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陳寿 三国志
陳寿・裴松之と趣味の革新
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三国志の作者である陳寿、三国志の注釈者である裴松之の二人については三国志に立伝されているわけではないが、彼等の筆致や執筆姿勢が印象に残り、今までの趣味に根本的な革新をもたらした。
三国志を読む前、歴史について逸話や信憑性の記録についても内容的に面白ければ採用される伝記や歴史小説を熱心に読むことが多かった。
必ずしも歴史の史料として残っている記録が史実とは限らないし、むしろそればかりに基づいていれば彼等を「生きた人間」として描写することは不可能だと思い込んでいたからだった。歴史書というのも学校の教科書のような無味乾燥な羅列的情報が綴られているものに過ぎないと勝手に思い込み食わず嫌いをしていた。
そんなとき、三国志の小説を読み、人物について調べていくうちに正史三国志という歴史書があるのを知った。インターネットで評判を調べてみると、あくまで歴史書で淡々と事実を述べられているに過ぎず、面白みに欠けるとの評判が多かったが、購入を決意して実際に読んでみた。
本格的な歴史書を購入したのは初めてで、きっと教科書的な執筆形式なのだろうなぁと期待せずに本を開いてみると思い込んでいた固定観念とは全く違う印象を受けて感銘した。
紀伝体といわれる人物に焦点をあてた記述方式で、本文の内容は簡潔明瞭だったが、実際に彼らが動き、話している描写が殆どを占めていた。
著者の陳寿は信憑性の薄い史料を廃し、確かな記録だけを採用する執筆姿勢であったが、それでも教科書のような物と先入観があった為、ここまで人間を生き生きと描けるものなのかと感嘆した。
彼の簡潔な記述を補うように注釈者の裴松之が様々な史料を挿入している。史料自体も興味深い話が多く採録されているが、裴松之はそれぞれを比較検討して、これは後世につくられた作り話であると厳しく精査をしていたりする。だからといって情緒に欠けることなく、自身の意見や評というものをつけて、この人物は「偉大な人物」とか、「けしからん奴」だとか勝手で自由奔放な人物評を挿入しているところに、堅苦しさという先入観が完全に振り払われたのと同時に史実を探求する重要性と決してそれは歴史を退屈にさせるものではないということを知った。
陳寿も人物ごとに独自の評をつけている。特に印象に残ったのは諸葛孔明に付いての評「政治をしる良才で、古の名宰相である管仲や蕭何の輩であろう。しかし魏を討ち倒すことができなかったのは、臨機応変の軍略は彼の得意とするところではなかったからであろうか」だった。
小説の三国志を読破し、インターネットで調べていくと、諸葛孔明は実は戦は不得手などの極端な情報が沢山でてくる。しかし実際に正史を手にして記録をたどると物語の縦横無尽に奇策を弄する武将でないにしても堅実な戦略や戦術でそれなりの活躍をしていたことがわかった。
また注釈に残る逸話や史料にはその知略を著したものが多いことも知った。これは仮に史料のや民間伝承の逸話が創作である場合でも、何故その人物にそのような逸話を作られるようになったかという点で興味深いとおもう。劉備や関羽、曹操といった物語で誇張された人物たちも決して全てが虚実というわけではなく、彼等の逸話や功績、人柄などが実際の記録を見ると、何かしらの元となるものがあってそのように描かれるようになったのだなと感じた。
それからというもの、人物描写に秀逸な紀伝体の歴史書だけでなく、所謂教科書的な淡々とした記録にも慣れていき、以前より多くの学者が書いた書籍なども手にするようになっていった。
決して史実の歴史記録も暗記主体の歴史用語辞典のような味気ないものではないのだ。ここまで生き生きと描写できるのだと知り、急に小説などに対する興味というのが減退した
彼等二人は自分にとって歴史という趣味を一気に広げ、高い次元へと押し上げる跳び箱の台座のような存在となった。
三国志を読む前、歴史について逸話や信憑性の記録についても内容的に面白ければ採用される伝記や歴史小説を熱心に読むことが多かった。
必ずしも歴史の史料として残っている記録が史実とは限らないし、むしろそればかりに基づいていれば彼等を「生きた人間」として描写することは不可能だと思い込んでいたからだった。歴史書というのも学校の教科書のような無味乾燥な羅列的情報が綴られているものに過ぎないと勝手に思い込み食わず嫌いをしていた。
そんなとき、三国志の小説を読み、人物について調べていくうちに正史三国志という歴史書があるのを知った。インターネットで評判を調べてみると、あくまで歴史書で淡々と事実を述べられているに過ぎず、面白みに欠けるとの評判が多かったが、購入を決意して実際に読んでみた。
本格的な歴史書を購入したのは初めてで、きっと教科書的な執筆形式なのだろうなぁと期待せずに本を開いてみると思い込んでいた固定観念とは全く違う印象を受けて感銘した。
紀伝体といわれる人物に焦点をあてた記述方式で、本文の内容は簡潔明瞭だったが、実際に彼らが動き、話している描写が殆どを占めていた。
著者の陳寿は信憑性の薄い史料を廃し、確かな記録だけを採用する執筆姿勢であったが、それでも教科書のような物と先入観があった為、ここまで人間を生き生きと描けるものなのかと感嘆した。
彼の簡潔な記述を補うように注釈者の裴松之が様々な史料を挿入している。史料自体も興味深い話が多く採録されているが、裴松之はそれぞれを比較検討して、これは後世につくられた作り話であると厳しく精査をしていたりする。だからといって情緒に欠けることなく、自身の意見や評というものをつけて、この人物は「偉大な人物」とか、「けしからん奴」だとか勝手で自由奔放な人物評を挿入しているところに、堅苦しさという先入観が完全に振り払われたのと同時に史実を探求する重要性と決してそれは歴史を退屈にさせるものではないということを知った。
陳寿も人物ごとに独自の評をつけている。特に印象に残ったのは諸葛孔明に付いての評「政治をしる良才で、古の名宰相である管仲や蕭何の輩であろう。しかし魏を討ち倒すことができなかったのは、臨機応変の軍略は彼の得意とするところではなかったからであろうか」だった。
小説の三国志を読破し、インターネットで調べていくと、諸葛孔明は実は戦は不得手などの極端な情報が沢山でてくる。しかし実際に正史を手にして記録をたどると物語の縦横無尽に奇策を弄する武将でないにしても堅実な戦略や戦術でそれなりの活躍をしていたことがわかった。
また注釈に残る逸話や史料にはその知略を著したものが多いことも知った。これは仮に史料のや民間伝承の逸話が創作である場合でも、何故その人物にそのような逸話を作られるようになったかという点で興味深いとおもう。劉備や関羽、曹操といった物語で誇張された人物たちも決して全てが虚実というわけではなく、彼等の逸話や功績、人柄などが実際の記録を見ると、何かしらの元となるものがあってそのように描かれるようになったのだなと感じた。
それからというもの、人物描写に秀逸な紀伝体の歴史書だけでなく、所謂教科書的な淡々とした記録にも慣れていき、以前より多くの学者が書いた書籍なども手にするようになっていった。
決して史実の歴史記録も暗記主体の歴史用語辞典のような味気ないものではないのだ。ここまで生き生きと描写できるのだと知り、急に小説などに対する興味というのが減退した
彼等二人は自分にとって歴史という趣味を一気に広げ、高い次元へと押し上げる跳び箱の台座のような存在となった。
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