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終章 新たなる星環
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星暦1248年。
白塔の朝、ケプラー完全抹消から、一年。
白塔「アルカ・ブラン」は、変わらず大陸の中心にそびえている。
だが、その内部に流れる空気は、確かに違っていた。
祈りの声は減った。
代わりに、議論の声が増えた。
星観の間では、かつてのように絶対的な沈黙は求められない。
意見は交わされ、時に衝突し、時に笑い声さえ混じる。
純白戒律は、廃止されてはいない。
だが、石板から「絶対」の文字は削られた。
『感情は排除すべき不浄にあらず、理性と並び、選択を導くもう一つの光なり』
『不完全なるがゆえに、人は思考し、創造し、変化する』
『多様性は混沌にあらず、調和とは、異なる音が共に響くことなり』
それが、新たに編まれた「多様なる調和の盟約」の前文だった。
それぞれの変化。
白羊炎牙
かつて、怒りと熱だけで突き進んだ男。
今も激情は健在だが、怒りの前に、一瞬だけ立ち止まる癖がついた。
部下の失敗に拳を振り上げ、それを下ろしてから、こう言う。
「……次は、どうすりゃいいと思う?」
その問いに、部下たちは初めて、自分の頭で考えるようになった。
金牛巌
寡黙な守護者は、言葉を増やさなかった。
だが、行動が変わった。
戦場の帰り、道端に咲いた名もなき花を摘み、無言で若い兵士の手に渡す。
理由は語らない。
それでも兵士は知っている。
――「生きて帰ってきた」ことを、彼が祝ってくれているのだと。
巨蟹波守
彼はもう、家族の名を隠さない。
鎧の内側に刻まれた名は、外套を脱げば誰の目にも見える。
それを咎める者はいない。
「守りたいものがあるから、僕は前に立てる」
そう言って笑う彼は、以前よりずっと強くなっていた。
双河知音 & 智影
二人は、時に意見を違える。
かつては「完全な一致」を誇りにしていたが、今はそれを手放した。
「兄はそう思うんだな」
「弟は違うかもしれない」
その差異を、失敗ではなく可能性として扱うようになった。
影のアーカイブには、新しい書架が増えた。
分類不能、予測不能、人間の選択の記録。
獅堂煌帝
王としての威厳は失っていない。
だが、玉座に座る時間は減った。
代わりに、街を歩く。
民の言葉を聞き、即断せず、考える。
「正しいか」ではなく、「誰が、どれだけ傷つくか」を秤にかける。
完璧な王ではない。
だが、責任から逃げない人間になった。
処音清雅
癒しの概念が変わった。
傷を治して終わりではない。
「怖かったですね」
「怒っても、いいんですよ」
そう言ってから、治癒の光を流す。
涙とともに治る傷があることを、彼は学んだ。
天秤公正
彼はもう、絶対的な判決を下さない。
必ず、言葉を添える。
「これは最善ではない」
「だが、今選べる中では、最も多くを救う」
裁定とは、責任を引き受ける行為だと理解した。
蠍冥牙
彼は、右目を覆わなくなった。
傷は残っている。
視界も完全ではない。
だが、それでいい。
夜、独りで刃を研ぎながら、時折、空を見上げる。
守れなかったものを、忘れたわけではない。
ただ――
それだけで自分を罰するのをやめた。
射馬疾風
子供たちに、こう教える。
「自由ってのは、好き勝手じゃない。……選んだ結果を、引き受けることだ」
風の中を駆けながら、彼は未来を預ける。
山賀磐堅
若い兵士が、迷いを打ち明ける。
「自分は向いていないかもしれません」
磐堅は、すぐには答えない。
しばらく考えてから言う。
「……それでも立つか? ……立つなら、山は支える」
水瓶創機
彼の発明には、「非効率」が組み込まれるようになった。
人が迷う余地、感情で止まる安全装置。
未来は、完璧に管理されるものではないと知ったからだ。
魚住夢幻
夢は、もはや一つではない。
恐怖の夢も、幸福な夢も、支離滅裂な夢もある。
彼はそれを喜ぶ。
「世界が、ちゃんと眠っている」
そう呟いて、微笑む。
白塔の頂。
夜、十二の総帥が、久方ぶりに集まる。
星空は、相変わらず広い。
「星は、やっぱり綺麗だな」
白羊炎牙が、珍しく穏やかに言う。
水瓶創機が応じる。
「完璧じゃないからだ」
「微細な誤差が、常にある」
魚住夢幻が、夢見るように続ける。
「だから、宇宙は生きている」
獅堂煌帝が、皆を見回す。
「これからも、迷うだろう」
「間違えることもある」
「それでも――」
彼は、夜空を指す。
「選び続けよう」
誰も異を唱えない。
彼らはもう、完璧な白の柱ではない。
傷を持ち、迷いを抱え、それでも前に進む――
人間だ。
星は、相変わらず道を示す。
だが、どこへ行くか、どう歩くかは、誰の計算にも、誰の星図にも、書かれていない。
新たなる星環が、静かに、しかし確かに――
回り始めていた。
あとがき
作者コメント
実際問題、俺がこいつらイケメンだと思ってんのかって…考えたことないっすね。
白塔の朝、ケプラー完全抹消から、一年。
白塔「アルカ・ブラン」は、変わらず大陸の中心にそびえている。
だが、その内部に流れる空気は、確かに違っていた。
祈りの声は減った。
代わりに、議論の声が増えた。
星観の間では、かつてのように絶対的な沈黙は求められない。
意見は交わされ、時に衝突し、時に笑い声さえ混じる。
純白戒律は、廃止されてはいない。
だが、石板から「絶対」の文字は削られた。
『感情は排除すべき不浄にあらず、理性と並び、選択を導くもう一つの光なり』
『不完全なるがゆえに、人は思考し、創造し、変化する』
『多様性は混沌にあらず、調和とは、異なる音が共に響くことなり』
それが、新たに編まれた「多様なる調和の盟約」の前文だった。
それぞれの変化。
白羊炎牙
かつて、怒りと熱だけで突き進んだ男。
今も激情は健在だが、怒りの前に、一瞬だけ立ち止まる癖がついた。
部下の失敗に拳を振り上げ、それを下ろしてから、こう言う。
「……次は、どうすりゃいいと思う?」
その問いに、部下たちは初めて、自分の頭で考えるようになった。
金牛巌
寡黙な守護者は、言葉を増やさなかった。
だが、行動が変わった。
戦場の帰り、道端に咲いた名もなき花を摘み、無言で若い兵士の手に渡す。
理由は語らない。
それでも兵士は知っている。
――「生きて帰ってきた」ことを、彼が祝ってくれているのだと。
巨蟹波守
彼はもう、家族の名を隠さない。
鎧の内側に刻まれた名は、外套を脱げば誰の目にも見える。
それを咎める者はいない。
「守りたいものがあるから、僕は前に立てる」
そう言って笑う彼は、以前よりずっと強くなっていた。
双河知音 & 智影
二人は、時に意見を違える。
かつては「完全な一致」を誇りにしていたが、今はそれを手放した。
「兄はそう思うんだな」
「弟は違うかもしれない」
その差異を、失敗ではなく可能性として扱うようになった。
影のアーカイブには、新しい書架が増えた。
分類不能、予測不能、人間の選択の記録。
獅堂煌帝
王としての威厳は失っていない。
だが、玉座に座る時間は減った。
代わりに、街を歩く。
民の言葉を聞き、即断せず、考える。
「正しいか」ではなく、「誰が、どれだけ傷つくか」を秤にかける。
完璧な王ではない。
だが、責任から逃げない人間になった。
処音清雅
癒しの概念が変わった。
傷を治して終わりではない。
「怖かったですね」
「怒っても、いいんですよ」
そう言ってから、治癒の光を流す。
涙とともに治る傷があることを、彼は学んだ。
天秤公正
彼はもう、絶対的な判決を下さない。
必ず、言葉を添える。
「これは最善ではない」
「だが、今選べる中では、最も多くを救う」
裁定とは、責任を引き受ける行為だと理解した。
蠍冥牙
彼は、右目を覆わなくなった。
傷は残っている。
視界も完全ではない。
だが、それでいい。
夜、独りで刃を研ぎながら、時折、空を見上げる。
守れなかったものを、忘れたわけではない。
ただ――
それだけで自分を罰するのをやめた。
射馬疾風
子供たちに、こう教える。
「自由ってのは、好き勝手じゃない。……選んだ結果を、引き受けることだ」
風の中を駆けながら、彼は未来を預ける。
山賀磐堅
若い兵士が、迷いを打ち明ける。
「自分は向いていないかもしれません」
磐堅は、すぐには答えない。
しばらく考えてから言う。
「……それでも立つか? ……立つなら、山は支える」
水瓶創機
彼の発明には、「非効率」が組み込まれるようになった。
人が迷う余地、感情で止まる安全装置。
未来は、完璧に管理されるものではないと知ったからだ。
魚住夢幻
夢は、もはや一つではない。
恐怖の夢も、幸福な夢も、支離滅裂な夢もある。
彼はそれを喜ぶ。
「世界が、ちゃんと眠っている」
そう呟いて、微笑む。
白塔の頂。
夜、十二の総帥が、久方ぶりに集まる。
星空は、相変わらず広い。
「星は、やっぱり綺麗だな」
白羊炎牙が、珍しく穏やかに言う。
水瓶創機が応じる。
「完璧じゃないからだ」
「微細な誤差が、常にある」
魚住夢幻が、夢見るように続ける。
「だから、宇宙は生きている」
獅堂煌帝が、皆を見回す。
「これからも、迷うだろう」
「間違えることもある」
「それでも――」
彼は、夜空を指す。
「選び続けよう」
誰も異を唱えない。
彼らはもう、完璧な白の柱ではない。
傷を持ち、迷いを抱え、それでも前に進む――
人間だ。
星は、相変わらず道を示す。
だが、どこへ行くか、どう歩くかは、誰の計算にも、誰の星図にも、書かれていない。
新たなる星環が、静かに、しかし確かに――
回り始めていた。
あとがき
作者コメント
実際問題、俺がこいつらイケメンだと思ってんのかって…考えたことないっすね。
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