心霊現象相談事務所

藤野 朔夜

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過ぎ去る、秋

エピローグ

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  憎い、憎い、憎い
  私の、僕の、俺の、体を返せ


  何故、私は、僕は、俺は、ここで終わるのか
  何故だ、何故だ、何故だ


  こんなことのために、私は、僕は、俺は、産まれたのか
  番う、違う、違う


  これは、私の、僕の、俺の、記憶
  君に託すよ、私の、僕の、俺の、力


  ごめんね、ごめんな、ごめんなさい
  力がなかったから、私は、僕は、俺は、あの男に敵わなかった





  悲しい記憶が、秋人の心の中に流れてくる。
  志半ばにして、あの男に体を奪われた者たちの、声。
  自分も、その一人だ。
  けれど、今までこの犠牲者たちの声に、気付いた者は、いなかったのだろう。
  だから、蓄積された力が、残っている。
  だから、俺はあきらめない。
  この悲しい連鎖を、俺で終わらせる。
  そう決意したから。
  もう、犠牲は出させない。だから、俺とともに戦おう。
  戦って、あの男に勝って、自由を取り戻そう。
  体を奪われ、精神を乗っ取られ、輪廻から弾かれた犠牲者たち。
  縛り付けられたまま、男の心の奥底に、眠っていた者たち。
  呪いながら、自由への渇望をする、者たち。
  これだけの、犠牲者を出して、平気で生きている、あの男。
  自分の心の奥底で、これだけの怨嗟があることに、気付きもしない、あの男。
  気付いていないことが、俺たちの戦いへの勝利のカギだ。
  秋人の精神は、乗っ取られてはいない。俺は俺の意思が、意識がまだある。
  蓄積された力を扱えるのは、その為。
  自分自身の力を引き出せるのは、その為。
  驕って、己の心の奥底を気にしない、あの男に勝てる見込みは、捨ててはいない。
  戦う意思を、捨ててはいない。
  それを、捨てたら、終わりだと。秋人は考える。
  いままでの犠牲者たちと、同じように、俺も終わってしまう。
  それだけは、避けたい。
  何が何でも、俺で、この悲しい連鎖は終わらせる。
  俺自身がどうなろうと、先のことは考えない。
  ただ、仲間を、章を傷付けられる前に、終わらせられなかったことが、辛い。
  復讐劇の幕開けだと、男は言っていた。
  狙うのは勇か?正か?
  それとも、勇の父親だろうか。
  いずれにせよ、彼らは天野の外見が変わっていることを、知らない。
  それが、少しの懸念にはなっているけれど。それでも、この禍々しいオーラを気付かないわけはないから。
  大丈夫だ。簡単にやられる仲間じゃない。
  秋人はそう言い聞かせる。
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