55 / 56
その55
しおりを挟む
それまで微睡という深い泥の底に沈んでいたミリアの意識が覚醒を始めた。それと同時に身体中を襲う激痛に苛まれる。痛まない箇所を探す方が難しいが、彼女はそれを振り切って瞼を開く。何としても目の前に繰り広げられていた決着の行く末を知る必要があるからだ。
「起きたか?」
「サージ!! ジェダは?!!」
見開いた瞳に映ったのは圧倒的な力に翻弄される祠内の石壁ではなく、既に役割を成していない破壊された城門である。その先には白み始めた東の空が見えており、まもなく夜が明ける頃だと思われた。
自分達二人の身が無事であり、現時点で城を去ろうとしていることから、答えは聞くまでもなく分かっていたがミリアは敢えて、間近に浮かぶサージの顔へと問い掛ける。彼から直接答えを得るまではどうしても信じられなかったからだ。
「もちろん倒したぞ。一応、報告しておくが、最後にはお前のことを気に掛けていた」
「そ・・・そうですか・・・本当にやったのですね・・・」
淡々と告げるサージの返答に、ミリアは彼を抱き締めながら自然と涙を溢れさせる。それがを宿願を叶えた嬉し涙なのか、唯一の肉親である弟を失った悲しさなのかは彼女自身にもわからなかった。
「ところで、さっさとズラからないとな! さすがに少々やり過ぎたかもしれん!」
感情を露わにするミリアに対してサージはその身を翻しながら彼女に背後を見せつける。そこには基部が完全に崩落したことで見事なまでに瓦解したかつてのコンサール城の姿があった。
「ふふ、コンサール家は断絶しました。もはや・・・必要のないものです」
あまりに無残な光景に、ミリアは涙を拭いながら苦笑を浮かべる。生まれ育った城ではあるが、彼女にとってはジェダを倒して過去に決別を着けた象徴に思えたからだ。まさにサージらしい結末と言えた。それに生存者達はローザ達によって予め避難させている。憂いを思い起こさせることなどは何一つなかった。
「わかった。ではローザ達と合流しよう」
ミリアの同意を得たことでサージは再び前を向いて歩き出す。
「ああ! 待って下さい、サージ! 自分で歩けます!」
この時になってミリアは初めて自分がサージの腕に抱きかかえられていたことを知覚する。
「そうか・・・こっちの斧はどうする?」
痛みに耐えて地面に降りたミリアにサージは右手で持っていた〝スマッシャー〟を示す。
「ああ! 回収してくれていたのですね・・・そっちはお願いしても良いかな?」
サージへの照れと〝スレイヤー・ギルド〟の〝マイスター〟である誇りから自分で歩くと意地を張ったミリアだが、流石に今の状態で〝スマッシャー〟を担ぐ気力は無く、素直にお願いをする。
「お前がどうするかは知らんが、俺としてはジェダを倒して終りじゃないからな、念のために拾っておいた。・・・では、ローザ達と合流するまでは俺が預かろう」
「ええ・・・私もジェダを倒して終りではありません!!」
早速とばかりに歩き出すサージの背中に、ミリアは自分も〝混沌の僕〟と戦い続ける決意を再確認する。コンサール家のミリアとしての決着は終えたが、この世界にはまだまだ〝混沌の僕〟達が潜んでいる。サージには及ばないとしても、自分の力を遊ばせるわけにはいかない。
「・・・ありがとう・・・サージ・・・」
最後にミリアは戦友であるサージに向って小さく呟くと、彼に続いて新たな戦いに向って歩き出すのだった。
「起きたか?」
「サージ!! ジェダは?!!」
見開いた瞳に映ったのは圧倒的な力に翻弄される祠内の石壁ではなく、既に役割を成していない破壊された城門である。その先には白み始めた東の空が見えており、まもなく夜が明ける頃だと思われた。
自分達二人の身が無事であり、現時点で城を去ろうとしていることから、答えは聞くまでもなく分かっていたがミリアは敢えて、間近に浮かぶサージの顔へと問い掛ける。彼から直接答えを得るまではどうしても信じられなかったからだ。
「もちろん倒したぞ。一応、報告しておくが、最後にはお前のことを気に掛けていた」
「そ・・・そうですか・・・本当にやったのですね・・・」
淡々と告げるサージの返答に、ミリアは彼を抱き締めながら自然と涙を溢れさせる。それがを宿願を叶えた嬉し涙なのか、唯一の肉親である弟を失った悲しさなのかは彼女自身にもわからなかった。
「ところで、さっさとズラからないとな! さすがに少々やり過ぎたかもしれん!」
感情を露わにするミリアに対してサージはその身を翻しながら彼女に背後を見せつける。そこには基部が完全に崩落したことで見事なまでに瓦解したかつてのコンサール城の姿があった。
「ふふ、コンサール家は断絶しました。もはや・・・必要のないものです」
あまりに無残な光景に、ミリアは涙を拭いながら苦笑を浮かべる。生まれ育った城ではあるが、彼女にとってはジェダを倒して過去に決別を着けた象徴に思えたからだ。まさにサージらしい結末と言えた。それに生存者達はローザ達によって予め避難させている。憂いを思い起こさせることなどは何一つなかった。
「わかった。ではローザ達と合流しよう」
ミリアの同意を得たことでサージは再び前を向いて歩き出す。
「ああ! 待って下さい、サージ! 自分で歩けます!」
この時になってミリアは初めて自分がサージの腕に抱きかかえられていたことを知覚する。
「そうか・・・こっちの斧はどうする?」
痛みに耐えて地面に降りたミリアにサージは右手で持っていた〝スマッシャー〟を示す。
「ああ! 回収してくれていたのですね・・・そっちはお願いしても良いかな?」
サージへの照れと〝スレイヤー・ギルド〟の〝マイスター〟である誇りから自分で歩くと意地を張ったミリアだが、流石に今の状態で〝スマッシャー〟を担ぐ気力は無く、素直にお願いをする。
「お前がどうするかは知らんが、俺としてはジェダを倒して終りじゃないからな、念のために拾っておいた。・・・では、ローザ達と合流するまでは俺が預かろう」
「ええ・・・私もジェダを倒して終りではありません!!」
早速とばかりに歩き出すサージの背中に、ミリアは自分も〝混沌の僕〟と戦い続ける決意を再確認する。コンサール家のミリアとしての決着は終えたが、この世界にはまだまだ〝混沌の僕〟達が潜んでいる。サージには及ばないとしても、自分の力を遊ばせるわけにはいかない。
「・・・ありがとう・・・サージ・・・」
最後にミリアは戦友であるサージに向って小さく呟くと、彼に続いて新たな戦いに向って歩き出すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる