12 / 47
閉ざされた街
12 緒戦
しおりを挟む
ミシャの警告によってダレスも自身の感覚を研ぎ澄ます。
城門前の広場からは、中心部に向う大通りと城壁沿いに街を回る左右の通りと、三方に道が分かれているが、裸足で石畳を歩くような乾いた音が前方から響いて来る。それも正確な数を把握しきれない程の大量の足音だ。
やがて、状況を把握しようと大通りの先を見つめるダレスの瞳に足音の主達が映し出された。
大きさこそ人間大ではあるが、不自然に白い身体と出来損ないの人形のように長い腕を持った姿から〝それ〟が人の理が通じぬ存在であることは一目で見て取れた。
何より脅威なのはその数であり、どこから湧いて出て来たのかその数は二十体を優に超えていた。おそらくはダレスとクロットの議論の声を聞きつけて来たのだろう。
「まずいな、数が多い! 一先ずここを離れよう。戦うにしても街の状況を見極めて体勢を整えてからだ!」
不利を悟ったダレスは仲間達に撤退を促した。主敵である魔族本体の戦力状況がわからない状態で消耗戦に突入するわけにはいかない。
「では、私が牽制します!!」
異形の怪物側もダレス達の姿を見とめたのだろう。距離を詰めようと、その足の速度を上げて駆け足気味に彼らに迫ろうとするが、ダレスの意図を汲んだアルディアが前方に出る。
『(偉大なるユラント神よ! あなたの光をここに示したまえ!)』
アルディアが〝神代の言語〟で神の奇跡、あるいは〝聖なる光(ホーリーライト)〟と呼ばれる魔法現象を発動させ、掲げた手の平から圧倒的な光を前方向けて照射する。
この光はまさに神の加護を体現させた光で、人間にとってはただ眩しいだけの光に過ぎないが、神に敵対する存在、魔族のような邪神の使徒やアンデッドとなどの自然の摂理に反した怪物にはその身を焼く強烈な熱線となった。
ダレス達に向けて押し寄せつつある大量の異形の怪物だったが、アルディアの〝聖なる光(ホーリーライト)〟を受けて身を捩りながらその動きを止める。悲鳴こそ上げていないが、その様子からするとかなりのダメージを与えたようだ。その事実から、この怪物達も魔族の端くれに違いなかった。
「ミシャ! クロットを連れて先に行け! クロットはこの街で身を隠せる場所まで俺達を先導してくれ! 殿(しんがり)は俺がやる。アルディアも先に二人を追え!」
敵の状況を見極めたダレスは仲間に指示を飛ばす。アルディアは良くやってくれたが、やはり多勢に無勢である。自分一人だけならどうにでもなるが、仲間の安全を確保出来るかは未知数だ。ダレスは改めて撤退を選択した。
「わかった! クロット・・・この近くに頑丈な屋敷はないか?」
「ああ・・・それでしたら、こ、こっちに!」
ダレスの意図を得たミシャはより細かい指示をクロットに伝え、彼もそれに反応する。クロットは街の南側を指差すと、早速とばかりに走り始出す。
「あ、待て! あたしから離れるな!」
謎の怪物達から早く逃れたい思いがあったのだろう、想定以上に速いクロットの逃げ足に、ミシャが慌てて後を追った。
城門前の広場からは、中心部に向う大通りと城壁沿いに街を回る左右の通りと、三方に道が分かれているが、裸足で石畳を歩くような乾いた音が前方から響いて来る。それも正確な数を把握しきれない程の大量の足音だ。
やがて、状況を把握しようと大通りの先を見つめるダレスの瞳に足音の主達が映し出された。
大きさこそ人間大ではあるが、不自然に白い身体と出来損ないの人形のように長い腕を持った姿から〝それ〟が人の理が通じぬ存在であることは一目で見て取れた。
何より脅威なのはその数であり、どこから湧いて出て来たのかその数は二十体を優に超えていた。おそらくはダレスとクロットの議論の声を聞きつけて来たのだろう。
「まずいな、数が多い! 一先ずここを離れよう。戦うにしても街の状況を見極めて体勢を整えてからだ!」
不利を悟ったダレスは仲間達に撤退を促した。主敵である魔族本体の戦力状況がわからない状態で消耗戦に突入するわけにはいかない。
「では、私が牽制します!!」
異形の怪物側もダレス達の姿を見とめたのだろう。距離を詰めようと、その足の速度を上げて駆け足気味に彼らに迫ろうとするが、ダレスの意図を汲んだアルディアが前方に出る。
『(偉大なるユラント神よ! あなたの光をここに示したまえ!)』
アルディアが〝神代の言語〟で神の奇跡、あるいは〝聖なる光(ホーリーライト)〟と呼ばれる魔法現象を発動させ、掲げた手の平から圧倒的な光を前方向けて照射する。
この光はまさに神の加護を体現させた光で、人間にとってはただ眩しいだけの光に過ぎないが、神に敵対する存在、魔族のような邪神の使徒やアンデッドとなどの自然の摂理に反した怪物にはその身を焼く強烈な熱線となった。
ダレス達に向けて押し寄せつつある大量の異形の怪物だったが、アルディアの〝聖なる光(ホーリーライト)〟を受けて身を捩りながらその動きを止める。悲鳴こそ上げていないが、その様子からするとかなりのダメージを与えたようだ。その事実から、この怪物達も魔族の端くれに違いなかった。
「ミシャ! クロットを連れて先に行け! クロットはこの街で身を隠せる場所まで俺達を先導してくれ! 殿(しんがり)は俺がやる。アルディアも先に二人を追え!」
敵の状況を見極めたダレスは仲間に指示を飛ばす。アルディアは良くやってくれたが、やはり多勢に無勢である。自分一人だけならどうにでもなるが、仲間の安全を確保出来るかは未知数だ。ダレスは改めて撤退を選択した。
「わかった! クロット・・・この近くに頑丈な屋敷はないか?」
「ああ・・・それでしたら、こ、こっちに!」
ダレスの意図を得たミシャはより細かい指示をクロットに伝え、彼もそれに反応する。クロットは街の南側を指差すと、早速とばかりに走り始出す。
「あ、待て! あたしから離れるな!」
謎の怪物達から早く逃れたい思いがあったのだろう、想定以上に速いクロットの逃げ足に、ミシャが慌てて後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる