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第十四話
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今年のミゴール昇格試験を受けるミーレの数は十六組、総勢三十二人で行われる。試験の平均合格率は七割ほどなので決して狭い門ではないのだが、今回不合格となると、もう一年ミーレとして過ごし次の年度に再挑戦となる。そして試験中に命を落とすミーレが十年に一人程の割合で出ていた。
特別に高い数字ではないように思えるが、毎年平均三十人が挑戦するとして三百人に一人が死者となる。命のリスクとしては決して楽観できない数値だ。
そのためであろう、学院に聳える三つの塔の一つ、第一研究棟の地下一階広間に集められた受験生達は緊迫した気配を漂わせていた。その中にあってヒロキも堅い表情で周囲を眺めている。もっとも、彼はイサリアとの約束を果たすために参加するのでミゴールへの昇格については無関心でいられた。
それだけに予断を許されない試練ではあったが、多少の余裕を保つことが出来た。専念すべきは試験の合格ではなく、自分とイサリアの身の安全なのだ。
「課題が決まったぞ、第五層のどこかにある蛇の置物だそうだ」
「なるほど・・・」
ヒロキはくじ引きから戻ってきたイサリアに頷いた。昇格試験の内容は学院地下に存在する迷路のような施設から課題の品物を回収して戻ることだ。
内部はエーレでも対応出来ると判断されたモンスターが徘徊し、受験者の戦闘能力や危機判断能力が問われる。またそれら以外にも数々の魔法を駆使しないと先に薦めない試練が用意され魔術士としての総合的な力を試す場となっていた。
課題の品や試練は既に学院の導師達によって地下の第四層から第六層に渡って配置されている。場所によっては難易度が変化するので、公平性を保つために回収する課題物はくじ引きで決められるのだ。
くじ引きが受験者の代表全員に行き渡ったのだろう。周囲からは歓声に似た声や不満の声が漏れる。一概には言えないそうだが、低層ほど難易度が下がる傾向にあるらしい。指定の場所によって一喜一憂するのは当然と言える。そして、イサリアのくじ運は特に良くも悪くもないということだ。
「イサリア達は第五層なの?私達は残念なことに一番深い第六層だったよ」
「うむ、そちらは運がなかったな。おそらく、くじを引いたエリザの日頃の行いが悪いのであろうな」
「ちょっと、イサリア!非論理的な中傷はやめて下さい。単に確立の結果に過ぎません。それに私達ならどこであろうと問題はありませんわ!」
近くにいたクロリスとエリザがイサリアの言葉に反応して声を掛けて来た。彼女達もペアを組んで今回の昇格試験に挑んでいる。この二人とは先日のクロリスの相談以降も何かと縁があり、ヒロキはこれまでの学院生活で親交を深めていた。
正確にはイサリアとエリザのちょっとした争いに巻き込まれていただけなのだが、彼にとしては女の子達と絡めることに異論はなく、昇格試験を控えた一週間の良い息抜きとなっていた。
イサリアとエリザは生まれた家が政敵関係ということで、お互いをライバル視しているが、逆に言えばお互いをライバルに該当すると認めていることでもある。
そのため当初は言い争いを始める二人を心配しながら眺めていたヒロキもこの頃では仲の悪い姉妹喧嘩として扱うようになっていた。一時はクロリスが心配していたエリザの様子だったが、イサリアとやり合う様子に暗い影は見えない。そこまで深刻な悩みではなかったのか、乗り越えたに違いなかった。
「もう、二人とも!一緒に頑張ろうってくらい言おうよ!」
「うむ、エリザはともかくクロリスの成功を信じているぞ!」
「まあ、あいかわらず可愛くないことを!ヒロキさん、イサリアが地下の暗闇で泣きべそを掻くようなことがありましたら後で教えて下さいね」
「え、そんなことはないと思うよ・・・」
「もう、エリザ!イサリアもだけど、ヒロキ君を喧嘩に巻き込まないの!」
仲裁に入るクロリスにヒロキは感謝の笑みを向ける。彼女もエリザがいつもの調子を取り戻したことで平静を取り戻したに違いない。
また、今回のように間に挟まれたヒロキを助けてくれる穏やかなクロリスは、イサリア達に何かと振り回され気味な彼にとってもありがたい存在だった。
「これより試験に臨む前の最終確認を行う。くじ引きの際の渡した水晶玉は緊急避難装置だ。これは床に叩きつける等して割れば、強制的にこの場所に瞬間移動する効果を持っている。使用すれば試験の途中棄権を認めることになるが、・・・生きていれば機会はある。死の危機に際した場合には迷わず使用するように!」
前方に居並んだ導師達の一人アルビセスが口を開くと、受験生達はそれまでの私語を止めて崩れた列を整えて警告に耳を傾ける。ヒロキも皆に倣って背筋を伸ばした。
説明がされた水晶はイサリアを通じてヒロキにも渡されている。これは魔道具と言われる予め魔法を封じ込めた水晶で、指摘のとおり割ることで魔法を発動させることが出来る道具だ。今回は導師達によって〝離脱〟の魔法を封じ込められて受験生達に配われた。危険を伴う試練ではあるが、学院側も受験者の安全にはかなりの配慮をしていた。
特別に高い数字ではないように思えるが、毎年平均三十人が挑戦するとして三百人に一人が死者となる。命のリスクとしては決して楽観できない数値だ。
そのためであろう、学院に聳える三つの塔の一つ、第一研究棟の地下一階広間に集められた受験生達は緊迫した気配を漂わせていた。その中にあってヒロキも堅い表情で周囲を眺めている。もっとも、彼はイサリアとの約束を果たすために参加するのでミゴールへの昇格については無関心でいられた。
それだけに予断を許されない試練ではあったが、多少の余裕を保つことが出来た。専念すべきは試験の合格ではなく、自分とイサリアの身の安全なのだ。
「課題が決まったぞ、第五層のどこかにある蛇の置物だそうだ」
「なるほど・・・」
ヒロキはくじ引きから戻ってきたイサリアに頷いた。昇格試験の内容は学院地下に存在する迷路のような施設から課題の品物を回収して戻ることだ。
内部はエーレでも対応出来ると判断されたモンスターが徘徊し、受験者の戦闘能力や危機判断能力が問われる。またそれら以外にも数々の魔法を駆使しないと先に薦めない試練が用意され魔術士としての総合的な力を試す場となっていた。
課題の品や試練は既に学院の導師達によって地下の第四層から第六層に渡って配置されている。場所によっては難易度が変化するので、公平性を保つために回収する課題物はくじ引きで決められるのだ。
くじ引きが受験者の代表全員に行き渡ったのだろう。周囲からは歓声に似た声や不満の声が漏れる。一概には言えないそうだが、低層ほど難易度が下がる傾向にあるらしい。指定の場所によって一喜一憂するのは当然と言える。そして、イサリアのくじ運は特に良くも悪くもないということだ。
「イサリア達は第五層なの?私達は残念なことに一番深い第六層だったよ」
「うむ、そちらは運がなかったな。おそらく、くじを引いたエリザの日頃の行いが悪いのであろうな」
「ちょっと、イサリア!非論理的な中傷はやめて下さい。単に確立の結果に過ぎません。それに私達ならどこであろうと問題はありませんわ!」
近くにいたクロリスとエリザがイサリアの言葉に反応して声を掛けて来た。彼女達もペアを組んで今回の昇格試験に挑んでいる。この二人とは先日のクロリスの相談以降も何かと縁があり、ヒロキはこれまでの学院生活で親交を深めていた。
正確にはイサリアとエリザのちょっとした争いに巻き込まれていただけなのだが、彼にとしては女の子達と絡めることに異論はなく、昇格試験を控えた一週間の良い息抜きとなっていた。
イサリアとエリザは生まれた家が政敵関係ということで、お互いをライバル視しているが、逆に言えばお互いをライバルに該当すると認めていることでもある。
そのため当初は言い争いを始める二人を心配しながら眺めていたヒロキもこの頃では仲の悪い姉妹喧嘩として扱うようになっていた。一時はクロリスが心配していたエリザの様子だったが、イサリアとやり合う様子に暗い影は見えない。そこまで深刻な悩みではなかったのか、乗り越えたに違いなかった。
「もう、二人とも!一緒に頑張ろうってくらい言おうよ!」
「うむ、エリザはともかくクロリスの成功を信じているぞ!」
「まあ、あいかわらず可愛くないことを!ヒロキさん、イサリアが地下の暗闇で泣きべそを掻くようなことがありましたら後で教えて下さいね」
「え、そんなことはないと思うよ・・・」
「もう、エリザ!イサリアもだけど、ヒロキ君を喧嘩に巻き込まないの!」
仲裁に入るクロリスにヒロキは感謝の笑みを向ける。彼女もエリザがいつもの調子を取り戻したことで平静を取り戻したに違いない。
また、今回のように間に挟まれたヒロキを助けてくれる穏やかなクロリスは、イサリア達に何かと振り回され気味な彼にとってもありがたい存在だった。
「これより試験に臨む前の最終確認を行う。くじ引きの際の渡した水晶玉は緊急避難装置だ。これは床に叩きつける等して割れば、強制的にこの場所に瞬間移動する効果を持っている。使用すれば試験の途中棄権を認めることになるが、・・・生きていれば機会はある。死の危機に際した場合には迷わず使用するように!」
前方に居並んだ導師達の一人アルビセスが口を開くと、受験生達はそれまでの私語を止めて崩れた列を整えて警告に耳を傾ける。ヒロキも皆に倣って背筋を伸ばした。
説明がされた水晶はイサリアを通じてヒロキにも渡されている。これは魔道具と言われる予め魔法を封じ込めた水晶で、指摘のとおり割ることで魔法を発動させることが出来る道具だ。今回は導師達によって〝離脱〟の魔法を封じ込められて受験生達に配われた。危険を伴う試練ではあるが、学院側も受験者の安全にはかなりの配慮をしていた。
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