眠れる勇者99九回目で

ネム・サブロウ

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一部

二部第7話失敗作と呼ばれた夜

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病室には、トヨコの泣き声だけが残っていた。

看護師に促され、トヨコは病室を後にする。

医者「三郎君。前にも、似たことがあったよね」
三郎「……はい」

医者「MRI、MRA、頸動脈エコーも調べた。けど――異常はなかった」

三郎は不安そうに、しかし真剣に聞いていた。

三郎「……原因不明、ってことですか」
医者「正直に言えば、そうだ。ただね」

医者は一拍置く。

医者「生活習慣の改善が、今できる最善策だと思う」

三郎は、急に現実へ引き戻されたような気分になった。

三郎「……分かってます。でも、簡単じゃなくて」
医者「バイト経験は?」
三郎「ありません」

医者「じゃあ、少し話を戻そう。これはあくまで僕の仮説だ」

医者は続けた。

医者「明晰夢と白昼夢が、極稀に同時発生することがある。
それを、漫画や小説では“異世界転生”と呼ぶらしい」
三郎「……そうなんですね」

医者「470年、西ローマ帝国で似た症例が六人。
ただし、信憑性はゼロだ」

医者「二日ほど入院して、様子を見よう」
三郎「……はい」

しばらくして、トヨコが呼ばれる。

トヨコ「息子は……大丈夫なんでしょうか」
医者「原因は不明です。ただ、生活習慣の見直しが重要です」

トヨコは深く頭を下げ、病院を後にした。



医者「今日は軽く運動しよう」
三郎「わかりました」

医者「こちらが、パーソナルトレーナーの鳥枝さんだ」
鳥枝「鳥枝です。よろしく」
三郎「よろしくお願いします」

二時間後――

鳥枝「お疲れさまでした」
三郎「ありがとうございました」

病室へ戻り、ベッドに潜り込む。

三郎「……なんか、気分上がらねぇな」

看護師「三郎さーん、ご飯ですよ」

三郎「ありがとうございます……(病院食か)」

一口食べて、少し目が開く。

三郎「(……普通にうまいな)」

完食し、再び眠りにつく。

――ピィーピィー。

三郎「……朝?」

思わず声を上げ、口を塞ぐ。

(……なんでだ。異世界に行ってない)

看護師が駆けつける。

三郎「大丈夫です、すみません」
看護師「よかったです」

三郎「……図書館ってありますか」
看護師「5階にありますよ」

三郎は図書館へ向かい、パソコンルームに入る。

(三郎)「……」

異世界転生について調べる。

(生活習慣の悪化、明晰夢、白昼夢……先生の言った通りだ)

背後から声がした。

トヨコ「何やってるの。病室にいなさいよ」

三郎は立ち上がる。

三郎「うるせぇ! 俺だって分かってる!」
トヨコ「ちょっと、待ちなさい!」

三郎は走って病室へ戻った。

(……昔の話、持ち出すなよ)

高校時代、三郎はいじめを受け、不登校になった。

三郎「……決めた」

三郎は天井を見つめる。

三郎「――異世界を、救う」

静かな決意だけが、胸に残った。
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