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第3章 変身レッスン
第11話 こんなに難しいなんて!
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「ももさん。ちょっとその笑顔、ぎこちないよ」
綺麗な顔で私を見つめた蓮さんがそう言った。厳しい指摘だけど、自覚はある。
「だよね。もも、反省した。気をつけるね!」
いつもより少し高い声で返事をすると、今度は雪さんが口を開いた。
「一人称を自分の名前にするの、恥ずかしいならやめていいと思う。別に、私、でも違和感ないから」
「……はい」
思わず敬語が出てしまった。
昨日、私は生まれ変わった。天野望結じゃなくて、天使ももっていう、もう一人の私に出会えた。
だけど。
自分じゃない自分になるのって、難しすぎる……!
見た目はともかく、性格とか振る舞いを急に変えるのって、こんなに難しいんだ。
「雪さん。ももさんはまだ入部したてなんだから、もうちょっと優しく言いなよ」
そう言った蓮さんは、完璧な王子様スマイルを浮かべている。
如月さんの姿からは想像もつかない笑顔だ。
言葉遣いとか表情だけじゃなくて、蓮さんはちょっとした動作も王子様みたいなんだよね。歩き方とか、物を拾う時の角度でさえ。
私だって笑顔の練習はした。いつもより動作を大きくして、可愛く見えるように振る舞っているつもり……ではある。
でもやっぱり、なかなか上手くいかない。
「ももさんは、一人称はもも、でいきたいんでしょ?」
「……うん。私、じゃいつもと変わらないもん」
もん、なんて語尾も、普段の私は滅多に使わない。だからだろうか。口にしただけで、少し恥ずかしくなってしまう。
「だったら、変える必要なんてないよ。好きな自分になるのが、ここでは一番大事なことだからね」
「蓮さん……!」
「大丈夫。時間が経てば、ちゃんと慣れるよ。ももさんなら」
「ありがとう。私、頑張るよ!」
◆
「って、言ったけど……」
湯船につかって、ゆっくりと息を吐く。一日の疲れが身体から出ていくような気がするから、お風呂に入るのは好きだ。
浴槽に入ったまま、曇った鏡に手を伸ばす。雑に手で鏡を拭くと、少し赤くなった私の顔が映った。
今の私は、真面目な委員長の天野望結でもなければ、可愛く変身した天使ももでもない。
「どうしたらいいと思う?」
鏡が答えてくれるはずもないのに、そんなことを聞いてしまう。
「はあ……」
変身部の活動は楽しい。だけど私はまだ、上手く変身できずにいる。
見た目を変えるのには、かなり慣れた。メイクはかなり上達したし、ウィッグのセットだって上手になった。
問題は、中身だ。
性格を変えるというのは、思っている以上に難しい。
「脚本があるわけじゃないし」
決まった台詞を言うわけじゃなくて、普通の会話をするのだ。意識しているつもりでも、つい、いつもの私が出てしまう。
ちゃんと、理想の女の子になりたいのに。
◆
『変身のコツ?』
お風呂上がりにいきなり電話をかけたのに、如月さんはすぐに出てくれた。
「うん。なかなか上達しないから、なにかあれば、教えてほしくて」
変身部で過ごす時間、私にアドバイスをくれるのは蓮さんだ。だから私はまだ、如月さんからアドバイスをもらったことはない。
『うーん……』
「なんでもいいの。些細なことでも。ほら、如月さんは最初の頃、どんな風にしてたかとか」
『えーっと……』
「……もしかして如月さんは、最初から上手くやれたとか?」
『そ、そんなことないよっ。最初は全然ちゃんとできなくて、毎日一人で反省会してたもん』
如月さんの言葉にほっとした。蓮さんだって、最初から完璧な王子様だったわけじゃないんだ。
『……い、委員長がよかったらだけど、昼休みも練習、する?』
「え、いいの?」
『うん。見た目は変えられないけど、だからこそ、性格を変えるのに集中できるし』
「ありがとう、如月さん!」
『……あんまり期待しないでね。上手に教えられるか分からないから』
如月さんは焦ったようにそう言ったけれど、そんなことより、如月さんが練習を提案してくれたことが嬉しかった。
それに、昼休みも如月さんと過ごせる。そう思うと、勝手に頬が緩んでしまう。
「明日からお願いしてもいいかな?」
うん、という如月さんの返事が嬉しそうだったのは、きっと気のせいじゃないはずだ。
綺麗な顔で私を見つめた蓮さんがそう言った。厳しい指摘だけど、自覚はある。
「だよね。もも、反省した。気をつけるね!」
いつもより少し高い声で返事をすると、今度は雪さんが口を開いた。
「一人称を自分の名前にするの、恥ずかしいならやめていいと思う。別に、私、でも違和感ないから」
「……はい」
思わず敬語が出てしまった。
昨日、私は生まれ変わった。天野望結じゃなくて、天使ももっていう、もう一人の私に出会えた。
だけど。
自分じゃない自分になるのって、難しすぎる……!
見た目はともかく、性格とか振る舞いを急に変えるのって、こんなに難しいんだ。
「雪さん。ももさんはまだ入部したてなんだから、もうちょっと優しく言いなよ」
そう言った蓮さんは、完璧な王子様スマイルを浮かべている。
如月さんの姿からは想像もつかない笑顔だ。
言葉遣いとか表情だけじゃなくて、蓮さんはちょっとした動作も王子様みたいなんだよね。歩き方とか、物を拾う時の角度でさえ。
私だって笑顔の練習はした。いつもより動作を大きくして、可愛く見えるように振る舞っているつもり……ではある。
でもやっぱり、なかなか上手くいかない。
「ももさんは、一人称はもも、でいきたいんでしょ?」
「……うん。私、じゃいつもと変わらないもん」
もん、なんて語尾も、普段の私は滅多に使わない。だからだろうか。口にしただけで、少し恥ずかしくなってしまう。
「だったら、変える必要なんてないよ。好きな自分になるのが、ここでは一番大事なことだからね」
「蓮さん……!」
「大丈夫。時間が経てば、ちゃんと慣れるよ。ももさんなら」
「ありがとう。私、頑張るよ!」
◆
「って、言ったけど……」
湯船につかって、ゆっくりと息を吐く。一日の疲れが身体から出ていくような気がするから、お風呂に入るのは好きだ。
浴槽に入ったまま、曇った鏡に手を伸ばす。雑に手で鏡を拭くと、少し赤くなった私の顔が映った。
今の私は、真面目な委員長の天野望結でもなければ、可愛く変身した天使ももでもない。
「どうしたらいいと思う?」
鏡が答えてくれるはずもないのに、そんなことを聞いてしまう。
「はあ……」
変身部の活動は楽しい。だけど私はまだ、上手く変身できずにいる。
見た目を変えるのには、かなり慣れた。メイクはかなり上達したし、ウィッグのセットだって上手になった。
問題は、中身だ。
性格を変えるというのは、思っている以上に難しい。
「脚本があるわけじゃないし」
決まった台詞を言うわけじゃなくて、普通の会話をするのだ。意識しているつもりでも、つい、いつもの私が出てしまう。
ちゃんと、理想の女の子になりたいのに。
◆
『変身のコツ?』
お風呂上がりにいきなり電話をかけたのに、如月さんはすぐに出てくれた。
「うん。なかなか上達しないから、なにかあれば、教えてほしくて」
変身部で過ごす時間、私にアドバイスをくれるのは蓮さんだ。だから私はまだ、如月さんからアドバイスをもらったことはない。
『うーん……』
「なんでもいいの。些細なことでも。ほら、如月さんは最初の頃、どんな風にしてたかとか」
『えーっと……』
「……もしかして如月さんは、最初から上手くやれたとか?」
『そ、そんなことないよっ。最初は全然ちゃんとできなくて、毎日一人で反省会してたもん』
如月さんの言葉にほっとした。蓮さんだって、最初から完璧な王子様だったわけじゃないんだ。
『……い、委員長がよかったらだけど、昼休みも練習、する?』
「え、いいの?」
『うん。見た目は変えられないけど、だからこそ、性格を変えるのに集中できるし』
「ありがとう、如月さん!」
『……あんまり期待しないでね。上手に教えられるか分からないから』
如月さんは焦ったようにそう言ったけれど、そんなことより、如月さんが練習を提案してくれたことが嬉しかった。
それに、昼休みも如月さんと過ごせる。そう思うと、勝手に頬が緩んでしまう。
「明日からお願いしてもいいかな?」
うん、という如月さんの返事が嬉しそうだったのは、きっと気のせいじゃないはずだ。
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