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ダンスの許可
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なんで、クリフトン卿が?
約束どころか、申し込みもされていないのに?
ダンスカードが空白であることはわかっている。
空白でなかったのはフェルナンドやブライアンがお情けで書き込んでくれた時だけだ。
だから、このタイミングでクリフトン卿がさも約束をしていたかのように申し出てくれたのか、わからない。
ユージェニーとマーゴを見ても戸惑っているようだ。
ブライアンは・・・探すには振り返らなければいけないのでできない。・・・いや。ようやく、視界の端に入ってくれた。こちらを見る眼付から、クリフトン卿の申し出を受けるように促しているように見える。
そうか。ここでクリフトン卿の手を取ってダンスフロアに出てしまえば、パートナーであるクリフトン卿以外と話す必要がない。
それどころか、クリフトン卿以外と話すことは、お姉様もフェルナンドもマナー違反になる。
ダンスフロアで意識を向ける相手はダンスパートナーだけで、パートナーが踊りやすいように配慮する一環で、周囲とぶつからないように誘導することもあるけど、それだけだ。ダンスパートナー以外とは口を利かない。
問題はクリフトン卿と踊っても評判が落ちないかどうか。
未婚の淑女は父兄と繋がりのある人物以外は求婚者と踊るから、わたしのように婚約者がいると、踊れる相手は相手が婚約者に売約済みだとわかっている相手に限られてくる。
それ故に、簡単に浮気相手と見做されたり、婚約相手から奪おうとして侮辱していると見做されないよう、近付かないし、婚約者のいる淑女を近付けさせないのだ。
間柄にしても、フェルナンドと言い争っていた為、周囲からはフェルナンドとは仕事仲間だという印象を持たれているはずだ。
婚約者の仕事仲間からお義理でダンスに誘ってもらった。
そういう印象を与えられるなら、フェルナンドという婚約者のいるわたしが両家の親戚でもない殿方と踊っても、社交の一部としてみなされて許される。
ダンスを終えてフェルナンドと戻ってくるまでの会話は、余程の暇人しか盗み聞きしていないだろうから、頷いてしまえば友達とブライアンは口裏を合わせてくれるだろう。
そうと決まれば、クリフトン卿の手を取らないわけにはいかない。
「よろしくお願いします」
フェルナンドに謝らないですむかと思うと、社交用に浮かべようとした微笑みにも感情が乗る。
「なんで、そんな奴と踊る約束をしているんだ!」
フェルナンドにそう言わせるのは、嫉妬ではなく、謝らせようとしたわたしが謝らずに立ち去ろうとしたから。
「ブライアン卿があなたの仕事相手だと紹介してくれたわ」
「そんなの、関係ないだろ! 少し相手をしなかったらこれだ。ブライアンの名前を出せば好き勝手出来ると思うなよ」
ダンスフロアを迂回して戻ってきたブライアンが肩で息をしながら言う。
「兄上、私がクリフトン卿を紹介したんだ。何の問題もないだろう」
「ブライアン! ・・・クソっ!」
ブライアンからもお墨付きをもらったので、フェルナンドは怒り心頭の様子だ。
「駄目よ、フェルナンド。そんな乱暴な言葉を使っちゃ、いけないわ」
お姉様からも窘められて、フェルナンドは項垂れる。
わたしはフェルナンドのせいで迷惑をかけたクリフトン卿に謝る。仕事をすっぽかした挙句、社交の場でも謝るどころか喧嘩して、更にクリフトン卿の評判を傷付けるようなことまで言ったのだ。本人が謝らないし、わたしも助けてもらったから謝るしかない。
「ごめんなさい」
クリフトン卿の額にできた縦皺はさっきより深くなっているように見えた。
「いや、かまわない」
約束どころか、申し込みもされていないのに?
ダンスカードが空白であることはわかっている。
空白でなかったのはフェルナンドやブライアンがお情けで書き込んでくれた時だけだ。
だから、このタイミングでクリフトン卿がさも約束をしていたかのように申し出てくれたのか、わからない。
ユージェニーとマーゴを見ても戸惑っているようだ。
ブライアンは・・・探すには振り返らなければいけないのでできない。・・・いや。ようやく、視界の端に入ってくれた。こちらを見る眼付から、クリフトン卿の申し出を受けるように促しているように見える。
そうか。ここでクリフトン卿の手を取ってダンスフロアに出てしまえば、パートナーであるクリフトン卿以外と話す必要がない。
それどころか、クリフトン卿以外と話すことは、お姉様もフェルナンドもマナー違反になる。
ダンスフロアで意識を向ける相手はダンスパートナーだけで、パートナーが踊りやすいように配慮する一環で、周囲とぶつからないように誘導することもあるけど、それだけだ。ダンスパートナー以外とは口を利かない。
問題はクリフトン卿と踊っても評判が落ちないかどうか。
未婚の淑女は父兄と繋がりのある人物以外は求婚者と踊るから、わたしのように婚約者がいると、踊れる相手は相手が婚約者に売約済みだとわかっている相手に限られてくる。
それ故に、簡単に浮気相手と見做されたり、婚約相手から奪おうとして侮辱していると見做されないよう、近付かないし、婚約者のいる淑女を近付けさせないのだ。
間柄にしても、フェルナンドと言い争っていた為、周囲からはフェルナンドとは仕事仲間だという印象を持たれているはずだ。
婚約者の仕事仲間からお義理でダンスに誘ってもらった。
そういう印象を与えられるなら、フェルナンドという婚約者のいるわたしが両家の親戚でもない殿方と踊っても、社交の一部としてみなされて許される。
ダンスを終えてフェルナンドと戻ってくるまでの会話は、余程の暇人しか盗み聞きしていないだろうから、頷いてしまえば友達とブライアンは口裏を合わせてくれるだろう。
そうと決まれば、クリフトン卿の手を取らないわけにはいかない。
「よろしくお願いします」
フェルナンドに謝らないですむかと思うと、社交用に浮かべようとした微笑みにも感情が乗る。
「なんで、そんな奴と踊る約束をしているんだ!」
フェルナンドにそう言わせるのは、嫉妬ではなく、謝らせようとしたわたしが謝らずに立ち去ろうとしたから。
「ブライアン卿があなたの仕事相手だと紹介してくれたわ」
「そんなの、関係ないだろ! 少し相手をしなかったらこれだ。ブライアンの名前を出せば好き勝手出来ると思うなよ」
ダンスフロアを迂回して戻ってきたブライアンが肩で息をしながら言う。
「兄上、私がクリフトン卿を紹介したんだ。何の問題もないだろう」
「ブライアン! ・・・クソっ!」
ブライアンからもお墨付きをもらったので、フェルナンドは怒り心頭の様子だ。
「駄目よ、フェルナンド。そんな乱暴な言葉を使っちゃ、いけないわ」
お姉様からも窘められて、フェルナンドは項垂れる。
わたしはフェルナンドのせいで迷惑をかけたクリフトン卿に謝る。仕事をすっぽかした挙句、社交の場でも謝るどころか喧嘩して、更にクリフトン卿の評判を傷付けるようなことまで言ったのだ。本人が謝らないし、わたしも助けてもらったから謝るしかない。
「ごめんなさい」
クリフトン卿の額にできた縦皺はさっきより深くなっているように見えた。
「いや、かまわない」
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