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第4章 ミステリアス少女の秘密
第18話 絵は自由なのに
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顔を洗って、鏡を見ながら化粧水と乳液を塗る。
最近肌の調子がいい気がするのは、きっと気のせいじゃない。
たぶん、変身部で過ごす時間が心も身体も癒してくれているからだ。
「……今日、コンタクトで学校行ってみようかな」
もちろん、天使ももになる時の赤いカラコンを入れて登校することはできない。
でも、クリアコンタクトは別だ。
今までは、休みの日しか使ってなかったけど。
「……みんな、びっくりしちゃうかな」
いつも眼鏡の私がコンタクトになったら、驚く? それとも、人のコンタクト事情なんて気にしない?
どっちなんだろう。
「決めた」
今日は、コンタクトで学校へ行ってみよう。らしくない、なんて言われちゃうかもしれない。似合ってない、なんて言われるかもしれない。
でも、私がそうしたいから。理由なんて、それで十分のはず。
こんな風に思えるようになったのは、変身部のおかげだ。
天使ももでいる時の私は、やりたいことをやれるし、言いたいことが言える。
その経験がきっと、普段の私の背中を押してくれてるんだ。
◆
教室へ入る前に、一度だけ大きく深呼吸をした。
眼鏡をやめて、コンタクトにした。たったそれだけ。周りから見たら、気にするようなことじゃないと思う。
でも私にとっては、大きな一歩だ。
家を出る前、やっぱりやめようかな、なんて何度も考えてしまった。そのせいで今日は家を出るのが遅くなった。
真面目な委員長の私は、毎日一番に教室にきてたのに。
「よし」
勇気を出して、教室の扉を開ける。俯いていた顔を上げると、教室中の視線が一気に集まった気がした。
どくん、と大きく心臓が飛び跳ねる。
「お、おはよう」
誰に言うでもなく、とりあえず挨拶してみる。
早く誰か返事して! と祈っていると、琴音が駆け寄ってきてくれた。
「おはよう、望結。今日コンタクト? いい感じだね」
「あ、ありがとう」
なんだか、拍子抜けした。もっと驚かれると思っていたのに、琴音の反応があっさりしているから。
私がほっとしていると、クラスメートたちがどんどん集まってきた。
「委員長って、コンタクトも似合うね!」
「私、コンタクト派かも」
「いや、コンタクトもいいけど、私はやっぱり眼鏡派かな」
びっくりして何も言えなくなった私の周りで、クラスメートたちが眼鏡派かコンタクト派か、なんて会話を始めた。
なにこれ。どういうこと……?
「そんな顔してどうしたの、望結」
くすっ、と琴音が笑った。そして、私の肩にそっと手を置く。
「思ってるより、みんな望結のこと好きなんだからね?」
「琴音……」
みんなが温かいリアクションをしてくれたのはきっと『真面目な委員長・天野望結』がちゃんと頑張ってきたからだ。
自分で言うのもなんだけど、私は委員長として、ちゃんと周りから慕われているんだと思う。
「それにしても委員長って、なんか最近、いきいきとしてるし、楽しそうだよね」
学校一のイケメン・早瀬くんが会話に入ってくると、女子たちの声のトーンが上がる。
それに気づいているのか気づいていないのか、早瀬くんは爽やかな笑顔のままだ。
「そうかな?」
「絶対そう。隣の席だから、なんとなく分かるんだよね」
「私もそう思う! 望結、絶対なんかあったでしょ!」
ここぞとばかりに琴音にも追及され、困った私はとっさに天井に視線を向けた。そんな私を見て、二人が同時に笑い出す。
なにかあったって思われるほど、私って変われてるんだ……!
照れくさいけれど、誇らしくもある。絶対に、変身部のおかげだ。
「ところでさ、望結」
琴音が私の手を軽く引いた。目を合わせると、琴音がにっこりと笑う。
「私は眼鏡の望結もコンタクトの望結も、どっちもいいと思うよ」
「ありがとう」
「そうだ。いつもとは違うデザインの眼鏡なんかもありなんじゃない?」
「違うデザインの……」
そんなこと、一度も考えたことなかった。
世の中にはたくさんの形やいろんな色の眼鏡があるのに。
当たり前だけど、いつもの黒縁眼鏡以外にも、いっぱい眼鏡はある。その中にはきっと、私の心がときめくようなデザインの物だってあるはず。
「望結って、絵は自由なのにね」
琴音はくすっと笑った。
確かに私、視野が狭くなってたかもしれない。真面目な委員長のイメージに、きっと私が一番縛られてた。
「私ね、望結の絵を見て、望結と仲良くなりたいって思ったんだよ」
最近肌の調子がいい気がするのは、きっと気のせいじゃない。
たぶん、変身部で過ごす時間が心も身体も癒してくれているからだ。
「……今日、コンタクトで学校行ってみようかな」
もちろん、天使ももになる時の赤いカラコンを入れて登校することはできない。
でも、クリアコンタクトは別だ。
今までは、休みの日しか使ってなかったけど。
「……みんな、びっくりしちゃうかな」
いつも眼鏡の私がコンタクトになったら、驚く? それとも、人のコンタクト事情なんて気にしない?
どっちなんだろう。
「決めた」
今日は、コンタクトで学校へ行ってみよう。らしくない、なんて言われちゃうかもしれない。似合ってない、なんて言われるかもしれない。
でも、私がそうしたいから。理由なんて、それで十分のはず。
こんな風に思えるようになったのは、変身部のおかげだ。
天使ももでいる時の私は、やりたいことをやれるし、言いたいことが言える。
その経験がきっと、普段の私の背中を押してくれてるんだ。
◆
教室へ入る前に、一度だけ大きく深呼吸をした。
眼鏡をやめて、コンタクトにした。たったそれだけ。周りから見たら、気にするようなことじゃないと思う。
でも私にとっては、大きな一歩だ。
家を出る前、やっぱりやめようかな、なんて何度も考えてしまった。そのせいで今日は家を出るのが遅くなった。
真面目な委員長の私は、毎日一番に教室にきてたのに。
「よし」
勇気を出して、教室の扉を開ける。俯いていた顔を上げると、教室中の視線が一気に集まった気がした。
どくん、と大きく心臓が飛び跳ねる。
「お、おはよう」
誰に言うでもなく、とりあえず挨拶してみる。
早く誰か返事して! と祈っていると、琴音が駆け寄ってきてくれた。
「おはよう、望結。今日コンタクト? いい感じだね」
「あ、ありがとう」
なんだか、拍子抜けした。もっと驚かれると思っていたのに、琴音の反応があっさりしているから。
私がほっとしていると、クラスメートたちがどんどん集まってきた。
「委員長って、コンタクトも似合うね!」
「私、コンタクト派かも」
「いや、コンタクトもいいけど、私はやっぱり眼鏡派かな」
びっくりして何も言えなくなった私の周りで、クラスメートたちが眼鏡派かコンタクト派か、なんて会話を始めた。
なにこれ。どういうこと……?
「そんな顔してどうしたの、望結」
くすっ、と琴音が笑った。そして、私の肩にそっと手を置く。
「思ってるより、みんな望結のこと好きなんだからね?」
「琴音……」
みんなが温かいリアクションをしてくれたのはきっと『真面目な委員長・天野望結』がちゃんと頑張ってきたからだ。
自分で言うのもなんだけど、私は委員長として、ちゃんと周りから慕われているんだと思う。
「それにしても委員長って、なんか最近、いきいきとしてるし、楽しそうだよね」
学校一のイケメン・早瀬くんが会話に入ってくると、女子たちの声のトーンが上がる。
それに気づいているのか気づいていないのか、早瀬くんは爽やかな笑顔のままだ。
「そうかな?」
「絶対そう。隣の席だから、なんとなく分かるんだよね」
「私もそう思う! 望結、絶対なんかあったでしょ!」
ここぞとばかりに琴音にも追及され、困った私はとっさに天井に視線を向けた。そんな私を見て、二人が同時に笑い出す。
なにかあったって思われるほど、私って変われてるんだ……!
照れくさいけれど、誇らしくもある。絶対に、変身部のおかげだ。
「ところでさ、望結」
琴音が私の手を軽く引いた。目を合わせると、琴音がにっこりと笑う。
「私は眼鏡の望結もコンタクトの望結も、どっちもいいと思うよ」
「ありがとう」
「そうだ。いつもとは違うデザインの眼鏡なんかもありなんじゃない?」
「違うデザインの……」
そんなこと、一度も考えたことなかった。
世の中にはたくさんの形やいろんな色の眼鏡があるのに。
当たり前だけど、いつもの黒縁眼鏡以外にも、いっぱい眼鏡はある。その中にはきっと、私の心がときめくようなデザインの物だってあるはず。
「望結って、絵は自由なのにね」
琴音はくすっと笑った。
確かに私、視野が狭くなってたかもしれない。真面目な委員長のイメージに、きっと私が一番縛られてた。
「私ね、望結の絵を見て、望結と仲良くなりたいって思ったんだよ」
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