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カーサ・カムッツィ
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その洋館は、家の裏手にあった。
元々は外国人が住んでいて、何組かの日本人の手に渡り、今は空き家になっている。門には不動産屋の看板が括り付けられているが、買い手が見つかる様子はない。不動産屋が客を連れてくることもない。小学生が幽霊屋敷の代わりに見に来ることが度々あるが、中に入るやんちゃな奴らは、この近辺にはいない。不良グループが不法侵入することもなければ、壁に落書きすることもない。間取りはインターネットで見れるし、価格も確認できる。
そう言うと、誰もが興味を無くした。
ただ、彼女は違った。
彼女は僕の恋人で、同じ高校の小柄な女子だった。元卓球部で、いじめの主犯格にされて退部した。先生たちとの話し合いの結果だった。真実は違う。いじめはでっちあげで、単純に嫌われていた彼女への嫌がらせだった。そのことが先生たちに伝わると、彼らは平謝りで彼女に部活への復帰を勧めてきたらしい。彼女に嫌がらせした何人かは部活に残っているのにも関わらず。もちろん復帰なんてしなかった。
でも、彼女にも全く問題がなかったのかと言えば、唸って考えてしまう。彼女は個人主義なところがあった。人と付き合うのが上手いとは言えなかったから、嫌われる理由なんていくらでも考えられた。
例えば、遅刻魔だし、部屋はちらかっているし、私服はジャージだし、子どものように質問してくるし、好き嫌いは多いし、口が悪いときがあるし、ピロートークでは屁をこいて笑うこともかった。そして、そんな中身に関わらず、かなりの美少女だった。
ぱっと見、名士のところのお嬢様で、小町のようにも見える。
そんな彼女と付き合えたのは、ただ単に僕の顔が整っていたからだと思う。実際、彼女は『顔が好き』『顔がいいよね』とよく言っている。自分で言うのもなんだが、その通りだと思う。自惚れていた時期もあった。その自惚れは、年上の女性にフラれときに破壊された。その女性は『顔はいいけどね』と言った。確かに、僕はそれだけが取り柄で、それだけを見せびらかしていた気がする。僕の心と顔は、それ以来、自粛している。
「ハンサムだね」彼女はその日、教室の一番後ろの隅にいた僕にそう言った。
僕は彼女を一瞥もせずに、文庫本の数行を読んだ。
Zにずらす視界の隅で、彼女が隣の席に座った。
「付き合おうよ」
「何が?」
僕は思わず文字から目を離し、彼女の方を見た。美少女がそこにいた。
「私たちお似合いの見た目してるよ。そう思わない? もしかして視力悪い? 鏡、見たことある? それともブスが好み?」
可愛い。しかし、それ以上に、この型破りな女子は何なのだろうと思った。漫画の読み過ぎか、アニメの見過ぎか、思春期特有の病が治っていないのかと怖くなった。それでも、それを凌駕するほどの可愛さだった。付き合ってみたら意外と常識人なのかもしれない。そんな自己中心的な期待が心に湧いてきた。
「……とりあえず、一ヶ月間」
僕が興味に唆されて呟くと、彼女は頷いた。
「美人は三日で飽きるらしいけど、ハンサムはどうなんだろうね」
それが彼女の返事だった。
僕は彼女のことをほとんど知らなかった。別のクラスだったのもそうだし、誰これが可愛いという情報はあまり入ってこなかった。もちろん可愛い子がいるという噂はいくつか知っていた。ただ、そのためだけに他所のクラスを覗くことはしなかった。同年代には興味がなかったのも理由の一つかもしれない。加えて、僕もそんなに好かれていた方ではない。親しい友人はいなかったから、休み時間に誰かが話しにくることがない。たぶん、入学当初のことが原因だ。とある女子がやってきて、僕が読書中にも関わらず延々と話かけてきた。それとなく邪険にすると、翌日にはその女子の彼氏とやらが僕の名前を大声で叫びながらやってきた。そして、胸ぐらを掴んできた。『ちょっと顔がいいからって調子に乗んなよ』と彼は言った。呆れて物が言えなかった。それを臆したと見たのか彼は満足そうに帰っていった。あいつは顔だけだな、とクラスメイトに思われた気もする。反論をしたかったが、その機会はなかった。つくる気もしなかった。愚痴を言う相手もいなかったし、次第にどうでもよくなった。
数少ない中学の頃の友だちは別の高校に行っていて、僕は一人でここにいた。高校デビューとは逆の、入学後すぐの高校引退だった。
だから彼女について、例えば卓球部にいたことや、そのいざこざの云々は付き合ってから知った。大変だったね、と言うと『そんなこと初めて言われた』と喜んでいた。
彼女とは、ほとんど僕の家で過ごした。両親が共働きで、朝から晩まで帰ってこないことが多かったし、ゲームや漫画や映画やら小説やらパソコンやら、娯楽は多かったから彼女が入り浸った。田舎の一軒家には珍しく、地下もあった。地下室があると言うと、彼女は目を輝かせた。そこにはビリヤード台が置いてあった。
「ビリヤード」と彼女はそう言って、台に触れた。
彼女を地下室に初めて連れていったときだった。
「卓球台はないよ」
「卓球? どうでもいい。それより何で地下があるの?」
僕は肩をすくめた。
「意外と天井高いんだね。あ、この場合、床が低いねって言うべきかな」
「そうかもね。意外と深いところにあるかも」
「シェルター? あ、防空壕かな?」
「そんなに古い家じゃない」
「裏手に洋館があったよね」
「あるよ。買い手が全然見つからない洋館ね。たまに小学生が幽霊屋敷にしようと見にくるくらいで、大した噂はないよ。不良グループも来ない。落書きもない。最初は外国人の夫婦、それから何組かの日本人の夫婦かカップルが住んで、今は空き家。間取りはネットにあるけど、変なところはない。数千万円で売られている。事故も事件も起きていない」
「饒舌だね」
「言い慣れているだけだよ。聞かれることがあったから」
「洋館の間取り覚えてる?」
「覚えてるよ。三階建で、屋根裏部屋がある」
「地下室は?」
彼女の大きな眼は僕を真っ直ぐ貫いていた。
「あるよ」
「何で言い淀んだの?」
「別に言い淀んでないよ」
「ふうん」
「ビリヤードしないなら、上に戻ろう」
「そうだね。なんか寒いし」と彼女は言いながらも、ペタペタと壁を触っていた。
「手が汚れるよ」
「平気、平気」
「その手で本は読まないでね」
「わかってる、わかってる」
部屋に戻ると彼女はパソコンを立ち上げて、洋館の間取りを調べていた。僕はその姿を見ながら、うとうとして、いつの間にかベッドで寝てしまっていた。
目が覚めると、窓の外はだいぶ暗くなっていた。置き時計を見ると十八時になっていた。
空気には温かさと甘い香りがあった。それは添い寝をしていた彼女からだった。僕の近くで小柄な彼女がさらに小さくなって丸まっている。僕は体を動かし、向かい合わせになって、頭を撫でてみた。
彼女が目を開ける。その瞬間が見えた。
「お父さんとお母さんは、何の仕事してるの?」
開口一番、そう言った。彼女は僕の胸あたりを見ていた。
「僕の?」
「そう」
「何で?」
「気になって」
「普通の会社員だよ」
「業種は?」
「何でそこまで?」
「いいから」
「不動産」
「何を隠してるの?」
「何も隠してないよ」
「豪奢な洋館とはいえ中古。そして、ただの平地広がる田舎。でも、あんなに高く売られている。なんで?」
「もう遅いから帰りなよ。駅まで送っていくよ」
「私は大丈夫」彼女がむくりと起き上がった。「タバコ吸っていい?」
「未成年だろ。だめだよ。とくに部屋で吸うのはだめ」
「地下室では?」
「だめだよ」
「実はもう吸ってきた。あそこには風の流れがあった」
「吸うなよ。それに、換気口くらいあるよ。壁見た?」
「天井は見たことある?」
「そりゃあるよ」
「どこまで見た?」
どこまで?
「そりゃ、漠然とは見たことあるよ」
「じゃあ、ダメだ。ねえ、知ってること教えて。私に話してないこと」
「例えば?」
「洋館で殺人事件が起きたことや、ここの地下とあっちの地下が繋がっていることや、あなたに、両親がいないこととか」
「殺人事件なんて起きてないし、繋がってないし、両親はいる」
「もっと具体的に反論して」
この小柄な探偵をどうしようかと、僕は息を吐いた。
「今、『この美少女探偵をうまく処理しなくてはいけない』と思ったでしょ?」
「思ってない。まず、殺人事件なんて起きてない。そんなニュース、新聞にもネットにも載っていない。実際、起きてない。洋館には何組かの夫婦とカップルが住んで、出て行っただけだよ。最初の夫婦は外国人」
「洋館って誰が建てたの?」
「外国人」
「この家はいつ建ったの?」
「僕が生まれる前だよ」
「洋館とこの家、どっちが先に建ったの?」
僕は首を振った。
「聞いたことない。でも、物心付く頃には洋館はあったから、洋館が後に建ったということはないよ」
「洋館に住んでいた外国人に会ったことはある?」
「あるよ。その後の夫婦やカップルにも会ったことがある。別に普通の人たちだったよ」
「そっか。外国人は、どこの国の人?」
「アメリカ人だよ」
「わかった。じゃあ、地下室に行こう」
「何しに? もう帰った方がいいよ」
「ねえ、本当に外国人は洋館に住んでないのよね?」
「そうだよ」
僕は彼女に手を取られ、ベッドから立ち上がった。
「ちょっと」
「いいから」
彼女はまるで自分の家かのように、僕を地下室へと連れていった。
地下室は、昼間よりさらにひんやりとした空気が満ちていた。電気をつけても、それは少しも変わらなかった。ビリヤード台も、その上にある球も動いていない。ただ、キューだけがいつもと違う場所にあった。
「それで?」と僕は言った。
「それで?」と彼女も言って、僕の手を離した。「私、発見したのよ」
「何を?」
「見てて」
彼女はそう言って、キューを手に取った。そして、ローファーを脱ぎ、ビリヤード台に乗った。
「ここ」
彼女はキューで天井をぐっと押した。壁の方でガチャリと音がした。
音の方を振り返ると、壁が忍者屋敷のように少し回転していた。手が僅かに入るくらいの隙間が見える。その奥は暗い。
「どう?」
僕は壁に移動した。風の流れを顔に感じる。
「……これはなに?」
「私が知りたい。……もしかして、知らなかったの?」
「知らない」
「ほんとに?」
「知らない」
「なんで?」
「なんでって……。わからない」
彼女は頷いた。
「それは嘘じゃなさそうだね」
「別に嘘なんてついてない」
「そうだね。嘘はついてない。ほんとのことを言わないだけで」
僕は手で壁をさらに回転させて、隙間を広げた。人が通れる広さの通路があった。
「あなたはね、嘘はつかないけど、真実を隠すのは下手」
彼女はビリヤード台から降りて、ローファーを履いていた。
「どういうこと?」
「言い訳が癖になってる。結果について、何々だからっていう考え方をいちいちしてるでしょ。だから話し方がぎこちない」
「ぎこちないかな?」
「まあ、それだけじゃないよね。母国語は日本語じゃないものね」
「どうしてそう思う?」
「勘」
「勘?」
「直感。シックスセンス」
「嘘でしょ」
「強いていうなら、初めて会ったとき海外の小説をペーパーブックで読んでいたこと」
「ブックカバーしてたし、中は見せてなかったと思うんだけど」
「目線が縦じゃなくて、横に動いてた。ちゃんと思い返してみて」
「……それだけ?」
「そう。あとは、あなたの両親を見たことないのも」
「帰ってくるのが遅いからね」
「本当に帰ってくるのか怪しいね。だってもう十時だよ?」
「いや、まだ六時だ。時計はきちんと見た」
彼女は携帯電話のディスプレイをこちらに向けた。そこには22:07とあった。
「置き時計はね、私が時間をずらしたの」
「なんで?」
「もし十時だったら、必死に私を帰らせようとするでしょ?」
「そうだよ。……そして、今も帰らせたい。親が心配してるだろ」
「大丈夫。放任主義だから。というか、私の家、破綻してるから。そっちも?」
僕は首を振った。彼女が悲しげなスマイルを見せている。それを見て、僕は美少女名探偵の推理に応えることにした。
「……実は、僕の親はアメリカにいる。アメリカ人だよ。洋館は両親のもので、売りに出しているのは間違いないけど、値下げするつもりはない。思い出があるから、本当に必要な人にしか売らないってさ。今まで住んでいた夫婦やカップルは知り合いで、借りてただけ。長い旅行みたいなもんだよ」
「なんで、洋館に住んでないの?」
「ぼろいから」
「それだけ?」
「それだけだよ。あとは、広過ぎて持て余すから」
「ほんとに? 読者はもっと知りたがっているよ」
「読者?」
「これが物語だとしたら、読者はいるでしょ?」
「メタ発言みたいなこと言うなよ。……それに、視聴者の可能性もある」
「じゃあ、ベッドの上のアレコレも見られてるね」
「そうだな。豪快な屁もな」
「とにかく、私はもっと知りたい」
「僕はある意味、外国人だ。でも、日本人でもある。母親が元日本人だからね。そして、父親は日系アメリカ人」
「ハンサムな日系アメリカ人」
「そう。その部類に入る。僕はここに中学生の頃から住んでる。必要なときに親は来るけど、ビジネスは向こうでやってるから、ほとんど来ない。田舎の一人暮らしだよ。もちろん仕送りはたんまりもらってる」
「そして、美人の恋人がいる」
「そうだね」と僕は笑って頷いた。
「尚且つ、その恋人は聡明で、直感力に優れている。欠点は背が低いこと。そして、家庭に問題を抱えていること」
「どんな?」
「知りたい?」
「知りたい。きっと読者もそう思ってる」と言いながら僕は馬鹿馬鹿しくなった。その代わりに本音を言った。「心配だよ」
「ネグレクト。二人とも仕事して、遊んで、恋人と出かけてる。私のことは放っておいて」
「大丈夫?」
「半分は大丈夫。学費とちょっとしたお小遣いはね。それ以外はなんとかしてる。卓球だって、まあ、辞めるきっかけ探してたのかもしれない。お金かかるし」
「……離婚はしてないの?」
「仮面でも、夫婦でいることが得になることがあるんだよ。そういう意味ではお似合いのパートナーだね。悪い大人で、最低の親だけど」
「ご飯はちゃんと食べてる?」
「なんとかね。それに、遅く帰った方がいろいろと安いでしょ?」
「確かに。……でも、今日は遅すぎるから、何か食べていきなよ」
「その前に」と彼女は言って、壁の方を指差した。「これよ」
「そうだね。隠し扉」
「これのために帰らなかったんだから。で、なんであるの?」
「本当に僕は知らない。よく見つけたなと感心してる」
僕は壁の方をもう一度振り返った。細長い暗闇が手招きしているようだった。
「ねぇ、この話に作者がいるとしたなら、下手くそな奴よね」
「またメタ発言か」
「その発言こそメタよ。とにかく、彼か彼女か神様か、運命でもいい。この話はとにかく下手。こんな美少女と顔のいい男を世界に登場させておいて十六年も何も起こさなかったんだから。そして、ようやくの隠し扉。これで何もなかったとかだったら許さない」
「許さないって、どうするんだよ」
「さあ。芸能界で暴れまくる?」
「それはそれで、ストーリーになるんじゃない?」
「だめ。お互い向いて無さすぎる。とにかく許さない」
彼女は隠し扉に手を置き、それから隙間に手を入れて回した。光が差し、階段が下に続いているのがわかる。
「まだ下に何かあるんだね。……洋館の地下室も深いの?」
「覚えてない。でも、こんなに深かったかな?」
「先に行って」
「僕が?」
「だいたいそうでしょ?」
「だいたいって……」
僕は納得しないまま、しかし、言う通りに中に入った。しばらくすると彼女が上着を掴んできた。甘い香りも漂ってきた。
「携帯、部屋に忘れた。ライト点けてくれる?」
そう言うと後ろから光が差した。階段の底はまだ見えない。
数段おりると、不安になり、振り返った。
「なに?」
「いや、回転扉が勝手に閉まらないか不安で。一人残った方がいいんじゃないかな」
「大丈夫。キュー挟んできた」
「さすがだ」
三十秒も降りただろうか。その先に鉄扉があった。取っ手はない。
「開けて」
逡巡していた気持ちは、その言葉で消えた。
鉄扉を押すと、そこに暗闇が現れた。それは、びっしりと詰まった暗闇で気持ちのいいものではなかった。まるで虫が全体に這っているような。それでも彼女は進みたがった。
「ちょっと、待って」
「早く」
僕は彼女に押され、僕は彼女を掴み、僕らはその暗闇に吸い込まれていった。
そして、僕らは事件に巻き込まれることになる。見知らぬ場所に僕らは迷い込み、見知らぬ人たちの殺人事件に遭遇した。しかし、この話には関係がない。
ちなみに事件現場には、一枚の絵が飾られていた。洋館の絵で、その下に『カムッツィ』とあった。事件には関係ないが、よく覚えている。
「何考えてんの?」
彼女の顔が視界に入り、長くなった髪の毛が僕の顔に垂れてきた。
「別に」とベッドで横になっていた僕は、思い出に蓋をした。話すことは、特にない。
それにしてもだ。もし、この物語に作者がいるのならば、酷い作者だ。
読者や視聴者がいたのならば、きっとそう思うだろう。
「パイロット版だ」
「何が?」
「何も起きない人生は、ただのパイロット版で、いつか何かが必ず起こるってことだよ。ミステリか、ファンタジーか、SFか、コメディか、純文学か、それはわからないけど。もしくは、もう起こっている最中かも」
「寝ぼけてるの? 私の顔をじっくり見て、目を覚ましてよ。……どう? 目を逸らしたくなるくらい可愛いでしょ」
「これは恋愛かな。いや、ミステリかな、それともファンタジーか、SFの可能性もある」
「全部よ」
「確かに」
そうかもしれない。
元々は外国人が住んでいて、何組かの日本人の手に渡り、今は空き家になっている。門には不動産屋の看板が括り付けられているが、買い手が見つかる様子はない。不動産屋が客を連れてくることもない。小学生が幽霊屋敷の代わりに見に来ることが度々あるが、中に入るやんちゃな奴らは、この近辺にはいない。不良グループが不法侵入することもなければ、壁に落書きすることもない。間取りはインターネットで見れるし、価格も確認できる。
そう言うと、誰もが興味を無くした。
ただ、彼女は違った。
彼女は僕の恋人で、同じ高校の小柄な女子だった。元卓球部で、いじめの主犯格にされて退部した。先生たちとの話し合いの結果だった。真実は違う。いじめはでっちあげで、単純に嫌われていた彼女への嫌がらせだった。そのことが先生たちに伝わると、彼らは平謝りで彼女に部活への復帰を勧めてきたらしい。彼女に嫌がらせした何人かは部活に残っているのにも関わらず。もちろん復帰なんてしなかった。
でも、彼女にも全く問題がなかったのかと言えば、唸って考えてしまう。彼女は個人主義なところがあった。人と付き合うのが上手いとは言えなかったから、嫌われる理由なんていくらでも考えられた。
例えば、遅刻魔だし、部屋はちらかっているし、私服はジャージだし、子どものように質問してくるし、好き嫌いは多いし、口が悪いときがあるし、ピロートークでは屁をこいて笑うこともかった。そして、そんな中身に関わらず、かなりの美少女だった。
ぱっと見、名士のところのお嬢様で、小町のようにも見える。
そんな彼女と付き合えたのは、ただ単に僕の顔が整っていたからだと思う。実際、彼女は『顔が好き』『顔がいいよね』とよく言っている。自分で言うのもなんだが、その通りだと思う。自惚れていた時期もあった。その自惚れは、年上の女性にフラれときに破壊された。その女性は『顔はいいけどね』と言った。確かに、僕はそれだけが取り柄で、それだけを見せびらかしていた気がする。僕の心と顔は、それ以来、自粛している。
「ハンサムだね」彼女はその日、教室の一番後ろの隅にいた僕にそう言った。
僕は彼女を一瞥もせずに、文庫本の数行を読んだ。
Zにずらす視界の隅で、彼女が隣の席に座った。
「付き合おうよ」
「何が?」
僕は思わず文字から目を離し、彼女の方を見た。美少女がそこにいた。
「私たちお似合いの見た目してるよ。そう思わない? もしかして視力悪い? 鏡、見たことある? それともブスが好み?」
可愛い。しかし、それ以上に、この型破りな女子は何なのだろうと思った。漫画の読み過ぎか、アニメの見過ぎか、思春期特有の病が治っていないのかと怖くなった。それでも、それを凌駕するほどの可愛さだった。付き合ってみたら意外と常識人なのかもしれない。そんな自己中心的な期待が心に湧いてきた。
「……とりあえず、一ヶ月間」
僕が興味に唆されて呟くと、彼女は頷いた。
「美人は三日で飽きるらしいけど、ハンサムはどうなんだろうね」
それが彼女の返事だった。
僕は彼女のことをほとんど知らなかった。別のクラスだったのもそうだし、誰これが可愛いという情報はあまり入ってこなかった。もちろん可愛い子がいるという噂はいくつか知っていた。ただ、そのためだけに他所のクラスを覗くことはしなかった。同年代には興味がなかったのも理由の一つかもしれない。加えて、僕もそんなに好かれていた方ではない。親しい友人はいなかったから、休み時間に誰かが話しにくることがない。たぶん、入学当初のことが原因だ。とある女子がやってきて、僕が読書中にも関わらず延々と話かけてきた。それとなく邪険にすると、翌日にはその女子の彼氏とやらが僕の名前を大声で叫びながらやってきた。そして、胸ぐらを掴んできた。『ちょっと顔がいいからって調子に乗んなよ』と彼は言った。呆れて物が言えなかった。それを臆したと見たのか彼は満足そうに帰っていった。あいつは顔だけだな、とクラスメイトに思われた気もする。反論をしたかったが、その機会はなかった。つくる気もしなかった。愚痴を言う相手もいなかったし、次第にどうでもよくなった。
数少ない中学の頃の友だちは別の高校に行っていて、僕は一人でここにいた。高校デビューとは逆の、入学後すぐの高校引退だった。
だから彼女について、例えば卓球部にいたことや、そのいざこざの云々は付き合ってから知った。大変だったね、と言うと『そんなこと初めて言われた』と喜んでいた。
彼女とは、ほとんど僕の家で過ごした。両親が共働きで、朝から晩まで帰ってこないことが多かったし、ゲームや漫画や映画やら小説やらパソコンやら、娯楽は多かったから彼女が入り浸った。田舎の一軒家には珍しく、地下もあった。地下室があると言うと、彼女は目を輝かせた。そこにはビリヤード台が置いてあった。
「ビリヤード」と彼女はそう言って、台に触れた。
彼女を地下室に初めて連れていったときだった。
「卓球台はないよ」
「卓球? どうでもいい。それより何で地下があるの?」
僕は肩をすくめた。
「意外と天井高いんだね。あ、この場合、床が低いねって言うべきかな」
「そうかもね。意外と深いところにあるかも」
「シェルター? あ、防空壕かな?」
「そんなに古い家じゃない」
「裏手に洋館があったよね」
「あるよ。買い手が全然見つからない洋館ね。たまに小学生が幽霊屋敷にしようと見にくるくらいで、大した噂はないよ。不良グループも来ない。落書きもない。最初は外国人の夫婦、それから何組かの日本人の夫婦かカップルが住んで、今は空き家。間取りはネットにあるけど、変なところはない。数千万円で売られている。事故も事件も起きていない」
「饒舌だね」
「言い慣れているだけだよ。聞かれることがあったから」
「洋館の間取り覚えてる?」
「覚えてるよ。三階建で、屋根裏部屋がある」
「地下室は?」
彼女の大きな眼は僕を真っ直ぐ貫いていた。
「あるよ」
「何で言い淀んだの?」
「別に言い淀んでないよ」
「ふうん」
「ビリヤードしないなら、上に戻ろう」
「そうだね。なんか寒いし」と彼女は言いながらも、ペタペタと壁を触っていた。
「手が汚れるよ」
「平気、平気」
「その手で本は読まないでね」
「わかってる、わかってる」
部屋に戻ると彼女はパソコンを立ち上げて、洋館の間取りを調べていた。僕はその姿を見ながら、うとうとして、いつの間にかベッドで寝てしまっていた。
目が覚めると、窓の外はだいぶ暗くなっていた。置き時計を見ると十八時になっていた。
空気には温かさと甘い香りがあった。それは添い寝をしていた彼女からだった。僕の近くで小柄な彼女がさらに小さくなって丸まっている。僕は体を動かし、向かい合わせになって、頭を撫でてみた。
彼女が目を開ける。その瞬間が見えた。
「お父さんとお母さんは、何の仕事してるの?」
開口一番、そう言った。彼女は僕の胸あたりを見ていた。
「僕の?」
「そう」
「何で?」
「気になって」
「普通の会社員だよ」
「業種は?」
「何でそこまで?」
「いいから」
「不動産」
「何を隠してるの?」
「何も隠してないよ」
「豪奢な洋館とはいえ中古。そして、ただの平地広がる田舎。でも、あんなに高く売られている。なんで?」
「もう遅いから帰りなよ。駅まで送っていくよ」
「私は大丈夫」彼女がむくりと起き上がった。「タバコ吸っていい?」
「未成年だろ。だめだよ。とくに部屋で吸うのはだめ」
「地下室では?」
「だめだよ」
「実はもう吸ってきた。あそこには風の流れがあった」
「吸うなよ。それに、換気口くらいあるよ。壁見た?」
「天井は見たことある?」
「そりゃあるよ」
「どこまで見た?」
どこまで?
「そりゃ、漠然とは見たことあるよ」
「じゃあ、ダメだ。ねえ、知ってること教えて。私に話してないこと」
「例えば?」
「洋館で殺人事件が起きたことや、ここの地下とあっちの地下が繋がっていることや、あなたに、両親がいないこととか」
「殺人事件なんて起きてないし、繋がってないし、両親はいる」
「もっと具体的に反論して」
この小柄な探偵をどうしようかと、僕は息を吐いた。
「今、『この美少女探偵をうまく処理しなくてはいけない』と思ったでしょ?」
「思ってない。まず、殺人事件なんて起きてない。そんなニュース、新聞にもネットにも載っていない。実際、起きてない。洋館には何組かの夫婦とカップルが住んで、出て行っただけだよ。最初の夫婦は外国人」
「洋館って誰が建てたの?」
「外国人」
「この家はいつ建ったの?」
「僕が生まれる前だよ」
「洋館とこの家、どっちが先に建ったの?」
僕は首を振った。
「聞いたことない。でも、物心付く頃には洋館はあったから、洋館が後に建ったということはないよ」
「洋館に住んでいた外国人に会ったことはある?」
「あるよ。その後の夫婦やカップルにも会ったことがある。別に普通の人たちだったよ」
「そっか。外国人は、どこの国の人?」
「アメリカ人だよ」
「わかった。じゃあ、地下室に行こう」
「何しに? もう帰った方がいいよ」
「ねえ、本当に外国人は洋館に住んでないのよね?」
「そうだよ」
僕は彼女に手を取られ、ベッドから立ち上がった。
「ちょっと」
「いいから」
彼女はまるで自分の家かのように、僕を地下室へと連れていった。
地下室は、昼間よりさらにひんやりとした空気が満ちていた。電気をつけても、それは少しも変わらなかった。ビリヤード台も、その上にある球も動いていない。ただ、キューだけがいつもと違う場所にあった。
「それで?」と僕は言った。
「それで?」と彼女も言って、僕の手を離した。「私、発見したのよ」
「何を?」
「見てて」
彼女はそう言って、キューを手に取った。そして、ローファーを脱ぎ、ビリヤード台に乗った。
「ここ」
彼女はキューで天井をぐっと押した。壁の方でガチャリと音がした。
音の方を振り返ると、壁が忍者屋敷のように少し回転していた。手が僅かに入るくらいの隙間が見える。その奥は暗い。
「どう?」
僕は壁に移動した。風の流れを顔に感じる。
「……これはなに?」
「私が知りたい。……もしかして、知らなかったの?」
「知らない」
「ほんとに?」
「知らない」
「なんで?」
「なんでって……。わからない」
彼女は頷いた。
「それは嘘じゃなさそうだね」
「別に嘘なんてついてない」
「そうだね。嘘はついてない。ほんとのことを言わないだけで」
僕は手で壁をさらに回転させて、隙間を広げた。人が通れる広さの通路があった。
「あなたはね、嘘はつかないけど、真実を隠すのは下手」
彼女はビリヤード台から降りて、ローファーを履いていた。
「どういうこと?」
「言い訳が癖になってる。結果について、何々だからっていう考え方をいちいちしてるでしょ。だから話し方がぎこちない」
「ぎこちないかな?」
「まあ、それだけじゃないよね。母国語は日本語じゃないものね」
「どうしてそう思う?」
「勘」
「勘?」
「直感。シックスセンス」
「嘘でしょ」
「強いていうなら、初めて会ったとき海外の小説をペーパーブックで読んでいたこと」
「ブックカバーしてたし、中は見せてなかったと思うんだけど」
「目線が縦じゃなくて、横に動いてた。ちゃんと思い返してみて」
「……それだけ?」
「そう。あとは、あなたの両親を見たことないのも」
「帰ってくるのが遅いからね」
「本当に帰ってくるのか怪しいね。だってもう十時だよ?」
「いや、まだ六時だ。時計はきちんと見た」
彼女は携帯電話のディスプレイをこちらに向けた。そこには22:07とあった。
「置き時計はね、私が時間をずらしたの」
「なんで?」
「もし十時だったら、必死に私を帰らせようとするでしょ?」
「そうだよ。……そして、今も帰らせたい。親が心配してるだろ」
「大丈夫。放任主義だから。というか、私の家、破綻してるから。そっちも?」
僕は首を振った。彼女が悲しげなスマイルを見せている。それを見て、僕は美少女名探偵の推理に応えることにした。
「……実は、僕の親はアメリカにいる。アメリカ人だよ。洋館は両親のもので、売りに出しているのは間違いないけど、値下げするつもりはない。思い出があるから、本当に必要な人にしか売らないってさ。今まで住んでいた夫婦やカップルは知り合いで、借りてただけ。長い旅行みたいなもんだよ」
「なんで、洋館に住んでないの?」
「ぼろいから」
「それだけ?」
「それだけだよ。あとは、広過ぎて持て余すから」
「ほんとに? 読者はもっと知りたがっているよ」
「読者?」
「これが物語だとしたら、読者はいるでしょ?」
「メタ発言みたいなこと言うなよ。……それに、視聴者の可能性もある」
「じゃあ、ベッドの上のアレコレも見られてるね」
「そうだな。豪快な屁もな」
「とにかく、私はもっと知りたい」
「僕はある意味、外国人だ。でも、日本人でもある。母親が元日本人だからね。そして、父親は日系アメリカ人」
「ハンサムな日系アメリカ人」
「そう。その部類に入る。僕はここに中学生の頃から住んでる。必要なときに親は来るけど、ビジネスは向こうでやってるから、ほとんど来ない。田舎の一人暮らしだよ。もちろん仕送りはたんまりもらってる」
「そして、美人の恋人がいる」
「そうだね」と僕は笑って頷いた。
「尚且つ、その恋人は聡明で、直感力に優れている。欠点は背が低いこと。そして、家庭に問題を抱えていること」
「どんな?」
「知りたい?」
「知りたい。きっと読者もそう思ってる」と言いながら僕は馬鹿馬鹿しくなった。その代わりに本音を言った。「心配だよ」
「ネグレクト。二人とも仕事して、遊んで、恋人と出かけてる。私のことは放っておいて」
「大丈夫?」
「半分は大丈夫。学費とちょっとしたお小遣いはね。それ以外はなんとかしてる。卓球だって、まあ、辞めるきっかけ探してたのかもしれない。お金かかるし」
「……離婚はしてないの?」
「仮面でも、夫婦でいることが得になることがあるんだよ。そういう意味ではお似合いのパートナーだね。悪い大人で、最低の親だけど」
「ご飯はちゃんと食べてる?」
「なんとかね。それに、遅く帰った方がいろいろと安いでしょ?」
「確かに。……でも、今日は遅すぎるから、何か食べていきなよ」
「その前に」と彼女は言って、壁の方を指差した。「これよ」
「そうだね。隠し扉」
「これのために帰らなかったんだから。で、なんであるの?」
「本当に僕は知らない。よく見つけたなと感心してる」
僕は壁の方をもう一度振り返った。細長い暗闇が手招きしているようだった。
「ねぇ、この話に作者がいるとしたなら、下手くそな奴よね」
「またメタ発言か」
「その発言こそメタよ。とにかく、彼か彼女か神様か、運命でもいい。この話はとにかく下手。こんな美少女と顔のいい男を世界に登場させておいて十六年も何も起こさなかったんだから。そして、ようやくの隠し扉。これで何もなかったとかだったら許さない」
「許さないって、どうするんだよ」
「さあ。芸能界で暴れまくる?」
「それはそれで、ストーリーになるんじゃない?」
「だめ。お互い向いて無さすぎる。とにかく許さない」
彼女は隠し扉に手を置き、それから隙間に手を入れて回した。光が差し、階段が下に続いているのがわかる。
「まだ下に何かあるんだね。……洋館の地下室も深いの?」
「覚えてない。でも、こんなに深かったかな?」
「先に行って」
「僕が?」
「だいたいそうでしょ?」
「だいたいって……」
僕は納得しないまま、しかし、言う通りに中に入った。しばらくすると彼女が上着を掴んできた。甘い香りも漂ってきた。
「携帯、部屋に忘れた。ライト点けてくれる?」
そう言うと後ろから光が差した。階段の底はまだ見えない。
数段おりると、不安になり、振り返った。
「なに?」
「いや、回転扉が勝手に閉まらないか不安で。一人残った方がいいんじゃないかな」
「大丈夫。キュー挟んできた」
「さすがだ」
三十秒も降りただろうか。その先に鉄扉があった。取っ手はない。
「開けて」
逡巡していた気持ちは、その言葉で消えた。
鉄扉を押すと、そこに暗闇が現れた。それは、びっしりと詰まった暗闇で気持ちのいいものではなかった。まるで虫が全体に這っているような。それでも彼女は進みたがった。
「ちょっと、待って」
「早く」
僕は彼女に押され、僕は彼女を掴み、僕らはその暗闇に吸い込まれていった。
そして、僕らは事件に巻き込まれることになる。見知らぬ場所に僕らは迷い込み、見知らぬ人たちの殺人事件に遭遇した。しかし、この話には関係がない。
ちなみに事件現場には、一枚の絵が飾られていた。洋館の絵で、その下に『カムッツィ』とあった。事件には関係ないが、よく覚えている。
「何考えてんの?」
彼女の顔が視界に入り、長くなった髪の毛が僕の顔に垂れてきた。
「別に」とベッドで横になっていた僕は、思い出に蓋をした。話すことは、特にない。
それにしてもだ。もし、この物語に作者がいるのならば、酷い作者だ。
読者や視聴者がいたのならば、きっとそう思うだろう。
「パイロット版だ」
「何が?」
「何も起きない人生は、ただのパイロット版で、いつか何かが必ず起こるってことだよ。ミステリか、ファンタジーか、SFか、コメディか、純文学か、それはわからないけど。もしくは、もう起こっている最中かも」
「寝ぼけてるの? 私の顔をじっくり見て、目を覚ましてよ。……どう? 目を逸らしたくなるくらい可愛いでしょ」
「これは恋愛かな。いや、ミステリかな、それともファンタジーか、SFの可能性もある」
「全部よ」
「確かに」
そうかもしれない。
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