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完璧すぎて憎たらしい(4)
店を出て、川沿いを歩く。駅とは反対方向へ向かっている。
「ねぇ修哉、どこ向かってるの?」
「俺の家」
「修哉の家、このあたりなの?」
「うん、そうだよ」
この辺りは都心の中心部で、よく芸能人を見かけると有名なエリアだ。
こんな場所に家があるなんてと驚きながら、改めて愛は修哉のことを何にも知らないんだなと痛感した。
それもそのはず。聞かないように、踏み込まないように、距離を置いていたから。
川沿いを歩き、閑静な路地へ入って少し進んだ先に、デザイナーズマンションがあった。ガラスウォールの外観と、コンクリート打ち放しのデザインが映える洒落たつくりをしている。
「ここだよ」
そう言ってカードキーを取り出し、オートロックを解除して部屋に入った。
「どうぞ」
「お邪魔します」
玄関を入ると五段の階段があり、そこを降りると広いリビングダイニングがある。
壁は無機質なコンクリートだが、落ち着いた革製の家具のおかげであたたかみがある空間だ。
「素敵なお家だね」
「ありがとう」
上着を脱いで、不躾にもキョロキョロと部屋を観察してしまう。
ガラス棚にはたくさんのトロフィーとメダル、盾や賞状などが並んでいた。
「すごい、トロフィーがたくさん……! これを見ると、修哉がアスリートなんだって実感する……」
「愛ちゃんごめん、水しかないや。水でいい?」
「うん、ありがとう!」
表彰台にあがり、笑顔でメダルを掲げる若い修哉の写真を見ながら、グラスを受け取る。
チビチビ飲みながら棚の中を見ていると、後ろから腰に修哉の腕が回される。
「ねぇ、そんなの見てなくていいからさ、俺のこと見てよ」
「んー、修哉はさっきお店でいっぱい見たよ?」
拗ねた声を出して甘えてくる修哉に腰を引かれて、慌てて両手でグラスを持った。
「ちょ、お水零れちゃう」
「うん、もういいよね?」
「え、ちょっと、修哉?」
グラスを取り上げられ、それを棚の端に置くと、愛の体を強引に抱き寄せてソファへ押し倒す。
「よし、じゃあ改めて自己紹介するよ」
「え? 突然何??」
「いいから聞いてて。俺の独り言だから」
顔の横に両手を突かれて、愛の太ももを挟むようにまたがれていては、身動きがとれない。
「雪川修哉、二十八歳。十二月十八日生まれの射手座。家族は父母兄の四人家族。体育大学在学中に、プロクライマーに転身して、今はスポーツクライミング選手として世界中の大会に出場中」
「……うん……?」
淡々とした紹介文を聞きながら、ぼんやりともうすぐ修哉の誕生日なんだなと思った。
「好きな食べ物は言わずもがな、焼き鳥で特につくねが好き。嫌いな食べ物は納豆。臭いが本当に無理」
「へぇ……」
「好きな女性のタイプは背が高めで、目が猫みたいにアーモンドの形になってる子。普段は意固地なんだけど、たまに甘えて擦り寄られたらすぐコロッと好きになっちゃう。あ、あと胸はだらしなければだらしないほどイイ」
「──……っ」
カッと頭に血が沸いて、修哉の甘い視線に耐えられなくなって横を向く。思わず胸前で腕を交差してしまった。
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