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19.王子の涙
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周囲の人達が、美菜の声に驚いたが、彼女はもうそんなことは気にならなかった。
まだ小さく見えていた背の高い憲斗に向かって、美菜は必死に走る。
涙のせいか、ドラマや映画のシーンのように、伸ばした自分の手がスローで二重に見える。
美菜の声に気付いた憲斗が、振り返った。
美菜は走って来た勢いで、憲斗の手を取ろうとする――。
しかし、憲斗の手は掴めず、美菜は空振りをした。
憲斗の目の前に立った美菜は、その理由に気付く。
憲斗の指輪を見て、咄嗟に自分が躱したのだ…。
心に急ブレーキを掛けられた美菜は、口を開けたまま立ち尽くす。
白い吐息を繰り返しながら、美菜は下を向いて言う。
「ず、ずっと、ずっと…好きだったの。だから、いつも頑張れた。…ずっと、ずっと、言えなかったのは―――…」
顔を上げた美菜は、憲斗が泣いていることに気付く―――!!
「え……」
憲斗は涙を拭いながら、微笑む。
「分かってたよ。そんなこと…。美菜、いっつも顔、真っ赤だもん…」
憲斗の涙の理由は分からないが、想いを知っていてくれて、それで東京に行ったのなら、大学の時に告白したところで、結果は同じだったのだと美菜は思った。
どの道、ダメだったんだ――――…。
口を少し開いた後、美菜は俯く。
「で、でも、私もちゃんと…、どうにか他の男の人を…、頑張って探してるよ。案外モテることもね…。あるみたいでさ…。はは……」
美菜の言葉を聞いた憲斗は、ゆっくりと頷く。
美菜は自分が元気になったのではなく、もうどうでもいい気持ちになったのだと気付く。
どの道、憲斗には届かなかったんだ私…。やっぱもう生きる気力ないや…。世界中のみんなが幸せになるために尽くして、尽くして…、人生終わろう…。もうそれでいい。それしかない…。
「そ、それに、みんなが幸せになる方法、方策?も見つけれそうなのっ。その…、うちの会社の研究所、変に最先端の未来予測パソコンと超ビッグデータがあってさ…」
美菜は、得意の爆裂リケジョ・トークを始めた。
「地球の人口や経済、人権、気候変動、脳の小さな進化とかのデータを使って、未来予測シミュレーションの解析ができてさ。地球や社会の未来の方向を色んなパターンで予測して…、はは、こんなだから本当は全然モテないんだけど…、あ、これも知ってるか…」
憲斗はまた微笑んだ。
「とにかく、凄い結果がもうすぐ出そうなの。それが少し行き詰まってて、買い物と、息抜きをしてたんだけど…、何か、大丈夫な気がしてきた。憲斗に、逢えたんだもんねっ」
美菜は、思った言葉と、思ってもない言葉がごちゃまぜになって、口から出ていることに気付く。
次何を言えばいいかな…。とにかく、笑って別れたい…。
いや、このままでいたい……。このままそばにいたい…。
もう…何だっていい………。もう離れたくない――――――…
美菜の話を聞いた憲斗は、少し微笑って、何故かまた涙を流し始めた。
「美菜ならきっとできるよ。…あ、チョコレートあげる」
「え?チョコレート?……」
美菜はチョコレートと憲斗の涙を同時に驚いた。
私にここで会うって、知ってたの?…。そんな訳ないよね。
憲斗が誰かにあげるつもりで買ってたチョコレート?……。
指輪の女性?…他の人への義理チョコ?……。
戸惑いながら、美菜は掌サイズの紙袋を受け取る。
袋の中を少し覗いた後、美菜が顔を上げると、憲斗の姿はもうなかった―――…。
まだ小さく見えていた背の高い憲斗に向かって、美菜は必死に走る。
涙のせいか、ドラマや映画のシーンのように、伸ばした自分の手がスローで二重に見える。
美菜の声に気付いた憲斗が、振り返った。
美菜は走って来た勢いで、憲斗の手を取ろうとする――。
しかし、憲斗の手は掴めず、美菜は空振りをした。
憲斗の目の前に立った美菜は、その理由に気付く。
憲斗の指輪を見て、咄嗟に自分が躱したのだ…。
心に急ブレーキを掛けられた美菜は、口を開けたまま立ち尽くす。
白い吐息を繰り返しながら、美菜は下を向いて言う。
「ず、ずっと、ずっと…好きだったの。だから、いつも頑張れた。…ずっと、ずっと、言えなかったのは―――…」
顔を上げた美菜は、憲斗が泣いていることに気付く―――!!
「え……」
憲斗は涙を拭いながら、微笑む。
「分かってたよ。そんなこと…。美菜、いっつも顔、真っ赤だもん…」
憲斗の涙の理由は分からないが、想いを知っていてくれて、それで東京に行ったのなら、大学の時に告白したところで、結果は同じだったのだと美菜は思った。
どの道、ダメだったんだ――――…。
口を少し開いた後、美菜は俯く。
「で、でも、私もちゃんと…、どうにか他の男の人を…、頑張って探してるよ。案外モテることもね…。あるみたいでさ…。はは……」
美菜の言葉を聞いた憲斗は、ゆっくりと頷く。
美菜は自分が元気になったのではなく、もうどうでもいい気持ちになったのだと気付く。
どの道、憲斗には届かなかったんだ私…。やっぱもう生きる気力ないや…。世界中のみんなが幸せになるために尽くして、尽くして…、人生終わろう…。もうそれでいい。それしかない…。
「そ、それに、みんなが幸せになる方法、方策?も見つけれそうなのっ。その…、うちの会社の研究所、変に最先端の未来予測パソコンと超ビッグデータがあってさ…」
美菜は、得意の爆裂リケジョ・トークを始めた。
「地球の人口や経済、人権、気候変動、脳の小さな進化とかのデータを使って、未来予測シミュレーションの解析ができてさ。地球や社会の未来の方向を色んなパターンで予測して…、はは、こんなだから本当は全然モテないんだけど…、あ、これも知ってるか…」
憲斗はまた微笑んだ。
「とにかく、凄い結果がもうすぐ出そうなの。それが少し行き詰まってて、買い物と、息抜きをしてたんだけど…、何か、大丈夫な気がしてきた。憲斗に、逢えたんだもんねっ」
美菜は、思った言葉と、思ってもない言葉がごちゃまぜになって、口から出ていることに気付く。
次何を言えばいいかな…。とにかく、笑って別れたい…。
いや、このままでいたい……。このままそばにいたい…。
もう…何だっていい………。もう離れたくない――――――…
美菜の話を聞いた憲斗は、少し微笑って、何故かまた涙を流し始めた。
「美菜ならきっとできるよ。…あ、チョコレートあげる」
「え?チョコレート?……」
美菜はチョコレートと憲斗の涙を同時に驚いた。
私にここで会うって、知ってたの?…。そんな訳ないよね。
憲斗が誰かにあげるつもりで買ってたチョコレート?……。
指輪の女性?…他の人への義理チョコ?……。
戸惑いながら、美菜は掌サイズの紙袋を受け取る。
袋の中を少し覗いた後、美菜が顔を上げると、憲斗の姿はもうなかった―――…。
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