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閉ざされた街
35 ミシャの疑問
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「ダレス・・・あんたは一体何者なんだ? 自慢じゃないが、本気で走るあたしを後ろから追い抜くなんて人間技じゃないよ! 剣の腕は立つとは思っていたが・・・本当に神様に選ばれた勇者なのかい?」
魔族との最終決戦を迎えるためにダレス達は、まずは水分を補給し軽めの食事で空腹を満たした。
特にアルディアは昨晩を最後に何も食べていない。万全の体調を維持するために食事は不可欠だった。
そして、入れる物があれば出す物もある。ミシャはアルディアが交代で離宮の厠に向った頃合いを狙って、ダレスに問い掛けたのだった。
「勇者かはともかく・・・あれは俺の切り札の一つで魔法の一種だ。自身の時間を一時的に加速させることで、超人的な動きを可能とさせる。魔力を消費するから多用は出来ないがな」
「魔法?! あんた、魔術士でもあるのか?!」
「そんなところだ・・・」
ミシャの質問にダレスは曖昧に答える。魔術士の定義は魔術、魔法を扱う者であるので彼の答えは間違いではない。
だが、厳密にいえば彼が使った〝ヘイスト〟は生まれながらに備わった特殊能力である。魔法的ではあるが、正確には魔法ではない。ドラゴンが吐く〝炎の息(ドラゴンブレス)〟と似た関係にあった。
「じゃ、さっきの戦闘では、あんたの持つ剣が青く光っていただろ? あれも魔法なのか?」
「むう、流石に目敏いなミシャ・・・実はこの長剣は〝太古の大戦〟時代に鍛えられたモノだ。この時代の剣は真名を呼ぶと本来の力を取り戻す。これも俺の切り札の一つだ」
ダレスは苦笑を浮かべながら、泉のように疑問を湧き上がらせるミシャに答える。
「〝太古の大戦〟時代の武器だって? 嘘だろ! そんなの国宝級じゃないか! いや、確かに光っていたし・・・ダレス、本当にあんたは何者なんだ?!」
「俺は名もなき傭兵・・・そしてアルディアとミシャ、お前達の仲間・・・それで良いじゃないか?」
暗殺者として育てられながらも、アルディアを慕って従者となったミシャ。このやや生意気で口が悪いながらも、本物の勇気と忠誠心を持つ少女のことはダレスも気に入り始めていた。
魔族との決戦となればダレスも全力を賭(と)して戦うことになり、ミシャも自身の正体を悟ると思われたが、ダレスは対等の仲間として彼女と接することを望んだ。
「・・・そうか、詮索して悪かったよ! それじゃ、あたしもダレスを仲間と信じて戦うよ!! でも、アルディア様に手を出したら許さないからな!」
ダレスに仲間と認められたからか、ミシャは詫びと決意を表明する。もっとも、彼女らしく釘を刺すのは忘れない。
「・・・なら、目の前の美少女。ミシャ、お前になら手を出して良いのだな!」
「な!! あ、あたしが、びっ美少女!!」
ダレスの反応にミシャは、これまで出したことがなかった声で驚きを示す。彼女にとってはまったく想定していなかった返答だったようだ。
「ああ、口の悪さと平たい胸を除けば、ミシャは充分に魅力的だ。平たい胸を除けばだが!」
「・・・う、うるせえ! 平たい胸は余計だ! あ、あたしだって気にしているんだぞ!」
苦笑を浮かべて条件を付けるダレスの態度でミシャもその意図に気付き、顔色を真っ赤に染めて烈火の如く怒りを露わにする。
「ふふふ、冗談だ。そこまで怒るとは思わなかったんだ、許してくれ・・・それに魅力的だと言ったのは嘘じゃない。いずれにせよ、これからのことは魔族を倒してからだな・・・」
ダレスもいくら釘を刺したミシャへの仕返しとはいえ、言い過ぎたと思ったのか彼女に謝罪を告げる。そして、戯れの時間は終わりとばかりに本題を切り出した。
「・・・そうだな。まずは魔族を・・・」
ミシャも自分達に課せられた試練の重さを思い出し、それ以上は口を閉じるのだった。
魔族との最終決戦を迎えるためにダレス達は、まずは水分を補給し軽めの食事で空腹を満たした。
特にアルディアは昨晩を最後に何も食べていない。万全の体調を維持するために食事は不可欠だった。
そして、入れる物があれば出す物もある。ミシャはアルディアが交代で離宮の厠に向った頃合いを狙って、ダレスに問い掛けたのだった。
「勇者かはともかく・・・あれは俺の切り札の一つで魔法の一種だ。自身の時間を一時的に加速させることで、超人的な動きを可能とさせる。魔力を消費するから多用は出来ないがな」
「魔法?! あんた、魔術士でもあるのか?!」
「そんなところだ・・・」
ミシャの質問にダレスは曖昧に答える。魔術士の定義は魔術、魔法を扱う者であるので彼の答えは間違いではない。
だが、厳密にいえば彼が使った〝ヘイスト〟は生まれながらに備わった特殊能力である。魔法的ではあるが、正確には魔法ではない。ドラゴンが吐く〝炎の息(ドラゴンブレス)〟と似た関係にあった。
「じゃ、さっきの戦闘では、あんたの持つ剣が青く光っていただろ? あれも魔法なのか?」
「むう、流石に目敏いなミシャ・・・実はこの長剣は〝太古の大戦〟時代に鍛えられたモノだ。この時代の剣は真名を呼ぶと本来の力を取り戻す。これも俺の切り札の一つだ」
ダレスは苦笑を浮かべながら、泉のように疑問を湧き上がらせるミシャに答える。
「〝太古の大戦〟時代の武器だって? 嘘だろ! そんなの国宝級じゃないか! いや、確かに光っていたし・・・ダレス、本当にあんたは何者なんだ?!」
「俺は名もなき傭兵・・・そしてアルディアとミシャ、お前達の仲間・・・それで良いじゃないか?」
暗殺者として育てられながらも、アルディアを慕って従者となったミシャ。このやや生意気で口が悪いながらも、本物の勇気と忠誠心を持つ少女のことはダレスも気に入り始めていた。
魔族との決戦となればダレスも全力を賭(と)して戦うことになり、ミシャも自身の正体を悟ると思われたが、ダレスは対等の仲間として彼女と接することを望んだ。
「・・・そうか、詮索して悪かったよ! それじゃ、あたしもダレスを仲間と信じて戦うよ!! でも、アルディア様に手を出したら許さないからな!」
ダレスに仲間と認められたからか、ミシャは詫びと決意を表明する。もっとも、彼女らしく釘を刺すのは忘れない。
「・・・なら、目の前の美少女。ミシャ、お前になら手を出して良いのだな!」
「な!! あ、あたしが、びっ美少女!!」
ダレスの反応にミシャは、これまで出したことがなかった声で驚きを示す。彼女にとってはまったく想定していなかった返答だったようだ。
「ああ、口の悪さと平たい胸を除けば、ミシャは充分に魅力的だ。平たい胸を除けばだが!」
「・・・う、うるせえ! 平たい胸は余計だ! あ、あたしだって気にしているんだぞ!」
苦笑を浮かべて条件を付けるダレスの態度でミシャもその意図に気付き、顔色を真っ赤に染めて烈火の如く怒りを露わにする。
「ふふふ、冗談だ。そこまで怒るとは思わなかったんだ、許してくれ・・・それに魅力的だと言ったのは嘘じゃない。いずれにせよ、これからのことは魔族を倒してからだな・・・」
ダレスもいくら釘を刺したミシャへの仕返しとはいえ、言い過ぎたと思ったのか彼女に謝罪を告げる。そして、戯れの時間は終わりとばかりに本題を切り出した。
「・・・そうだな。まずは魔族を・・・」
ミシャも自分達に課せられた試練の重さを思い出し、それ以上は口を閉じるのだった。
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