トップアスリートはセフレを可愛がりたくてたまらない

鶴れり

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断れない(4)


 多くの人で賑わう通りを抜けると、広場に出た。
 駅前にある噴水広場は、普段は待ち合わせスポットとして有名だ。今はイルミネーションで装飾され、人々が足をとめてその美しさに見惚れていた。

 天使像が寄り添う水盆から、放射線状に水が流れている。その水は時間と共に色が変わっていく仕組みだ。
 噴水の周りには丸くカットされ、電飾で彩られた大小様々な木が植えられていて、まるで天使の住む森の中を彷彿とさせた。
 クリスマスムード一辺倒だった街並みとは違って、この区画だけファンタジーな世界が広がっていた。

「きれい、だね」
「うん……」

 神秘的な芸術に触れて、ささくれだっていた心が少し落ち着いた気がした。
 修哉のコートの袖を、つんつんと引っ張る。

「ん?」
「さっき、振り払ってごめんね」
「ううん、気にしてないよ」

 いつもの穏やかな微笑みを見て、ほっと息をつく。
 そうしてしばらくの間、二人は沈黙したままイルミネーションを楽しんだ。

「そういえば……何か私に用だった?」
「うん。渡したいものがあったんだけど、家に置いてきちゃったみたい。愛ちゃん、もし時間があるなら取りに来てくれる?」
「うん、いいよ」

 修哉の家はここから近い。然程時間もかからないので快く了承した。

 電車移動でもいいのに、修哉はわざわざタクシーを呼び止めて乗り込む。
 いつもならたわいもない、くだらないことで笑い合うのだが、今日は互いに口を閉ざしたままだ。
 タクシーの車窓から見えるライトアップされた街並みをぼんやりと見ていると、閑静な住宅街へ入っていく。

「運転手さん、ここで降ろしてください」

 修哉のマンションの少し手前で降り、歩いて向かう。
 周辺は洒落た建築デザインの建物が並んでいて、まるで近代美術館に来たみたいだ。
 ちらほらと車とすれ違いながら、以前も来た修哉のマンションへ着く。

「寒いから部屋入る?」
「……ううん、荷物もらうだけでしょ? ここで待つよ」
「やっぱり、そう言うと思った」

 エントランス前にある、芸銃的なオブジェの前で立ち止まる愛に、修哉がそっと近づいてくる。

「愛ちゃん」

 修哉の大きくてゴツゴツとした硬い手が、愛の頬に添えられる。

「修哉……?」

 荷物取りに行かないの? と聞くつもりが、修哉の真剣な表情に釘付けになって言葉が出てこない。
 修哉との関係を終わらせないといけない──そう思っていることが彼に筒抜けになっていそうで。普段通りに振る舞いたいのに、感情が揺らいで上手くできない。

「可愛い愛ちゃん……好きだよ」

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