17 / 36
ミラー家のお茶会の招待状
しおりを挟む
「アリス、ミラー家からよ。珍しいわね、あんた宛てにお茶会の招待なんて」
あの夜会の二日後、わたしの下にミラー家のお茶会の招待状が届いた。届いたと言っても、厨房で朝食をとる時に、同じ席に付いているメイドのローズに渡されたものだ。
筆頭執事(家令)によって一度は開封され、問題なしと判断されたから、メイドも内容を知っているのだろう。
わたしの手紙に事前に開封しても許されるのは、お父様とお母様、筆頭執事だけだ。わたしが成人していれば、そんなことは許されなくなる。
だけど、わたしはまだ成人していると見做されない。
一般的に社交界デビューしてしまえば成人と見做されるが、これは結婚できるという意味で、法的な成人は別だ。
未婚の淑女の法的な成人は二十六。完全に嫁き遅れになって、老嬢(オールドミス)と呼ばれる年頃だ。社交界デビューが十四歳で出来るので、最大十二年、結婚相手を探して見つからなかった、ということになる。十二年も結婚相手が見つからなかったというなら、もう結婚は無理だと、国ですら判断しているということだ。
既婚夫人となれば、何歳でも法的に成人と見做される。
でも、老嬢のように殿方と同じ権利を有するのは、未亡人になってからだ。
法的に成人と見做されない、わたし宛ての招待状は事前に中身を確認され、出席するに値するものだけが届けられる。この判別と欠席の連絡は筆頭執事がやっている。
お姉様宛ての招待状はお父様かお母様がやっているけど、わたしの場合は筆頭執事に一任されている。
婚約者の家からの招待状なので開封されないかと思ったけど、開封されるんだ・・・。
ぼんやりそう思った。
そういえば、ミラー家のお茶会に招かれたことはほぼない。
というか、ない?
婚約しているのに?
結婚してから馴染めということなんだろうか?
我が家の方針なのか、向こうの方針なのかわからないけど、中々に鬼畜だ。
婚約解消を考えて初めて届いたというのも、またすごい。あの夜会での騒ぎで、お父様が考えを変えて、わたしに渡すよう命じたんだろうか?
偶然の一致?
「ありがとう」
ともあれ、ミラー家のお茶会の招待状を受け取る。
この招待状はブライアンが言っていた通りなら、わたしがミラー家に行く口実だ。領地の経営に関して学べると聞いていたが、クリフトン卿の話を聞いた今では役に立つとは思えない知識だ。
ミラー家に行くのだから、婚約解消を相談してもいいかもしれない。フェルナンドはお姉様のことが好きだし、好きな人の妹と結婚して親戚付き合いをするなんて、可哀想だ。わたしが。
結婚してからもつまらなそうにされて、夜会ではお姉様のところに行ってしまったのを笑って見ているなんて。
クリフトン卿が言うには、知識がないから参加できない会話じゃないそうだし。
単に一緒にいたかっただけのようだし。
「外出着、どうすんの?」
裁縫が得意なメイドのミナが言う。
「水色のはどう?」
比較的気に入っている外出着を言ってみた。何着かある外出着は小さくなったり、生地が傷んだりして、状態の良いものは少ない。
「水色? 水色、着れるの?」
「何か駄目なの?」
「フェルナンド様と会う時に何回か着てるでしょ」
「何十回も着てる」
「それ、ほぼ普段着」
「普段着落ちさせたほうがいい?」
「キャロル様の着なくなった外出着ならいくらでもあるわよ。一着、あたしにくれたら、仕立て直してあげる」
お姉様のお下がりのドレス狙いでも、ミナはこうして声をかけて仕立て直してくれる。外出前に毎回、服装チェックもしてくれるから、一着のお姉様のお下がりドレスでよくぞここまでしてくれていると思う。
「仕立て直す時間ある?」
「お茶会の日付は?」
訊かれて、招待状に目を通した。
「明日」
「仕立て直す時間ないわ。まあ、婚約者の家からなら許されるんじゃない?」
本当は一昨日、お茶会を口実に呼ぶと言われていたけど、それは黙っておく。
あの夜会の二日後、わたしの下にミラー家のお茶会の招待状が届いた。届いたと言っても、厨房で朝食をとる時に、同じ席に付いているメイドのローズに渡されたものだ。
筆頭執事(家令)によって一度は開封され、問題なしと判断されたから、メイドも内容を知っているのだろう。
わたしの手紙に事前に開封しても許されるのは、お父様とお母様、筆頭執事だけだ。わたしが成人していれば、そんなことは許されなくなる。
だけど、わたしはまだ成人していると見做されない。
一般的に社交界デビューしてしまえば成人と見做されるが、これは結婚できるという意味で、法的な成人は別だ。
未婚の淑女の法的な成人は二十六。完全に嫁き遅れになって、老嬢(オールドミス)と呼ばれる年頃だ。社交界デビューが十四歳で出来るので、最大十二年、結婚相手を探して見つからなかった、ということになる。十二年も結婚相手が見つからなかったというなら、もう結婚は無理だと、国ですら判断しているということだ。
既婚夫人となれば、何歳でも法的に成人と見做される。
でも、老嬢のように殿方と同じ権利を有するのは、未亡人になってからだ。
法的に成人と見做されない、わたし宛ての招待状は事前に中身を確認され、出席するに値するものだけが届けられる。この判別と欠席の連絡は筆頭執事がやっている。
お姉様宛ての招待状はお父様かお母様がやっているけど、わたしの場合は筆頭執事に一任されている。
婚約者の家からの招待状なので開封されないかと思ったけど、開封されるんだ・・・。
ぼんやりそう思った。
そういえば、ミラー家のお茶会に招かれたことはほぼない。
というか、ない?
婚約しているのに?
結婚してから馴染めということなんだろうか?
我が家の方針なのか、向こうの方針なのかわからないけど、中々に鬼畜だ。
婚約解消を考えて初めて届いたというのも、またすごい。あの夜会での騒ぎで、お父様が考えを変えて、わたしに渡すよう命じたんだろうか?
偶然の一致?
「ありがとう」
ともあれ、ミラー家のお茶会の招待状を受け取る。
この招待状はブライアンが言っていた通りなら、わたしがミラー家に行く口実だ。領地の経営に関して学べると聞いていたが、クリフトン卿の話を聞いた今では役に立つとは思えない知識だ。
ミラー家に行くのだから、婚約解消を相談してもいいかもしれない。フェルナンドはお姉様のことが好きだし、好きな人の妹と結婚して親戚付き合いをするなんて、可哀想だ。わたしが。
結婚してからもつまらなそうにされて、夜会ではお姉様のところに行ってしまったのを笑って見ているなんて。
クリフトン卿が言うには、知識がないから参加できない会話じゃないそうだし。
単に一緒にいたかっただけのようだし。
「外出着、どうすんの?」
裁縫が得意なメイドのミナが言う。
「水色のはどう?」
比較的気に入っている外出着を言ってみた。何着かある外出着は小さくなったり、生地が傷んだりして、状態の良いものは少ない。
「水色? 水色、着れるの?」
「何か駄目なの?」
「フェルナンド様と会う時に何回か着てるでしょ」
「何十回も着てる」
「それ、ほぼ普段着」
「普段着落ちさせたほうがいい?」
「キャロル様の着なくなった外出着ならいくらでもあるわよ。一着、あたしにくれたら、仕立て直してあげる」
お姉様のお下がりのドレス狙いでも、ミナはこうして声をかけて仕立て直してくれる。外出前に毎回、服装チェックもしてくれるから、一着のお姉様のお下がりドレスでよくぞここまでしてくれていると思う。
「仕立て直す時間ある?」
「お茶会の日付は?」
訊かれて、招待状に目を通した。
「明日」
「仕立て直す時間ないわ。まあ、婚約者の家からなら許されるんじゃない?」
本当は一昨日、お茶会を口実に呼ぶと言われていたけど、それは黙っておく。
44
あなたにおすすめの小説
初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました
3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」
男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。
初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。
その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。
しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。
社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。
一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。
昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。
しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。
両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。
「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」
父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた
ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。
だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました
柚木ゆず
恋愛
「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」
かつてわたしは孤児院で暮らしていて、姉妹のように育ったソリーヌという大切な人がいました。そんなソリーヌは突然孤児院を去ってしまい行方が分からなくなっていたのですが、街に買い物に出かけた際に9年ぶりの再会を果たしたのでした。
もう会えないと思っていた人に出会えて、わたしは本当に嬉しかったのですが――。現状を聞かれたため「とても幸せに暮らしています」と伝えると、ソリーヌは激しく怒りだしてしまったのでした。
平民ですが何か?私、貴族の令嬢ではありません…
クロユキ
恋愛
「イライザお前と婚約破棄をする」
学園の朝の登校時間にルーカス・ロアン子息子爵から婚約破棄を言われたイライザ。
彼の側には彼女のロザンヌ男爵令嬢がいた。
ルーカスから一方的に婚約破棄を言われたイライザ、彼とは婚約はしていないのに「先に言っておく」と婚約破棄を言われたイライザ、その理由がルーカスの母親が腹痛で動けない時イライザと出会いイライザは持っていた自分の薬をルーカスの母親に渡し名前も言わずにその場を離れた。
ルーカスの母親は、イライザの優しさに感動して息子のルーカスに婚約を考えていた。
誤字脱字があります更新が不定期です。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる