中条秀くんの日常

藤野 朔夜

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大学一回生になりました

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「ふ、うん、あ……」
  一生懸命声殺してるのに。
  手には力入らなくなってて、口に持って来てた手は、もう添えてあるだけだ。
  どうしたら良いのか、わからないのに。祐也は、それが可愛いって言ってくる。
  さっき、一瞬だけ、俺が多分泣きそうになったから、止まってくれたけど。
  祐也の指も口も、またソコに戻ってて。
  もう嫌だ、って何度も言ったのに、聞いてくれない。
  体は、なんか熱いし、思考も回らなくて。もう本当にわからない。
  祐也を見ると、祐也の視線とぶつかるし。何か、全部持ってかれそうな目。
  怖くはないけど。全部暴かれてくし、体は俺の意思では、もう動かないし。
  止めて欲しいけど、止めて欲しくない。とか、自分が本当、一番わからない。
「あ、うあ、も、ほんとヤダぁ、あんん……」
  ドコ触られて、自分がこんな声出してる、とか考えたくないし。
  自分の声聞きたくなくて、耳を塞ぎたいのに、手は動かない。
  祐也に誘導されて、裕也の肩に乗っかってた手は、もうそこにしかすがれないっていうように、唯一力が入ってると思う。
  カチャカチャって音が聞こえて、何だろう?って思う間もなく、下に履いてたズボン脱がされてた。
「ゆう、や……!」
  驚いて、名前呼んだけど。片手で器用に脱がされたから、祐也の口ともう片方の手は止まってなくて。
  獰猛な目が、俺を見てた。
「下、全部脱がすよ?」
  やっと口が離れたと思ったら、そんなこと言われて。
  ブワッと熱くなったのが、わかる。
「ヤ、ヤダ!」
  俺すっごい慌ててるのに。手は相変わらず動かないから、反抗なんて言葉でしかできない。
「んー、でも俺、秀の全部、見たいんだよね」
  そんな風に言われて。祐也はやっぱりずるい、とか思った。
  だって、どうせもう反抗できる力なんてないし。体に力入ってないの、祐也には丸わかりだろうし。
  なのにそんなこと言って、俺の羞恥煽ってくる。
  今だって、慌ててるのは俺ばっかりで。息が乱れてるのも俺ばっかりで。
  ギュウと目を瞑った。見えないのは恐いって教えてくれたのは、祐也だけど。祐也にされること、見てる方が恥ずかしい。
「んじゃ、俺も下脱ぐから、脱がして良い?」
  それはもっと、恥ずかしい!
  そう思って、横に首振ったのに、またカチャカチャって音が聞こえた。
  祐也は俺に確認取って来るくせに、自分がしたいように動くんだ。
「秀」
  優しい声が降って来るけど、祐也を見れない。
  バサッて音がした後、俺の下着も脱がされたから、余計に目が開けられない。
  男同士だし、こんな風に過剰反応してるのって、おかしい気もするけど。それでも、開けられない。
「秀、目、開けて」
  開けたら開けたで、恥ずかしいことばっかされるのは、わかってる。
  今は、俺が目を開けないからなのか、祐也は目元にキスしてくるだけで、それ以上してこない。
  見えないのは怖い、って言われてるし、それは実感してるけど。
  自分がしたいようにするくせに、こうやって俺のこと考えて行動押さえてる祐也が、本当に優しいんだって思えたから。ゆっくり目を開けた。
「おまえ、ほんとうに、ずるい」
  なんか、喉がもつれる感じがして、うまく言葉が出なかった気がするけど。
  俺が目を開けたら、嬉しそうに笑う祐也の顔があった。
「ずるくても、何でも良いよ。秀に嫌われないなら」
  そんな風に言ってくる。
  俺だって、祐也に嫌われたくない。祐也の隣が、安心する場所なんだって、わかっているから。
  だから、祐也に暴かれるのは恥ずかしいけど、嫌じゃないし、もう怖くはない。
「秀、反応してるの、わかってる?」
  そう言われて、何のことかわからなくて。
「ん、あ……」
  でも、祐也の手が、ソコを撫でたから、自分がどんな状態なのか、ハッキリ自覚した。
「ヤ、うそ、だ……」
  触られて、初めて自分の体が熱い理由が、よくわかった。
  確認するように、下を見たら、祐也のも目に入ってきて、慌てて逸らしたけど。祐也のも、反応してた……。
「嘘じゃないって。俺のも反応してたでしょ?」
  俺が確認に下を見たのに気付いて、わざわざ言わなくても良いのに。
「な、んで……」
「なんでって、そりゃ、可愛い秀を見てたから?」
  違う。聞きたいのはそこじゃない。んだけど……触られてて、認めるのは恥ずかしいけど、多分感じてて気持ち良かった俺だけじゃなくて、祐也も反応してくれてたことが、恥ずかしいけど、嬉しいとか。もうまたよくわからなくなってくる。
「ん、ひゃあ……」
  そっと内腿を撫でられて、悲鳴みたいな声が出た。
  そのまま、足を開かされたから、力の入らない体で、精一杯の抵抗してた。
「秀の全部、見たい」
  開かされたら、色々恥ずかしいトコ丸見えになる。
  でも、祐也の獰猛な目が、俺を捕えたまま、手に力入れられて、グイッと開かされた。
「ゆう……ヤだぁ」
  ちょっと涙声になった。
  でも、そんなことは恥ずかしくはなくて。体に注がれる祐也の視線の方が、恥ずかしい。
  だけど、祐也にされること全部、許してる自分がいるのもたしかなことで。
  恥ずかしいけど。それだけじゃなくて、見られることに、ブワッて体がさらに熱くなった。
「ふっ、あ……」
  涙声っていうか、俺泣いてる。
  また、祐也に心配かける。違うんだ。嫌じゃないんだ。恐いわけでもないんだ。零れた涙を拭うこともできないままで。
「秀」
  優しい声。優しい手が、俺の涙を拭って行った。
「ゆう、や。違う。俺、怖い、んじゃ、なくて……」
  なんとか、伝えようと試みるんだけど。さっきみたいに、しっかりしゃべれない。さっき泣いた時も、まともにしゃべれてなかったとは思うけど。
  自分のこの涙が、何で出て来たのか自分自身でさえわかってないのだから、しょうがない。
「恥ずかしすぎる、かな?」
  俺、泣きすぎじゃないのか、とか思うけど。
  祐也はそんなことは、気にしないとばかりに、優しく頭を撫でてくれる。
  祐也の言葉に、あぁ、そうなんだ。って納得できて、コクコク頷いていた。
「ううーん。困ったな。俺は秀の全部が見たいけど。無理強いするの、良くないよねぇ」
  散々、自分勝手に動いておいて、そんなことを言っている祐也。
「全部、って……」
  どこまで、と思う。
「全部は全部。余すことなく?ココとか、ココも」
  あり得ない場所まで触られた。
  ビクッて震えたせいか、すぐに指は離れていったけど。
「触るだけじゃ、足りない。全部見たいよ」
  物足りないのだ、と雄弁に語ってくる、祐也の目。
「まぁ、本当は、全部にキスしたいって言いたいとこだけど。それしたら、秀は絶対嫌がりそうだし」
  あの、あり得ない場所にも、キスしたいってこと?
  見られるだけなら、まだマシに思えてくる。
「要求、が、とんでも、なさすぎ、る……」
  まだ、息が整わない。というか、もうこれ涙とか関係なしに、乱れてるだけだ。
「そうかな。だって、秀の全部が欲しいから」
「つ、あぁ、ヤ、触るなぁ、あぁ……」
  言いつつ、触れられて。
  ソコを触るのに、何のためらいもない祐也の目が、俺を見てる。
  足の間には祐也が入ってて、閉じられないから、触られてるトコは、見られてる。
「んん、や、あ……」
  声なんて、もう押さえてられなくて。そんな所、誰にも触られたりしたことないから。
  自分でする時とは、全く別物の快楽が、押し寄せてくる。
「んー、触って溶けさせたら、見るの大丈夫かと思って」
  なんて、祐也が言ってるけど。もう、見てるじゃないか、なんて反論の声は出てこない。
  自分だけが高められていくのが、嫌だ。
「はっ、本当可愛い」
  言った祐也の吐息が、かかって。あぁ、祐也もちゃんと乱れてるんだ。って思ったら、なんか色々もう、本当になんでも良くなった。
「んあ、っ、ゆう、やぁあ……」
  なんか自分の声が、自分のではないみたいで。
  だけど、呼んだら俺の目を覗き込むみたいに見てくれる祐也の目に、なんでか不思議と安心した。
  腕を動かすのも、結構大変だったけど。それでも両手で祐也に触れたくて。
  ギュウと首に両手を回してしがみ付いたら、祐也の目が、嬉しそうな色を宿した。
「可愛い。秀、可愛い」
  そう言いながら、軽いキスを何度もしてくれて。
  乱れてたから、余計に呼吸が苦しくなったけど。祐也にそう言われながらキスされるのは、嫌じゃなかった。
「はっ、ん、あ、俺ばっか、イヤ……」
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