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その45
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半可視状の霧を完全に捉えた光の束は、それだけでは済まず射線の終着地点である広間の壁をも穿つ。掛けられていたカーテンはもちろんのこと、石壁、更にはその奥の岩盤をも消滅させていく。突如、大穴を開けられた広間はその破壊行為に耐えられず、天井の一部が崩落した。
「こ、これは・・・〝光弾〟の応用?!」
サージが放った凄まじい光の奔流〝閃光砲〟に驚きながらも、ミリアはその正体を看破する。魔力を純粋な破壊エネルギーに変換して射出する発想は、比較的初級の攻撃魔法である〝光弾〟と原理的な違いはない。
だが、本来この魔法はサージと戦った女バンパイアのように、小さな光の矢を創り出して人型程度の目標に対して使用することを前提としている。決して大規模な破壊を齎すための魔法ではなかった。
なぜなら、魔力を純粋な破壊エネルギーに変換するには効率が悪いからである。一人あるいは数体の敵を倒すために〝光弾〟を創り出すなら費用効果が見込めるが、広範囲の破壊や大量の敵を倒す目的ならば、もっと効率の良い攻撃魔法、灼熱の炎を創り出す〝火球〟や目標地点で衝撃波を起こす〝爆発〟等が存在する。
もっとも、膨大な魔力を消費する代わりに〝閃光砲〟には圧倒的な利点もあった。それは如何なる存在にも効果が認められるという点である。
この世界には四大元素の恩恵を色濃く受けた生物や魔法に対して極めて高い抵抗性を持った者達が存在する。例えば、最強の魔獣と呼ばれるドラゴン種である。彼らの始祖は神々と同時期に生まれたとされるだけに、その神々が創り出したとされる魔法の影響を受け難い。
だが、魔力を直接、破壊エネルギーに変化させる〝閃光砲〟は別だ。純粋なエネルギーだけに物体を持つ存在には確実にその効果を発揮する。直撃を受ければドラゴン族のように人間にとっては肉体的にも霊的にも上位に位置する者も無事では済まないだろう。それだけにサージの〝閃光砲〟は彼だけが使用する規格外の災厄とも呼べる魔法だった。
「い、今のが地震の正体だな! これではヘリオ達も・・・貴様、本当に何者なのだ?!」
そんな破壊の権化である〝閃光砲〟を包み込まれる形で受けたジェダだったが、再び実体を現すと改めてサージの正体を問い質した。
身体の至る所に軽度の火傷を負ってはいるものの、それも肉体再生によって見る間に修復されていく。どちらかと言えば肉体的ダメージよりも〝閃光砲〟が示した威力とそれを放った敵の能力に精神的動揺を示しているようだ。だが、それでもジェダは健在していた。
「やはり・・・大して効かなかったか・・・」
敵を一気に消し去るつもりでいたサージだったが、こちらは焦ることなく淡々と事実を認め、霧状態になったバンパイアは単に身体を変化させただけではなく、幽霊のような霊体となっていたのだと理解する。
多少ではあるがダメージを負わせられたことから、完全な霊体ではなく、半霊体のような状態だと推測するが、いずれにしてもジェダは自身の切り札である〝閃光砲〟を防ぎきったのは間違いない。もう一発と言わず、連発することも可能だが、それは地下であるこの場所が耐えられないだろう。自身が生き埋めになる危険があった。
「ははは、むろんだ! 私には〝あの方〟の加護がある。故に不滅だ! 姉さん! これでもまだ、僕を滅ぼす気かい?!」
サージの呟きを弱音と判断したか、あるいは〝閃光砲〟を防ぎきったことを僅かに遅れて実感したのか、ジェダは高笑いを上げながら自身が持つ〝混沌の加護〟を姉であるミリアに誇示する。
「サージ! やはり・・・ジェダを倒すには〝墓所〟の秘密を暴く必要があるようです。・・・ここは撤退しましょう! 私が殿を務めます!!」
無敵とも思われる耐久力を見せつけるジェダを前にしてミリアは苦渋の選択を口にする。これまでなし崩しの形で宿敵である弟と戦っていたが、本来の予定と違い彼の力の源である〝墓所〟について全く対策を取っていない。
認めがたい事実ではあるが、弟は先程のサージの規格外の攻撃魔法(この時点で彼女は〝閃光砲〟の正しい名称を知らない)を凌いでいる。この恐るべき災厄の光を直撃させて倒せないのだから、やはり真祖であるジェダを倒すには〝墓所〟を先に攻略しなくてはならないと気付かせられたのである。
そのために、ミリアは例え、自分を犠牲にしてもサージをここから脱出させると決意する。いつの日か彼がジェダを必ず倒してくれると信じて。
「ああ!! 奴の秘密の〝墓所〟だったな! それなら・・・中庭にあるらしいぞ! 言おうと思っていたら忘れていた!」
激しい決意を持って撤退をサージに告げたミリアだったが、当の本人は涼しい顔で〝墓所〟の在り処を公言する。
「ええ!! そ、それは事実なので・・・いや! 確かに中庭は私達にとって・・・」
「そんなわけだから、そっちはお前に任す! 俺はこのままジェダと戦い続けて、この場に釘付けにする!」
打倒ジェダを実現するための最重要情報を、ついでとばかりに告げるサージにミリアは驚きと戸惑いの色を見せるが、直ぐに目から鱗が落ちたように息を飲む。
ミリア姉弟にとって、かつて中庭にあった小さな庭園は母との思い出の地だ。母を愛するが故に〝混沌〟に飲み込まれた弟が〝特別〟な場所とするには充分な根拠があった。
「り、了解しました!!」
「ああ、俺が蹴破ってきた箇所を辿れ! そうすれば地上に出るはずだ!」
サージがどのようにして〝墓所〟の場所を突き止めたのかは不明だったが、信憑性の高い情報としてミリアは彼の提案を受け入れる。もし、この城でバンパイアに転生する儀式を行うとしたら、自分も母の思い出が色濃く残る中庭を選んことだろう。
「い、行かせるか!!」
当然ながら、目の前で自分を倒す算段をする二人にジェダは怒りを露わにし、移動を開始したミリアに襲い掛かる。それは〝墓所〟の在り処を認める答え合わせでもあった。
「おっと! お前の相手は俺だ!! 完全に死ぬまで、何度でも倒してやる! この世に真の不滅なんてもんは存在しない! なぜなら神々でさえもその肉体を失ったのだからな!」
姉弟の間に割って入りながらサージは、バンパイアであるジェダに神話の結末を言い放った。
「こ、これは・・・〝光弾〟の応用?!」
サージが放った凄まじい光の奔流〝閃光砲〟に驚きながらも、ミリアはその正体を看破する。魔力を純粋な破壊エネルギーに変換して射出する発想は、比較的初級の攻撃魔法である〝光弾〟と原理的な違いはない。
だが、本来この魔法はサージと戦った女バンパイアのように、小さな光の矢を創り出して人型程度の目標に対して使用することを前提としている。決して大規模な破壊を齎すための魔法ではなかった。
なぜなら、魔力を純粋な破壊エネルギーに変換するには効率が悪いからである。一人あるいは数体の敵を倒すために〝光弾〟を創り出すなら費用効果が見込めるが、広範囲の破壊や大量の敵を倒す目的ならば、もっと効率の良い攻撃魔法、灼熱の炎を創り出す〝火球〟や目標地点で衝撃波を起こす〝爆発〟等が存在する。
もっとも、膨大な魔力を消費する代わりに〝閃光砲〟には圧倒的な利点もあった。それは如何なる存在にも効果が認められるという点である。
この世界には四大元素の恩恵を色濃く受けた生物や魔法に対して極めて高い抵抗性を持った者達が存在する。例えば、最強の魔獣と呼ばれるドラゴン種である。彼らの始祖は神々と同時期に生まれたとされるだけに、その神々が創り出したとされる魔法の影響を受け難い。
だが、魔力を直接、破壊エネルギーに変化させる〝閃光砲〟は別だ。純粋なエネルギーだけに物体を持つ存在には確実にその効果を発揮する。直撃を受ければドラゴン族のように人間にとっては肉体的にも霊的にも上位に位置する者も無事では済まないだろう。それだけにサージの〝閃光砲〟は彼だけが使用する規格外の災厄とも呼べる魔法だった。
「い、今のが地震の正体だな! これではヘリオ達も・・・貴様、本当に何者なのだ?!」
そんな破壊の権化である〝閃光砲〟を包み込まれる形で受けたジェダだったが、再び実体を現すと改めてサージの正体を問い質した。
身体の至る所に軽度の火傷を負ってはいるものの、それも肉体再生によって見る間に修復されていく。どちらかと言えば肉体的ダメージよりも〝閃光砲〟が示した威力とそれを放った敵の能力に精神的動揺を示しているようだ。だが、それでもジェダは健在していた。
「やはり・・・大して効かなかったか・・・」
敵を一気に消し去るつもりでいたサージだったが、こちらは焦ることなく淡々と事実を認め、霧状態になったバンパイアは単に身体を変化させただけではなく、幽霊のような霊体となっていたのだと理解する。
多少ではあるがダメージを負わせられたことから、完全な霊体ではなく、半霊体のような状態だと推測するが、いずれにしてもジェダは自身の切り札である〝閃光砲〟を防ぎきったのは間違いない。もう一発と言わず、連発することも可能だが、それは地下であるこの場所が耐えられないだろう。自身が生き埋めになる危険があった。
「ははは、むろんだ! 私には〝あの方〟の加護がある。故に不滅だ! 姉さん! これでもまだ、僕を滅ぼす気かい?!」
サージの呟きを弱音と判断したか、あるいは〝閃光砲〟を防ぎきったことを僅かに遅れて実感したのか、ジェダは高笑いを上げながら自身が持つ〝混沌の加護〟を姉であるミリアに誇示する。
「サージ! やはり・・・ジェダを倒すには〝墓所〟の秘密を暴く必要があるようです。・・・ここは撤退しましょう! 私が殿を務めます!!」
無敵とも思われる耐久力を見せつけるジェダを前にしてミリアは苦渋の選択を口にする。これまでなし崩しの形で宿敵である弟と戦っていたが、本来の予定と違い彼の力の源である〝墓所〟について全く対策を取っていない。
認めがたい事実ではあるが、弟は先程のサージの規格外の攻撃魔法(この時点で彼女は〝閃光砲〟の正しい名称を知らない)を凌いでいる。この恐るべき災厄の光を直撃させて倒せないのだから、やはり真祖であるジェダを倒すには〝墓所〟を先に攻略しなくてはならないと気付かせられたのである。
そのために、ミリアは例え、自分を犠牲にしてもサージをここから脱出させると決意する。いつの日か彼がジェダを必ず倒してくれると信じて。
「ああ!! 奴の秘密の〝墓所〟だったな! それなら・・・中庭にあるらしいぞ! 言おうと思っていたら忘れていた!」
激しい決意を持って撤退をサージに告げたミリアだったが、当の本人は涼しい顔で〝墓所〟の在り処を公言する。
「ええ!! そ、それは事実なので・・・いや! 確かに中庭は私達にとって・・・」
「そんなわけだから、そっちはお前に任す! 俺はこのままジェダと戦い続けて、この場に釘付けにする!」
打倒ジェダを実現するための最重要情報を、ついでとばかりに告げるサージにミリアは驚きと戸惑いの色を見せるが、直ぐに目から鱗が落ちたように息を飲む。
ミリア姉弟にとって、かつて中庭にあった小さな庭園は母との思い出の地だ。母を愛するが故に〝混沌〟に飲み込まれた弟が〝特別〟な場所とするには充分な根拠があった。
「り、了解しました!!」
「ああ、俺が蹴破ってきた箇所を辿れ! そうすれば地上に出るはずだ!」
サージがどのようにして〝墓所〟の場所を突き止めたのかは不明だったが、信憑性の高い情報としてミリアは彼の提案を受け入れる。もし、この城でバンパイアに転生する儀式を行うとしたら、自分も母の思い出が色濃く残る中庭を選んことだろう。
「い、行かせるか!!」
当然ながら、目の前で自分を倒す算段をする二人にジェダは怒りを露わにし、移動を開始したミリアに襲い掛かる。それは〝墓所〟の在り処を認める答え合わせでもあった。
「おっと! お前の相手は俺だ!! 完全に死ぬまで、何度でも倒してやる! この世に真の不滅なんてもんは存在しない! なぜなら神々でさえもその肉体を失ったのだからな!」
姉弟の間に割って入りながらサージは、バンパイアであるジェダに神話の結末を言い放った。
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