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その4
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「ところで、これまで君はどうやって生計を立てていたんだい?」
早速とばかりに給仕役の女性が置いて行った盃を手に取ると、女戦士ミリアはテーブルの正面に座るサージに問い掛けた。
「とりあえず、乾杯だな・・・もちろん傭兵だ。隊商の護衛をやりながら移動して、噂を集めて化物の居場所を突き止めていた」
「ああ、乾杯。新たな仲間に!」
サージも盃に手を伸ばすと、ミリアに軽く掲げながら質問に答える。それを合図に二人は白い泡と黄金色の液体、麦酒で喉を潤した。暫定的だったが、仲間となった二人は最寄りの人里まで戻ると酒場で簡単な祝宴を開いたのである。ここでこれからの予定を相談するつもりなのだ。
「ひょっとして、セラン河よりも西から来たのかな?」
「ああ、そうだ。良く分かったな!」
「セラン河の西岸に出現していたケルピーの目撃情報が二週間前あたりから報告されなくなったからね。もしかして、それも君が?」
ケルピーとは水馬と呼ばれる大型の河や湖の周辺に現れる怪物である。見た目は美しい姿をした馬であり、それに惹かれた人間を自身の背に乗せ、水中に引き摺りこんでは憐れな犠牲者の臓物を食らうという悪質な怪物だった。
「ああ、俺が片付けておいた」
「やはり、君か・・・ふう・・・」
サージの告白にミリアは謎が解けたとばかりに感心の溜息を吐いた。
「しかし、ケルピーは狡賢い怪物だと聞いている。君の腕前を疑うわけではないが、よく河の中に逃げられなかったね?」
「ふふふ、まるで現場を見ていたようだな。もちろん逃げられたさ! だからあの性悪馬を河の中まで追い掛けて、組み付いて・・・最後は首の骨を圧し折ってやったよ!」
「それは・・・凄いな・・・」
サージの証言は酒席でのホラ話とも取れる内容だったが、ミリアは苦笑を浮かべて頷く。もちろん、内容を虚偽として判断したからではない。逃げる怪物を執拗なまでに追う男の執念に対してである。
昨日のワーグ討伐で出合った際に理解したことがある。サージは軽口やはったりで脅したり、自分を大きく見せつけるような男ではないのだ。この男がやったと言ったなら、それは間違いなく事実だろう。そして彼女自身はそんな捨身の戦法を選ぶことはなかったが、ケルピーの首を圧し折る行為自体は全くの実現不可能というわけでもなかった。
「やはり、君も〝錬体術〟の魔法を使えるようだね。どこで習ったんだい? 良ければ教えてくれないか?」
暴れる馬の首を圧し折る。そんなことは常識からすれば無理だと思われるが、魔法を使って身体能力を強化すれば不可能ではなかった。
魔法は〝神々の技〟とも言われる秘術であり、神々がこの世界を創り出すために編み出されたとされている。それ故に世界の理に干渉することが可能で、灼熱の炎を創り出す、人間を動物に変化させる等、使い手の技量次第で様々な現象を具現化することが出来た。
特に魔法は戦闘に対して極めて高い効果を発揮することから〝太古の戦い〟以降、様々な種族が〝神々の技〟模倣を行なうようになり、研究発達していった。
このように圧倒的な力を潜在的に持つ魔法ではあるが、誰しもが扱える代物ではなかった。人間種では先天的な才能が必要で、更に才能を持って生まれた者でも後天的な訓練と研鑚を必要としている。
そんな魔法の中で〝錬体術〟の魔法は難易度が低いわりに高い効果が期待出来る魔法であり〝混沌の僕〟と戦うミリア達〝スレイヤー〟にとって必須の魔法とされていた。体力や素早さはもちろんのこと、視力、聴力等の五感も底上げすることが出来るためだ。彼女はサージが〝錬体術〟の魔法を学んだ経緯や場所を知ることで、目の前に座る謎の戦士の経歴を推定しようとしたのである。
早速とばかりに給仕役の女性が置いて行った盃を手に取ると、女戦士ミリアはテーブルの正面に座るサージに問い掛けた。
「とりあえず、乾杯だな・・・もちろん傭兵だ。隊商の護衛をやりながら移動して、噂を集めて化物の居場所を突き止めていた」
「ああ、乾杯。新たな仲間に!」
サージも盃に手を伸ばすと、ミリアに軽く掲げながら質問に答える。それを合図に二人は白い泡と黄金色の液体、麦酒で喉を潤した。暫定的だったが、仲間となった二人は最寄りの人里まで戻ると酒場で簡単な祝宴を開いたのである。ここでこれからの予定を相談するつもりなのだ。
「ひょっとして、セラン河よりも西から来たのかな?」
「ああ、そうだ。良く分かったな!」
「セラン河の西岸に出現していたケルピーの目撃情報が二週間前あたりから報告されなくなったからね。もしかして、それも君が?」
ケルピーとは水馬と呼ばれる大型の河や湖の周辺に現れる怪物である。見た目は美しい姿をした馬であり、それに惹かれた人間を自身の背に乗せ、水中に引き摺りこんでは憐れな犠牲者の臓物を食らうという悪質な怪物だった。
「ああ、俺が片付けておいた」
「やはり、君か・・・ふう・・・」
サージの告白にミリアは謎が解けたとばかりに感心の溜息を吐いた。
「しかし、ケルピーは狡賢い怪物だと聞いている。君の腕前を疑うわけではないが、よく河の中に逃げられなかったね?」
「ふふふ、まるで現場を見ていたようだな。もちろん逃げられたさ! だからあの性悪馬を河の中まで追い掛けて、組み付いて・・・最後は首の骨を圧し折ってやったよ!」
「それは・・・凄いな・・・」
サージの証言は酒席でのホラ話とも取れる内容だったが、ミリアは苦笑を浮かべて頷く。もちろん、内容を虚偽として判断したからではない。逃げる怪物を執拗なまでに追う男の執念に対してである。
昨日のワーグ討伐で出合った際に理解したことがある。サージは軽口やはったりで脅したり、自分を大きく見せつけるような男ではないのだ。この男がやったと言ったなら、それは間違いなく事実だろう。そして彼女自身はそんな捨身の戦法を選ぶことはなかったが、ケルピーの首を圧し折る行為自体は全くの実現不可能というわけでもなかった。
「やはり、君も〝錬体術〟の魔法を使えるようだね。どこで習ったんだい? 良ければ教えてくれないか?」
暴れる馬の首を圧し折る。そんなことは常識からすれば無理だと思われるが、魔法を使って身体能力を強化すれば不可能ではなかった。
魔法は〝神々の技〟とも言われる秘術であり、神々がこの世界を創り出すために編み出されたとされている。それ故に世界の理に干渉することが可能で、灼熱の炎を創り出す、人間を動物に変化させる等、使い手の技量次第で様々な現象を具現化することが出来た。
特に魔法は戦闘に対して極めて高い効果を発揮することから〝太古の戦い〟以降、様々な種族が〝神々の技〟模倣を行なうようになり、研究発達していった。
このように圧倒的な力を潜在的に持つ魔法ではあるが、誰しもが扱える代物ではなかった。人間種では先天的な才能が必要で、更に才能を持って生まれた者でも後天的な訓練と研鑚を必要としている。
そんな魔法の中で〝錬体術〟の魔法は難易度が低いわりに高い効果が期待出来る魔法であり〝混沌の僕〟と戦うミリア達〝スレイヤー〟にとって必須の魔法とされていた。体力や素早さはもちろんのこと、視力、聴力等の五感も底上げすることが出来るためだ。彼女はサージが〝錬体術〟の魔法を学んだ経緯や場所を知ることで、目の前に座る謎の戦士の経歴を推定しようとしたのである。
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