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お母様の娘
「どうして、」
「?」
「どうして、ミラー家任せにしたの?! 社交界に出せないとわかっていて、どうしてわたしを社交界に出したの?!」
婚約したら、嫁入り先が教育する義務を負う?
何を言っているの?
行儀見習いだって、結婚相手に相応しい能力を身に付ける為におこなうものだ。
婚約したからといって、婚家に教育の丸投げなんてしない。
貴族の結婚は家同士の結び付き合いが重視される。婚約していても、相手の家が姻戚でいるメリットがなければ恋仲だろうが婚約解消される。
つまり、子どもはみんな家の駒なのだ。婚約が取り消され、別の相手と婚約させることも考えれば、社交界に出て結婚相手が見つかる程度の教育は必要。
社交界に出て結婚相手が見付からない令息令嬢など、格下の相手に金を払って押し付けるしかない失敗作なのだ。
「私達はお前の婚約を取り付けた時点で親としての義務は終わったの。婚約者の家が社交界に出られるようにする義務があるのよ」
完全にわたしの教育をミラー家に押し付けていることを正当化しているお母様の発言が、信じられなかった。
「・・・暮らしているのはこの家よ」
「嫁に出すまで預かっているだけよ。本当ならさっさと、花嫁修業でミラー家に行ってもらいたかったわ」
「・・・」
お姉様は次期当主だから特別。ずっと、そう思ってきた。
特別は特別だ。
嫡男がいなくて、跡取り娘になったから特別。家の為に政略結婚させる他の娘とは比べるのも烏滸がましい。
それほどまでに特別。
でも、結婚が決まったから、後は婚家任せ。婚家が監督するもの。
義務は終わった?
預かっているだけ?
・・・。
わたしは、お母様の娘じゃないの?
お母様の娘はお姉様だけなの?
次期当主であるお姉様は特別で、わたしに我慢するよう言っていたのは、お母様にとってわたしが娘じゃないから?
お姉様を優先してわたしを後回しにしていたのは、わたしがどうでもよかったから?
居候にすぎなかったから?
嘘よ!
嘘だわ!
そんなことあるはずない!
わたしもお母様の娘でしょ!
お母様に突き付けられた現実で眩暈がした。
わたしのドレスがお下がりなのも、わたしを結婚市場に出す必要がないから・・・お母様の中では、もうミラー家の者だから。
デビュタントのドレスすら我が家では仕立てる気がなかったのも、ダヴェンフィールド家の者だとは思われていなかったからで。
装飾品だって、そう。嫁入りするわたしはミラー家伝来の装飾品を受け継ぐから、リボン一本たりとも、与える気などなかったんだろう。
ユージェニーは嫁に行く時に母方で伝えられている首飾りを貰う予定だと言っていた。
家に伝わる装飾品は当主の妻が受け継ぐが、時折、母から娘に渡されるものもある。母方から伝わった装飾品がなくても、一つくらいは結婚前に形見分けとして渡される。結婚前に形見分けをするのは、子どもが生まれるまで領地に籠ることになり、年単位で会えなくなることもあるからだ。
我が家に母方から伝わった装飾品があるか知らないけど、こんなに嫌われているなら、形見分けもないだろう。
結婚してしまえば、気軽に実家を訪問することすら許されない。
それなのに、お母様は花嫁修業として早く家を出て行って欲しかった。
社交界に出て恥ずかしくないだけの教育を与えてくれなかった。
ドレスも装飾品も買ってくれなかった。
使用人よりはマシでも、家族としては扱ってくれなかった。
わたしはミラー家から預かっているだけだ、と言って。
お姉様を優先していたのは次期当主だから。そう言っていたのは噓だった。
いや、本当かもしれない。
嫁に行くだけしか能がない娘と次期当主になる娘。
生まれた順番が二番目だったから、そうなってしまったの?
二番目だという理由で、そんなふうに扱われるの?
次男というのは、長男のスペアだ。スペアだから、いつでもスペアとして使いものになるように育てられる。
ただ、親が目をかけることはない。
次女であるわたしは、お姉様のスペア。
でも、お姉様の代わりになれるようには育てられていない。
嫁にするのも恥ずかしい状態で、存在することしか許されていなかった。
いいや、違う。
存在することすら厭われていた。
さっさと花嫁修業として家を出て行って欲しがられていた。
・・・そう。
わたしは、お母様に嫌われていたんだ。
「?」
「どうして、ミラー家任せにしたの?! 社交界に出せないとわかっていて、どうしてわたしを社交界に出したの?!」
婚約したら、嫁入り先が教育する義務を負う?
何を言っているの?
行儀見習いだって、結婚相手に相応しい能力を身に付ける為におこなうものだ。
婚約したからといって、婚家に教育の丸投げなんてしない。
貴族の結婚は家同士の結び付き合いが重視される。婚約していても、相手の家が姻戚でいるメリットがなければ恋仲だろうが婚約解消される。
つまり、子どもはみんな家の駒なのだ。婚約が取り消され、別の相手と婚約させることも考えれば、社交界に出て結婚相手が見つかる程度の教育は必要。
社交界に出て結婚相手が見付からない令息令嬢など、格下の相手に金を払って押し付けるしかない失敗作なのだ。
「私達はお前の婚約を取り付けた時点で親としての義務は終わったの。婚約者の家が社交界に出られるようにする義務があるのよ」
完全にわたしの教育をミラー家に押し付けていることを正当化しているお母様の発言が、信じられなかった。
「・・・暮らしているのはこの家よ」
「嫁に出すまで預かっているだけよ。本当ならさっさと、花嫁修業でミラー家に行ってもらいたかったわ」
「・・・」
お姉様は次期当主だから特別。ずっと、そう思ってきた。
特別は特別だ。
嫡男がいなくて、跡取り娘になったから特別。家の為に政略結婚させる他の娘とは比べるのも烏滸がましい。
それほどまでに特別。
でも、結婚が決まったから、後は婚家任せ。婚家が監督するもの。
義務は終わった?
預かっているだけ?
・・・。
わたしは、お母様の娘じゃないの?
お母様の娘はお姉様だけなの?
次期当主であるお姉様は特別で、わたしに我慢するよう言っていたのは、お母様にとってわたしが娘じゃないから?
お姉様を優先してわたしを後回しにしていたのは、わたしがどうでもよかったから?
居候にすぎなかったから?
嘘よ!
嘘だわ!
そんなことあるはずない!
わたしもお母様の娘でしょ!
お母様に突き付けられた現実で眩暈がした。
わたしのドレスがお下がりなのも、わたしを結婚市場に出す必要がないから・・・お母様の中では、もうミラー家の者だから。
デビュタントのドレスすら我が家では仕立てる気がなかったのも、ダヴェンフィールド家の者だとは思われていなかったからで。
装飾品だって、そう。嫁入りするわたしはミラー家伝来の装飾品を受け継ぐから、リボン一本たりとも、与える気などなかったんだろう。
ユージェニーは嫁に行く時に母方で伝えられている首飾りを貰う予定だと言っていた。
家に伝わる装飾品は当主の妻が受け継ぐが、時折、母から娘に渡されるものもある。母方から伝わった装飾品がなくても、一つくらいは結婚前に形見分けとして渡される。結婚前に形見分けをするのは、子どもが生まれるまで領地に籠ることになり、年単位で会えなくなることもあるからだ。
我が家に母方から伝わった装飾品があるか知らないけど、こんなに嫌われているなら、形見分けもないだろう。
結婚してしまえば、気軽に実家を訪問することすら許されない。
それなのに、お母様は花嫁修業として早く家を出て行って欲しかった。
社交界に出て恥ずかしくないだけの教育を与えてくれなかった。
ドレスも装飾品も買ってくれなかった。
使用人よりはマシでも、家族としては扱ってくれなかった。
わたしはミラー家から預かっているだけだ、と言って。
お姉様を優先していたのは次期当主だから。そう言っていたのは噓だった。
いや、本当かもしれない。
嫁に行くだけしか能がない娘と次期当主になる娘。
生まれた順番が二番目だったから、そうなってしまったの?
二番目だという理由で、そんなふうに扱われるの?
次男というのは、長男のスペアだ。スペアだから、いつでもスペアとして使いものになるように育てられる。
ただ、親が目をかけることはない。
次女であるわたしは、お姉様のスペア。
でも、お姉様の代わりになれるようには育てられていない。
嫁にするのも恥ずかしい状態で、存在することしか許されていなかった。
いいや、違う。
存在することすら厭われていた。
さっさと花嫁修業として家を出て行って欲しがられていた。
・・・そう。
わたしは、お母様に嫌われていたんだ。
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