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 淡々とディアは修道院に持っていくものと処分するものを離れの自室で仕分けしていた。
 彼女を除いた家族は妹の結婚式の準備で本邸のサロンに集まって楽しく過ごしていることだろう。ディアの元婚約者と。

 妹に甘い父親と義母。ディアの妹に妹以上の感情を抱いた自制心のない元婚約者。
 平凡な茶色の髪のディアより、煌めく金色の髪の妹のほうが彼らには大切なのだ。
 父親にとって、義母はディアの母親と結婚する前からの恋人で、ディアと同じ茶色の髪の母親が亡くなってすぐに再婚した。
 ディアの母親が生きていた頃から父親は恋人を屋敷に住まわせており、ディアたちは離れへと追いやられていた。

 ディアにとって不幸だったのは、父親の恋人が産んだ娘は両親から大変甘やかされており、姉のものは何でも貰えると思いこんでいる上に、輝くような容姿をしていたことだろう。片方だけでも欠けていれば、元婚約者が妹の婚約者になることもなかったに違いない。
 生まれは庶出でも、母親が正式な妻になった為に婚約者の挿げ替えに大きな影響はない。
 それどころか、愛娘と疎まれている娘では、結婚後の連携も違ってくる。
 ディアの元婚約者の両親にとって、息子が気に入っているだけでなく、相手の家からの援助が受けやすいことは喜びこそすれ、反対する理由がない。

 たった一人、ディアだけが損をしていた。
 それも、婚約解消された理由が政略的な意味ではなく、個人的な理由だった為に大きな瑕疵を負い、修道院で静かに生きていくしかなかった。
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