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ミラー家のお茶会の招待状
「アリス、ミラー家からよ。珍しいわね、あんた宛てにお茶会の招待なんて」
あの夜会の二日後、わたしの下にミラー家のお茶会の招待状が届いた。届いたと言っても、厨房で朝食をとる時に、同じ席に付いているメイドのローズに渡されたものだ。
筆頭執事(家令)によって一度は開封され、問題なしと判断されたから、メイドも内容を知っているのだろう。
わたしの手紙に事前に開封しても許されるのは、お父様とお母様、筆頭執事だけだ。わたしが成人していれば、そんなことは許されなくなる。
だけど、わたしはまだ成人していると見做されない。
一般的に社交界デビューしてしまえば成人と見做されるが、これは結婚できるという意味で、法的な成人は別だ。
未婚の淑女の法的な成人は二十六。完全に嫁き遅れになって、老嬢(オールドミス)と呼ばれる年頃だ。社交界デビューが十四歳で出来るので、最大十二年、結婚相手を探して見つからなかった、ということになる。十二年も結婚相手が見つからなかったというなら、もう結婚は無理だと、国ですら判断しているということだ。
既婚夫人となれば、何歳でも法的に成人と見做される。
でも、老嬢のように殿方と同じ権利を有するのは、未亡人になってからだ。
法的に成人と見做されない、わたし宛ての招待状は事前に中身を確認され、出席するに値するものだけが届けられる。この判別と欠席の連絡は筆頭執事がやっている。
お姉様宛ての招待状はお父様かお母様がやっているけど、わたしの場合は筆頭執事に一任されている。
婚約者の家からの招待状なので開封されないかと思ったけど、開封されるんだ・・・。
ぼんやりそう思った。
そういえば、ミラー家のお茶会に招かれたことはほぼない。
というか、ない?
婚約しているのに?
結婚してから馴染めということなんだろうか?
我が家の方針なのか、向こうの方針なのかわからないけど、中々に鬼畜だ。
婚約解消を考えて初めて届いたというのも、またすごい。あの夜会での騒ぎで、お父様が考えを変えて、わたしに渡すよう命じたんだろうか?
偶然の一致?
「ありがとう」
ともあれ、ミラー家のお茶会の招待状を受け取る。
この招待状はブライアンが言っていた通りなら、わたしがミラー家に行く口実だ。領地の経営に関して学べると聞いていたが、クリフトン卿の話を聞いた今では役に立つとは思えない知識だ。
ミラー家に行くのだから、婚約解消を相談してもいいかもしれない。フェルナンドはお姉様のことが好きだし、好きな人の妹と結婚して親戚付き合いをするなんて、可哀想だ。わたしが。
結婚してからもつまらなそうにされて、夜会ではお姉様のところに行ってしまったのを笑って見ているなんて。
クリフトン卿が言うには、知識がないから参加できない会話じゃないそうだし。
単に一緒にいたかっただけのようだし。
「外出着、どうすんの?」
裁縫が得意なメイドのミナが言う。
「水色のはどう?」
比較的気に入っている外出着を言ってみた。何着かある外出着は小さくなったり、生地が傷んだりして、状態の良いものは少ない。
「水色? 水色、着れるの?」
「何か駄目なの?」
「フェルナンド様と会う時に何回か着てるでしょ」
「何十回も着てる」
「それ、ほぼ普段着」
「普段着落ちさせたほうがいい?」
「キャロル様の着なくなった外出着ならいくらでもあるわよ。一着、あたしにくれたら、仕立て直してあげる」
お姉様のお下がりのドレス狙いでも、ミナはこうして声をかけて仕立て直してくれる。外出前に毎回、服装チェックもしてくれるから、一着のお姉様のお下がりドレスでよくぞここまでしてくれていると思う。
「仕立て直す時間ある?」
「お茶会の日付は?」
訊かれて、招待状に目を通した。
「明日」
「仕立て直す時間ないわ。まあ、婚約者の家からなら許されるんじゃない?」
本当は一昨日、お茶会を口実に呼ぶと言われていたけど、それは黙っておく。
あの夜会の二日後、わたしの下にミラー家のお茶会の招待状が届いた。届いたと言っても、厨房で朝食をとる時に、同じ席に付いているメイドのローズに渡されたものだ。
筆頭執事(家令)によって一度は開封され、問題なしと判断されたから、メイドも内容を知っているのだろう。
わたしの手紙に事前に開封しても許されるのは、お父様とお母様、筆頭執事だけだ。わたしが成人していれば、そんなことは許されなくなる。
だけど、わたしはまだ成人していると見做されない。
一般的に社交界デビューしてしまえば成人と見做されるが、これは結婚できるという意味で、法的な成人は別だ。
未婚の淑女の法的な成人は二十六。完全に嫁き遅れになって、老嬢(オールドミス)と呼ばれる年頃だ。社交界デビューが十四歳で出来るので、最大十二年、結婚相手を探して見つからなかった、ということになる。十二年も結婚相手が見つからなかったというなら、もう結婚は無理だと、国ですら判断しているということだ。
既婚夫人となれば、何歳でも法的に成人と見做される。
でも、老嬢のように殿方と同じ権利を有するのは、未亡人になってからだ。
法的に成人と見做されない、わたし宛ての招待状は事前に中身を確認され、出席するに値するものだけが届けられる。この判別と欠席の連絡は筆頭執事がやっている。
お姉様宛ての招待状はお父様かお母様がやっているけど、わたしの場合は筆頭執事に一任されている。
婚約者の家からの招待状なので開封されないかと思ったけど、開封されるんだ・・・。
ぼんやりそう思った。
そういえば、ミラー家のお茶会に招かれたことはほぼない。
というか、ない?
婚約しているのに?
結婚してから馴染めということなんだろうか?
我が家の方針なのか、向こうの方針なのかわからないけど、中々に鬼畜だ。
婚約解消を考えて初めて届いたというのも、またすごい。あの夜会での騒ぎで、お父様が考えを変えて、わたしに渡すよう命じたんだろうか?
偶然の一致?
「ありがとう」
ともあれ、ミラー家のお茶会の招待状を受け取る。
この招待状はブライアンが言っていた通りなら、わたしがミラー家に行く口実だ。領地の経営に関して学べると聞いていたが、クリフトン卿の話を聞いた今では役に立つとは思えない知識だ。
ミラー家に行くのだから、婚約解消を相談してもいいかもしれない。フェルナンドはお姉様のことが好きだし、好きな人の妹と結婚して親戚付き合いをするなんて、可哀想だ。わたしが。
結婚してからもつまらなそうにされて、夜会ではお姉様のところに行ってしまったのを笑って見ているなんて。
クリフトン卿が言うには、知識がないから参加できない会話じゃないそうだし。
単に一緒にいたかっただけのようだし。
「外出着、どうすんの?」
裁縫が得意なメイドのミナが言う。
「水色のはどう?」
比較的気に入っている外出着を言ってみた。何着かある外出着は小さくなったり、生地が傷んだりして、状態の良いものは少ない。
「水色? 水色、着れるの?」
「何か駄目なの?」
「フェルナンド様と会う時に何回か着てるでしょ」
「何十回も着てる」
「それ、ほぼ普段着」
「普段着落ちさせたほうがいい?」
「キャロル様の着なくなった外出着ならいくらでもあるわよ。一着、あたしにくれたら、仕立て直してあげる」
お姉様のお下がりのドレス狙いでも、ミナはこうして声をかけて仕立て直してくれる。外出前に毎回、服装チェックもしてくれるから、一着のお姉様のお下がりドレスでよくぞここまでしてくれていると思う。
「仕立て直す時間ある?」
「お茶会の日付は?」
訊かれて、招待状に目を通した。
「明日」
「仕立て直す時間ないわ。まあ、婚約者の家からなら許されるんじゃない?」
本当は一昨日、お茶会を口実に呼ぶと言われていたけど、それは黙っておく。
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