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真面目過ぎて泣かされる
「いいんですよ。ブライアンがテキトーなこと言って、詳しい事情(こと)は知らなかったわけだし」
仲が良さそうだったのに、クリフトン卿にちゃんと言わなかったブライアンが悪い。
「しかし、私は――」
クリフトン卿は引いてくれなかった。
真面目か!
「いいよ。クリフトン卿は謝ってくれたし」
「あの場には君の友人もいた。友人の前で君を侮辱した」
「そんなことないって。友好的とは思えなかったけど、伯爵以上の貴族だったらよくあるし」
我が家だったらそんなことで謝るなんてことは絶対にあり得ない。お父様やお姉様が間違っていても、それを指摘したら、わたしが謝ることになる。
伯爵以上の貴族となると、謝罪なんてことは非常に少ない。領地の運営だけでなく、災害や戦時には領地を守るだけの力が必要になる。使用人の裏切りなんかは一番重要で、領主の言うことは正しいと躾ける。
貴族同士でも相手の面子を潰すので、二人きりでない場合は間違いを指摘しないし、謝りもしない。
だから、人前での謝罪は『ごめんなさい』ではなく、『ありがとう』や『すまない』だ。
「それでも、――」
「クリフトン卿のように謝ってくれる人なんて、ほとんどいないから。今日、会ったばかりの人に態度が悪かったってすぐに謝れる人なんて、そうそういないよ」
この人、真面目過ぎるなー。
ブライアンは砕け過ぎているけど、逆にクリフトン卿は四角四面な性格のようだ。
二人ともタイプは違うようでいて、すぐに自分の非を認める性格だし、類は友を呼ぶってことかな。
ただし、ブライアンはわたしのことを可哀想な奴だとか思ってるし、どうしてそう思ったのか、わからないけど。
「アリス嬢」
ようやくわかってくれたかな?
あ。
でも、なんでクリフトン卿はそんな表情でわたしを見るの?
クリフトン卿は眦を下げてわたしを見ていた。
「――!!」
そんな目で見ないで!
わたしは、
わたしは・・・
可哀想な奴じゃない!!!
「すまない。私は口がうまくないから、君を傷付けてしまったなら、謝る」
「・・・」
違う!
言葉じゃない!
雨に打たれた子犬を見るような目でわたしを見ないで!!
わたしはそんな目で見られたくない!!!
「だから、泣かないでくれ」
「! 泣いてなんか――」
抗議しようとしたら、頬を伝って何かが落ちて行った。
「え?!」
足が上手く動かない。
だけど、ダンスを止めて醜態を晒せば噂の種になる。
涙は?
それに気付かれたら終わりだ。
ずっと涙が止まらないかもしれない。
ダンスフロアで泣くわけにはいかない。
ここから逃げなければ・・・!
でも、どうやって?
クリフトン卿のステップが不自然のないゆっくり目なものに変わる。そのおかげで、動揺しながらもなんとか足はもつれなかった。
「少し休もう」
ダンスフロアの端へとリードされる。
周囲はまだ気付いていないはずだ。誰もわたしとクリフトン卿の動きを注目していない。
あと少し。
数メートルがとても長った。
ダンスフロアから降りられれば、休憩用に開放されている部屋に逃げ込める。
それだけを考えて足を動かす。
ダンスフロアの端に着いたのでエスコートはここまでだ、とクリフトン卿から離れようとしたら、預けていた左手に力を入れて離れられない。
談笑していたダンスの見物人のようにゆったりとしたエスコートで近くのテラスに導かれる。確かに休憩用に開放されている部屋よりもテラスのほうが近いし、密室にはならない。
ガラス戸が開かれ、頬に夜風が当たると同時にホッとして身体から力が抜けた。
仲が良さそうだったのに、クリフトン卿にちゃんと言わなかったブライアンが悪い。
「しかし、私は――」
クリフトン卿は引いてくれなかった。
真面目か!
「いいよ。クリフトン卿は謝ってくれたし」
「あの場には君の友人もいた。友人の前で君を侮辱した」
「そんなことないって。友好的とは思えなかったけど、伯爵以上の貴族だったらよくあるし」
我が家だったらそんなことで謝るなんてことは絶対にあり得ない。お父様やお姉様が間違っていても、それを指摘したら、わたしが謝ることになる。
伯爵以上の貴族となると、謝罪なんてことは非常に少ない。領地の運営だけでなく、災害や戦時には領地を守るだけの力が必要になる。使用人の裏切りなんかは一番重要で、領主の言うことは正しいと躾ける。
貴族同士でも相手の面子を潰すので、二人きりでない場合は間違いを指摘しないし、謝りもしない。
だから、人前での謝罪は『ごめんなさい』ではなく、『ありがとう』や『すまない』だ。
「それでも、――」
「クリフトン卿のように謝ってくれる人なんて、ほとんどいないから。今日、会ったばかりの人に態度が悪かったってすぐに謝れる人なんて、そうそういないよ」
この人、真面目過ぎるなー。
ブライアンは砕け過ぎているけど、逆にクリフトン卿は四角四面な性格のようだ。
二人ともタイプは違うようでいて、すぐに自分の非を認める性格だし、類は友を呼ぶってことかな。
ただし、ブライアンはわたしのことを可哀想な奴だとか思ってるし、どうしてそう思ったのか、わからないけど。
「アリス嬢」
ようやくわかってくれたかな?
あ。
でも、なんでクリフトン卿はそんな表情でわたしを見るの?
クリフトン卿は眦を下げてわたしを見ていた。
「――!!」
そんな目で見ないで!
わたしは、
わたしは・・・
可哀想な奴じゃない!!!
「すまない。私は口がうまくないから、君を傷付けてしまったなら、謝る」
「・・・」
違う!
言葉じゃない!
雨に打たれた子犬を見るような目でわたしを見ないで!!
わたしはそんな目で見られたくない!!!
「だから、泣かないでくれ」
「! 泣いてなんか――」
抗議しようとしたら、頬を伝って何かが落ちて行った。
「え?!」
足が上手く動かない。
だけど、ダンスを止めて醜態を晒せば噂の種になる。
涙は?
それに気付かれたら終わりだ。
ずっと涙が止まらないかもしれない。
ダンスフロアで泣くわけにはいかない。
ここから逃げなければ・・・!
でも、どうやって?
クリフトン卿のステップが不自然のないゆっくり目なものに変わる。そのおかげで、動揺しながらもなんとか足はもつれなかった。
「少し休もう」
ダンスフロアの端へとリードされる。
周囲はまだ気付いていないはずだ。誰もわたしとクリフトン卿の動きを注目していない。
あと少し。
数メートルがとても長った。
ダンスフロアから降りられれば、休憩用に開放されている部屋に逃げ込める。
それだけを考えて足を動かす。
ダンスフロアの端に着いたのでエスコートはここまでだ、とクリフトン卿から離れようとしたら、預けていた左手に力を入れて離れられない。
談笑していたダンスの見物人のようにゆったりとしたエスコートで近くのテラスに導かれる。確かに休憩用に開放されている部屋よりもテラスのほうが近いし、密室にはならない。
ガラス戸が開かれ、頬に夜風が当たると同時にホッとして身体から力が抜けた。
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