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古い公園の三枚の絵より
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旅行に行ってきたと、友だちは言った。えへへと笑い、俺からの質問を待っていた。どこに行って、何をしたのか。そんなものを。
彼は年下の二三歳のフリーターで、給料日前になると理由をつけて俺と会いたがった。目的は一つで、ごはんにありつきたいのだ。おそらく彼は、ここ数日、整然とした食にはありつけていない。ご飯があり、味噌汁があり、主菜と副菜があり、漬物やカットされた果物もついている。それらが全ておぼんの上に、もしくはテーブルの上に並べられている。そんな食に。ただ、金があるときも、そんな美しいものを食べているかは知らない。想像するに食べていない。カップラーメンや牛丼を食べている姿がありありと目に浮かぶ。たまに食べるからこそ、美味しいものを彼は毎回食べている。
「ここに行ってきたんですよ」
業を煮やしたのか、彼の方から行き先を告げてきた。そして、カバンから三枚の絵葉書のようなものを出してきた。
「見てください。公園ですよ、公園」
「公園?」
俺はその絵葉書を一枚手に取って見た。鬱蒼と茂った草の向こうに建物がある。茶色い建物で、縦長のアーチ窓が三つ並んでいた。
なんとなく絵葉書を裏返した。そこには何も書いていなかった。絵葉書ではないのかもしれない。
他の二枚も同じだった。裏(もしくは表)は白いだけだった。
「公園って、どこにでもあるだろ。なんで、公園に旅行に行ったんだ」
「駅前で、その絵を描いている人がいたんですよ。赤くて深い帽子をかぶった、おばさんなんですけどね」
「駅前? 駅前にこんな公園あったか?」
「ないです」
「じゃあ、これはどこの公園?」
「わかりません」
「わからない?」
俺はもう一度、絵を見た。場所の手掛かりになるようなものはなかった。
「実は、その絵の裏に自分の名前を書くと、その公園に行けるんです」
「どういうこと?」
「わかりません。とにかく、そこに名前を書いたら行き着くんです」
俺はその絵を彼の方へ追いやった。
「意味がわからないし、もしそれが本当だとしたら気味が悪い」
「でも、すてきな公園でしたよ?」
「別に公園に行きたい気分でもないからなあ。でも、どうやって戻ってきたんだ? 場所もわからない公園から」
「知らないうちにです。お腹が空いて、彷徨ってたら、家に着きました」
「酔っ払いか」
「違いますよ。本当なんです」
彼はそう言って、また絵を俺に渡してきた。俺は仕方なく手に取り、テーブルに置いてあったアンケート用紙のためのペンで、白紙の方に名前を書いた。
「自分も書こ」
そう言って、彼も名前を書いた。
店を出ると、外はもう暗くなっていた。
「ごちそうさまです」と彼は頭を下げた。
「いいよ」と俺は言った。
「じゃあ、歩いて公園に行きますか。この前は二十分くらいで着きました」
「そうか。でも、ちょっとコンビニに行くから、先に行っといて」
「え? そうですか? じゃあ、先に行きますね」
彼はまた頭を下げて、夜の道を歩き始めた。そして、外灯のある角を曲がって消えた。
俺はコンビニへ行き、タバコと切手を買った。
絵の裏には、名前と住所を書いていた。俺はそこに切手を貼り、帰宅路の途中にあるポストに入れた。
後日、それはきちんと俺宛に届いた。絵に変わったところはなかった。
変わったといえば、給料日前になっても、彼から連絡が来ることがなくなった。それについて、少し気味が悪いと思ったが、別に無くして困る友人ではなかったし、どこかに消えたんだろうと思っただけだった。
むしろ整然とした、と言えばいいのだろうか。
彼は年下の二三歳のフリーターで、給料日前になると理由をつけて俺と会いたがった。目的は一つで、ごはんにありつきたいのだ。おそらく彼は、ここ数日、整然とした食にはありつけていない。ご飯があり、味噌汁があり、主菜と副菜があり、漬物やカットされた果物もついている。それらが全ておぼんの上に、もしくはテーブルの上に並べられている。そんな食に。ただ、金があるときも、そんな美しいものを食べているかは知らない。想像するに食べていない。カップラーメンや牛丼を食べている姿がありありと目に浮かぶ。たまに食べるからこそ、美味しいものを彼は毎回食べている。
「ここに行ってきたんですよ」
業を煮やしたのか、彼の方から行き先を告げてきた。そして、カバンから三枚の絵葉書のようなものを出してきた。
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「公園って、どこにでもあるだろ。なんで、公園に旅行に行ったんだ」
「駅前で、その絵を描いている人がいたんですよ。赤くて深い帽子をかぶった、おばさんなんですけどね」
「駅前? 駅前にこんな公園あったか?」
「ないです」
「じゃあ、これはどこの公園?」
「わかりません」
「わからない?」
俺はもう一度、絵を見た。場所の手掛かりになるようなものはなかった。
「実は、その絵の裏に自分の名前を書くと、その公園に行けるんです」
「どういうこと?」
「わかりません。とにかく、そこに名前を書いたら行き着くんです」
俺はその絵を彼の方へ追いやった。
「意味がわからないし、もしそれが本当だとしたら気味が悪い」
「でも、すてきな公園でしたよ?」
「別に公園に行きたい気分でもないからなあ。でも、どうやって戻ってきたんだ? 場所もわからない公園から」
「知らないうちにです。お腹が空いて、彷徨ってたら、家に着きました」
「酔っ払いか」
「違いますよ。本当なんです」
彼はそう言って、また絵を俺に渡してきた。俺は仕方なく手に取り、テーブルに置いてあったアンケート用紙のためのペンで、白紙の方に名前を書いた。
「自分も書こ」
そう言って、彼も名前を書いた。
店を出ると、外はもう暗くなっていた。
「ごちそうさまです」と彼は頭を下げた。
「いいよ」と俺は言った。
「じゃあ、歩いて公園に行きますか。この前は二十分くらいで着きました」
「そうか。でも、ちょっとコンビニに行くから、先に行っといて」
「え? そうですか? じゃあ、先に行きますね」
彼はまた頭を下げて、夜の道を歩き始めた。そして、外灯のある角を曲がって消えた。
俺はコンビニへ行き、タバコと切手を買った。
絵の裏には、名前と住所を書いていた。俺はそこに切手を貼り、帰宅路の途中にあるポストに入れた。
後日、それはきちんと俺宛に届いた。絵に変わったところはなかった。
変わったといえば、給料日前になっても、彼から連絡が来ることがなくなった。それについて、少し気味が悪いと思ったが、別に無くして困る友人ではなかったし、どこかに消えたんだろうと思っただけだった。
むしろ整然とした、と言えばいいのだろうか。
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