ボッチを解消する方法?~そうだ、異世界から召喚しよう!~

月暈シボ

文字の大きさ
21 / 33

第二十話

しおりを挟む
「どうやらこの先が音の発生源のようだ・・・中に入るが覚悟はいいか?」
「うん」
 第六層に降りた彼らは順調に音源と思われる部屋を突きとめると改めて確認し合う。助けを求められてはいるが、状況は不明だ。最悪の事態の備える必要がある。ヒロキはイサリアに頷くと扉のない部屋への突入を開始した。
「ああ、誰か・・・助けて!」
 警戒して部屋に侵入したヒロキは擦れた女性の声に迎えられる。彼が照らし出す魔法の灯かりに反応したのだ。
「クロリス!クロリスではないか?!」
 ヒロキが部屋の片隅でうつ伏せになって倒れる人影を見つける前にイサリアが声を上げた。
「ああ!イサリア!お願い助けて!エリザが!エリザが!」
「待て!落ち着け!まずはクロリス自身の治療からだ!ヒロキ!回りを警戒してくれ!」
「・・・わかった!」
 弱々しく顔上げた人物がクロリスで、その顔に赤黒い液体が付着していることにヒロキは二重の衝撃を覚えるが、イサリアの指摘を受けると部屋の内部とそこに繋がる通路に視線を向ける。
 クロリスに何が起ったのかは不明だが、今の状況でモンスターに襲われれば面倒なことになるのは間違いない。それに備える必要があった。

「二人で探索していたが、突然何者かに襲われて気絶。しばらくして意識を取り戻したが、その時にはエリザはいなくなっており、頭部の怪我で満足に動けず、短剣で床を叩いて助けを呼んでいたのだな?」
 クロリスに治癒魔法を授けたイサリアは彼女の説明を簡潔にまとめ上げると確認を行う。幸いにしてクロリスの怪我は出血の割の浅く、傷は直ぐに修復された。
 もっとも、頭部へのダメージなので手当てが遅れていたら取り返しがつかないことになっていたかもしれない。
「そう・・・どれだけ意識を失っていたかはわからないけど、襲われるまではエリザと一緒だったから、彼女だけ連れ去れたのだと思う・・・」
「なるほど。クロリスは襲った敵を見たのか?」
「いいえ・・・。完全に不意を突かれたから見ていないの・・・でも気配からして人間だったと思う・・・それも只者ではないかと・・・でなければ私達が不意打ちを受けるわけないわ・・・」
「・・・それが事実ならこの地下迷宮に悪意を持った第三者が紛れていることになるな・・・。信じられないことだが、連れ去れたのがエリザとなるとあり得ないことでないか・・・」
「まさか・・・以前にもクロリスさんが心配していた例の件?」
 周囲の警戒を続けながらもヒロキはイサリアへ問い掛ける。クロリス達に起った状況は判明しつつあったが、なぜエリザが攫われたのかは理解出来なかったからだ。
「うむ、そうだ。あれから私も気になって実家にそれとなく手紙で聞き出したのだが、やはりバルゲン家は今、世継ぎ争いで揉めているらしい。この国では女子にも家長になる権利がある。彼女に何かあればバルゲン家内の序列は大きく変わることになる。皇帝位が公家の持ち回りであることはヒロキにも説明したろう。これにはある程度のパターンがあって、リゼート家の後は反動とも言える現象でバルゲン家が襲う可能性がかなり高いのだ。それ故に次代のバルゲン家の当主となる者は将来の有力な皇帝候補となる」
「え!・・・エリザさんって将来の皇帝候補だったの?」
「ああ、そうだ。我がリゼート家は今の代で皇帝を出してしまったからな。私よりも遙かに可能性が高いぞ」
「まじか!エリザさんってそんなにすごい人だったのか!・・・それにイサリアも低いとは言え可能性があるのか・・・いや、今は・・・それじゃ彼女はお家騒動に巻き込まれたってこと?!」

 イサリアから明かされた事実に驚くヒロキだったが、優先順位を思い出して話を戻す。
「・・・私はその可能性が高いのではと思う。だが、他の家の妨害である可能性も否定できない・・・。バルゲン家が弱体化すれば、他の家の力が相対的に上がるからな。ただ、このように他家の人間に直接危害を与える方法は先の内乱もあってこれまで忌避にされてきた。歯止めが効かなくなるからな・・・」
「なら、直ぐに導師達に報せた方が良いんじゃないの?!」
「うむ、だがそれには水晶を割るしかない・・・。第三者の存在はあくまでも私達の想像だ。エリザに悪意を持つ試験参加中のエーレの仕業かもしれないし、エリザがパニックを起こしたか、なんらかの理由で自分からこの場を離れた可能性を否定できない以上、その選択はまだ早いと思う・・・」
「いざとなったら私が水晶を割るわ!だから、手掛かりを掴むまでエリザを探すのを手伝って!お願い!」
「・・・もちろん、手を貸そう!」
 クロリスに懇願されたイサリアは当然とばかりに頷く。普段は喧嘩ばかりする彼女とエリザだったが、やはり二人は奇妙な信頼関係で結ばれていたようだ。第三者の関与が疑われる以上、試験を続行して上に戻るようなことはしなかった。
「済まんな、ヒロキにも付き合ってもらうぞ!」
「大丈夫。・・・俺も付き合うよ!」
 ヒロキも異存はなく同意する。さすがにこの状況で反対を唱えるほど彼も臆病ではない。特にエリザのような美人を助けるためなら尚更だ。もっとも、それは胸の奥に潜める。イサリアが本気で怒る予感がしたからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます!

小針ゆき子
ファンタジー
フィオレンツァは前世で日本人だった記憶を持つ伯爵令嬢。しかしこれといった知識もチートもなく、名ばかり伯爵家で貧乏な実家の行く末を案じる毎日。そんな時、国王の三人の王子のうち第一王子と第二王子の妃を決めるために選ばれた貴族令嬢が王宮に半年間の教育を受ける話を聞く。最初は自分には関係のない話だと思うが、その教育係の女性が遠縁で、しかも後継者を探していると知る。 これは高給の職を得るチャンス!フィオレンツァは領地を離れ、王宮付き教育係の後継者候補として王宮に行くことになる。 真面目で機転の利くフィオレンツァは妃候補の令嬢たちからも一目置かれる存在になり、王宮付き教師としての道を順調に歩んでいくかと思われたが…。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ 主人公はあまり戦ったりはしません。

処理中です...