【完結】嘘も恋も、甘くて苦い毒だった

綾取

文字の大きさ
17 / 20

決意

しおりを挟む
 リリィとエリシアは、学園の小さな図書室の一角で向き合っていた。
 放課後の時間、他に誰もいない静かな空間。窓から差す柔らかな光が、ふたりの表情を優しく照らす。
「エリシア、ユリウスと話したのね?」
リリィが優しく問いかけると、エリシアは静かに頷いた。
「うん。ちゃんと向き合えた。私、現実から逃げてレオンハルト様しか見ていなかった。話すべき相手に話そうとしてこなかった。始めから話すべきだったのね。」
「そうね、エリシア。気づけたのは、すごいことよ。エリシアは優しいから、傷つくことを避けようとしていたのかもしれないわ」
リリィは微笑みながら、そっと手を重ねた。
その温もりに、エリシアの目が揺れる。
 リリィは微笑んだ。その目には、友を思う温かさが宿っていた。
「だけど私、最近感じるの。噂の流れ方や、クラスの空気何かがおかしい」
エリシアも、小さく頷く。
「リリィ、私ちゃんと話さなくちゃって思ってる。レオンハルト様にも。ユリウスとの事誤解されてるかもしれないし、何より私自分のことを知ってほしいの」
「きっと伝わるわよ。怖くても、逃げないでちゃんと自分の言葉で話し合うべきだって分かったものね。」
 ふたりは目を見合わせ、小さく笑い合った。
新たな一歩を踏み出すように、確かに手を取り合っていた。

 レオンハルトは、人気のない学園の裏庭に立っていた。
 風が緩やかに吹き、木々の葉を揺らしている。
どこか遠い空を眺めているその横顔に、エリシアは静かに声をかけた。
「レオンハルト様」
その声に、レオンハルトはゆっくりと振り返った。彼の表情は穏やかだった。
「やあ、エリシア。」
ふたりの間に、しばしの沈黙が流れる。
けれどエリシアは、視線をそらさずに口を開いた。
「私、最近色々あって、少しずつだけど自分のことを見つめ直すようになったの。
そして、ちゃんと伝えなきゃって思った。私、レオンハルト様に憧れてて……でも、それだけじゃなくて、今はもっと知りたいと思ってる。貴方のことも、自分のことも。だから逃げずにいたいの」
その真っ直ぐな声に、レオンハルトも真っ直ぐ見つめ返す。
「それは、怖くないのか?」
「怖いわ。でも、信じたいの。自分の気持ちも、貴方も」
沈黙の中、風が二人の間を通り抜ける。
やがて、レオンハルトが静かに言った。
「君は、強くなったな。驚いたよ。そんな顔、初めて見る。」
自分はいつまでも昔のトラウマを抱え、ちっとも前に進めずにいた。
 今はエリシアと接する事で又、人を信じる事が出来ると思えるようになっている。
そして
「僕も、ちゃんと君のことを知りたいと思ってる。だから、これから話してくれるか?」
「はい。」
エリシアの笑顔に、レオンハルトもほんの少しだけ口元を緩めた。

 ふたりは、そのまま長い時間を過ごした。
想いを語り合い、過去と向き合い、少しずつ距離を縮めていく。

 レオンハルトは語った。
自らを閉ざしていた過去、親友を失った痛み、そして、自分を心から心配してくれていた友、セドリックの存在。
 気づけば彼は、もう逃げることなくエリシアと向き合っていた。

──その頃。
メリッサは、自室で苛立ちを隠せずにいた。
「どうして……どうして上手くいかないのよ……!」
机にあった小さな香水瓶を、手元から滑らせて落とす。床に転がった硝子が、カチリと音を立てた。
「ユリウスの態度も変わってきた……エリシアの周りの空気も……リリィ。あの子が動いてるせい……?」
彼女の眉間には深い皺。
 取り乱したその姿は、普段の上品な彼女とは別人のようだった。
先日メリッサの裏の顔を目撃したのはユリウスだけでは無かった
「でも、まだよ……終わらせない。誰にも私の居場所は譲らない。
……どんな手を使ってでも──!」
その言葉の奥には、焦りと執着が渦巻いていた。
 完璧に築いた“理想”が崩れていく音が、もうすぐそこまで──
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。

石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。 その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。 実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。 初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。 こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。

[異世界恋愛短編集]私のせいではありません。諦めて、本音トークごと私を受け入れてください

石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。 面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。 そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。 どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。 この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。

告白相手を間違えた令嬢に待っていたのは、暴君皇帝からの寵愛でした。

槙村まき
恋愛
 イヴェール伯爵令嬢ラシェルは、婚約前の最後の思い出として、ずっと憧れていた騎士団長に告白をすることにした。  ところが、間違えて暴君と恐れられている皇帝に告白をしてしまった。  怯えるラシェルに、皇帝は口角を上げると、告白を受け入れてくれて――。  告白相手を間違えたことから始まる恋愛ストーリー。 全24話です。 2月5日木曜日の昼頃に完結します。 ※小説家になろうに掲載している作品を改題の上、連載しています。

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。

華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。 嫌な予感がした、、、、 皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう? 指導係、教育係編Part1

好きだった幼馴染みに再会→婚約者を捨ててプロポーズした侯爵令息

星森
恋愛
侯爵家の令息エドモンドは、幼い頃に結婚を誓い合った幼馴染コレットへの執着を捨てられずにいた。 しかし再会した彼女は自分を避け、公爵令息アランと親しくする姿ばかりが目に入る。 嫉妬と焦燥に駆られたエドモンドは、ついに“ある計画”に手を染めてしまう。 偶然を装った救出劇、強引な求愛、婚約破棄── すべてはコレットを取り戻すためだった。 そして2人は……? ⚠️本作はAIが生成した文章を一部に使っています。

秘密の恋人は、兄の婚約者を想っていた――伯爵令嬢メルローズの初恋

恋せよ恋
恋愛
メルローズは、恋に不器用な伯爵令嬢。 初めて想いを告げた相手は、遊び人と噂される侯爵令息アデルだった。 「他の女の子とも遊ぶけど、いいよね?」 そんな条件付きでも、彼女は頷いてしまう。 代わりに選んだのは、“秘密の恋人”という立場。 誰にも知られないまま重ねた時間と、触れ合う身体。 けれど、彼の心はいつもどこか遠かった。 彼の本命が、兄の婚約者だと知っても、恋は終わらなかった。 卒業とともに初恋を手放した――そう思ったのに。 秘密の恋が辿り着く、甘く歪な結末とは――。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...