稜蘭高校 ドタバタ日記

藤野 朔夜

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教師の日常 ※

② ※

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「どうしてまたあなたは……」
  今日は特に何も起こることなく、一日を終えた。
  職員寮に帰って来たのが午後七時過ぎ。
  夕飯を食べたり、持ち帰れる仕事の残りを終わらせ、風呂にも入った。
  さて、後は寝るだけ。という時に、何故またこのような言葉を吐かねばならないのか。
「んー、まぁ。ここは職員寮の君の部屋だねぇ」
  悪びれもせずに、この同僚は答えてくる。
  否、答えになってない。
「ここがどこか、よくわかっているようですね。で、何なんですか?」
  尖った言い方になっても、仕方ないだろうと思うのだ。
  だいたいこの同僚が部屋に入って来たのに、気付いていなかった自分が、腹立たしい。
「俺さぁ、結構我慢してきたと思うんだよね。でもさ、やっぱり飢えるよねぇ。飢餓感って、結構キツイんだよ?俺の見張り引き受けたなら、コレも引き受けてくれないかな?ということで、押し倒して良い?」
  既にベッドに押し倒しているような状態で、何をいまさら確認を取って来るんだこの同僚は。
  見張りの件は、理事に言えとは言ったが、まさかこんな形で返って来るとは思っていやしなかった。
  たしかに、この男はヴァンパイアで、今までそういった素振りは一切なかったのだが。普通の人間と変わらない食事を取っていた。今更、飢餓感とか言われても、自分にどうしろと、である。
「って、ちょっと。何してるんですか!ラミュエール、止めてください」
「返事が無いから、良いのかと思ってね。無言は肯定だよ。あとさ、いい加減ファミリーネームじゃなくて、ファーストネーム呼んで。俺もただしって呼ぶから。これ決定事項だから。覆らないから。あー、君の名前って、本当に君の生き方そのものだね。正しい道しか選べないって感じ?」
  勝手に人の服を剥ぎだしたラミュエールの手を、慌てて止める。
  人の何倍もしゃべる口は、今日は健在であるらしい。
「血が欲しいだけでしょう。どうして服を脱がされなければならないんですか。後、この体勢の意味がわかりません」
  この同僚が、血を糧にしているというのは、やっと今自覚したようなものだったのだが。
「ん?イイコトした方が血が美味しいから」
  少しだけ考えたような同僚は、そうのたまってくれた。
  まだ血を取られていないのに、グラリと眩暈がしたのは気のせいか。
「……っ……って、私は良いとは、一言も……!」
  舌で首筋の柔らかい部分を舐められて、ゾクリと肌が粟立つ。
  言葉で何とかしようとしたが、キスで封じられた。
「んぁ……っだから!」
  何とかこの同僚を体の上からどかそうとするのだが。ほぼ全体重を乗せて来ている男一人というのは、簡単には動かせない。
  言霊ことだまを使うことも、混乱している頭では無理だ。
「初めてなわけじゃないでしょ?」
  抵抗は、簡単に片手で押さえられた。
  ラミュエールの手が、無遠慮に素肌に触れてくることに、体が震えて力も出ない。
「そういう、ことではなく……」
  何故だ。どういうことだ。
「別にさ、高校生に手出す気なんて、さらさら無いんだって。子どもには興味ないから。君のが美味しそうだし。あ、血もらうけど、仲間になるとかは無いから安心して」
  胸の突起を弄られて、知らず息が上がる。
「だから!血が欲しい、だけなら……!」
「あ、男初めて?」
「当たり前です!……では、なく……」
  見当違いな方向へ、話しがズレている。
「教師陣の中でも、君が一番なんだよね。力もだけど、色々と俺基準で。って、これも違う?」
  耳に息がかかる。
  もうどうでも良い気がしてきた……駄目だ。どうして流されかかってるんだ。
「結構敏感だよね。良いカンジだなぁ」
「だから、ですね!」
「俺としては、正との会話も好きだけどさ。今はそういうんじゃない声、聞きたいなぁ」
  どこまでも余裕なラミュエールに、少しイラついてくる。
「男初めてなら、最後まではしないからさ。今まで結構我慢してきた、って言ったでしょ。そこんとこ、評価してよ」
  何とか自分を律しようとするのに、それさえも取っ払われる。
  評価しろと言われても、自分がこういうことになる意味が、わからない。
  唇を噛みしめて、耐えるしかないのか。そう思っていたのに、その唇を舐められる。
「唇切れちゃうよ?」
  言い終わらないうちに、寝間着のズボンの中に手が入ってくる。
  どこまでも、自分勝手に進めようとしてくるラミュエール。
「……っん……」
  宥めてくるようなキスに、言葉は奪われた。
  自分勝手なのに、触れてくる手も唇も、どこか優しい。そこが余計に腹立たしい。
「ココも良い反応だね」
  楽しげな、ラミュエールの声。
「ん、あっ!」
  なぞり上げられて、自分でも信じられないほどの高い声が上がる。
  嫌だと思っているはずなのに、簡単に高ぶらされる。
「まいったな。でも最後までしないって言ったのは俺だし。守らないと、怒るよねぇ」
  これ以上、何をどう怒れば良いのか。
  自分がこんなに快楽に簡単に流されるとは、思っていなかった。
  さすがに男相手というのは、初めてだけれども。今まで一切の経験が無いわけでもない。のに。
  どうして、ここまで身体が熱くなる?
「んじゃ、こうしよう」
  熱いモノが、自分のモノと重なった。
  普段温度を感じさせない、ラミュエールのモノ……。
「え?」
「あー、最後までしないとか、言わなきゃ良かった」
  一瞬、ラミュエールの温度を感じたことに、気を取られてしまっていた。
  二つを同時に握り込んだ、ラミュエールの手が動きだして、それから慌てるとか。
「あ……んっ……待っ……!」
「ここで止まったら、正も辛いって。俺も相当煽られてるから。ココで止まるとかないし」
  心なしか上ずった声に、そういえば名前を呼ばれ出している、とか関係ない思考。
  ラミュエールの持つ熱は、ただの生理的欲求なのか。それとも、欲情している……?
  動く手と、胸の突起を弄ってくる舌。
  弱い部分を弄られると、もうどうしようもなかった。
「ホント、敏感」
  ラミュエールの言葉に、今はもう反応出来ない。
「う、くぅ……」
  何とか声を殺すものの。
「ふ、あぁ……」
  うまくいかないで、声が出てしまう。
「声殺すなよ。聞きたい」
  普段の言葉遣いとは違う、ラミュエールの囁き。そんな囁きにさえ、身体が跳ねた。
  熱い身体。普段は感じないのに。
  終わりは呆気ないほど簡単に、訪れた。
  イく瞬間、ラミュエールが首筋に、噛みついてきたことは感じた。


  気怠さが、体を襲っている。
  噛みつかれた場所を、手で押さえてみたけれど、跡は残っていないように思う。
  同僚にイかされたことよりも、血を吸うために噛みつかれたことの方が、嫌悪感があるというのはどうなんだろう。
「体拭こうか?」
  舐められたり、二人分のモノがかかった体は、洗いたい。
  善意で言ってるだろうラミュエールの言葉は無視して、体に力を入れて起き上がる。
「自分でシャワーに入りますから、必要ありません。あぁ、シーツも汚れましたけど、自分で取り換えるので、お気になさらず、お帰り下さい」
  嫌味でしかない。わかっているが、言葉は止められなかったし、もう言ってしまったものは戻らない。
「わかった」
  いつもなら、嫌味が返って来るだろうに。どこか寂しげな表情で、ラミュエールは部屋を後にして行った。
  後に残った気怠さ。どうしようもない不快さ。
  何に不快を感じて、何に怒りを感じているのかさえ、わからないような曖昧な心。
  それを振り払うかのように、シャワーに入り、シーツをはぎ取って、新しい物に変えた。
  髪を乱暴にバスタオルで拭く。
  どうしてこんなにもやるせない気持ちをかかえているのか、それがわからない。
  ベッドにどかりと座って、ギシリと鳴った音にさえ、苛立った。
  まだ湿り気を帯びている髪を気にせず、ベッドにもぐりこんだ。いつもなら、しっかりと洗濯機に放り込むバスタオルも、気にせずそのまま床に放置した。片付いていないと、本来は嫌なのだけど。今はそれさえ面倒だ。


  何の温もりも無い、冷たい感触に触れながら眠った。
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