1 / 25
カローナ
しおりを挟む
それが村の名前だと、僕はわからなかった。なぜなら、日本の行ったことのある町の話を、彼としていたからだ。
ベッドの中で、彼はその村への行き方について話してくれた。徒歩でバス停に行き、三つ先のバス停で私鉄の駅へと向かい、各駅停車の電車で東へ三つ、快速電車で西へ五つ戻り、そこから長距離バスに乗って、一つ目のサービスエリアで降りて、山の方へ歩いて向かうと、途中で村人が車に乗せてくれて、寝ている間にカローナに行き着く。
「嘘みたいだけど、そうなんだ」
彼は声を出さずに笑い、そろそろ切りたくなっていた僕の髪を撫でた。
「変なの」
「そうだろ。だから一度しか行ったことがない」
「どんなところだった?」
「朝顔が咲き乱れていた」
「変なの」
彼はそれから煙草を吸い、僕も半分もらった。
吸い終わる頃には、彼は筋肉を纏うように服を着ていて、リュックを背負っていた。
「また来る?」
僕はまだベッドに入ったまま、彼の体を眺めて言った。
「来るかもしれない」
「じゃあ僕の名前、教えようか?」
「なんて名前?」
「カローナ」
「いい名前だな」
「誰かに話す?」
「話すかもしれない」
「じゃあ、行き方はカローナと一緒にしといて」
「わかった」
「じゃあ、また」
「またな」
そうやって彼は礼儀正しくドアから出て行き、二度とやってくることはなかった。
僕がカローナに行き着くことがないように。
ベッドの中で、彼はその村への行き方について話してくれた。徒歩でバス停に行き、三つ先のバス停で私鉄の駅へと向かい、各駅停車の電車で東へ三つ、快速電車で西へ五つ戻り、そこから長距離バスに乗って、一つ目のサービスエリアで降りて、山の方へ歩いて向かうと、途中で村人が車に乗せてくれて、寝ている間にカローナに行き着く。
「嘘みたいだけど、そうなんだ」
彼は声を出さずに笑い、そろそろ切りたくなっていた僕の髪を撫でた。
「変なの」
「そうだろ。だから一度しか行ったことがない」
「どんなところだった?」
「朝顔が咲き乱れていた」
「変なの」
彼はそれから煙草を吸い、僕も半分もらった。
吸い終わる頃には、彼は筋肉を纏うように服を着ていて、リュックを背負っていた。
「また来る?」
僕はまだベッドに入ったまま、彼の体を眺めて言った。
「来るかもしれない」
「じゃあ僕の名前、教えようか?」
「なんて名前?」
「カローナ」
「いい名前だな」
「誰かに話す?」
「話すかもしれない」
「じゃあ、行き方はカローナと一緒にしといて」
「わかった」
「じゃあ、また」
「またな」
そうやって彼は礼儀正しくドアから出て行き、二度とやってくることはなかった。
僕がカローナに行き着くことがないように。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
後の祭り
ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる