9 / 40
流れゆく風
①
しおりを挟む
寮の部屋が決まった新入生は、自由に校舎等を歩いて良い。
入学式より前に、自身が必要だと思える場所を歩いて回れる、丁度良い時間になる。
という訳で、泉恭史郎は自身の精霊である青海を連れて、校庭を歩いていた。青海は、今回は人に簡単に見えるようにはしていないので、恭一人が歩いているように見えてしまうかもしれない。わかる人にしか、わからないのだ。
同室の藤圭吾は、入学式のあいさつ文とともに、教員室だ。新入生の挨拶をしなければならない圭吾は、部屋が決まった瞬間に、色々な指導があるからと、教員室に呼ばれていたのだ。
おかげで同室になったというのに、恭と圭吾が会話できるのは、朝食・昼食・夕食時と、夕食後寝るまでの間だ。
「暇だ」
部屋の片づけは一日で終わっている。圭吾のいない今の時間は、恭にとってその一言に尽きる。
「圭吾に付いて行けば良かったのでは?」
青海が言うように、圭吾は「一緒に来るか?」と恭に聞いていたのだ。教師と知り合えるし、一人でいるよりは面白いことがあるかもしれないだろう、と。
けれど、
「あいさつ文の指導を受けている隣に居ても暇にはかわりないし。教師に声をかけられても面倒だ」
と断ったのは、恭自身だ。
この時期の新入生は、まだ相方探しをしている人間がほとんどだ。恭たちのように、すぐに寮へと入った新入生は少ない。その少ない新入生も、自分の相方とのやりとりに時間を割いている。
在校生はあちこちで見かけはするが、新入生に声をかけてはこようとしない。
恭自身、新入生だろうと在校生だろうと、声をかける気がないのだから、自然一人になってしまうのは、仕方ないとも言える。ある意味自業自得だろう。
「おや?君は結界抜けを失敗していた子どもだね。龍の精霊を連れてる」
ふいに後ろからかけられた声に、恭はギョッとして振り向いた。
結界抜けの失敗は、知られていないハズだった。
「そんなに警戒しないでくれるかな。結界抜け失敗は、その時に捕まらなきゃ、減点対象にはならないんだからさ」
恭が180度体ごと振り向いた先にいたのは、色素の薄い茶髪の青年だった。
ニコニコと笑う顔は、恭には軽薄そうに見える。
体を覆うオーラは、髪と同じように、色素の薄い闇色……。
「あんたは?」
恭は年功序列の礼儀を無視した。
一目で人外とわかるモノが、何故ここにいるのだ?と。
青海も静かに立ってはいるが、全身で警戒しているのがわかる。
「だからそんなに、警戒しないでほしいんだけどねー。俺はここの英語教師だよ。ラミュエールだ。あぁ、先生やミスターを付けてくれるとありがたいかな。ついでに言うなら、先の二つより、デュークの方が俺には馴染み深いんだけどね。あー、それで、……I'm a Vampire」
笑顔でペラペラしゃべる為に、恭は最後の一言を聞き逃すところだった。
「ヴァンパイア?」
「そうだよ。ヴァンピール・ヴァンピーアでも良いけど。まぁ、それは国によっての発音の違いだけだし。君は解っているみたいだったからねぇ。否、解っていない子たちにも、そうやって自己紹介するんだけど。笑い飛ばされるのがおちでね」
たしかに、解らない人間は笑い飛ばしそうだ。圭吾とか……豪快に笑い出しそうだ。
「それで?何ですか?」
教師と言う事を聞き逃さなかった恭。一応丁寧語のようにはなっているものの、結局礼儀はなっていない。
「否、ただね、暇だなーと思っていたら、君を見付けたわけだよ。だから声をかけてみただけだったんだけど。ここまで警戒されるのは、計算外だったかなー。龍君にもね。俺のオーラ、完全な闇じゃないの、わかるでしょ?」
困ったように笑う、教師ラミュエール。
恭と青海は顔を見合わせ、こちらも困った顔をする。どう対応したら良いのか、わからないのだ。
「進化したヴァンピーア?!」
三人の間を切り裂いたのは、高く鋭い女の声。
三人して声のした方を見たら、声を発しただろう小さな精霊。と、十字架を大事そうに胸に抱えた少女と、驚いたように立ち尽くしている少女の二人。
「進化した、ね。言い得て妙だよ、小さな精霊。そっちはエクソシストのお嬢さんかな。もう一人はエスパーみたいだね。小さな精霊には見えているみたいだけど、龍君を視認してはいないみたいだね」
おやおやと。笑みを崩さないままに、ラミュエールは言う。
言い当てられたのに驚いたのか、十字架の少女は息を飲んだ。立ち尽くしていた少女は「龍?」と小さく呟いた。
「あお」
呼んだ恭に呼応して、青海が普通の人間にも見えるように姿を現す。
驚いたのは、今まで青海を見ることのできていなかった、少女二人。
青海が見えるようにするかどうか、迷わなかったわけではない。が、ラミュエールが龍がいると言ってしまった手前、見えるようにした方が良いだろうと、判断したのだ。
「何を和やかに!何であんたみたいなのがここにいるのよ!!ヴァンピーア!」
小さな精霊は、甲高い声でわめく。
どうやら、恭とラミュエールのやり取りは、和やかにしているように見えてしまうらしい。
「体が小さいから、声も高いのかな?頭に響くよね、その声。ちょっとうるさいかな。手のひらサイズで凄まれても、全く怖くないし。まぁ、力も知れてるし……。あぁ、その姿が本来の姿なんだから、仕方ないのだろうけど。それで、なんでここにいるか、だっけ?教師だからだよ。先生、ミスターとかを付けてくれるとありがないね。俺的にはデュークでも良いんだけど。あー、自己紹介がまだか。俺はラミュエールだよ。うん、それで、当てられてしまったから、肯定の意味を込めて、I'm a Vanpire」
一気に話すラミュエールに、毒気を抜かれてしまい、恭も少女二人も黙り込んでしまう。
「なんであんたを、公爵なんて呼ばなきゃなんないのよ!」
一人小さな精霊は、変わらずわめいている。
青海は、静かに事の成り行きを見守っている形だ。
「何でって、もらったからさ。公爵の称号を。まぁ、大昔の話しだけどね」
ニッコリ笑っているラミュエールは、攻撃的な精霊を自身が言った通り、全く意に介していない。
「ところでね、名前を聞いていないんだよ」
俺は名乗ったよ?とラミュエールは五人を見渡す。
噛みついたのは、やはり小さな精霊。
「あんたなんかに名乗りたくないわ!教師?ヴァンピーアが?あり得ないわ!」
「ひどく嫌われてしまったようだね。どうでも良いけど。エクソシストのお嬢さんは、ドイツ人かな?」
やれやれとラミュエールは、小さな精霊から視線を外して、少女を見る。
「え、あ、は、はい。そうです」
驚いたのと、慌てたのと。少女はどもりながら答えた。
正確には違うわけだが、ドイツ人の血を引いているのには変わりないから、良いだろう。
「リラ、こんなのに答えなくて良いのにっ」
「リラちゃんね。覚えた。そっちの君は?」
小さな精霊の言葉に、ラミュエールは即反応し、もう一人の少女に問う。
小さな精霊は、自分の失態に気付き、パクパクと口を動かしているが、言葉にならないようだ。
ヴァンパイアは闇の存在。精霊はその正反対の光の存在だ。相反するモノに出会い、頭に血が上ってしまったことによる、失態だったのだろう。考えるより先に、言葉が出てしまっていたようだ。
ラミュエールが、リラをドイツ人だと断定したのは、彼女の連れている小さな精霊が、彼をヴァンピーアと呼ぶからだ。ヴァンパイアをドイツ語にすると、ヴァンピーアとなる。正しくはスペルも違ってくるが。
「美南玲奈と申しますわ。ミスターラミュエール」
玲奈は冷静を装い答える。
実を言うと、状況の把握は出来ていない。
今朝までの部屋にある、今朝までの相方の荷物を当人に持って行ってもらって、二人で部屋の片づけをした。その後、春の日差しで暖かくのんびりできそうな校庭に、二人で出て来たのだ。
リラに付いている精霊と挨拶をし、のんびりと過ごしていたのだ。ついさっきまでは。
「レイナちゃんね。それで、君は?」
小さな精霊にはお構いなしに、ラミュエールは今度は恭へと問いかけた。
「泉恭史郎。恭で良い。こっちは青海」
苗字ではなく、名前で呼ぶラミュエールに、恭史郎と呼ばれたくはない恭は、愛称呼びを彼に告げた。
入学式より前に、自身が必要だと思える場所を歩いて回れる、丁度良い時間になる。
という訳で、泉恭史郎は自身の精霊である青海を連れて、校庭を歩いていた。青海は、今回は人に簡単に見えるようにはしていないので、恭一人が歩いているように見えてしまうかもしれない。わかる人にしか、わからないのだ。
同室の藤圭吾は、入学式のあいさつ文とともに、教員室だ。新入生の挨拶をしなければならない圭吾は、部屋が決まった瞬間に、色々な指導があるからと、教員室に呼ばれていたのだ。
おかげで同室になったというのに、恭と圭吾が会話できるのは、朝食・昼食・夕食時と、夕食後寝るまでの間だ。
「暇だ」
部屋の片づけは一日で終わっている。圭吾のいない今の時間は、恭にとってその一言に尽きる。
「圭吾に付いて行けば良かったのでは?」
青海が言うように、圭吾は「一緒に来るか?」と恭に聞いていたのだ。教師と知り合えるし、一人でいるよりは面白いことがあるかもしれないだろう、と。
けれど、
「あいさつ文の指導を受けている隣に居ても暇にはかわりないし。教師に声をかけられても面倒だ」
と断ったのは、恭自身だ。
この時期の新入生は、まだ相方探しをしている人間がほとんどだ。恭たちのように、すぐに寮へと入った新入生は少ない。その少ない新入生も、自分の相方とのやりとりに時間を割いている。
在校生はあちこちで見かけはするが、新入生に声をかけてはこようとしない。
恭自身、新入生だろうと在校生だろうと、声をかける気がないのだから、自然一人になってしまうのは、仕方ないとも言える。ある意味自業自得だろう。
「おや?君は結界抜けを失敗していた子どもだね。龍の精霊を連れてる」
ふいに後ろからかけられた声に、恭はギョッとして振り向いた。
結界抜けの失敗は、知られていないハズだった。
「そんなに警戒しないでくれるかな。結界抜け失敗は、その時に捕まらなきゃ、減点対象にはならないんだからさ」
恭が180度体ごと振り向いた先にいたのは、色素の薄い茶髪の青年だった。
ニコニコと笑う顔は、恭には軽薄そうに見える。
体を覆うオーラは、髪と同じように、色素の薄い闇色……。
「あんたは?」
恭は年功序列の礼儀を無視した。
一目で人外とわかるモノが、何故ここにいるのだ?と。
青海も静かに立ってはいるが、全身で警戒しているのがわかる。
「だからそんなに、警戒しないでほしいんだけどねー。俺はここの英語教師だよ。ラミュエールだ。あぁ、先生やミスターを付けてくれるとありがたいかな。ついでに言うなら、先の二つより、デュークの方が俺には馴染み深いんだけどね。あー、それで、……I'm a Vampire」
笑顔でペラペラしゃべる為に、恭は最後の一言を聞き逃すところだった。
「ヴァンパイア?」
「そうだよ。ヴァンピール・ヴァンピーアでも良いけど。まぁ、それは国によっての発音の違いだけだし。君は解っているみたいだったからねぇ。否、解っていない子たちにも、そうやって自己紹介するんだけど。笑い飛ばされるのがおちでね」
たしかに、解らない人間は笑い飛ばしそうだ。圭吾とか……豪快に笑い出しそうだ。
「それで?何ですか?」
教師と言う事を聞き逃さなかった恭。一応丁寧語のようにはなっているものの、結局礼儀はなっていない。
「否、ただね、暇だなーと思っていたら、君を見付けたわけだよ。だから声をかけてみただけだったんだけど。ここまで警戒されるのは、計算外だったかなー。龍君にもね。俺のオーラ、完全な闇じゃないの、わかるでしょ?」
困ったように笑う、教師ラミュエール。
恭と青海は顔を見合わせ、こちらも困った顔をする。どう対応したら良いのか、わからないのだ。
「進化したヴァンピーア?!」
三人の間を切り裂いたのは、高く鋭い女の声。
三人して声のした方を見たら、声を発しただろう小さな精霊。と、十字架を大事そうに胸に抱えた少女と、驚いたように立ち尽くしている少女の二人。
「進化した、ね。言い得て妙だよ、小さな精霊。そっちはエクソシストのお嬢さんかな。もう一人はエスパーみたいだね。小さな精霊には見えているみたいだけど、龍君を視認してはいないみたいだね」
おやおやと。笑みを崩さないままに、ラミュエールは言う。
言い当てられたのに驚いたのか、十字架の少女は息を飲んだ。立ち尽くしていた少女は「龍?」と小さく呟いた。
「あお」
呼んだ恭に呼応して、青海が普通の人間にも見えるように姿を現す。
驚いたのは、今まで青海を見ることのできていなかった、少女二人。
青海が見えるようにするかどうか、迷わなかったわけではない。が、ラミュエールが龍がいると言ってしまった手前、見えるようにした方が良いだろうと、判断したのだ。
「何を和やかに!何であんたみたいなのがここにいるのよ!!ヴァンピーア!」
小さな精霊は、甲高い声でわめく。
どうやら、恭とラミュエールのやり取りは、和やかにしているように見えてしまうらしい。
「体が小さいから、声も高いのかな?頭に響くよね、その声。ちょっとうるさいかな。手のひらサイズで凄まれても、全く怖くないし。まぁ、力も知れてるし……。あぁ、その姿が本来の姿なんだから、仕方ないのだろうけど。それで、なんでここにいるか、だっけ?教師だからだよ。先生、ミスターとかを付けてくれるとありがないね。俺的にはデュークでも良いんだけど。あー、自己紹介がまだか。俺はラミュエールだよ。うん、それで、当てられてしまったから、肯定の意味を込めて、I'm a Vanpire」
一気に話すラミュエールに、毒気を抜かれてしまい、恭も少女二人も黙り込んでしまう。
「なんであんたを、公爵なんて呼ばなきゃなんないのよ!」
一人小さな精霊は、変わらずわめいている。
青海は、静かに事の成り行きを見守っている形だ。
「何でって、もらったからさ。公爵の称号を。まぁ、大昔の話しだけどね」
ニッコリ笑っているラミュエールは、攻撃的な精霊を自身が言った通り、全く意に介していない。
「ところでね、名前を聞いていないんだよ」
俺は名乗ったよ?とラミュエールは五人を見渡す。
噛みついたのは、やはり小さな精霊。
「あんたなんかに名乗りたくないわ!教師?ヴァンピーアが?あり得ないわ!」
「ひどく嫌われてしまったようだね。どうでも良いけど。エクソシストのお嬢さんは、ドイツ人かな?」
やれやれとラミュエールは、小さな精霊から視線を外して、少女を見る。
「え、あ、は、はい。そうです」
驚いたのと、慌てたのと。少女はどもりながら答えた。
正確には違うわけだが、ドイツ人の血を引いているのには変わりないから、良いだろう。
「リラ、こんなのに答えなくて良いのにっ」
「リラちゃんね。覚えた。そっちの君は?」
小さな精霊の言葉に、ラミュエールは即反応し、もう一人の少女に問う。
小さな精霊は、自分の失態に気付き、パクパクと口を動かしているが、言葉にならないようだ。
ヴァンパイアは闇の存在。精霊はその正反対の光の存在だ。相反するモノに出会い、頭に血が上ってしまったことによる、失態だったのだろう。考えるより先に、言葉が出てしまっていたようだ。
ラミュエールが、リラをドイツ人だと断定したのは、彼女の連れている小さな精霊が、彼をヴァンピーアと呼ぶからだ。ヴァンパイアをドイツ語にすると、ヴァンピーアとなる。正しくはスペルも違ってくるが。
「美南玲奈と申しますわ。ミスターラミュエール」
玲奈は冷静を装い答える。
実を言うと、状況の把握は出来ていない。
今朝までの部屋にある、今朝までの相方の荷物を当人に持って行ってもらって、二人で部屋の片づけをした。その後、春の日差しで暖かくのんびりできそうな校庭に、二人で出て来たのだ。
リラに付いている精霊と挨拶をし、のんびりと過ごしていたのだ。ついさっきまでは。
「レイナちゃんね。それで、君は?」
小さな精霊にはお構いなしに、ラミュエールは今度は恭へと問いかけた。
「泉恭史郎。恭で良い。こっちは青海」
苗字ではなく、名前で呼ぶラミュエールに、恭史郎と呼ばれたくはない恭は、愛称呼びを彼に告げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
天の求婚
紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。
主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた
そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた
即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる