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ようこそこの世界へ
5.転生先はゲームの世界
しおりを挟む『世界はきみに恋をする。』
アクション部分や乙女ゲーあるあるのふれあい部屋、推しが起こしてくれるアラーム機能まで着いていた。
豪華声優陣による目覚ましやフルボイスストーリーに、普段はアクションゲームなどしない乙女たちも、それが為に課金要素にまでフルでお金を注ぎ込む様子も珍しくなかった。
そして当たり前のように、このゲームは従来の乙女ゲームさながら、いくつもの攻略対象が居た。
この国の王太子に、それに仕える騎士団の騎士団長、国境さえ関係なく働く暗殺者、何を説明してくれているのかいつも分からない研究者に、売れっ子な画家、そして———…………
「お待たせ致しました。大変長らくお待たせさせてしまい申し訳ありません。ブリオングロード家の長男、ナライフマジン・ブリオングロードと申します。」
ブリオングロード家の長男、ナライフマジン・ブリオングロード。
遠く透き通る白磁色の髪の毛に、ザクロの実のようなガーネットの瞳を持つ、侯爵家の嫡子。
ゲーム内では真面目すぎるとも言える硬派な性格故に、氷のブリザードのような表情をしたスチルが多く、その中にたまに見せる子供のような可愛らしい笑顔がクールな彼とのギャップ萌えで心を掴んだ。
また、攻略対象中唯一の精霊使いであり、国内随一の力を誇る彼はパーティーメンバーに必須のような存在であった。
その力の所以はブリオングロード家の血筋である。
と、ここまでが俺のモノローグ。
今日興奮しっぱなしでそろそろしんどいんだけど。
つまり?俺は異世界どころかゲームに転生してたってこと!?
俺の大好きな!?あのゲームに?
…………ないない。え、ないよな?
もう1回意識失ってもいい?
なんて考えてると、頬をむにーっとクロー様が引っ張って俺を咎めた。
案外痛くて、頭を上げて文句の目を向けると、そこには先程とはまた違った笑顔をナライフマジンに向けていた。
「あはは、ぜーんぜん待ってないよ。すごく楽しかったし。君の家の庭は相変わらず綺麗だね。」
「お褒めに預かり光栄です。」
「精霊の寵愛のおかげなのかなあ。こんなに美しいのは王家でも見たことない。」
「本当に。有難い限りです。」
「その割にお水頭から被されてたけどね」
「…………………………」
笑えない。笑えないよクロー様。将来の有望株固まっちゃったじゃないか。
そんな彼を他所に、クロー様は膝に俺を抱えたまま、ケーキスタンドに並べられていたクッキーを口にし、サクリと良い音を立てた。
それにしても何故精霊と水が結びつくのだろう、とナライフマジンをもう一度しっかりと見てみるとあらびっくり。
なんと沢山の精霊さんがにしし!
「その説は……見逃して、頂けると……」
「えー!あはは、面白かったのにな。まあ座りなよ。主催側がずっと立ってちゃダメでしょ。」
「…………失礼します。」
やっとの事かのようにクロー様の向かい側に着いたナライフマジンさんは細いため息をついた。
大変そうだなあ。見た目的に大体七歳くらいだろうか。
ただ少し所作が大人びて見えるから実年齢はもう少し下かもしれない。
逆にクロー様は見た目が幼く見える。
けど、やたらめったらお喋りに賢い部分が見え隠れしている。
五歳くらいの子がこれ程イヤミを言えるのだろうか。
目をあっちにうろうろ、こっちにうろうろさせて無言を貫いているラナイフマジンはたまに「いや、そこはまだ喋るには早い気が」「そもそもそこまで踏み込んでいいのか」なんてブツブツ喋っている。
そのおしゃべりのお相手さんは沢山の精霊さんたちなのだが、精霊が見えている俺には変な光景に見えないためおどおどしているだけなんだなで済むけど、クロー様は精霊が見えないから彼がその瞳にどう写っているのか気になる。
「ふふ、そこまで緊張しなくていいよ。まだ正式に婚約を結ぶ前で今日はただ単に顔合わせに来ただけだし。」
「そう、ですね。では本日は小さなホームパーティということに致しましょう。」
「そうそう、僕のことはクローでいいよ。」
「わかりました。では私のことはナーラと。」
ああ良かった。少し場が和んだ。
なんというかクロー様ってムードメイクをするのがとても上手い。
その場の雰囲気をカード遊びでもするかのようにクルクルひっくり返す。
婚約かあ。そういえば中世ヨーロッパではこれくらいの歳でフィアンセが決まるんだっけ。
早いなあ……とのほほんとしてると、ふと頭の中がクリアになった。
このクロー様、本編ストーリーのラナイフマジンの婚約者のフアハトクロー・シー・ティール様じゃないか!?
フアハトクロー・シー・ティール。
ナライフマジンの婚約者であるにも関わらず、悪役令息にならず中立を保ち続けていた謎多き人物で、その内裏攻略対象者になるのではとまで言われた存在。
そんな彼が劇中喋ったのは三、四行ほどであり、声優すら明らかになっていなかった。
そそそそんな彼が、今目の前に!?
はわわわ、後でサイン貰わなきゃ!
そんなことを思っていると頭の上からくすりと笑う声が聞こえたが、2人はもう既に会話のステップを淡々と踏んでいた。
「そういえば、その膝の子供は?」
「ああこの子。そういえば庭に居たんだよね。君のところの子でしょ?ダメだよちゃんと精霊のコントロールをしなきゃ。多分精霊のイタズラで庭に飛んできたんだろうけど」
へええ!?そうなの!?アレ精霊のイタズラって言うんだ。覚えておこ。
んんんじゃなくて。俺がナライフマジン家の子?つまり、それはつまり、
「待ってください。うちの子?」
「へ?そうでしょう?どうやら精霊も視えるようだし」
「…………我が家にそのような小さき子はいませんが。」
俺君の弟じゃないの!?
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