25 / 36
涙が止まらない
手で拭っても拭っても、涙が止まらない。
泣いちゃダメだ。
泣いても何も解決しない。
ミラー夫人を困らすだけだ。
止まれ。
止まるんだ。
いくら念じても、涙は止まらない。
泣いたって解決しないことはわかってる。
わかりきっているのに涙が止まらない。
お姉様のようにドレスを作ってもらいたいと言っても、お母様もお父様も取り合ってくれなかった。お姉様のお下がりがあるから充分だろう、と言われて怒鳴られるだけだった。
食事だってそう。
礼儀知らずで気に障る存在は大人の目に触れないように、屋敷の中では大人の世界と子どもの世界は分けられている。子ども部屋は子どもが起きてから寝るまで過ごす部屋で、食事も勉強も遊びもすべておこなう、子ども用のサロンのような場所だ。
子どもは大人に必要なマナーや教養を身に付けて初めて、特別な日以外でも大人と一緒に食事をすることが許される。
子ども部屋を出て婦人用サロンに入れるようになっても、お父様たちとは一緒に食べることは許されなかった。お姉様は子ども部屋で一緒に勉強しても、食事はお父様たちと一緒だったのに。
お姉様ばかりが特別扱いされてズルい! ズルい! ズルい!
何を言っても、わたしの我が儘は通らない。
何度も素気無くされて、ベッドで泣いた。
泣いて泣いて、わたしが何を言っても無駄なことを知った。
泣いても、翌日、目の周りが痛くなるだけ。
それからは涙なんか出なくなった。
お父様やお母様でもないミラー夫人の前で泣くなんて恥ずかしい。
事情を知らないミラー夫人の前で泣くなんて、困らせるだけだ。優しくしてくれた人を困らせちゃいけない。
そう思うのに、涙が止まらない。
「・・・ごめんな、ざい。ごまらせて、ごめんなざい」
困らせて、ごめんなさい。
謝り慣れていて良かった。
我が儘を言った時、いつも、こっぴどく怒られて謝らせられたからか、泣いていても口からするりと出た。
「ドレスに皺が寄ってしまうわよ」
「え?」
ミラー夫人に優しく手を開かれてはじめて、涙を拭っていた手がいつの間にかスカートを握りしめていたのを知った。
スカートを握りしめていたのは両手で。一つ一つミラー夫人は開いていく。
開いた手の平を見たミラー夫人は言った。
「強く握りしめていたから、爪の跡がついてるわ。痛くなかった、アリス嬢?」
「・・・」
優しい声に俯いたまま無言で頷く。
「無理に泣き止もうとしなくていいのよ。誰も貴女を怒ったりしないから、好きなだけ泣きなさい」
背中にまわされる温かい手にわたしの涙腺は崩壊した。
泣いちゃダメだ。
泣いても何も解決しない。
ミラー夫人を困らすだけだ。
止まれ。
止まるんだ。
いくら念じても、涙は止まらない。
泣いたって解決しないことはわかってる。
わかりきっているのに涙が止まらない。
お姉様のようにドレスを作ってもらいたいと言っても、お母様もお父様も取り合ってくれなかった。お姉様のお下がりがあるから充分だろう、と言われて怒鳴られるだけだった。
食事だってそう。
礼儀知らずで気に障る存在は大人の目に触れないように、屋敷の中では大人の世界と子どもの世界は分けられている。子ども部屋は子どもが起きてから寝るまで過ごす部屋で、食事も勉強も遊びもすべておこなう、子ども用のサロンのような場所だ。
子どもは大人に必要なマナーや教養を身に付けて初めて、特別な日以外でも大人と一緒に食事をすることが許される。
子ども部屋を出て婦人用サロンに入れるようになっても、お父様たちとは一緒に食べることは許されなかった。お姉様は子ども部屋で一緒に勉強しても、食事はお父様たちと一緒だったのに。
お姉様ばかりが特別扱いされてズルい! ズルい! ズルい!
何を言っても、わたしの我が儘は通らない。
何度も素気無くされて、ベッドで泣いた。
泣いて泣いて、わたしが何を言っても無駄なことを知った。
泣いても、翌日、目の周りが痛くなるだけ。
それからは涙なんか出なくなった。
お父様やお母様でもないミラー夫人の前で泣くなんて恥ずかしい。
事情を知らないミラー夫人の前で泣くなんて、困らせるだけだ。優しくしてくれた人を困らせちゃいけない。
そう思うのに、涙が止まらない。
「・・・ごめんな、ざい。ごまらせて、ごめんなざい」
困らせて、ごめんなさい。
謝り慣れていて良かった。
我が儘を言った時、いつも、こっぴどく怒られて謝らせられたからか、泣いていても口からするりと出た。
「ドレスに皺が寄ってしまうわよ」
「え?」
ミラー夫人に優しく手を開かれてはじめて、涙を拭っていた手がいつの間にかスカートを握りしめていたのを知った。
スカートを握りしめていたのは両手で。一つ一つミラー夫人は開いていく。
開いた手の平を見たミラー夫人は言った。
「強く握りしめていたから、爪の跡がついてるわ。痛くなかった、アリス嬢?」
「・・・」
優しい声に俯いたまま無言で頷く。
「無理に泣き止もうとしなくていいのよ。誰も貴女を怒ったりしないから、好きなだけ泣きなさい」
背中にまわされる温かい手にわたしの涙腺は崩壊した。
あなたにおすすめの小説
妹に幸せになって欲しくて結婚相手を譲りました。
しあ
恋愛
「貴女は、真心からこの男子を夫とすることを願いますか」
神父様の問いに、新婦はハッキリと答える。
「いいえ、願いません!私は彼と妹が結婚することを望みます!」
妹と婚約者が恋仲だと気付いたので、妹大好きな姉は婚約者を結婚式で譲ることに!
100%善意の行動だが、妹と婚約者の反応はーーー。
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした
三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。
書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。
ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。
屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』
ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく――
※他サイトにも掲載
※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定