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第四章 再結集と決戦
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真実の共有。
双河兄弟がもたらした真実は、星環大陸の奥深くまで、静かに波紋を広げた。
純白戒律は、人を縛るための鎖ではなかった。
それは、ケプラーという“完全”を眠らせるために、人間性を犠牲にした封印。
だが、犠牲は永遠ではない。
千年を超えれば、心は軋み、封印は歪む。
「……続ければ、いずれ世界そのものが壊れる」
そう理解した時、総帥たちは初めて、同じ問いを共有した。
――人間でありながら、世界を守る道はないのか。
答えは、戦場と日常の中にあった。
清泉国「癒しの泉」
蒸気の立ち上る泉のほとりで、処音清雅は静かに祈り、癒していた。
魔力ではない。
ただ、手を取り、呼吸を合わせ、「生きたい」という想いを肯定する。
その中に、かつて彼が恋慕した女性がいた。
彼女は今、別の男の妻であり、保護生物の里親をやり、穏やかな幸福を得ている。
戒律では、その記憶は切り捨てるべき“感情”だった。
だが。
「総帥様……」
彼女は微笑み、頭を下げた。
「いつも、ありがとうございます。あなたがいてくれたから、私たちは生きています」
その言葉は、刃ではなく、灯だった。
清雅の胸に湧いたのは、独占欲でも、執着でもない。
「この人たちが、ここに在ってほしい」
という、穏やかな願い。
その瞬間――
彼の金血が、深く、澄んだ光を放った。
荒れ狂うことなく、歪むこともなく、ただ“安定して燃える”光。
「……そうか」
清雅は、静かに悟る。
「感情とは、抑えるものではない。向け方を選ぶものだ」
戒律が恐れたのは、感情そのものではなく、無自覚な感情だったのだ。
嶺峰国「断崖の砦」
山賀磐堅(さんが ばんけん)は、血を流しながら立っていた。
白金の巨脚はひび割れ、大地には深い亀裂が走っている。
対峙するのは、ケプラーの使徒。
「撤退を勧告する」
無感情な声。
「君の生存確率は16.8%」
磐堅は、低く笑った。
「……確率、か」
彼は背後を見る。
そこには、砦と、避難した民。
「山はな、数式じゃ測れん」
一歩、踏み出す。
「崩れそうに見えても、守るものがあれば、踏みとどまる」
白金の巨脚が、地層を噛み砕いた。
星具が共鳴し、大地そのものが意思を持ったかのように隆起する。
「これが、山の意志だ」
確率を超えた一撃が、使徒を粉砕した。
磐堅は倒れなかった。
山は、まだそこにあった。
白塔「円卓の間」
再結集。
再び、十二の席が満たされる。
だが今回は、誰も感情を隠していなかった。
怒り、迷い、願い、恐れ。
それらを抱いたまま、立っている。
獅堂煌帝が、中央に進み出る。
「諸君」
その声には、王の威厳と、一人の人間としての覚悟があった。
「我々は、誤解していた」
「純白戒律は盾だった。だが、使い続ければ腐る盾でもあった」
彼は胸に手を当てる。
「我々は不完全だ。間違い、傷つき、迷う。…だが、その不完全さこそが、選び、抗い、変える力だ!」
円卓に、静かな熱が満ちる。
一人ずつ、声が重なる。
白羊炎牙
「ならば戦おう! 燃え尽きるとしても、自分の炎で!」
金牛巌
「……守るものは、数では測れぬ」
巨蟹波守
「家族を、仲間を……感情があるから、守れる!」
双河兄弟
「理性と感情、その“往復”が未来を拓く!」
処音清雅
「癒すとは、存在を肯定することだ」
天秤公正
「完全な正義はない。だからこそ、選び続ける!」
蠍冥牙
「……守りたいと思えるものが、まだ残っている」
射馬疾風
「自由は、風みたいなもんだ。止められねぇ!」
山賀磐堅
「山は、動かぬ意志で支える」
水瓶創機
「未来は予測ではなく、設計し直すものだ」
魚住夢幻
「夢を見る力こそ、現実を超える」
十二の声が、重なり合う。
その瞬間――
天球儀が降臨する。
白塔が、悲鳴を上げた。
天井の水晶を突き破り、巨大な天球儀が出現する。
星々の軌道が、完璧な秩序で回転し、その中心に、ケプラーが立っていた。
「来たか」
声は、裁きでも、挑発でもない。
ただの“事実の提示”。
「不完全なる者たちよ」
白い瞳が、総帥たちを見下ろす。
「君たちの決意は理解できる。……だが、無意味だ」
天球儀が、回転を加速する。
「自由意志とは、未計算の変数に過ぎない。全ては星に記されている。選んでいるつもりで、選ばされているのだ」
静寂。
その中で、獅堂が一歩前に出る。
「ならば――」
彼は、剣を抜く。
「我々は、星の外で選ぶ」
十二の総帥が、同時に構えた。
世界の理vs人間の意志の最終決戦が、始まる。
おまけ
キッズケータイに向かって媚びを売るケプラー
その後ろで大型火炎放射器(ガトリングタイプ)を持った処音
双河兄弟がもたらした真実は、星環大陸の奥深くまで、静かに波紋を広げた。
純白戒律は、人を縛るための鎖ではなかった。
それは、ケプラーという“完全”を眠らせるために、人間性を犠牲にした封印。
だが、犠牲は永遠ではない。
千年を超えれば、心は軋み、封印は歪む。
「……続ければ、いずれ世界そのものが壊れる」
そう理解した時、総帥たちは初めて、同じ問いを共有した。
――人間でありながら、世界を守る道はないのか。
答えは、戦場と日常の中にあった。
清泉国「癒しの泉」
蒸気の立ち上る泉のほとりで、処音清雅は静かに祈り、癒していた。
魔力ではない。
ただ、手を取り、呼吸を合わせ、「生きたい」という想いを肯定する。
その中に、かつて彼が恋慕した女性がいた。
彼女は今、別の男の妻であり、保護生物の里親をやり、穏やかな幸福を得ている。
戒律では、その記憶は切り捨てるべき“感情”だった。
だが。
「総帥様……」
彼女は微笑み、頭を下げた。
「いつも、ありがとうございます。あなたがいてくれたから、私たちは生きています」
その言葉は、刃ではなく、灯だった。
清雅の胸に湧いたのは、独占欲でも、執着でもない。
「この人たちが、ここに在ってほしい」
という、穏やかな願い。
その瞬間――
彼の金血が、深く、澄んだ光を放った。
荒れ狂うことなく、歪むこともなく、ただ“安定して燃える”光。
「……そうか」
清雅は、静かに悟る。
「感情とは、抑えるものではない。向け方を選ぶものだ」
戒律が恐れたのは、感情そのものではなく、無自覚な感情だったのだ。
嶺峰国「断崖の砦」
山賀磐堅(さんが ばんけん)は、血を流しながら立っていた。
白金の巨脚はひび割れ、大地には深い亀裂が走っている。
対峙するのは、ケプラーの使徒。
「撤退を勧告する」
無感情な声。
「君の生存確率は16.8%」
磐堅は、低く笑った。
「……確率、か」
彼は背後を見る。
そこには、砦と、避難した民。
「山はな、数式じゃ測れん」
一歩、踏み出す。
「崩れそうに見えても、守るものがあれば、踏みとどまる」
白金の巨脚が、地層を噛み砕いた。
星具が共鳴し、大地そのものが意思を持ったかのように隆起する。
「これが、山の意志だ」
確率を超えた一撃が、使徒を粉砕した。
磐堅は倒れなかった。
山は、まだそこにあった。
白塔「円卓の間」
再結集。
再び、十二の席が満たされる。
だが今回は、誰も感情を隠していなかった。
怒り、迷い、願い、恐れ。
それらを抱いたまま、立っている。
獅堂煌帝が、中央に進み出る。
「諸君」
その声には、王の威厳と、一人の人間としての覚悟があった。
「我々は、誤解していた」
「純白戒律は盾だった。だが、使い続ければ腐る盾でもあった」
彼は胸に手を当てる。
「我々は不完全だ。間違い、傷つき、迷う。…だが、その不完全さこそが、選び、抗い、変える力だ!」
円卓に、静かな熱が満ちる。
一人ずつ、声が重なる。
白羊炎牙
「ならば戦おう! 燃え尽きるとしても、自分の炎で!」
金牛巌
「……守るものは、数では測れぬ」
巨蟹波守
「家族を、仲間を……感情があるから、守れる!」
双河兄弟
「理性と感情、その“往復”が未来を拓く!」
処音清雅
「癒すとは、存在を肯定することだ」
天秤公正
「完全な正義はない。だからこそ、選び続ける!」
蠍冥牙
「……守りたいと思えるものが、まだ残っている」
射馬疾風
「自由は、風みたいなもんだ。止められねぇ!」
山賀磐堅
「山は、動かぬ意志で支える」
水瓶創機
「未来は予測ではなく、設計し直すものだ」
魚住夢幻
「夢を見る力こそ、現実を超える」
十二の声が、重なり合う。
その瞬間――
天球儀が降臨する。
白塔が、悲鳴を上げた。
天井の水晶を突き破り、巨大な天球儀が出現する。
星々の軌道が、完璧な秩序で回転し、その中心に、ケプラーが立っていた。
「来たか」
声は、裁きでも、挑発でもない。
ただの“事実の提示”。
「不完全なる者たちよ」
白い瞳が、総帥たちを見下ろす。
「君たちの決意は理解できる。……だが、無意味だ」
天球儀が、回転を加速する。
「自由意志とは、未計算の変数に過ぎない。全ては星に記されている。選んでいるつもりで、選ばされているのだ」
静寂。
その中で、獅堂が一歩前に出る。
「ならば――」
彼は、剣を抜く。
「我々は、星の外で選ぶ」
十二の総帥が、同時に構えた。
世界の理vs人間の意志の最終決戦が、始まる。
おまけ
キッズケータイに向かって媚びを売るケプラー
その後ろで大型火炎放射器(ガトリングタイプ)を持った処音
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