5 / 28
約束と報告1
しおりを挟む
合コンから帰宅して一息ついたところでスマートフォンが鳴る。確認すると勅使河原さんから連絡がきていた。彼らしく丁寧な御礼と、食事のお誘いだった。
あの後勅使河原さんとは色々な話をした。
休日の過ごし方や食事の好みなど、内容はありふれたものだったけれど、会話の端々から勅使河原さんの誠実な人柄がうかがえた。
「食事くらいなら……」
合コンに行く前はただただ憂鬱だった。ゆうきへの気持ちを改めて自覚し、他の人とどうこう、という気持ちはさらさらなかった。
今もやはりゆうきへの気持ちは強い。けれど、帰ってきて今日のことを振り返ってみると、楽しかった、と思う。きっと、そう思わせてくれたのは勅使河原さんがいたからだろう。私がバツイチであると聞いても一切意に介さず、丁寧に好意を表現してくれた。
「こういう人を好きになれればいいのに」
ゆうきへの思いは最早呪いのようだ。青春時代にけじめをつけなかった報いなのだろうか。あの時の私の選択が、そんなにも間違っていたのだろうか。
実はずっと好きだったと、告白してしまえば全てが終わるのかもしれない。でも、そうしたことで今までの関係が壊れてしまうと考えるだけで身が竦む。長い時間をかけて築いたゆうきとの関係は今の自分にとってかけがえのないものだ。ゆうきだって、きっと今の関係を大切にしてくれているはずだ……と思いたい。
それを、私の身勝手で崩したくない。私が気持ちを伝えれば、少なからず私たちの関係は変わってしまうはずだ。
それに、結婚までした私が実はずっと好きでしたと言ったところで説得力はないし、もしかしたら軽蔑されてしまうかもしれない。
そんなことになってしまったら私は耐えられない。ゆうきの瞳の中に私はの軽蔑の色を少しでも見つけてしまったら、立ち直ることができない。
ゆうきは優しいから、それでも私と友達であろうとしてくれるだろう。けれど、私はきっとそれを受け入れられない。私を疎ましく思う心が少しでも見えてしまったら、近づくこともできないだろう。
情けないことだけれど、十年焦がれた相手からの嫌悪を受け入れられるほど、私の心は強くない。それがほんの小さな一欠片であっても。
そうした悪い想像をして、やはり告白などできない、と結論づける。
吐き出してしまえば楽になるかもと思っても、吐き出すことによる結果が怖くて何もできない。
「……寝よう」
勅使河原さんに返信だけして、布団に潜り込んだ。
あの後勅使河原さんとは色々な話をした。
休日の過ごし方や食事の好みなど、内容はありふれたものだったけれど、会話の端々から勅使河原さんの誠実な人柄がうかがえた。
「食事くらいなら……」
合コンに行く前はただただ憂鬱だった。ゆうきへの気持ちを改めて自覚し、他の人とどうこう、という気持ちはさらさらなかった。
今もやはりゆうきへの気持ちは強い。けれど、帰ってきて今日のことを振り返ってみると、楽しかった、と思う。きっと、そう思わせてくれたのは勅使河原さんがいたからだろう。私がバツイチであると聞いても一切意に介さず、丁寧に好意を表現してくれた。
「こういう人を好きになれればいいのに」
ゆうきへの思いは最早呪いのようだ。青春時代にけじめをつけなかった報いなのだろうか。あの時の私の選択が、そんなにも間違っていたのだろうか。
実はずっと好きだったと、告白してしまえば全てが終わるのかもしれない。でも、そうしたことで今までの関係が壊れてしまうと考えるだけで身が竦む。長い時間をかけて築いたゆうきとの関係は今の自分にとってかけがえのないものだ。ゆうきだって、きっと今の関係を大切にしてくれているはずだ……と思いたい。
それを、私の身勝手で崩したくない。私が気持ちを伝えれば、少なからず私たちの関係は変わってしまうはずだ。
それに、結婚までした私が実はずっと好きでしたと言ったところで説得力はないし、もしかしたら軽蔑されてしまうかもしれない。
そんなことになってしまったら私は耐えられない。ゆうきの瞳の中に私はの軽蔑の色を少しでも見つけてしまったら、立ち直ることができない。
ゆうきは優しいから、それでも私と友達であろうとしてくれるだろう。けれど、私はきっとそれを受け入れられない。私を疎ましく思う心が少しでも見えてしまったら、近づくこともできないだろう。
情けないことだけれど、十年焦がれた相手からの嫌悪を受け入れられるほど、私の心は強くない。それがほんの小さな一欠片であっても。
そうした悪い想像をして、やはり告白などできない、と結論づける。
吐き出してしまえば楽になるかもと思っても、吐き出すことによる結果が怖くて何もできない。
「……寝よう」
勅使河原さんに返信だけして、布団に潜り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる