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第七章 君が多々良さんで、僕は
あなたにご提案(2)
しおりを挟む「結論から言いましょう」
完璧が当たり前だった彼女。
僕が多々良さん以外を好きになれば完璧ではなくなる。思い通りにはならないという。
『好き』の完璧というのは、思いが通じ合う事なのではないか、と僕は推測する。
つまり。
好きな人と、付き合う―――ということが、彼女にとっての完璧なことに当たるのではないだろうか。
僕が多々良さんを好きになってはいけない理由は。
「小椿さんは、僕のことが好きなんだ」
すでに、彼女が僕のことを好きだから。
「ねぇ、多々良さん。多々良―――小椿さん」
マリちゃんと小菊さんは、そう考えて、僕の『多々良さん』への気持ちを違う方に向けようとしていた。
小椿さんではない人を好きになって、付き合えば、多々良家の長女は、自分が完璧じゃないと考え、コンプレックスに絶望し、自殺することがない―――そう考えた。
下の名前を呼んでも、答える声はない。
「裏付ける理由も、あります。」
好きに理由はないというが、好きだからおこした行為の理由はある。
「ウサギのことから行きましょう」
シャーペンが、右目に刺された、ウサギ。
「刺したのは、小椿さんです」
それは何故か。
「あなたは、僕の反応を見たかったんだ。どんな反応をするかを―――確認したかったんだ」
小菊と三郎と帰った道のりで、僕が思ったことは概ね間違いではなかった。
小椿さんは、ウサギのぬいぐるみを最初からマリちゃんに渡すつもりがなかった。
見知らぬ男から貰ったぬいぐるみを、可愛い妹に挙げるようなお姉さんではないはずである。
もしあの場に行くことなく、小椿さんと偶然出会うこともなければ、あのウサギはしばらく無事だっただろう。
「あのウサギは疑似的な小椿さんで、僕の反応を見るための道具だったんです」
さらに言えば、ウサギでなくても良かった。クマでも、アライグマの剥製でも、何なら人体模型でもいい。
ただ、ウサギだったのは、タイミングが良かっただけだ。
小椿さんにとっては、代わりでありさえすれば良かった。
「目を刺されたウサギは、片方の目を失った疑小椿さんで、シャーペンを握る姿は、目を刺した小椿さんを表していた。顔の見えない僕が、真実をしって、本当のあなたを見るとき、どんな反応をするかを―――確認したかったんだ」
本当の自分を知られたら、どういう反応をするのか。
顔の見えない僕が、彼女の顔を見て、どういう表情をするのか。
僕のことが好きだから―――好きな人間の反応が気になる、なんて、当たり前の感情を持って、僕を試した。
風が吹いた。
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