スレイヤー・ギルドの非承認戦闘員

月暈シボ

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その54

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「サージ!!」
 自分さえもその恐るべき光の束に飲み込まれる寸前だったミリアだが、サージの名を叫びながら満面の笑みを浮かべる。〝閃光砲〟は彼が健在であることの証明だからだ。
「あ、ありあえない・・・そんな馬鹿な!!」
 足元から伝わる気配から直撃こそ避けたジェダだったが、その青白い顔を更に青くして狼狽を見せる。彼からすれば生き埋めにしたことでサージの始末は着けたはずのだ。
「いや! 今は!!」
 それでも、ジェダは優先順位を忘れることはなく、直ぐに床に開いた大穴の縁に転がるミリアに視線を移す。まずは姉の首を斬り裂いて、儀式を完遂することが先決だからだ。再びミリアを捕えようと彼は襲い掛かるが、それは突如〝閃光砲〟が穿った穴から飛び出た人影に阻まれる。
「さっきはよくもやってくれたな!!」
 長剣の切っ先でジェダの頬を斬りつけながらサージが吠える。身体中が砂と埃まみれだが、損傷らしいダメージはなく戦意にも溢れていた。地下空間を崩されることで生き埋めにされた彼だったが〝錬体術〟で崩落による圧迫に耐えると地下から〝閃光砲〟でジェダを攻撃しつつ脱出ルートを作り出したのだった。
「貴様・・・なぜ生きている化け物か?! いや、それよりも何故、地下から正確な位置を?!」
 ジェダとしてはサージが生きているだけで想定外だったのだが、それよりも的確に自分に対し射出された〝閃光砲〟の謎について問い詰める。
「さあな・・・なんとなくミリアの声が聞えた方に撃っただけだ!」
「おのれ!!」
 うそぶく様なサージの返答にジェダは憤怒を露わにする。常識からすれば、地中深く埋まっている人間の耳にどんな大声で泣き叫びようとも地上の音が届くはずはないのだ。こんなふざけたことを口にする者に順調に進んでいた自分と〝レグルス神〟の野望と計画を止められるのは受け入れ難い事実だった。

「サージ!! 〝墓所〟は破壊しました・・・今こそジェダに止めを!!」
 再び生きてまみえることが出来たサージにミリアは肺の奥から息を掻き出すようにそれだけを告げる。
「そのようだな。 でかしたぞ!」
 先程斬り裂いたジェダの傷が未だに完治していない様を見て取ったサージはミリアを讃える。只の武器ならいざ知らず、サージの魔力を帯びた長剣は〝邪神の加護〟を失ったバンパイアにとって恐るべき凶器と成り変わっていた。
「こ、こんなはずでは!! 貴様、貴様如きに僕の・・・復讐の邪魔を・・・させてたまるか!!!」
 頬の傷を拭いながらジェダは自身に残った魔力を凝縮させる。生き埋めにしたはずのサージが健在で〝墓所〟も破壊されたことで彼の勝算はついえていたのだが、誇り高いジェダにとって降伏は論外である。ジェダは自身の生き様を完遂するべく渾身の力でサージへと襲い掛かった。

「そうだ! それでこそだ!!」
 敗北を悟りながらも戦意を失うことなく正面から攻め立てるジェダを前にして、サージは気炎を吐きながら攻撃態勢を整える。
 逃げる獲物を追いこむのも嫌いではないが、小細工無しに互いの全力をぶつけ合う戦いこそ、サージが最も魂を震わせる瞬間である。ミリアに〝墓所〟を破壊され〝混沌の加護〟を失ったジェダが弱音を吐くことなく、むしろこれまでにないほど戦意をたぎらせて向かって来る敵の姿は彼にとって称賛と敬意に値した。
「こっちも全力だ!!!」
 そう吠えるとサージの身体は燃え上がるように白色化する。肉体の限界を超える圧倒的な魔力を注ぎ込まれたことで、彼の肉体そのものが質量のある魔法エネルギーに変換されたのである。
 彼は異形のレッサーバンパイアであるヘリオ戦においても肉体強化の究極魔法とも呼べるこの〝極致(きょくち)〟を使用していたが、この時は右の拳のみであり、今回は言葉通り得物である長剣を含めて全身を〝極致〟と変化させていた。まさに全力だった。

「貴様の・・・貴様なぞ認めぬぞ!!」
「うおおおお!!」
 サージの存在を否定しながら迫り来るジェダに向って、彼は雄叫びと共に自身の一部となって光輝く長剣を真一文字に振り下ろす。ただそれだけのことで祠の内部には激しい暴風が巻き起こり、サージの両足を支えていた石床が沈み、蜘蛛の巣状の亀裂が中庭全体に広がる。
 二人の決着を見守っていたミリアも倒れていた床ごと吹き飛ばされ、更にはジェダが引き起こした崩落と〝閃光砲〟で穿たれた大穴の影響で相当に脆くなっていたと思われる城の基部が丸ごと陥没する。
 余波だけでそれほどの破壊を齎した一撃である。正面から受けたジェダは斬られるのではなく、圧倒的な力によってその歪んだ魂ごと肉体と共に抹消されてゆく。〝墓所〟を破壊されて〝混沌の加護〟の供給を断たれた彼には、もはやサージの〝極致〟に抗う手段は残されていなかった。
「これが僕の・・・姉さんを・・・たの・・・む・・・」
 この世界から消え去ろうとする寸前にジェダは自らの敵であるサージに向って呟く。それが〝邪神〟の一柱に魂を捧げてバンパイアとなった男が最後に残した言葉だった。
 
 サージ達は討伐対象であるジェダを遂に倒したのである。
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