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第四章
第32話 子猫現る
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エルズ村から西に15kmほど離れた所に小さな森がある。
特に魔物もおらず、大した獲物も獲る事が出来ないこの森は、エルズ村の者にとって大した価値のない森だ。
そんな何もない森に僕達はいた。
「へぇ、この森の奥にエシルソンさんって人の隠れ工房があるんだね。でもこんな小さな森だと、誰か来たら、すぐに見つかっちゃう気がするけど」
『エシルソン様の家には結界が展開されており、その結界の抜け方を知らない者は、たとえ場所を知っていたとしても辿り着く事は出来ません』
こんな辺鄙なところで生活して、尚且つ人が入ってこられないように結界まで張るとは、
「そのエシルソンさんはよっぽど人嫌いだったんですか?」
『おそらくそうでしょう。我々もエルザ様以外の人間がエシルソン様と会っている所を見た事が御座いませんので、確かな事は言えませんが』
まあ、魔道具師って、偏屈な人が多いって聞いた事があるし、世界最高の魔道具師となれば普通の人じゃなかったんだろう。どの道もう亡くなっているだろうから、会う事は無いだろうけどね。
それより、セバスさんは結界の抜け方を知っているのだろうか? まあ、ここまで連れてきたんだから当然知っているだろうけど。
「セバスさん。結界内にはどうやって入るんですか?」
『只今、中和結界を展開しております。そのまま真っ直ぐ進んでいただければたどり着けますので、ご安心下さい』
相変わらずの万能っぷりだね。
「セバスさんがいて本当に助かります」
『ボクもこれくらいの結界なら何とでもなるよ』
おお、流石はSSSランク魔道具。レヴィも中々やるではないか。
『レヴィの場合は結界を破壊して通るつもりでしょ?』
なぬ?
『え~、ダメなの? 通り抜けるのも壊すのも一緒じゃん』
なぬ?
『一緒じゃありませんよ。これから仲間になってもらえるように説得に行くのです。相手を怒らせては意味がないでしょ』
おお、セバスさんの言う通りだ。やっぱりレヴィはどこか抜けているな。
今までもそうだが、レヴィの提案はしっかりと吟味してから採用しないと危険だ。
『ご主人様、どうやら子猫が2匹、こちらを観察しているようです』
「え? どこ?」
『前方やや右上です』
え? どこよ? まったく分からないんですが……。
『クラウド様、クイの索敵能力は私以上です。私の索敵にも発見出来ておりませんので、人の目で確認するのは難しいかと』
「ほお、じゃあ、その子猫はかなり離れた所からこっちを見てるんだ」
『いえ、距離で言えば200mほどですのでそんなに遠く有りません。おそらく隠密能力が高いのでだと思います』
200mの距離でセバスさんの索敵に引っかからないなんてすごいな。
「流石は野生の猫と言ったとことですね」
『いえ、おそらくアレは野生では……』
「お~い!! キーレとアーレ!! ボクだよ~、レヴィ……、じゃなかったエルナだよ~」
突然レヴィが人化して、子猫がいると思われる方に向け、大声をあげ手を振っている。
「おい、レヴィ。急に大声だしてどうしたんだよ。それにキーレとアーレって?」
「えっと、キーレとアーレは、ぼう……、あっ! あの子達だよ」
レヴィが説明しようとした時、金の毛並みの子猫と、銀の毛並みの子猫が元気よく飛び出してきた。
うわ、めちゃくちゃ可愛い。
そのまま2匹の子猫はレヴィに飛びつき、にゃ~にゃ~言ってレヴィの顔にスリスリしている。羨ましい……。
「2人ともくすぐったいよ~」
うお~、可愛い! 可愛すぎる!! 僕にも抱っこさせてくれないかな?
「レ、レヴィさん。その子達はお知り合いですか?」
2匹の子猫を片手で抱っこしながら頭の楽しそうに撫でるレヴィに問う。羨ましい。
「そうだよ。この金色の子がキーレで、銀色の子はアーレだよ。昔からのお友達だよ」
おお、キーレとアーレか。うんうん、いい名前だ。……ん? 昔からの友達? え? どう見ても生後数か月の子猫だよね?
いや、しかし実際やたらとレヴィに懐いているみたいだし、もしかしてこの子猫、見た目に反してすごく長く生きているのかな?
うお! 僕が考え込んでいる間にクイも人化して、レヴィと一緒に「可愛いね~」とか言いながら子猫を撫でている。
くそっ! 先越された。しかし確認すべきことは先に確認しておかないと。
「レヴィ、その子猫ってもしかしてエシルソンさんの所で飼われていた魔物?」
「え~、こんなに可愛いのに魔物の訳ないじゃん」
そうだよね。じゃあ、何さ? ちゃんと教えてよ。
「クラウド様、あの2匹……、いや、あの2人もそれぞれ今回の目的である知性魔道具1つで御座います」
え? え? え~!? あの子猫が知性魔道具? とういう事?
「キーレ、アーレ。久しぶりですね。元気そうで何よりです」
驚き固まる僕をそのままに、2匹の子猫に話し掛け始めるセバスさん。
その声に反応するように、2匹の子猫もレヴィから飛び降り、セバスさんに近寄ってにゃ~、にゃ~、答えている。
すごく可愛い。とても知性魔道具に見えん!!
「アキーレの所まで案内してくれるかな」
また知らない名前が出て来た。なんか、僕抜きでどんどん話が進んでいきそう。
そしてセバスさんの言葉に、2匹の子猫はにゃ~と答え、森の奥に向け歩き始めた。
結局、撫でられなかった……。
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エルズ村から西に15kmほど離れた所に小さな森がある。
特に魔物もおらず、大した獲物も獲る事が出来ないこの森は、エルズ村の者にとって大した価値のない森だ。
そんな何もない森に僕達はいた。
「へぇ、この森の奥にエシルソンさんって人の隠れ工房があるんだね。でもこんな小さな森だと、誰か来たら、すぐに見つかっちゃう気がするけど」
『エシルソン様の家には結界が展開されており、その結界の抜け方を知らない者は、たとえ場所を知っていたとしても辿り着く事は出来ません』
こんな辺鄙なところで生活して、尚且つ人が入ってこられないように結界まで張るとは、
「そのエシルソンさんはよっぽど人嫌いだったんですか?」
『おそらくそうでしょう。我々もエルザ様以外の人間がエシルソン様と会っている所を見た事が御座いませんので、確かな事は言えませんが』
まあ、魔道具師って、偏屈な人が多いって聞いた事があるし、世界最高の魔道具師となれば普通の人じゃなかったんだろう。どの道もう亡くなっているだろうから、会う事は無いだろうけどね。
それより、セバスさんは結界の抜け方を知っているのだろうか? まあ、ここまで連れてきたんだから当然知っているだろうけど。
「セバスさん。結界内にはどうやって入るんですか?」
『只今、中和結界を展開しております。そのまま真っ直ぐ進んでいただければたどり着けますので、ご安心下さい』
相変わらずの万能っぷりだね。
「セバスさんがいて本当に助かります」
『ボクもこれくらいの結界なら何とでもなるよ』
おお、流石はSSSランク魔道具。レヴィも中々やるではないか。
『レヴィの場合は結界を破壊して通るつもりでしょ?』
なぬ?
『え~、ダメなの? 通り抜けるのも壊すのも一緒じゃん』
なぬ?
『一緒じゃありませんよ。これから仲間になってもらえるように説得に行くのです。相手を怒らせては意味がないでしょ』
おお、セバスさんの言う通りだ。やっぱりレヴィはどこか抜けているな。
今までもそうだが、レヴィの提案はしっかりと吟味してから採用しないと危険だ。
『ご主人様、どうやら子猫が2匹、こちらを観察しているようです』
「え? どこ?」
『前方やや右上です』
え? どこよ? まったく分からないんですが……。
『クラウド様、クイの索敵能力は私以上です。私の索敵にも発見出来ておりませんので、人の目で確認するのは難しいかと』
「ほお、じゃあ、その子猫はかなり離れた所からこっちを見てるんだ」
『いえ、距離で言えば200mほどですのでそんなに遠く有りません。おそらく隠密能力が高いのでだと思います』
200mの距離でセバスさんの索敵に引っかからないなんてすごいな。
「流石は野生の猫と言ったとことですね」
『いえ、おそらくアレは野生では……』
「お~い!! キーレとアーレ!! ボクだよ~、レヴィ……、じゃなかったエルナだよ~」
突然レヴィが人化して、子猫がいると思われる方に向け、大声をあげ手を振っている。
「おい、レヴィ。急に大声だしてどうしたんだよ。それにキーレとアーレって?」
「えっと、キーレとアーレは、ぼう……、あっ! あの子達だよ」
レヴィが説明しようとした時、金の毛並みの子猫と、銀の毛並みの子猫が元気よく飛び出してきた。
うわ、めちゃくちゃ可愛い。
そのまま2匹の子猫はレヴィに飛びつき、にゃ~にゃ~言ってレヴィの顔にスリスリしている。羨ましい……。
「2人ともくすぐったいよ~」
うお~、可愛い! 可愛すぎる!! 僕にも抱っこさせてくれないかな?
「レ、レヴィさん。その子達はお知り合いですか?」
2匹の子猫を片手で抱っこしながら頭の楽しそうに撫でるレヴィに問う。羨ましい。
「そうだよ。この金色の子がキーレで、銀色の子はアーレだよ。昔からのお友達だよ」
おお、キーレとアーレか。うんうん、いい名前だ。……ん? 昔からの友達? え? どう見ても生後数か月の子猫だよね?
いや、しかし実際やたらとレヴィに懐いているみたいだし、もしかしてこの子猫、見た目に反してすごく長く生きているのかな?
うお! 僕が考え込んでいる間にクイも人化して、レヴィと一緒に「可愛いね~」とか言いながら子猫を撫でている。
くそっ! 先越された。しかし確認すべきことは先に確認しておかないと。
「レヴィ、その子猫ってもしかしてエシルソンさんの所で飼われていた魔物?」
「え~、こんなに可愛いのに魔物の訳ないじゃん」
そうだよね。じゃあ、何さ? ちゃんと教えてよ。
「クラウド様、あの2匹……、いや、あの2人もそれぞれ今回の目的である知性魔道具1つで御座います」
え? え? え~!? あの子猫が知性魔道具? とういう事?
「キーレ、アーレ。久しぶりですね。元気そうで何よりです」
驚き固まる僕をそのままに、2匹の子猫に話し掛け始めるセバスさん。
その声に反応するように、2匹の子猫もレヴィから飛び降り、セバスさんに近寄ってにゃ~、にゃ~、答えている。
すごく可愛い。とても知性魔道具に見えん!!
「アキーレの所まで案内してくれるかな」
また知らない名前が出て来た。なんか、僕抜きでどんどん話が進んでいきそう。
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