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プロローグ
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厨房で聞こえてくる罵倒の声。
その声に反応してか、遠吠えを始める近所の犬。
それに耐えきれなくなって、俺は厨房へと向かう。
そこに立って言い争う2人の男女。
最早何を言ってるかもすら分からない。
最近は2人の顔ですら思い出せなくなってしまった。
何度見ても、いくら俺が成長してもこの時の怖さは緩和されない。
俺はいつものように布団へ潜り込み、耳を抑える。
少しずつ2人の足音が近づいてくる。
そして、俺はいつも目が覚める。
「おお…さみぃ…」
10月の終わり世間じゃそろそろ冬支度をするはずだ。
そんな寒い日の中、俺は公園のベンチから重い腰を上げる。
「こりゃあ冬耐えるの厳しいな…」
俺は武石裕也。17歳。本当なら高校生の筈なんだけど、いろいろあって学校を辞めてしまった。
更には家もなく、今はバイトなどでどうにか金を稼ぎ、家賃は払えないので公園で生活させてもらっている。
ベッドはベンチ、布団は新聞紙…
自分で言ってて悲しくなってきた…
とにかく、今回がこんな生活を始めて初めての冬。
早々に暖かい場所見つけないとやばい気がする…
あっ…やばい…そんなことより食べ物が無い。
もう3日も口に物を入れてない。
今日こそはと思ったけど、これじゃあ一歩も動けず死んでしまいそうだ。
側においてある丁度いい長さの木の棒を杖代わりに、朝市を行なっている商店街へと歩くというか、足を引きずりながら進み始める。
俺の住んでる(?)花見坂町の花見坂商店街は、規模はそこまで大きくないが、それなりに繁栄していた商店街だ。
ただ、1年前にできたショッピングモールのお陰で、客足が途絶え、ここ1カ月は遂に閉店してしまう店もできてしまった。勿論商店街の人々も色々取り組んできたが、未だ効果無しってところだ。
週一の朝市で試食会を行なっているため、俺としては無くなって欲しくない。
いつも通り何店舗かの試食を頂き、元いた公園に戻るが、その途中で元気な子供の声が聞こえてきた。
まずい…いつもより多くの店を回ったせいで、小学生の登校時刻と重なってしまったようだ。
こんなボロボロの服を着た男の姿を見られたら、確実に噂になる。
俺はダッシュで公園へと道を駆け抜ける。
途中、小学生がこちらを見たが、あのくらいなら大丈夫だと信じよう。
何とか公園にたどり着いた俺だったが、さっきのダッシュで先程摂ったカロリーを消費してしまった。
途端に目眩がして、心臓の辺りが痛くなってきた。
おばあちゃん。俺と思ったよりも早くそちらに行けそうです。
だんだん足に力が入らなくなった。
せめて見えにくいところへ移動しよう。
草むらの裏へ向かう間、俺は走馬灯のようなものを見た。
それはいつもの夢だった。
俺の両親は花見坂商店街で、洋食屋を営んでいた。
あの頃はまだ人も賑わっていた。
しかし、ウチは夫婦仲が非常に悪く、いつも喧嘩していた。原因は親父のサービス精神。
特に学生には安価で大盛りの定食を出していた。
評判は良く、客足は伸びるも、毎月赤字だった。
そんな親父にしびれを切らした母が、ある時遂に親父を殴った。
暴力はその一度で済んだが、それが原因で両親は離婚した。
店を売り、俺は親父の祖母の家に預けられた。
店の事しか眼中になかった親父達とは違い、祖母は俺に優しくしてくれた。
そんな祖母ももうこの世にはいない。
今年の春長年患ってたらしい癌で、この世を去った。
葬式には親父は来なかった。
せめて自分の親の葬式くらい来いよという気持ちが、親父への憎悪となった。
しかし、現実は残酷で憎悪や悲しみを思う暇もなく、俺は学校を退学する事となり、終いには家賃が払えなくなった家を追い出された。
そうして俺はこのような生活を送っている。
俺の短い人生にも色々あったな…
俺が草むらの裏へと着くと自らの意識は遠のいていった。
次に目が覚めた時、俺の目の前には美少女がいた。
「あっ!やっと起きてくれた!」
その少女は顔に笑顔を浮かべている。
これが天使ってやつか…
遂に天国へと着たようだな。
「もう少しお迎えは早いかと思ってましたよ。天使さん。」
俺がそう言うと、
「武石君!天使じゃないよ!私だよ!目を覚まして!」
そう言って俺を揺さぶる少女は、どこかで見た顔で、天使の輪も羽も付いていなかった。
「えっと…誰だっけ?」
すると少女の顔は擬音で言うとガビーンって感じの顔となった。
「あんなに話してたのに忘れてるなんて…」
少女はそう言うと放心状態のような顔になった。
「俺は武石裕也だ。」
とりあえず自己紹介をすると、
「私は甘森朱莉れす…」
力無い声が返ってきたが、俺はこの人のことを思い出した。
確か俺の元クラスメイトだったはずだ。
なんかよく話しかけてきてくれた記憶があるようなないような気がする。
俺は上半身を起こし、甘森さんをゆさる。
すると、我に返ったようで俺に話しかけた。
「たまたま公園寄ったら武石君が倒れてて驚いたよ…困窮した生活を送ってる事は聞いてたけど、ここまでだったなんて…」
俺は話す気力も無いので黙っていると、甘森さんは急に俺の手を取った。
暖かくて柔らかい。女の子の手って凄いな。
「ふっふっふっ…こんな武石君を見捨てられる人がいるのだろうか。いや、いない!」
何故反語を使う。
そう思ったのも束の間。
俺は甘森さんに引っ張られ、何処かへと連れて行かれるのであった。
どうなっちゃうんですかね?俺。
てか女の子に引っ張られるとか貧弱すぎない?
着いたのは花見坂商店街にある、とある洋菓子店だった。
「ようこそ!パティスリー・スイートフォレストへ!」
その声に反応してか、遠吠えを始める近所の犬。
それに耐えきれなくなって、俺は厨房へと向かう。
そこに立って言い争う2人の男女。
最早何を言ってるかもすら分からない。
最近は2人の顔ですら思い出せなくなってしまった。
何度見ても、いくら俺が成長してもこの時の怖さは緩和されない。
俺はいつものように布団へ潜り込み、耳を抑える。
少しずつ2人の足音が近づいてくる。
そして、俺はいつも目が覚める。
「おお…さみぃ…」
10月の終わり世間じゃそろそろ冬支度をするはずだ。
そんな寒い日の中、俺は公園のベンチから重い腰を上げる。
「こりゃあ冬耐えるの厳しいな…」
俺は武石裕也。17歳。本当なら高校生の筈なんだけど、いろいろあって学校を辞めてしまった。
更には家もなく、今はバイトなどでどうにか金を稼ぎ、家賃は払えないので公園で生活させてもらっている。
ベッドはベンチ、布団は新聞紙…
自分で言ってて悲しくなってきた…
とにかく、今回がこんな生活を始めて初めての冬。
早々に暖かい場所見つけないとやばい気がする…
あっ…やばい…そんなことより食べ物が無い。
もう3日も口に物を入れてない。
今日こそはと思ったけど、これじゃあ一歩も動けず死んでしまいそうだ。
側においてある丁度いい長さの木の棒を杖代わりに、朝市を行なっている商店街へと歩くというか、足を引きずりながら進み始める。
俺の住んでる(?)花見坂町の花見坂商店街は、規模はそこまで大きくないが、それなりに繁栄していた商店街だ。
ただ、1年前にできたショッピングモールのお陰で、客足が途絶え、ここ1カ月は遂に閉店してしまう店もできてしまった。勿論商店街の人々も色々取り組んできたが、未だ効果無しってところだ。
週一の朝市で試食会を行なっているため、俺としては無くなって欲しくない。
いつも通り何店舗かの試食を頂き、元いた公園に戻るが、その途中で元気な子供の声が聞こえてきた。
まずい…いつもより多くの店を回ったせいで、小学生の登校時刻と重なってしまったようだ。
こんなボロボロの服を着た男の姿を見られたら、確実に噂になる。
俺はダッシュで公園へと道を駆け抜ける。
途中、小学生がこちらを見たが、あのくらいなら大丈夫だと信じよう。
何とか公園にたどり着いた俺だったが、さっきのダッシュで先程摂ったカロリーを消費してしまった。
途端に目眩がして、心臓の辺りが痛くなってきた。
おばあちゃん。俺と思ったよりも早くそちらに行けそうです。
だんだん足に力が入らなくなった。
せめて見えにくいところへ移動しよう。
草むらの裏へ向かう間、俺は走馬灯のようなものを見た。
それはいつもの夢だった。
俺の両親は花見坂商店街で、洋食屋を営んでいた。
あの頃はまだ人も賑わっていた。
しかし、ウチは夫婦仲が非常に悪く、いつも喧嘩していた。原因は親父のサービス精神。
特に学生には安価で大盛りの定食を出していた。
評判は良く、客足は伸びるも、毎月赤字だった。
そんな親父にしびれを切らした母が、ある時遂に親父を殴った。
暴力はその一度で済んだが、それが原因で両親は離婚した。
店を売り、俺は親父の祖母の家に預けられた。
店の事しか眼中になかった親父達とは違い、祖母は俺に優しくしてくれた。
そんな祖母ももうこの世にはいない。
今年の春長年患ってたらしい癌で、この世を去った。
葬式には親父は来なかった。
せめて自分の親の葬式くらい来いよという気持ちが、親父への憎悪となった。
しかし、現実は残酷で憎悪や悲しみを思う暇もなく、俺は学校を退学する事となり、終いには家賃が払えなくなった家を追い出された。
そうして俺はこのような生活を送っている。
俺の短い人生にも色々あったな…
俺が草むらの裏へと着くと自らの意識は遠のいていった。
次に目が覚めた時、俺の目の前には美少女がいた。
「あっ!やっと起きてくれた!」
その少女は顔に笑顔を浮かべている。
これが天使ってやつか…
遂に天国へと着たようだな。
「もう少しお迎えは早いかと思ってましたよ。天使さん。」
俺がそう言うと、
「武石君!天使じゃないよ!私だよ!目を覚まして!」
そう言って俺を揺さぶる少女は、どこかで見た顔で、天使の輪も羽も付いていなかった。
「えっと…誰だっけ?」
すると少女の顔は擬音で言うとガビーンって感じの顔となった。
「あんなに話してたのに忘れてるなんて…」
少女はそう言うと放心状態のような顔になった。
「俺は武石裕也だ。」
とりあえず自己紹介をすると、
「私は甘森朱莉れす…」
力無い声が返ってきたが、俺はこの人のことを思い出した。
確か俺の元クラスメイトだったはずだ。
なんかよく話しかけてきてくれた記憶があるようなないような気がする。
俺は上半身を起こし、甘森さんをゆさる。
すると、我に返ったようで俺に話しかけた。
「たまたま公園寄ったら武石君が倒れてて驚いたよ…困窮した生活を送ってる事は聞いてたけど、ここまでだったなんて…」
俺は話す気力も無いので黙っていると、甘森さんは急に俺の手を取った。
暖かくて柔らかい。女の子の手って凄いな。
「ふっふっふっ…こんな武石君を見捨てられる人がいるのだろうか。いや、いない!」
何故反語を使う。
そう思ったのも束の間。
俺は甘森さんに引っ張られ、何処かへと連れて行かれるのであった。
どうなっちゃうんですかね?俺。
てか女の子に引っ張られるとか貧弱すぎない?
着いたのは花見坂商店街にある、とある洋菓子店だった。
「ようこそ!パティスリー・スイートフォレストへ!」
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