トップアスリートはセフレを可愛がりたくてたまらない

鶴れり

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完璧すぎて憎たらしい(6)



 ソファで衣服を着たまま貪られたあとは、浴室で立ったまま喘がされて。気がつけば柔らかいベッドの上に寝かされて、覆い被さられて。
 一体避妊具を何個使ったのか、もはや記憶にない。

 ふわふわとしたまどろみのなかで、弾力のある肌に包み込まれて、ずっとこのままでいたくなる。

 ふとハッと意識が覚醒した。
 ──仕事! 今何時?!

 ガバッと勢いよく顔を上げて周りを見渡す。寝室にはベッドと洒落た間接照明しかなくて、慌てて時計を探す。

 するとベッドボードに小さなデジタル時計が置いてあった。
 良かった、まだ出社に間に合う時間だ。けれど一度家に帰ることを考えると、今すぐに出ないと間に合わない。

「修哉、ごめん時間ないから帰るね──っ!?」
「やだ。行かないで」

 起きていたのか、修哉の筋骨隆々な腕に囚われてしまい、抜け出せない。

「ここからのほうが会社近いじゃん」
「服とか、着替えないとだし……っ」

 昨夜服を着たままコトに及んでしまったから、どこにあるかわからないけれど、ぐしゃぐしゃで悲惨な状態になっているに違いない。
 それに昨日と同じ服を着て出社なんて。朝帰りですと堂々と公言しているようなものだ。気まずすぎる。

「愛ちゃんの服と下着類、新しいのあるよ」
「え、なんで?」
「昨日、愛ちゃんの仕事が終わるまでの空いた時間に買っておいた」

 用意周到すぎる、と思わず突っ込んでしまった。
 クローゼットの扉を開けて、紙袋を手に取ると、愛に差し出す。
 袋には有名な洋服ブランドのロゴが書いてある。
 中を開けると、ブランドタグがついた新品の下着とワンピースが入っていた。

 下着を持ち上げて、感嘆の声が漏れる。

「かわいい……」

 ベビーピンクの総レースの下着。ブラジャーの肩紐とアンダーカップには大きめのフリルがついていて、お揃いのショーツにもふんだんにフリルが使われている。
 ここまでフリフリのデザインは、着てみたいという気持ちはあったけれど、さすがに自分には不相応だと今まで手を出せなかった。

「愛ちゃんが好きそうで、絶対自分では買わないだろうなと思ったやつを選んでみた。どう、気に入った?」
「私には可愛すぎるくらい……。って、これ修哉が選んで買ってきたの?」
「うん。店員さんに、ピンク色で一番可愛い下着はどれですかって聞いた」
「え、恥ずかしくないの?」
「全然。彼女へプレゼントしたいって言ったら、奥のストックから色々と出してくれたよ」

 修哉が一人で女性下着専門店へ行っているところを想像してしまって、笑ってしまった。

「ふふ、うそ……! 店員さんも驚いただろうね。スーツ着た筋肉マンがピンクのフリフリの下着を買うなんて……」
「そこは考えたらダメだよ。堂々と無心でいないと。逆に男が照れてニヤニヤしながら下着選んでたら気持ち悪くない?」
「……うん。気持ち悪いね」

 顔を見合ってくしゃりと笑い合う。
 タグについている下着のサイズを確認すると、いつも愛が身につけているものと同じサイズだった。

「……」
「あ、もちろんサイズは確認したから合ってるはずだよ? 愛ちゃんのサイズって、あんまり売ってないんだね」
「……なんで知ってるの?」
「下着の品質表示タグに書いてあるじゃん」
「いつ見たのっ?!」
「え、そんなの覚えてない。うーんと、いつだったかなぁ」

 わざとらしくとぼける修哉に鋭い視線を送る。愛の勤務先といい、胸のサイズといい、こそこそと詮索されている。
 しかしわざわざこうなることを見越して衣類を用意してくれていたのは素直に助かったし(寝坊したのは修哉のせいだけどっ)、サイズが合わない下着は苦しいだけなので、結局強く怒れなかった。

 下着と一緒に入っていた、ワンピースを紙袋から取り出す。
 膝下丈の落ち着いたロイヤルブルー色のシャツワンピース。ボタンはシルバーで、よく見るとブランドロゴのマークが入っている。ウエスト切り替えになっていて、スタイル良く見える仕様になっていた。
 オフィススタイルにも馴染む、センスの良いセレクトに、愛は何も言えず黙り込む。

 本当、女性のことよくわかってる……。
 仕事場で着てもおかしくないデザインと素材。愛に似合うもの。女性らしいものは好きだけれど、会社の人にはバレたくないと愛が思っていること──愛のことを完璧に理解した品物だった。

「ごめん、ブルーは嫌いだった? 愛ちゃんの黒髪に似合うと思ったんだけど」
「修哉が完璧すぎて憎たらしい……」
「え? どういうこと?」
「女たらしって言ったの!」
「え、俺がいつたらしこんだ?」

 ──うぅ、もう! ずるい!

 生涯独身を貫こうと思っていたのに、このままじゃ修哉に絆されてしまいそうで。
 愛は抜け出せない底なし沼に片足を突っ込んでしまっていることに、ようやく気がついた。


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