わたしの王子の願いごと

高橋央り

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37.ドラゴン……

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「憲斗っ!…」

美菜は焦りながら、ナースコールを何度も押す。

憲斗は目を瞑って、咳を繰り返している。

「憲斗っ、憲斗ぉっ!!…」





ウウウゥゥ―――――

煙の上がる高速道路に、パトカーや救急車が向かっている。

炎に包まれている車の運転席で、皇真の体が燃えている。

何故か、皇真は燃えている自分の体を見ていた。

「え?……どういうこと?!」


皇真は自分の手を見た。

薄っすら透明だった。

「あ、これ死んだってことか…。すげぇ……、いや死んだのか……。うわぁ…困るな………マジか…」

唇を噛んだ皇真は、前方に何かがいることに気付く。

「ん?……え!?」

皇真の目の前にいたのは、ドラゴンだった!!!


地面から頭までが7m程で、翼のある、濃い緑色のドラゴンだ。

皇真は一瞬フリーズし、瞬きを繰り返し、「ドラゴン?!」と言った。

ドラゴンはゆっくりと大きな口を開く。

「わしは天使だ―――!!」


「て、天使……、あ…」

皇真は、シミュレーションでの憲斗の願いごとの天使を思い出した。

「じゃ、じゃあオレ様の願い事を…」

そう言いながら、皇真は自分が死んでしまったことを改めて思い起こし、険しい表情を浮かべた。

ドラゴンは「わしは天使だ…」と繰り返している。


皇真は鼻で笑い、「いや、どう見ても、ドラゴンだろ」と言った。

ドラゴンは、皇真を睨み、「じゃあ、もう帰る…」と顔を背けた。

焦った皇真は、「いやいやいや、天使、天使、天使だっ。天使様っ!」と両手を広げて言った。

「そう、わしは天使だ。お前の願い事を叶えに来た。叶えてやる願い事の数は、心の美しさで決まる。お前は……1つだな」

「え?1つ……。うーん泣かせたレディが多いかなぁ…。でも勝手にオレ様のファンになって―――…、まぁ、そうだな。みんなの期待には応えてあげられなかった……。申し訳なかった…。ファンには感謝してる…。ああ…みんなにも会えないのかぁ…困った……」

皇真は舌を出して言った。
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