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どうしたらいいの(4)
その日の夜。
愛は修哉に一通のメールを送った。
『修哉の会社とのウェブデザインの仕事が終わるまでは、しばらくは会えない。ごめんね』
『うん、わかった』
愛の性格をよく理解してくれている修哉は、こうなることを想定していたのか、すんなりと了承してくれた。
ほっと安堵しつつも、どこか寂しい。
会社近くにある百貨店の地下で買ってきた、惣菜の焼き鳥を温めなおして、自分の手狭なワンルーム部屋で食べる。
肉厚な鶏肉に甘辛いタレが絡み、食欲をそそる照りが反射する。パクリと一口頬張って、飲み込む。
「全然、美味しくないや……」
それなりに値段の張る焼き鳥串なのに、全く美味しいと感じられなかった。
味気ない食事をしながら、スマホを触る。
検索サイトで『雪川修哉 クライミング』と入力すると、たくさんのスポーツ記事がヒットした。
日本大会や世界大会の試合の様子、インタビューなどが写真や動画映像と共に出てくる。
「本当にトップアスリート選手なんだなぁ……」
修哉の部屋にあった多くの栄光の数々を思い出して、改めてとんでもない人がセフレなのだと実感する。
修哉が日本大会で優勝したときの、二年前の動画を発見した。再生ボタンを押してみる。
リポーターの解説が流れるなか、修哉の集中したアスリートの表情があった。
ホールドが設置された高い壁の前に立ち、コースを確認しながら手に白い粉をつける。
スタートの合図音と共に、壁を登っていく。途中、体に繋がれているロープを支点にかけていき、慎重に登っていく。
この競技はリードクライミングと呼ばれるもので、どの高さまで登ることができたかを競う競技だ。リポーターの解説によると、完登できないようにコースが作られているらしい。
絶対に登りきれない壁を、どこまで登れるのか。それがリードクライミングの面白いところだ。
顎のように突き出た傾斜角度のある壁を、手指の力だけで体を持ち上げる。
下半身を捩り、なんとか次のホールドを掴もうとして、手が滑り、壁から体が離れてしまった。
観客席から「あぁー!」という落胆の声が聞こえる。
体に繋がれている命綱が、ゆったりとした速度で修哉を地上へ連れていく。
落ちてしまったが、修哉はこの時点で一位の順位だった。
スポーツクライミングという競技をきちんと見るのは初めてだった愛は、改めて修哉の実力の凄さを痛感する。
ただ壁を登るだけじゃない。
初めて見る壁のコースを考え、実際に登ってどこまで高く登れたかを競う。
ホールドの大きさや位置、壁の角度、ロープをかける支点の位置を把握して、どのように手足をかけて登っていくかを考えていく。
身体運動能力はもちろんだが、頭脳も使うスポーツなのだ。
意外と奥が深い競技に、他の大会の動画をいくつも見てしまう。
いつか、実際の試合を観てみたいな。
試合でなくても、修哉がクライミングをしているところを見てみたい。
そんな日は叶わないかもしれないけれど……。
アスリートの修哉を満喫した愛は、ネット検索画面に戻る。
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