶が、両親の記憶が無い事を意味していたが
今、紫音の記憶を借りて
母親の温もりを、母の想いを、その身に感じていた
だが、それは、転生して記憶を融合したといっても
しおんの物で、シオンの物ではなかった
蘭さんにとっては、辛いかもしれないが
その説明もしなければならなかった
いや、それ以前に、今の現状を、先に進まさなければ成らなかった
それは、何時ここに、高速交通警察が来てもおかしくはなかった
それほどまでに、時間が経過していたのだ
シオンは蘭に抱き寄せられたまま、蘭の耳元で口ずさむ
「蘭さん、急がないと、警察が来る
いや・・十士族の緊急部隊が来る可能性も
急いで、この場を離れないと、捕まって・・いや、保護されても
この世界では説明出来ない事が、ありすぎるんだ
できれば、俺達の身分が、報告されていない、今なら誤魔化せる
他の人間が来るまでに、移動したい」
そう、井門の指示で、救助ヘリが呼ばれている事をシオンは聞いていた
その内容もである、重傷者2名、これは名前が出ていない以上、気にはしていなかった
だが、十士族関係者と言う、報告が上がった
それは、最悪、十士族の部隊が来る可能性を示唆していた
それを、理解した蘭は小声で
「・・・・・・・・わかった、でも、現状逃げ切れないぞ」
「大丈夫それは、こっちでどうにかするから
蘭さんは、鈴を車に、後は運転席でまってて」
そう伝え、蘭の腕を外し、裸のまま、その場に立ち上がる
蘭は、意識の無い鈴を抱き立ち上がる
なぜか、そこには、蔓延の笑顔の鈴の寝顔
微かに笑い、鈴の言葉を思い出す
「紫音がいるから大丈夫」
そう、まさしくその通りとなったと
何故だか、今の紫音は大きくみえた、まるで別人のように
いや、本当に紫音なのか・・・・・
そんな想いを抱えながら
周りの目線を気にせず、車まで歩き
鈴を後部座席に寝させると、運転席に乗り込み
紫音を待つ
紫音は周りを見渡し
右手を前にだし、指を鳴らそうとするが
・・・・・・・・・・・・・・
「チッ・・・・・・・発動すらしねえぇ・・・・・・
よかったな、お前ら、俺の魔力切れに救われたな」
ぶつぶつと、誰にも聞こえないだろう、小さな声で
何を誤魔化すように嘘をつく
それが誰に対してかは、わからない
そして、前に突き出した右手を下ろす
シオンは、目撃者を全て殺そうと
発動させようとした魔法を、その寸前で辞めたのだった
前世でのシオンなら、躊躇なく、殺していただろう
自分の家族に手を出したのだ、それくらいは当たり前だと
その反面、感謝もあったのだ
その始まりは何であれ、シオンは目覚めたのだ
そして、リルと出会えた、それは、いったいどれだけの奇跡だろうか
それには、ここにいる全員が居てこそである
一人でも欠けると、今に至らなかっただろうと考えると
自然に、魔法を下すその手が止まったのだ
そんな自分自身を、おもしろオカシク、鼻で笑い
「お前ら、見逃してやる、今日見たことは忘れろ
まぁ、誰も信じないだろうがな
ただ俺は、お前達を殺す事に罪悪感なんてないぞ
害虫を殺すように殺せる
ただ、今の俺は機嫌がいいから見逃すだけだ!
あぁ、それと、デブ、お前だ!」
シオンは、自分を見つめる、太った男、西神虎亜 (にしがみこあ)を指差す
「あの魔法は、お前には、この世界にも早すぎる
使いたいなら次元関干渉法則をきっちり学ぶべきだ
それか、まだまだ改良は必要だが、自身の干渉にだけ、使ってみろ
それだけで、個の戦闘力としては、人間最強クラスに踏み込める」
「ああ、俺様は天才だからな
何時しか、完璧なあの魔法を完成させる
その時は、もう一度、おまえに挑戦させろ」
虎亜は、既にシオンに殺気が無いのを理解していた
だからこその返答でもあったのだ
「ああ、だが、その魔法の完成と共に気がつくだろう
そこは、まだ、入口にしか立っていない事に
終わりない道に続いていることにな」
クスクスと笑いながら応えるシオン
少し離れた所で、意識を取り戻した、やまさんと呼ばれた男
その会話を耳にする
シオンの魔法で拘束され、意識が少し跳んでいた
そして、自分の力の位置付けに、歯を食いしばる
今朝まで自分の力が、1番だと思っていた
自分より強い人間は、師匠クラスの人物だと
そんな人間、そう居はしない、いても十士族の戦闘部隊の一部
そんな人間そうそう居るわけがない
だが、違った、3人掛りで、どうにか対等に戦えた、三千風蘭
何の魔法か分からないが、虎亜の魔法に手も足もできず
子供には、魔法で押さえつけられた
自分は何をしてきた、自分の力を振るいヤクザ紛いの事をして
毎日の用に街で遊びまくっていた
無駄にした
時間を無駄にした
上には上が居る、もっと力をつけなけれな
俺のプライドが許さない
とくに、あのブタに負けることだけは
誰よりも強い力を持ってやる
だけど・・今は、気を失ったふりを・・・
もし、シオンが、やまさんの近くにいたなら
狸寝入りをキメている、やまさんの頭を笑いながら踏んでいたところだろう
「最後に、お前、緯度経度
お前らの組織に伝えろ、蘭さんと交渉するのは構わない
その選択に、乗るか乗らないかは、蘭さん次第だからな
だが、これ以上蘭さんや、俺の家族を傷つける事があるなら
それは、この俺に敵対するとみなす
全ての物を失う覚悟で、手をだすんだな、と」
「わかった、伝えよう
だが、俺は今回のことで、首を切られるだろうし
今後、三千風先生と、交渉する事も、会うこともないだろう
そして、すまなかった
傷つける気は、無かったんだ
言うこと聞かない、バカ達と
暴走した、ガキの事は
俺が全責任をとる、本当にすまなかった」
そういい、井門圭人は
深々と頭を下げた
「ああ、それは、いい、いい
終わったことだし、気にしてない
あれは、あれで、色々と楽しかったからな
死んだ自分の姿は、久々に笑わしてもらった
ある意味では、お前達に感謝もしてるしな、きにするな」
右手を左右に軽く振り、ケラケラと笑いながら応えるシオン
「なんでだ?1度は、いや、2度死んだかもしれないんだぞ」
「ん?ああ、気持ちよく死んだよ
まぁそれも、あれだ
ん~~~~~と、あれだ
終わりよければ、全て笑いとばせ?
そんな所で、俺達は、お暇 (いとま)するよ
じゃぁな」
シオンは、右手を振り挨拶すると
蘭達が待つ車に振り返り、足をすすめた
ただ、その姿は、裸である。
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