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4話 再就職のご相談
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「人間ってさぁ、あの壁の中にいるんだろ。で、外にいるの見かける時は大体集団になって行動してる。アンタみたいに一人でほっつき回ってる人間なんて初めて見た。なんかアンタ、めちゃくちゃ面白そうじゃん!」
「面白がらないでよ、わたしだって好きで一人でほっつき歩いているわけじゃないんだから」
「コクガイツイホーってやつ?」
そう、国外追放ってやつ。わたしは頷く。
「何人か見たことある。すぐ死んでたけど。アンタ、そういう風には見えないけど、極悪人?」
「……上司騙して働いてたっていちゃもんつけられたの」
「ハハ、そっか。大変だなあ」
イージスは朗らかに笑う。あんま大変とは思われてなさそうだ。
「腹減ってたのか? こんなアングリーグリズリーぐっちゃぐちゃにして」
「……ご飯も食べなくちゃだけど。そうじゃなくて、普通の人間は魔物を狩るなんてことできないでしょう? だから、魔物の皮とか毛を剥いで他国で売ったらお金になるかしらって」
「あーなるほどな! なんだ、解体ヘッタクソだっただけかあ。そういう趣味なんかと思ったぜ」
「……そう」
改めて言われるとちょっとグサッとくる。
「そうかー、金に困ってんのかあ」
イージスはしみじみと呟き、うんうんと頷く。
魔族にお金に困る気持ちが理解できるのだろうか? 魔族にも『お金』という概念は存在しているのか?
「なあ、メリア。金欲しいならウチ来ない?」
「行かない!」
「えー」
いやこれ、絶対ダメなやつでしょ。世間知らずのわたしでもわかる。めちゃくちゃよくない方のナンパというやつでは? わたしはさらにイージスから距離をとった。
わたしの反応にイージスはやっぱりつまらなさそうに、さきほどと同じように唇を尖らせた。
「ウチ、魔王がいるんだけどさあ。アンタ、なんかちょっと変だし。ウチんところで雇ってもらったらいんじゃねーの、って。衣食住に、金もあるよ」
「……え」
……お金が、ある。
いや、でも、魔族だし……。そんな甘いことを言って、人間をどうにかこうにかしているかもしれないし……。
「アンタさあ、他国に素材売りに行くって言ってたけど、この国の国境にも門番とかいんじゃん? コクガイツイホーなんてなってんのに、他国なんて出ていけねえんじゃねーの?」
「……あ」
そういえば、確かに。
無理に暴力の力でゴリ押しはできるだろうけど……それをして国際問題に発展しても困る。善良な一般国民の皆さんにご迷惑をおかけするのはよくない。違法な傭兵グループたちがしているようにいい感じに門番の買収ができたらいいんだけど……。でも、まず、先立つものがないわけだし。
「……詰んでる……」
あの王子、まさかここまで読んでいた? わたしにどう足掻いてもお金を稼げない絶望感を味合わせようと?
門の外に放り出されて死にはしないけど、お金も稼げず一人で虚しく生きていく罰を与えようとしていたのか? あの男が? ……いや、そんな賢くないだろうな。たまたまか。
ともかくとして、わたしは目の前が真っ暗になった。
「だからさあ、とりあえずウチ来てみなよ。なんかアンタいると元気出て来るし、なっ?」
「……元気が出てくるとかはよくわからないけど……」
衣食住補償に、お給金。
…………悪くない!
「わかった。その魔王っていうのに紹介してくれる?」
「おっ! やったー! ついてきて!」
イージスはガバッと勢いよく立ち上がった。うわ、めちゃくちゃ……背が高い!!! というか、デカイ!!!
そして。
「……足、速っ!!!」
そばにいるとあんなにデカくて圧がハンパなかったイージスは、ピュッと走ってあっという間にちっちゃくしか見えなくなり、そのうち見失った。人間の速さじゃない。身体は大きくても、外見上に違いはなく見える魔族だが、やはり、身体の作りがなにかしら違うんだろう。
そんなに速いとついていけないんですが!?
とか思っていたら、イージスは「悪い悪い」と笑いながらこれまた爆速で戻ってきた。
「なんかすげー体の調子良くてさあ! つい思いっきり走っちゃった。オレ、足速いんだ」
「……うん、めちゃくちゃ速いね……」
「はー、気持ちよかったー。歩いてくかあ、そんな遠くないよ。多分」
うん、それがいい。歩いていただこう。
思い切り走ったイージスはなんだかご機嫌だった。
「目が覚めてから最高記録かもしんねー」
「ふうん、そうなんだ。よかったね」
嬉しそうなイージスはわたしにこう言われるとますます顔を綻ばせて笑った。さっきは距離感近くて困ったけど、大型犬と思えばかわいくないこともないかもしれない。
……いや、それにしても、だいぶデカイが。
イージスはすぐ再出発だ、と踵を返したけれど、わたしはそれを引き止めた。
「ごめん。ちょっと待ってて」
「ん? ソレ、持っていくのか?」
ソレ、というのはわたしがグチャグチャにしてしまった熊型の魔物の肉片たちだ。このままにしておくのは忍びない。
「メリア、腹減ってる? 今、飯食えそうならオレがそれ料理してやるよ」
「えっ、ほんとに!?」
「いやあ、持ち歩くの、なんかイヤじゃん。それ」
指さされて、わたしは「う……」となった。
魔族の感性でも、嫌なんだ……。グチャグチャの肉片持って歩くの……。
それはさておき、確かにお腹も空いてきたし、イージスの提案はありがたい。
イージスは肩に背負っていたカバンから鉄鍋を取り出した。カバンの中に入るくらいだから、そんなに大きくはないけど丈夫そうで立派だ。手際良く彼は焚き火台も組み立ててしまった。
「メリア、火起こせるか? オレ、グチャグチャになった奴どうにかするから」
「う、うん」
イージスはカバンから小さなナイフも取り出す。ずいぶんアウトドア慣れしている感じだ。……わたしもこれくらいの装備を持って国外追放されていれば……。
イージスは器用にナイフを使って肉と皮を剥いでいく。
……解体の仕方、教えてもらおうかな……。
ぼんやりそんなことを考えながら、わたしは焚き火台と向き合った。着火剤は、コロンとして真っ白なプニプニ。よくわからないけど、魔物の脂らしい。イージスは「よく燃えるし保ちがいい」と言っていた。
火打ち石も預かったけど、王宮勤めの聖女だったわたしはこんなアイテム使ったことがない。ので、ズルをする。
「……うっわ!」
指先に念じて、火の玉を一つ。それを着火剤にポンと投げると勢いよく火が噴いた。
解体作業に集中していたイージスが目を丸くしてそれを見る。
「えっ? メリア、本当に人間?」
「ど、どういうこと?」
「だって、それ、魔力じゃん。そういう匂いはしてたけどさぁ」
「……一応、人間だけど……」
そう言われると自信がなくなってきてしまう。
聖女の力とは違う『力』。エミリーが聖女の力に目覚めるまでは、比較対象もいなかったから、わたしは自分の力を疑問に思うことはなかったけれど、彼女の聖なる力……って言えばいいのかな。光の球を出したり、魔物をジュッと消滅させたり、結界を張ったりとか、そういう力を見たら「あれ? わたし、なにか違う?」とは思っていた。
(……『魔力』って、魔族が持ってる力よね……?)
そんなわたしの気持ちとは裏腹に、ごうごうと燃える火に炙られた魔物の肉はいい匂いを漂わせてきた。イージスはまたまたカバンから調味料の小瓶を取り出し、パッパとそれに振り掛ける。粗挽きの胡椒が嬉しい。さらにはチーズの塊が出てきたから驚きだ。ナイフでチーズを薄くスライスし、お肉に乗っけると、でろりと魅惑的にとろける。
「料理ってほどの料理じゃなかったなー。ま、いいだろ」
「うん、すごい! おいしそう! ありがとう!」
イージスは皿に肉を乗っけると、笑顔と共に手渡してきてくれた。フォークも一緒についてる。すごい。カバンになんでも入っているみたいだ。
「……おいしい……!」
焼き立てのお肉はとにかくジューシーだった。硬そうに見えた魔物のお肉だけど、イージスが筋の部分に刃を入れておいてくれていたらしく、ちゃんと噛み切れる。そして、口の中で噛みしめれば程よい弾力と肉汁がじゅわっと楽しめるのだ。赤身肉、最高。やっぱり粗挽きの胡椒は相性抜群だし、それにとろとろのチーズまで乗っているのだから、それで文句の出ようはずもない。
「ハハッ、うまそうに食うんだなあ」
「うん……魔物のお肉、初めて食べたけど、おいしい! 作ってくれてありがとう!」
「よかったよかった」
王宮で出てきた食事もおいしかったけれど、聖女の仕事が忙しすぎてご飯の時間を楽しめないことも多かったから、こういう開放的な場所でのんびりと食事を楽しめるのもまた、おいしさを助長させていた。ただ、お肉を焼いただけ。けれど、本当にとってもおいしかった。
イージスはたくさん焼いてくれて、わたしもたくさん食べた。
◆
さて、食事と片付けもすませて、イージスの案内で魔王のいるところに再出発することになった。もちろん、イージスにはちゃんと歩いてもらってる。普通に歩いてても、歩幅が違うからわたしが小走り気味になってるけど。お腹いっぱい食べてしまったから腹ごなしの運動と思えばいいかもしれない。
しばらく歩いて、草原の端っこに森が見えてきた。
私が追い出されてきたあの国は平原のど真ん中にあって、平原の周りは森林地帯になってて、さらにそこは山脈でぐるりと囲まれてる、みたいな感じになっている。魔物が出るのもあって、この国は陸の孤島みたいになっている。
北の関所までは平原が続いているから、そういえば森の中には行ったことがない。
イージスは森の中に魔王の住処があると教えてくれた。ふーん。
……ところで、今更かもしれないけど。そういえば、魔王って。ていうか、魔族って。
封印されていたんじゃ……?
「面白がらないでよ、わたしだって好きで一人でほっつき歩いているわけじゃないんだから」
「コクガイツイホーってやつ?」
そう、国外追放ってやつ。わたしは頷く。
「何人か見たことある。すぐ死んでたけど。アンタ、そういう風には見えないけど、極悪人?」
「……上司騙して働いてたっていちゃもんつけられたの」
「ハハ、そっか。大変だなあ」
イージスは朗らかに笑う。あんま大変とは思われてなさそうだ。
「腹減ってたのか? こんなアングリーグリズリーぐっちゃぐちゃにして」
「……ご飯も食べなくちゃだけど。そうじゃなくて、普通の人間は魔物を狩るなんてことできないでしょう? だから、魔物の皮とか毛を剥いで他国で売ったらお金になるかしらって」
「あーなるほどな! なんだ、解体ヘッタクソだっただけかあ。そういう趣味なんかと思ったぜ」
「……そう」
改めて言われるとちょっとグサッとくる。
「そうかー、金に困ってんのかあ」
イージスはしみじみと呟き、うんうんと頷く。
魔族にお金に困る気持ちが理解できるのだろうか? 魔族にも『お金』という概念は存在しているのか?
「なあ、メリア。金欲しいならウチ来ない?」
「行かない!」
「えー」
いやこれ、絶対ダメなやつでしょ。世間知らずのわたしでもわかる。めちゃくちゃよくない方のナンパというやつでは? わたしはさらにイージスから距離をとった。
わたしの反応にイージスはやっぱりつまらなさそうに、さきほどと同じように唇を尖らせた。
「ウチ、魔王がいるんだけどさあ。アンタ、なんかちょっと変だし。ウチんところで雇ってもらったらいんじゃねーの、って。衣食住に、金もあるよ」
「……え」
……お金が、ある。
いや、でも、魔族だし……。そんな甘いことを言って、人間をどうにかこうにかしているかもしれないし……。
「アンタさあ、他国に素材売りに行くって言ってたけど、この国の国境にも門番とかいんじゃん? コクガイツイホーなんてなってんのに、他国なんて出ていけねえんじゃねーの?」
「……あ」
そういえば、確かに。
無理に暴力の力でゴリ押しはできるだろうけど……それをして国際問題に発展しても困る。善良な一般国民の皆さんにご迷惑をおかけするのはよくない。違法な傭兵グループたちがしているようにいい感じに門番の買収ができたらいいんだけど……。でも、まず、先立つものがないわけだし。
「……詰んでる……」
あの王子、まさかここまで読んでいた? わたしにどう足掻いてもお金を稼げない絶望感を味合わせようと?
門の外に放り出されて死にはしないけど、お金も稼げず一人で虚しく生きていく罰を与えようとしていたのか? あの男が? ……いや、そんな賢くないだろうな。たまたまか。
ともかくとして、わたしは目の前が真っ暗になった。
「だからさあ、とりあえずウチ来てみなよ。なんかアンタいると元気出て来るし、なっ?」
「……元気が出てくるとかはよくわからないけど……」
衣食住補償に、お給金。
…………悪くない!
「わかった。その魔王っていうのに紹介してくれる?」
「おっ! やったー! ついてきて!」
イージスはガバッと勢いよく立ち上がった。うわ、めちゃくちゃ……背が高い!!! というか、デカイ!!!
そして。
「……足、速っ!!!」
そばにいるとあんなにデカくて圧がハンパなかったイージスは、ピュッと走ってあっという間にちっちゃくしか見えなくなり、そのうち見失った。人間の速さじゃない。身体は大きくても、外見上に違いはなく見える魔族だが、やはり、身体の作りがなにかしら違うんだろう。
そんなに速いとついていけないんですが!?
とか思っていたら、イージスは「悪い悪い」と笑いながらこれまた爆速で戻ってきた。
「なんかすげー体の調子良くてさあ! つい思いっきり走っちゃった。オレ、足速いんだ」
「……うん、めちゃくちゃ速いね……」
「はー、気持ちよかったー。歩いてくかあ、そんな遠くないよ。多分」
うん、それがいい。歩いていただこう。
思い切り走ったイージスはなんだかご機嫌だった。
「目が覚めてから最高記録かもしんねー」
「ふうん、そうなんだ。よかったね」
嬉しそうなイージスはわたしにこう言われるとますます顔を綻ばせて笑った。さっきは距離感近くて困ったけど、大型犬と思えばかわいくないこともないかもしれない。
……いや、それにしても、だいぶデカイが。
イージスはすぐ再出発だ、と踵を返したけれど、わたしはそれを引き止めた。
「ごめん。ちょっと待ってて」
「ん? ソレ、持っていくのか?」
ソレ、というのはわたしがグチャグチャにしてしまった熊型の魔物の肉片たちだ。このままにしておくのは忍びない。
「メリア、腹減ってる? 今、飯食えそうならオレがそれ料理してやるよ」
「えっ、ほんとに!?」
「いやあ、持ち歩くの、なんかイヤじゃん。それ」
指さされて、わたしは「う……」となった。
魔族の感性でも、嫌なんだ……。グチャグチャの肉片持って歩くの……。
それはさておき、確かにお腹も空いてきたし、イージスの提案はありがたい。
イージスは肩に背負っていたカバンから鉄鍋を取り出した。カバンの中に入るくらいだから、そんなに大きくはないけど丈夫そうで立派だ。手際良く彼は焚き火台も組み立ててしまった。
「メリア、火起こせるか? オレ、グチャグチャになった奴どうにかするから」
「う、うん」
イージスはカバンから小さなナイフも取り出す。ずいぶんアウトドア慣れしている感じだ。……わたしもこれくらいの装備を持って国外追放されていれば……。
イージスは器用にナイフを使って肉と皮を剥いでいく。
……解体の仕方、教えてもらおうかな……。
ぼんやりそんなことを考えながら、わたしは焚き火台と向き合った。着火剤は、コロンとして真っ白なプニプニ。よくわからないけど、魔物の脂らしい。イージスは「よく燃えるし保ちがいい」と言っていた。
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「……うっわ!」
指先に念じて、火の玉を一つ。それを着火剤にポンと投げると勢いよく火が噴いた。
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「えっ? メリア、本当に人間?」
「ど、どういうこと?」
「だって、それ、魔力じゃん。そういう匂いはしてたけどさぁ」
「……一応、人間だけど……」
そう言われると自信がなくなってきてしまう。
聖女の力とは違う『力』。エミリーが聖女の力に目覚めるまでは、比較対象もいなかったから、わたしは自分の力を疑問に思うことはなかったけれど、彼女の聖なる力……って言えばいいのかな。光の球を出したり、魔物をジュッと消滅させたり、結界を張ったりとか、そういう力を見たら「あれ? わたし、なにか違う?」とは思っていた。
(……『魔力』って、魔族が持ってる力よね……?)
そんなわたしの気持ちとは裏腹に、ごうごうと燃える火に炙られた魔物の肉はいい匂いを漂わせてきた。イージスはまたまたカバンから調味料の小瓶を取り出し、パッパとそれに振り掛ける。粗挽きの胡椒が嬉しい。さらにはチーズの塊が出てきたから驚きだ。ナイフでチーズを薄くスライスし、お肉に乗っけると、でろりと魅惑的にとろける。
「料理ってほどの料理じゃなかったなー。ま、いいだろ」
「うん、すごい! おいしそう! ありがとう!」
イージスは皿に肉を乗っけると、笑顔と共に手渡してきてくれた。フォークも一緒についてる。すごい。カバンになんでも入っているみたいだ。
「……おいしい……!」
焼き立てのお肉はとにかくジューシーだった。硬そうに見えた魔物のお肉だけど、イージスが筋の部分に刃を入れておいてくれていたらしく、ちゃんと噛み切れる。そして、口の中で噛みしめれば程よい弾力と肉汁がじゅわっと楽しめるのだ。赤身肉、最高。やっぱり粗挽きの胡椒は相性抜群だし、それにとろとろのチーズまで乗っているのだから、それで文句の出ようはずもない。
「ハハッ、うまそうに食うんだなあ」
「うん……魔物のお肉、初めて食べたけど、おいしい! 作ってくれてありがとう!」
「よかったよかった」
王宮で出てきた食事もおいしかったけれど、聖女の仕事が忙しすぎてご飯の時間を楽しめないことも多かったから、こういう開放的な場所でのんびりと食事を楽しめるのもまた、おいしさを助長させていた。ただ、お肉を焼いただけ。けれど、本当にとってもおいしかった。
イージスはたくさん焼いてくれて、わたしもたくさん食べた。
◆
さて、食事と片付けもすませて、イージスの案内で魔王のいるところに再出発することになった。もちろん、イージスにはちゃんと歩いてもらってる。普通に歩いてても、歩幅が違うからわたしが小走り気味になってるけど。お腹いっぱい食べてしまったから腹ごなしの運動と思えばいいかもしれない。
しばらく歩いて、草原の端っこに森が見えてきた。
私が追い出されてきたあの国は平原のど真ん中にあって、平原の周りは森林地帯になってて、さらにそこは山脈でぐるりと囲まれてる、みたいな感じになっている。魔物が出るのもあって、この国は陸の孤島みたいになっている。
北の関所までは平原が続いているから、そういえば森の中には行ったことがない。
イージスは森の中に魔王の住処があると教えてくれた。ふーん。
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