その聖女、脳筋につき取扱注意!!

月暈シボ

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閉ざされた街

12 緒戦

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 ミシャの警告によってダレスも自身の感覚を研ぎ澄ます。
 城門前の広場からは、中心部に向う大通りと城壁沿いに街を回る左右の通りと、三方に道が分かれているが、裸足で石畳を歩くような乾いた音が前方から響いて来る。それも正確な数を把握しきれない程の大量の足音だ。 
 やがて、状況を把握しようと大通りの先を見つめるダレスの瞳に足音の主達が映し出された。
 大きさこそ人間大ではあるが、不自然に白い身体と出来損ないの人形のように長い腕を持った姿から〝それ〟が人の理が通じぬ存在であることは一目で見て取れた。
 何より脅威なのはその数であり、どこから湧いて出て来たのかその数は二十体を優に超えていた。おそらくはダレスとクロットの議論の声を聞きつけて来たのだろう。

「まずいな、数が多い! 一先ずここを離れよう。戦うにしても街の状況を見極めて体勢を整えてからだ!」
 不利を悟ったダレスは仲間達に撤退を促した。主敵である魔族本体の戦力状況がわからない状態で消耗戦に突入するわけにはいかない。
「では、私が牽制します!!」
 異形の怪物側もダレス達の姿を見とめたのだろう。距離を詰めようと、その足の速度を上げて駆け足気味に彼らに迫ろうとするが、ダレスの意図を汲んだアルディアが前方に出る。
『(偉大なるユラント神よ! あなたの光をここに示したまえ!)』
 アルディアが〝神代の言語〟で神の奇跡、あるいは〝聖なる光(ホーリーライト)〟と呼ばれる魔法現象を発動させ、掲げた手の平から圧倒的な光を前方向けて照射する。
 この光はまさに神の加護を体現させた光で、人間にとってはただ眩しいだけの光に過ぎないが、神に敵対する存在、魔族のような邪神の使徒やアンデッドとなどの自然の摂理に反した怪物にはその身を焼く強烈な熱線となった。
 ダレス達に向けて押し寄せつつある大量の異形の怪物だったが、アルディアの〝聖なる光(ホーリーライト)〟を受けて身を捩りながらその動きを止める。悲鳴こそ上げていないが、その様子からするとかなりのダメージを与えたようだ。その事実から、この怪物達も魔族の端くれに違いなかった。

「ミシャ! クロットを連れて先に行け! クロットはこの街で身を隠せる場所まで俺達を先導してくれ! 殿(しんがり)は俺がやる。アルディアも先に二人を追え!」
 敵の状況を見極めたダレスは仲間に指示を飛ばす。アルディアは良くやってくれたが、やはり多勢に無勢である。自分一人だけならどうにでもなるが、仲間の安全を確保出来るかは未知数だ。ダレスは改めて撤退を選択した。
「わかった! クロット・・・この近くに頑丈な屋敷はないか?」
「ああ・・・それでしたら、こ、こっちに!」
 ダレスの意図を得たミシャはより細かい指示をクロットに伝え、彼もそれに反応する。クロットは街の南側を指差すと、早速とばかりに走り始出す。
「あ、待て! あたしから離れるな!」
 謎の怪物達から早く逃れたい思いがあったのだろう、想定以上に速いクロットの逃げ足に、ミシャが慌てて後を追った。
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