ボッチを解消する方法?~そうだ、異世界から召喚しよう!~

月暈シボ

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第十五話

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「諸君が魔術士、帝国士官の更なる高見を目指そうとする志を学院長として誇りに思う。可能ならば全員にその資格を与えたいくらいだ。だが、ミゴールへの昇格には伝統に従って今回の試練に乗り越えた者にだけ開かれている。これは諸君達のこれまで学んだ魔法力と知識だけでなく、仲間と協力して困難に立ち向かう協調性も試している。帝国は強大なだが、不滅ではない。東にはメルゴン族が台頭しつつあり、西の辺境には先の内乱の残党が虎視眈々と帝国への復権を狙っている。この状況では帝国士官に求められる期待はこれまで以上に高まりつつある。諸君は今回の試練を乗り越えて、帝国の期待に応えられることを証明してほしい!」
 続いて学院長の訓辞が行なわれ、それをミーレ達は杖を持って胸の前に掲げるベルゼート帝国式の敬礼で答える。魔法を使えないヒロキもミーレとして敬礼を行う。慣れない動作と習慣だが、今回に備えて練習してきていた。

「では、くじ引きの紙に記されている順番に従って、地下への挑戦を開始せよ!」
 敬礼を終えるとアルビセスの指示に従い受験生達が移動を開始する。広間の北側には両開き式の門が設置されており、それは見るからに重厚な黒い金属で出来ていた。扉の前に立っている監督役の導師がその扉に手を翳すと鈍く光り始め見えない力によって外側に向かって開かれる、扉の奥は下に続く階段となっていた。
「こっちだ、ヒロキ」
 自分の世界ではあり得ない光景に見惚れていたヒロキにイサリアが促す。順番どおりに並んでいないと最後尾に回されるためだ。試験の期限は二十四時間後の明日の正午なので、時間的にはかなりの余裕があるが、わざわざ最初から時間をロスする必要はない。
「私達は五番目だ、急げ!」
 先頭の組が階段に足を入れたところでヒロキ達は列に並ぶ。さすがに一気に侵入させてはトラブルの元となるためだろう、監視役の導師によって三十秒程ほどの間隔を挟んでの受験生達はゆっくりと地下へ歩んで行く。
「次は五番。・・・ミーレ・リゼートの組か、君の実力なら問題ないと思うが、慢心は禁物だぞ!」
「警告に感謝します、導師ボロンデル」
 監督役の導師から声を掛けられたイサリアはお礼を告げて門を潜る。ヒロキも黙礼をしてその後に続いた。
「この学院の導師は個性の幅が広いね」
 しばらく黙々と階段を降りていたヒロキは、杖の先に魔法の光源を灯して先頭を歩むイサリアに小声で話し掛ける。先程のボロンデルは穏健派で知られる導師だ。見た目も中肉中背の中年男性とあって目立つことはないが、堅実的で温厚な性格はミーレ達に人気があり信頼されていた。
 講義科目は具現魔法と呼ばれる魔力を物体として具現化させる魔法を担当しているが、歴史の講義も受け持っており、こちらはヒロキもイサリアの薦めで何回か受講していてボロンデルとは面識があった。同じ学院内にアルビセスやシャルレーのような個性派から彼や学院長のような良識的な導師と様々な人材が揃っていることをヒロキは指摘したのだ。
「うむ、確かにその傾向はある。もっとも、高位の魔法技術を習得したから個性的になるのか?個性的だからこそ高みに辿り着くまで魔法の研鑚を続けられるのか?どちらが正しいか以前から議論になっている」
「イサリアはどう思うの?」
 イサリアに返事に興味を持ったヒロキが更に問い掛ける。彼からすればこの金髪の美少女もかなり個性的なのだが、本人がどう認識しているか気になったのだ。その間も彼らは緩いカーブを描く狭い螺旋階段を下に向かって降りて行く。

「・・・私としては、どちらでもないと思う。人は皆本来個性的なのだ。だが、人間は社会を作る生き物だ。その社会が求める、もしくは求められる役割に沿わないとならない。社会に居場所を求めるのならば、発揮できる個性は限られて抑圧しなくてはならないのだ。そして、導師級の魔術士ともなれば実力はもちろんだが、数においても貴重な存在だ。貴重となれば多少のことは許される。これが私なりの解釈だ」
「そうか・・・でも、さっきの導師ボロンデルや学長はその力を持っているのに善人と言うか、人間として落ち着いているように見えるけど?」
「善悪とは価値観や見方で変化する危うい基準だ。学院長や導師ボロンデルが教育者として頼もしいのは認めるが、それは教育者としての基準で個人の絶対的な評価には出来ない。ヒロキ、人間は自分に都合が良い存在を善としているに過ぎないのだ。・・・とは言え、人間は社会を作る生物なのだから、やはり人に好かれるというのは美徳であると認めるべきであろうな」
「なるほど・・・」
 イサリアの解答にヒロキは感慨深く相槌を打つ。本来は彼女を軽くからかう程度のつもりだったのだが、思っていた以上に人間の本質に迫る意見を聞かされてしまった。イサリアの考えが必ずしも正解であるとは思わないが、彼女が自分よりも遙かに大人の視線で世の中を視ていることに感慨を覚えるしかなかった。
「ヒロキ、広間が見えてきた。これからが本番だ、頼むぞ!」
「わかった!」
 イサリアの呼び掛けに、ヒロキは肩に掛かる背負い袋の重さを確認して力強く頷く。彼はイサリアに制限なく活躍してもらうために、食料や探索に必要と思われる道具等の荷物持ちを担当していた。正直に言えば地下迷宮と試練への不安と恐怖はあったが改めて覚悟を決めた。
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