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その44
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「サージ! まだいけるわよね? 私は右から攻めるわ!」
これまでジェダの追撃を牽制していたミリアがサージに訴える。今の状態でも彼が全力を出していないのは彼女も理解していたが、それは宿敵の弟も一緒である。彼女としては数的有利を使って、ジェダが本気になる前にその肉体を滅ぼすべきだと判断していた。
「・・・んん」
反対こそしなかったが、その提案にサージは戦意に水を掛けられたかのように声を詰まらせる。先程のジェダの攻撃で受けたダメージを苦しんでいるのではない。明らかにミリアとの連携ではなく、単独でジェダと戦うことを望んでいる仕草だった。
「お願い! サージ! 君にとっては、万が一もないかもしれないけど、ジェダは確実に倒すべき怪物なのよ!!」
「・・・まあ、お前からすればそうなのだろうな・・・」
「どうしたんだ、姉さん! 仲間割れか?! やはり友達は選ぶべきだよ! そんな冴えない男は姉さんには似合わない!」
ある程度とは言え、ミリアの心情を理解しているのだろう。サージにしては一蹴にせず、歯切れの悪い言葉で返すが、ジェダはそれ見たことかと姉を煽った。
「冴えないとはなんだ!!」
まるでジェダが発した自分への悪態が免罪符とばかりにサージは単独で斬り掛かる。具現化された黒い魔力の腕が彼を捕える、あるいは押し潰そうと迫るが、何度も同じ攻撃に翻弄されるサージではない。紙一重で潜(くぐ)り抜けると、すれ違い様にジェダの右脇腹を斬り裂いた。
続いてサージは左足を軸にして反転し、背中からバンパイアを串刺しにしようと突きを繰り出す。だが、それは身体を一瞬で霧状に変化させたジェダによって無力化されてしまった。
自らバンパイアとして転生した真祖には数多くの〝混沌の加護〟が授けられていた。眷属ですら持つ定命からの解放と肉体再生はもちろんの事、視線による魅了、そして、肉体を変化させる変身能力もその一つだ。バンパイアはその身を蝙蝠、狼、霧等に姿を変えることが出来る。特に霧は半霊体とも言える状態になるので、物理的には無敵と言える。この姿に変化されては生半可なことでは、ダメージを与えるどころか止めることさえ難しい。
「おのれ! この私の身体に一度ならず二度も傷を! その醜い顔を引き裂いてやる!」
サージは広間の奥に退く霧に狙いを定めるため左手を向けるが、ジェダはこのまま逃げることはなく実体を現す。人間なら致命傷となる斬り裂かれた脇腹も完全に修復されており、未だ健在とばかりに更なる雑言でサージを罵った。
「いや待て! 俺は醜くはないだろう! むしろ、そこそこイケてる方だ!」
奥の手である、射線状の物体を対消滅させる〝閃光砲〟を撃ち出そうと魔力を高めていたサージだが、しつこいジェダの当てこすりに反論を行なう。自身の美醜にそこまで拘りはなかったが、何度も言われっぱなしでは納得がいかなかったのである。
「自惚れるな! 下郎! 貴様など、私に比べれば道端の石にも劣るわ!」
「・・・ミリア! お前はどう思う? 客観的に答えてくれ!」
自分の主張を頑として聞き入れないばかりか、更に嘲るジェダに対してサージはこの場に存在するもう一人の人間、ミリアに問い掛ける。
「え!!」
二人の戦いを歯がゆい気持ちで見守っていたミリアは唐突の質問に驚きの声を上げた。サージの雷鳴のような斬撃に対して、一瞬に霧に変化し戦況をふりだしに戻すジェダ。この両者の戦いはマイスターの称号を持つ彼女からしても人の域を超越した戦いだった。
愛用の戦斧〝スマッシャー〟があればまだしも、素手の彼女では迂闊に手出しの出来ない状況である。その最中に、戦いの趨勢とは無関係と思われる顔の造形を尋ねられたのだから、反応に困るは当然のことだった。
「・・・もちろん、サージはなかなかイケてますよ! そうでなかったら・・・仲間に誘っていません!」
それでもミリアは、胸を張ってサージに告げる。
「では、これではっきりしたな! 俺はなかなかイケてる! そして死ね!!」
仲間であるミリアの意見なので中立に欠けてはいるが、これで決着とばかりにサージはそれまで待機させていた〝閃光砲〟をジェダに向かって射出した。相手の存在そのものを消し去ることで論争を終わらせるつもりなのだ。
「な! 仲間の姉さんに聞けば・・・!」
一方的な勝利宣言にジェダは更に怒気を高めるが、サージから発せられた光の奔流に対して、それどころではないと再び霧へと変化する。その瞬間、人間のミリアでさえ直視できないほど強烈に輝く白い閃光が霧となったジェダを飲み込んだ。
これまでジェダの追撃を牽制していたミリアがサージに訴える。今の状態でも彼が全力を出していないのは彼女も理解していたが、それは宿敵の弟も一緒である。彼女としては数的有利を使って、ジェダが本気になる前にその肉体を滅ぼすべきだと判断していた。
「・・・んん」
反対こそしなかったが、その提案にサージは戦意に水を掛けられたかのように声を詰まらせる。先程のジェダの攻撃で受けたダメージを苦しんでいるのではない。明らかにミリアとの連携ではなく、単独でジェダと戦うことを望んでいる仕草だった。
「お願い! サージ! 君にとっては、万が一もないかもしれないけど、ジェダは確実に倒すべき怪物なのよ!!」
「・・・まあ、お前からすればそうなのだろうな・・・」
「どうしたんだ、姉さん! 仲間割れか?! やはり友達は選ぶべきだよ! そんな冴えない男は姉さんには似合わない!」
ある程度とは言え、ミリアの心情を理解しているのだろう。サージにしては一蹴にせず、歯切れの悪い言葉で返すが、ジェダはそれ見たことかと姉を煽った。
「冴えないとはなんだ!!」
まるでジェダが発した自分への悪態が免罪符とばかりにサージは単独で斬り掛かる。具現化された黒い魔力の腕が彼を捕える、あるいは押し潰そうと迫るが、何度も同じ攻撃に翻弄されるサージではない。紙一重で潜(くぐ)り抜けると、すれ違い様にジェダの右脇腹を斬り裂いた。
続いてサージは左足を軸にして反転し、背中からバンパイアを串刺しにしようと突きを繰り出す。だが、それは身体を一瞬で霧状に変化させたジェダによって無力化されてしまった。
自らバンパイアとして転生した真祖には数多くの〝混沌の加護〟が授けられていた。眷属ですら持つ定命からの解放と肉体再生はもちろんの事、視線による魅了、そして、肉体を変化させる変身能力もその一つだ。バンパイアはその身を蝙蝠、狼、霧等に姿を変えることが出来る。特に霧は半霊体とも言える状態になるので、物理的には無敵と言える。この姿に変化されては生半可なことでは、ダメージを与えるどころか止めることさえ難しい。
「おのれ! この私の身体に一度ならず二度も傷を! その醜い顔を引き裂いてやる!」
サージは広間の奥に退く霧に狙いを定めるため左手を向けるが、ジェダはこのまま逃げることはなく実体を現す。人間なら致命傷となる斬り裂かれた脇腹も完全に修復されており、未だ健在とばかりに更なる雑言でサージを罵った。
「いや待て! 俺は醜くはないだろう! むしろ、そこそこイケてる方だ!」
奥の手である、射線状の物体を対消滅させる〝閃光砲〟を撃ち出そうと魔力を高めていたサージだが、しつこいジェダの当てこすりに反論を行なう。自身の美醜にそこまで拘りはなかったが、何度も言われっぱなしでは納得がいかなかったのである。
「自惚れるな! 下郎! 貴様など、私に比べれば道端の石にも劣るわ!」
「・・・ミリア! お前はどう思う? 客観的に答えてくれ!」
自分の主張を頑として聞き入れないばかりか、更に嘲るジェダに対してサージはこの場に存在するもう一人の人間、ミリアに問い掛ける。
「え!!」
二人の戦いを歯がゆい気持ちで見守っていたミリアは唐突の質問に驚きの声を上げた。サージの雷鳴のような斬撃に対して、一瞬に霧に変化し戦況をふりだしに戻すジェダ。この両者の戦いはマイスターの称号を持つ彼女からしても人の域を超越した戦いだった。
愛用の戦斧〝スマッシャー〟があればまだしも、素手の彼女では迂闊に手出しの出来ない状況である。その最中に、戦いの趨勢とは無関係と思われる顔の造形を尋ねられたのだから、反応に困るは当然のことだった。
「・・・もちろん、サージはなかなかイケてますよ! そうでなかったら・・・仲間に誘っていません!」
それでもミリアは、胸を張ってサージに告げる。
「では、これではっきりしたな! 俺はなかなかイケてる! そして死ね!!」
仲間であるミリアの意見なので中立に欠けてはいるが、これで決着とばかりにサージはそれまで待機させていた〝閃光砲〟をジェダに向かって射出した。相手の存在そのものを消し去ることで論争を終わらせるつもりなのだ。
「な! 仲間の姉さんに聞けば・・・!」
一方的な勝利宣言にジェダは更に怒気を高めるが、サージから発せられた光の奔流に対して、それどころではないと再び霧へと変化する。その瞬間、人間のミリアでさえ直視できないほど強烈に輝く白い閃光が霧となったジェダを飲み込んだ。
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