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第1章・聖騎士
心
しおりを挟むシャルは人が動く気配で目を覚ました。
ん?・・・・・・あ3?
こんな夜中に・・・トイレ?
そんな雰囲気じゃないわね・・・
そこには、静かに外に出ていく、あ3がいた。
シャルは、追いかけるように、あ3の後を追う
だが、気づかれないように・・・細心の注意を払って。
外に出ると満天の星空に囲まれる。
元の世界では都会育ちだったシャル
そこには、夜でさえ消えることのないネオンの光
星空など見たことがなかった。
初めて見る本物の星空
見とれるように見上げ
新鮮な空気を肺に送り込んでいく
こみ上げる間隔、全身の神経が異世界の感覚を取り込んでいく
鳥肌が出ると同時に震えるような間隔
「本当に・・・・LAWに・・・・
この・・・カラダの震え・・・・
恐怖?・・・・怖いのか?・・・
いや・・・嬉しいのか?・・・・・・」
こみ上げてくる感情に、心が追いつかない、シャル
「先に、この世界に来た、あいつらは・・・
何を思い・・・感じたんだ・・・・
ゲームに取り込まれた事を恐怖したのか?
それとも・・・・・・
・・・・・
そうだよね・・喜んだに違いないわ・・・
あいつらは、私同様・・・人間をやめた廃人ども
この力を・・・ヴァーチャルゲームではない
リアルに感じる、このパワーを、魔法という奇跡の力を
喜ばないハズがないわよね・・・
そう・・・私は喜んでいるんだわ
あのクソみたいな世界から抜け出せた事に・・・・」
シャルは、【L・A・W】の世界を全身で感じ
一人物思いにふける。
それは、この世界に来てからずっと
不安を取り除くように、明るく振舞ってきたのだが
夜になり、毛布にくるまり
一人自分を見つめる事で
より積もる不安と恐怖・・・・。
喜怒哀楽・・・そんなものではなかった
何十と言う感情が混ざり合い
シャルの心は崩壊寸前だったかもしれない。
一人だったら、泣いて喚いて取り乱していたかもしれない
きっと、元の世界の彼女なら、確実にそうなっていただろう。
だけど、今の彼女は、シャルロットである。
ゲームの中では、一度も泣き言を言ったことすらない
所属している、ギルドでは、サブマス(副ギルドマスター)を務める
愉快な姐御であるシャルが、弱みを見せることはない。
そして、レベル100のシャルとって
各国の王都に行くのに時間など掛かりはしない。
だが、頭の整理と、心の準備に時間が欲しかった
だからこそ、時間をかけて行こうと決めたのだ。
それでも、1人では、心を保てるか不安だったシャルは
あ3を連れてきたのだ。
誰かが側に居れば、私は感情にとらわれず冷静でいられると
怯え恐れ崩壊する心をつなぎとめれると
無意識でその決断を下し
無理やり目の前の存在を連れ出した。
それは、あ3でなくても良かった。
ただ、その時目の前にいたのが、あ3だっただけである。
そして、あ3はその役割を十分に果たしていた。
そう、あ3の前では
シャルは聖騎士だった。
理想を負い続け、そう作り上げた存在
そして、長い時間演じ続けてきた、シャルロットその人だった。
心地よい風と共に
ジャラ~~ン、と聞こえてくるギターの音色。
視線の先には、あ3が居た
脇に抱えていたのは、小さめのギター。
それは、スピーカー付きの小型のエレキギター
色は白で統一されてはいたが
ギターの中央のスピーカーだと思われ場所と
ギター本体にかけて、青い鳥が翼を開いたようなイラストが描かれていた。
ゆっくりなテンポで演奏が始まった。
それは、シャルが知っている曲だった
そして、歌が・・・・あ3が歌うその声に
シャルは、涙した。
世界に響き渡るその声は
とても力強く、綺麗で、透き通るほどの音色。
その言い表せない声の・・・歌の力。
シャルの抱える思いも雑念も全てを吹き飛ばされた。
残った感情は感動。
ただずっと歌を聞いていたいと思える程に・・・・。
シャルの心に静けさが戻る。
シャルはログハウスから出た場所で
風に身を任せ、全身に月明かりを感じながら
静かに目をつぶり、あ3の歌に耳を傾けるのだった。
そして、30分ほどで、至福の時間は終わりをつげた。
それはシャルが、時間を忘れるほど
聞き入っていた証拠でもあり
あ3の歌に心を奪われていた時間であった。
シャルは、頬に伝う涙の後を拭うと
あ3に、惜しみもない拍手を送るのだった。
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