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第4章 ミステリアス少女の秘密
第19話 知ってほしい
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「絵を見て、仲良くなりたいって思った……?」
「そう。だって、普段の望結のイメージと、全く違う絵を描いてたから。ふんわりした色使いとか、線のぼかし方とか。かと思えば、ぱきっとした鮮やかな色も使うし」
小さい頃から、絵を描くのは好きだった。
真っ白なキャンバスに何を描いてもいいのが楽しくて、そこになら、いくらでも自分の大好きを詰め込める気がして。
「望結って本当は、こういう世界が好きなのかな? って思ったら、たくさん興味が湧いてきたの」
琴音と出会った時のことを思い出す。
美術部の体験入部で一緒になった時、かなり積極的に声をかけてくれた。
私の絵を見て、仲良くなりたいって思ってくれたからだったんだ……。
「私はね、作品って、すごく作者の内面を表してると思うの。だから、望結にはいろんな面があるんだなって思って、仲良くなってみたい、って思ったんだ」
「……なんか、照れる」
「照れていいよ。私だって、こういうこと言うと照れるし」
そう言って、琴音は私から目を逸らした。琴音の白い耳が、ほんのりと赤く染まっている。
恥ずかしいのに、ちゃんと伝えてくれたんだ。
それって、私のためだよね。
「ありがとう、琴音」
琴音は、真面目な委員長としての私しか知らないと思っていた。そんな自分が恥ずかしい。
琴音はもっとちゃんと、私の心の中を覗こうとしてくれていたのに。
「……あ」
不意に、雪さんの顔が頭に浮かんだ。
最近私は、雪さんと仲良くなりたくて、いろんなことを質問している。まずは雪さんを知ることが大事だと思って。
でもそれって、私の視点でしかなかったんだ。
雪さんのことを知るだけじゃだめだ。ちゃんと、私のことだって知ってもらわないと。
◆
「雪さん、こんにちは」
変身部の部室で、いつも通り雪さんは数学の問題集を広げていた。
今日も、蓮さんはいない。最近、蓮さんがいない日が二日に一日はある。
それに、保健室にだって最近は全然きてくれないし……。
心配だけど、理由を聞くといつもはぐらかされてしまう。
「いらっしゃい、もも」
雪さんの隣に座る。彼女と二人で過ごす時間にもかなり慣れてきた。
「あの、雪さん」
「なに?」
「今日は私の……天使ももと、それから、天野望結の話を聞いてほしくて」
「……いつも、私のことばっかり聞いてきてたのに?」
驚いたように雪さんが目を見開く。
頷いて、私は話し始めた。
「私は……天野望結は、自分で言うのもなんだけど、真面目ないい子、ってずっと言われてきた。学級委員長とか、児童会長とかもやった」
「……うん」
「そうしたらどんどん、真面目でいなきゃ、委員長らしくしなきゃって、そう思い込むようになっちゃって」
雪さんは何度も頷きながら話を聞いてくれる。
時々言葉に詰まってしまっても、雪さんの顔を見たら安心できた。
「本当は可愛い物が大好きで。だけど、委員長らしくないかなって理由で、ずっとそれを隠してた。そんな時に、私は如月さんに出会った」
あの日、偶然蓮さんの姿をした如月さんに出会っていなかったら、今の私はいない。
相変わらず、委員長らしくしなきゃ、と毎日苦しんでいたはずだ。
「そして、変身部に入って……ここでなら変われるんだって、そう思って」
「うん」
「自分の気持ちに素直になってできたのが、今の私。天使もも」
胸に手を当て、にっこりと笑ってみせる。天使ももには、笑顔が一番似合うから。
「聞いてくれてありがとう。雪さんと仲良くなりたいから、私のことを知ってほしかったの」
そう言って、右手をそっと差し出す。少しだけ戸惑った顔をしたけれど、雪さんは私の手をぎゅっと握り返してくれた。
雪さんの手って、意外と大きい。それに、手のひらもちょっと硬かった。
「話してくれてありがとう。望結、もも」
雪さんはちゃんと、二人の名前を呼んでくれた。どっちの私も尊重してくれたみたいで、すごく嬉しい。
「私も、仲良くなりたいって思ってる。だから……」
雪さんが大きく深呼吸をした。そして、覚悟を決めた瞳で私を見つめる。
「私が佐倉雪になる前の話、聞いてくれる?」
「そう。だって、普段の望結のイメージと、全く違う絵を描いてたから。ふんわりした色使いとか、線のぼかし方とか。かと思えば、ぱきっとした鮮やかな色も使うし」
小さい頃から、絵を描くのは好きだった。
真っ白なキャンバスに何を描いてもいいのが楽しくて、そこになら、いくらでも自分の大好きを詰め込める気がして。
「望結って本当は、こういう世界が好きなのかな? って思ったら、たくさん興味が湧いてきたの」
琴音と出会った時のことを思い出す。
美術部の体験入部で一緒になった時、かなり積極的に声をかけてくれた。
私の絵を見て、仲良くなりたいって思ってくれたからだったんだ……。
「私はね、作品って、すごく作者の内面を表してると思うの。だから、望結にはいろんな面があるんだなって思って、仲良くなってみたい、って思ったんだ」
「……なんか、照れる」
「照れていいよ。私だって、こういうこと言うと照れるし」
そう言って、琴音は私から目を逸らした。琴音の白い耳が、ほんのりと赤く染まっている。
恥ずかしいのに、ちゃんと伝えてくれたんだ。
それって、私のためだよね。
「ありがとう、琴音」
琴音は、真面目な委員長としての私しか知らないと思っていた。そんな自分が恥ずかしい。
琴音はもっとちゃんと、私の心の中を覗こうとしてくれていたのに。
「……あ」
不意に、雪さんの顔が頭に浮かんだ。
最近私は、雪さんと仲良くなりたくて、いろんなことを質問している。まずは雪さんを知ることが大事だと思って。
でもそれって、私の視点でしかなかったんだ。
雪さんのことを知るだけじゃだめだ。ちゃんと、私のことだって知ってもらわないと。
◆
「雪さん、こんにちは」
変身部の部室で、いつも通り雪さんは数学の問題集を広げていた。
今日も、蓮さんはいない。最近、蓮さんがいない日が二日に一日はある。
それに、保健室にだって最近は全然きてくれないし……。
心配だけど、理由を聞くといつもはぐらかされてしまう。
「いらっしゃい、もも」
雪さんの隣に座る。彼女と二人で過ごす時間にもかなり慣れてきた。
「あの、雪さん」
「なに?」
「今日は私の……天使ももと、それから、天野望結の話を聞いてほしくて」
「……いつも、私のことばっかり聞いてきてたのに?」
驚いたように雪さんが目を見開く。
頷いて、私は話し始めた。
「私は……天野望結は、自分で言うのもなんだけど、真面目ないい子、ってずっと言われてきた。学級委員長とか、児童会長とかもやった」
「……うん」
「そうしたらどんどん、真面目でいなきゃ、委員長らしくしなきゃって、そう思い込むようになっちゃって」
雪さんは何度も頷きながら話を聞いてくれる。
時々言葉に詰まってしまっても、雪さんの顔を見たら安心できた。
「本当は可愛い物が大好きで。だけど、委員長らしくないかなって理由で、ずっとそれを隠してた。そんな時に、私は如月さんに出会った」
あの日、偶然蓮さんの姿をした如月さんに出会っていなかったら、今の私はいない。
相変わらず、委員長らしくしなきゃ、と毎日苦しんでいたはずだ。
「そして、変身部に入って……ここでなら変われるんだって、そう思って」
「うん」
「自分の気持ちに素直になってできたのが、今の私。天使もも」
胸に手を当て、にっこりと笑ってみせる。天使ももには、笑顔が一番似合うから。
「聞いてくれてありがとう。雪さんと仲良くなりたいから、私のことを知ってほしかったの」
そう言って、右手をそっと差し出す。少しだけ戸惑った顔をしたけれど、雪さんは私の手をぎゅっと握り返してくれた。
雪さんの手って、意外と大きい。それに、手のひらもちょっと硬かった。
「話してくれてありがとう。望結、もも」
雪さんはちゃんと、二人の名前を呼んでくれた。どっちの私も尊重してくれたみたいで、すごく嬉しい。
「私も、仲良くなりたいって思ってる。だから……」
雪さんが大きく深呼吸をした。そして、覚悟を決めた瞳で私を見つめる。
「私が佐倉雪になる前の話、聞いてくれる?」
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