僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

文字の大きさ
13 / 69
第四章

第32話 子猫現る

しおりを挟む
 ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
********************************************

 エルズ村から西に15kmほど離れた所に小さな森がある。

 特に魔物もおらず、大した獲物も獲る事が出来ないこの森は、エルズ村の者にとって大した価値のない森だ。

 そんな何もない森に僕達はいた。

 「へぇ、この森の奥にエシルソンさんって人の隠れ工房があるんだね。でもこんな小さな森だと、誰か来たら、すぐに見つかっちゃう気がするけど」

 『エシルソン様の家には結界が展開されており、その結界の抜け方を知らない者は、たとえ場所を知っていたとしても辿り着く事は出来ません』

 こんな辺鄙なところで生活して、尚且つ人が入ってこられないように結界まで張るとは、

 「そのエシルソンさんはよっぽど人嫌いだったんですか?」

 『おそらくそうでしょう。我々もエルザ様以外の人間がエシルソン様と会っている所を見た事が御座いませんので、確かな事は言えませんが』

 まあ、魔道具師って、偏屈な人が多いって聞いた事があるし、世界最高の魔道具師となれば普通の人じゃなかったんだろう。どの道もう亡くなっているだろうから、会う事は無いだろうけどね。

 それより、セバスさんは結界の抜け方を知っているのだろうか? まあ、ここまで連れてきたんだから当然知っているだろうけど。

 「セバスさん。結界内にはどうやって入るんですか?」

 『只今、中和結界を展開しております。そのまま真っ直ぐ進んでいただければたどり着けますので、ご安心下さい』

 相変わらずの万能っぷりだね。

 「セバスさんがいて本当に助かります」

 『ボクもこれくらいの結界なら何とでもなるよ』

 おお、流石はSSSランク魔道具。レヴィも中々やるではないか。

 『レヴィの場合は結界を破壊して通るつもりでしょ?』

 なぬ?

 『え~、ダメなの? 通り抜けるのも壊すのも一緒じゃん』

 なぬ?

 『一緒じゃありませんよ。これから仲間になってもらえるように説得に行くのです。相手を怒らせては意味がないでしょ』

 おお、セバスさんの言う通りだ。やっぱりレヴィはどこか抜けているな。

 今までもそうだが、レヴィの提案はしっかりと吟味してから採用しないと危険だ。

 
 『ご主人様、どうやら子猫が2匹、こちらを観察しているようです』

 「え? どこ?」

 『前方やや右上です』

 え? どこよ? まったく分からないんですが……。

 『クラウド様、クイの索敵能力は私以上です。私の索敵にも発見出来ておりませんので、人の目で確認するのは難しいかと』

 「ほお、じゃあ、その子猫はかなり離れた所からこっちを見てるんだ」

 『いえ、距離で言えば200mほどですのでそんなに遠く有りません。おそらく隠密能力が高いのでだと思います』

 200mの距離でセバスさんの索敵に引っかからないなんてすごいな。

 「流石は野生の猫と言ったとことですね」

 『いえ、おそらくアレは野生では……』

 「お~い!! キーレとアーレ!! ボクだよ~、レヴィ……、じゃなかったエルナだよ~」

 突然レヴィが人化して、子猫がいると思われる方に向け、大声をあげ手を振っている。

 「おい、レヴィ。急に大声だしてどうしたんだよ。それにキーレとアーレって?」

 「えっと、キーレとアーレは、ぼう……、あっ! あの子達だよ」

 レヴィが説明しようとした時、金の毛並みの子猫と、銀の毛並みの子猫が元気よく飛び出してきた。

 うわ、めちゃくちゃ可愛い。

 そのまま2匹の子猫はレヴィに飛びつき、にゃ~にゃ~言ってレヴィの顔にスリスリしている。羨ましい……。

 「2人ともくすぐったいよ~」

 うお~、可愛い! 可愛すぎる!! 僕にも抱っこさせてくれないかな?

 「レ、レヴィさん。その子達はお知り合いですか?」

 2匹の子猫を片手で抱っこしながら頭の楽しそうに撫でるレヴィに問う。羨ましい。

 「そうだよ。この金色の子がキーレで、銀色の子はアーレだよ。昔からのお友達だよ」

 おお、キーレとアーレか。うんうん、いい名前だ。……ん? 昔からの友達? え? どう見ても生後数か月の子猫だよね?

 いや、しかし実際やたらとレヴィに懐いているみたいだし、もしかしてこの子猫、見た目に反してすごく長く生きているのかな?

 うお! 僕が考え込んでいる間にクイも人化して、レヴィと一緒に「可愛いね~」とか言いながら子猫を撫でている。

 くそっ! 先越された。しかし確認すべきことは先に確認しておかないと。

 「レヴィ、その子猫ってもしかしてエシルソンさんの所で飼われていた魔物?」

 「え~、こんなに可愛いのに魔物の訳ないじゃん」

 そうだよね。じゃあ、何さ? ちゃんと教えてよ。

 「クラウド様、あの2匹……、いや、あの2人それぞれ今回の目的である知性魔道具インテリジェンスアイテム1つで御座います」

 え? え? え~!? あの子猫が知性魔道具インテリジェンスアイテム? とういう事?

 「キーレ、アーレ。久しぶりですね。元気そうで何よりです」

 驚き固まる僕をそのままに、2匹の子猫に話し掛け始めるセバスさん。

 その声に反応するように、2匹の子猫もレヴィから飛び降り、セバスさんに近寄ってにゃ~、にゃ~、答えている。

 すごく可愛い。とても知性魔道具インテリジェンスアイテムに見えん!!

 「アキーレの所まで案内してくれるかな」

 また知らない名前が出て来た。なんか、僕抜きでどんどん話が進んでいきそう。


 そしてセバスさんの言葉に、2匹の子猫はにゃ~と答え、森の奥に向け歩き始めた。

 結局、撫でられなかった……。
************************************************
 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 ブックマークや評価ポイントを頂けると、とても励みになります。

アルファポリス様でランキング参加する事にしました。下のバナーからよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...