スレイヤー・ギルドの非承認戦闘員

月暈シボ

文字の大きさ
54 / 56

その54

しおりを挟む
「サージ!!」
 自分さえもその恐るべき光の束に飲み込まれる寸前だったミリアだが、サージの名を叫びながら満面の笑みを浮かべる。〝閃光砲〟は彼が健在であることの証明だからだ。
「あ、ありあえない・・・そんな馬鹿な!!」
 足元から伝わる気配から直撃こそ避けたジェダだったが、その青白い顔を更に青くして狼狽を見せる。彼からすれば生き埋めにしたことでサージの始末は着けたはずのだ。
「いや! 今は!!」
 それでも、ジェダは優先順位を忘れることはなく、直ぐに床に開いた大穴の縁に転がるミリアに視線を移す。まずは姉の首を斬り裂いて、儀式を完遂することが先決だからだ。再びミリアを捕えようと彼は襲い掛かるが、それは突如〝閃光砲〟が穿った穴から飛び出た人影に阻まれる。
「さっきはよくもやってくれたな!!」
 長剣の切っ先でジェダの頬を斬りつけながらサージが吠える。身体中が砂と埃まみれだが、損傷らしいダメージはなく戦意にも溢れていた。地下空間を崩されることで生き埋めにされた彼だったが〝錬体術〟で崩落による圧迫に耐えると地下から〝閃光砲〟でジェダを攻撃しつつ脱出ルートを作り出したのだった。
「貴様・・・なぜ生きている化け物か?! いや、それよりも何故、地下から正確な位置を?!」
 ジェダとしてはサージが生きているだけで想定外だったのだが、それよりも的確に自分に対し射出された〝閃光砲〟の謎について問い詰める。
「さあな・・・なんとなくミリアの声が聞えた方に撃っただけだ!」
「おのれ!!」
 うそぶく様なサージの返答にジェダは憤怒を露わにする。常識からすれば、地中深く埋まっている人間の耳にどんな大声で泣き叫びようとも地上の音が届くはずはないのだ。こんなふざけたことを口にする者に順調に進んでいた自分と〝レグルス神〟の野望と計画を止められるのは受け入れ難い事実だった。

「サージ!! 〝墓所〟は破壊しました・・・今こそジェダに止めを!!」
 再び生きてまみえることが出来たサージにミリアは肺の奥から息を掻き出すようにそれだけを告げる。
「そのようだな。 でかしたぞ!」
 先程斬り裂いたジェダの傷が未だに完治していない様を見て取ったサージはミリアを讃える。只の武器ならいざ知らず、サージの魔力を帯びた長剣は〝邪神の加護〟を失ったバンパイアにとって恐るべき凶器と成り変わっていた。
「こ、こんなはずでは!! 貴様、貴様如きに僕の・・・復讐の邪魔を・・・させてたまるか!!!」
 頬の傷を拭いながらジェダは自身に残った魔力を凝縮させる。生き埋めにしたはずのサージが健在で〝墓所〟も破壊されたことで彼の勝算はついえていたのだが、誇り高いジェダにとって降伏は論外である。ジェダは自身の生き様を完遂するべく渾身の力でサージへと襲い掛かった。

「そうだ! それでこそだ!!」
 敗北を悟りながらも戦意を失うことなく正面から攻め立てるジェダを前にして、サージは気炎を吐きながら攻撃態勢を整える。
 逃げる獲物を追いこむのも嫌いではないが、小細工無しに互いの全力をぶつけ合う戦いこそ、サージが最も魂を震わせる瞬間である。ミリアに〝墓所〟を破壊され〝混沌の加護〟を失ったジェダが弱音を吐くことなく、むしろこれまでにないほど戦意をたぎらせて向かって来る敵の姿は彼にとって称賛と敬意に値した。
「こっちも全力だ!!!」
 そう吠えるとサージの身体は燃え上がるように白色化する。肉体の限界を超える圧倒的な魔力を注ぎ込まれたことで、彼の肉体そのものが質量のある魔法エネルギーに変換されたのである。
 彼は異形のレッサーバンパイアであるヘリオ戦においても肉体強化の究極魔法とも呼べるこの〝極致(きょくち)〟を使用していたが、この時は右の拳のみであり、今回は言葉通り得物である長剣を含めて全身を〝極致〟と変化させていた。まさに全力だった。

「貴様の・・・貴様なぞ認めぬぞ!!」
「うおおおお!!」
 サージの存在を否定しながら迫り来るジェダに向って、彼は雄叫びと共に自身の一部となって光輝く長剣を真一文字に振り下ろす。ただそれだけのことで祠の内部には激しい暴風が巻き起こり、サージの両足を支えていた石床が沈み、蜘蛛の巣状の亀裂が中庭全体に広がる。
 二人の決着を見守っていたミリアも倒れていた床ごと吹き飛ばされ、更にはジェダが引き起こした崩落と〝閃光砲〟で穿たれた大穴の影響で相当に脆くなっていたと思われる城の基部が丸ごと陥没する。
 余波だけでそれほどの破壊を齎した一撃である。正面から受けたジェダは斬られるのではなく、圧倒的な力によってその歪んだ魂ごと肉体と共に抹消されてゆく。〝墓所〟を破壊されて〝混沌の加護〟の供給を断たれた彼には、もはやサージの〝極致〟に抗う手段は残されていなかった。
「これが僕の・・・姉さんを・・・たの・・・む・・・」
 この世界から消え去ろうとする寸前にジェダは自らの敵であるサージに向って呟く。それが〝邪神〟の一柱に魂を捧げてバンパイアとなった男が最後に残した言葉だった。
 
 サージ達は討伐対象であるジェダを遂に倒したのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...