幸せを見付けたので、お姉様に婚約者を差し上げます。

プラネットプラント

文字の大きさ
20 / 36

お母様の娘

しおりを挟む
「どうして、」
「?」
「どうして、ミラー家任せにしたの?! 社交界に出せないとわかっていて、どうしてわたしを社交界に出したの?!」

 婚約したら、嫁入り先が教育する義務を負う?
 何を言っているの?
 行儀見習いだって、結婚相手に相応しい能力を身に付ける為におこなうものだ。
 婚約したからといって、婚家に教育の丸投げなんてしない。
 貴族の結婚は家同士の結び付き合いが重視される。婚約していても、相手の家が姻戚でいるメリットがなければ恋仲だろうが婚約解消される。
 つまり、子どもはみんな家の駒なのだ。婚約が取り消され、別の相手と婚約させることも考えれば、社交界に出て結婚相手が見つかる程度の教育は必要。
 社交界に出て結婚相手が見付からない令息令嬢など、格下の相手に金を払って押し付けるしかない失敗作なのだ。

「私達はお前の婚約を取り付けた時点で親としての義務は終わったの。婚約者の家が社交界に出られるようにする義務があるのよ」

 完全にわたしの教育をミラー家に押し付けていることを正当化しているお母様の発言が、信じられなかった。

「・・・暮らしているのはこの家よ」
「嫁に出すまで預かっているだけよ。本当ならさっさと、花嫁修業でミラー家に行ってもらいたかったわ」
「・・・」

 お姉様は次期当主だから特別。ずっと、そう思ってきた。
 特別は特別だ。
 嫡男がいなくて、跡取り娘になったから特別。家の為に政略結婚させる他の娘とは比べるのも烏滸がましい。
 それほどまでに特別。

 でも、結婚が決まったから、後は婚家任せ。婚家が監督するもの。
 義務は終わった?
 預かっているだけ?
 ・・・。
 わたしは、お母様の娘じゃないの?
 お母様の娘はお姉様だけなの?
 次期当主であるお姉様は特別で、わたしに我慢するよう言っていたのは、お母様にとってわたしが娘じゃないから?
 お姉様を優先してわたしを後回しにしていたのは、わたしがどうでもよかったから?
 居候にすぎなかったから?

 嘘よ!
 嘘だわ!
 そんなことあるはずない!
 わたしもお母様の娘でしょ!

 お母様に突き付けられた現実で眩暈がした。

 わたしのドレスがお下がりなのも、わたしを結婚市場に出す必要がないから・・・お母様の中では、もうミラー家の者だから。
 デビュタントのドレスすら我が家では仕立てる気がなかったのも、ダヴェンフィールド家の者だとは思われていなかったからで。
 装飾品だって、そう。嫁入りするわたしはミラー家伝来の装飾品を受け継ぐから、リボン一本たりとも、与える気などなかったんだろう。
 ユージェニーは嫁に行く時に母方で伝えられている首飾りを貰う予定だと言っていた。
 家に伝わる装飾品は当主の妻が受け継ぐが、時折、母から娘に渡されるものもある。母方から伝わった装飾品がなくても、一つくらいは結婚前に形見分けとして渡される。結婚前に形見分けをするのは、子どもが生まれるまで領地に籠ることになり、年単位で会えなくなることもあるからだ。
 我が家に母方から伝わった装飾品があるか知らないけど、こんなになら、形見分けもないだろう。

 結婚してしまえば、気軽に実家を訪問することすら許されない。
 それなのに、お母様は花嫁修業として早く家を出て行って欲しかった。
 社交界に出て恥ずかしくないだけの教育を与えてくれなかった。
 ドレスも装飾品も買ってくれなかった。
 使用人よりはマシでも、家族としては扱ってくれなかった。
 わたしはミラー家から預かっているだけだ、と言って。
 お姉様を優先していたのは次期当主だから。そう言っていたのは噓だった。

 いや、本当かもしれない。
 嫁に行くだけしか能がない娘と次期当主になる娘。
 生まれた順番が二番目だったから、そうなってしまったの?
 二番目だという理由で、そんなふうに扱われるの?
 次男というのは、長男のスペアだ。スペアだから、いつでもスペアとして使いものになるように育てられる。
 ただ、親が目をかけることはない。
 次女であるわたしは、お姉様のスペア。
 でも、お姉様の代わりになれるようには育てられていない。
 嫁にするのも恥ずかしい状態で、存在することしか許されていなかった。

 いいや、違う。
 存在することすら厭われていた。
 さっさと花嫁修業として家を出て行って欲しがられていた。

 ・・・そう。
 わたしは、お母様に嫌われていたんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました

柚木ゆず
恋愛
「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」  かつてわたしは孤児院で暮らしていて、姉妹のように育ったソリーヌという大切な人がいました。そんなソリーヌは突然孤児院を去ってしまい行方が分からなくなっていたのですが、街に買い物に出かけた際に9年ぶりの再会を果たしたのでした。  もう会えないと思っていた人に出会えて、わたしは本当に嬉しかったのですが――。現状を聞かれたため「とても幸せに暮らしています」と伝えると、ソリーヌは激しく怒りだしてしまったのでした。

平民ですが何か?私、貴族の令嬢ではありません…

クロユキ
恋愛
「イライザお前と婚約破棄をする」 学園の朝の登校時間にルーカス・ロアン子息子爵から婚約破棄を言われたイライザ。 彼の側には彼女のロザンヌ男爵令嬢がいた。 ルーカスから一方的に婚約破棄を言われたイライザ、彼とは婚約はしていないのに「先に言っておく」と婚約破棄を言われたイライザ、その理由がルーカスの母親が腹痛で動けない時イライザと出会いイライザは持っていた自分の薬をルーカスの母親に渡し名前も言わずにその場を離れた。 ルーカスの母親は、イライザの優しさに感動して息子のルーカスに婚約を考えていた。 誤字脱字があります更新が不定期です。 よろしくお願いします。

処理中です...